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フランス映画史の誘惑


  • 中条省平著
  • 集英社新書 0179
  • \760

映画を見るのには体力がいる。2時間近い間(最近では3時間超えも多い)じっとして集中力を高めなくてはいけない。緊張感をたもち流れをつかみ、時に監督の意図を読み、時にシチュエーション独自の空気を読み。そのようにしてある「ふんぎり」のようなものを必要とすからだ。それでも映画には魅了される。いや、それだからとも言える。

字幕はさらに体力を要する。絵と文字を同時に追い、両者の伝える像を一瞬にして読みとる能力。では日本映画は楽かといえばそうでもない。字幕の要らないぶん、また描かれる環境、人物が身近な存在だけに、感情の細部に至るまで徹底して読んでしまうから、かえって疲れるのだ。そしてまた魅了される。

フランス映画は特にやっかいだ。絵と字幕のコンビネーションへさらに哲学やら、芸術などの高度な解析能力が必要とされる。その複雑さゆえに、気がつけばぼーっとして眠くなるほどだ。それは単なる退屈な映画と同じ評価を生んでしまう。だからフランス映画は賛否両論でもある。見る人によって全然受け止められ方が違う。自分の中でもそうだ。昔見たときには、途中で寝てしまい最後まで見ることすら出来なかった作品が、いま見れば面白かったりもする。

一方で映画はそれで十分だとも思う。高度だろうが何だろうが、イメージに差はないはずだ。見る側の解釈は常に開かれているべきだし、作品性とはそのように、見る人がその時々「見た瞬間」に作られているものだと思う。だからこそ素晴らしい作品は色あせないし、常に新しい出会いを生み続けているのだ。

「ふんぎり」の要る映画に何度も魅了され続ける理由に、「映画について書かれた本」の功績がある。時にそれは映画を見ている以上の楽しさを与えてくれる。まだ見ぬ作品に思いを馳せたり、昔見たイメージへ新たな解釈を重ねることが出来たり。体系的に作品をつなげてくれる楽しさもある。同時代的な特徴や、監督が影響され合った跡を見いだしたりも出来る。映画はそのように、繰り返しあらゆる角度で眺めることの出来る多様な文化そのものだ。

この本を読むと、フランス映画の体系がダイジェスト版のように分かり易く手に入り、まだ見ぬ作品の多さに気の遠くなる思いが生まれ、同時にそれらへの「ふんぎり」を解く契機を与えてくれるように思う。

以下は気になった映画のリスト(●は本文見出し)。

  • ●アバンギャルド映画のブーム
    • 「幕間」1924/ルネ・クレール
  • ●詩的レアリスムの出発点
    • 「巴里の屋根の下」1930/ルネ・クレール
  • ●世界最大級の映画作家
    • 「ゲームの規則」1939/ジャン・ルノワール
  • ●フランス映画史上の最高傑作
    • 「天井桟敷の人々」1943〜1945/マルセル・カルネ
  • ●フィルム・ノワールの創始者
    • 「現金に手を出すな」1945/ジャック・ベッケル
  • ●行動の美学
    • 「海の沈黙」1945/ジャン=ピエール・メルヴィル
  • ●映画史上もっとも独創的なスタイル
    • 「スリ」1959/ロベール・ブレッソン
    • 「田舎司祭の日記」1951/ロベール・ブレッソン
  • ●カイエ派
    • 「獅子座」1962/クロード・シャブロル
  • ●疾走するゴダール
    • 「ウィークエンド」1967/ジャン=リュック・ゴダール

  • ●不可解な独創性
    • 「パリはわれわれのもの」1961/ジャック・リヴェット
  • ●リアルな非現実性
    • 「妥協せざる人々」1965/ストローブ=ユイレ
    • 「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」1968/ストローブ=ユイレ
  • ●左岸派
    • 「幸福」1964/アニェス・ヴァルダ
  • ●小説と映画
    • 「火遊び」1975/ロブ=グリエ
    • 「インディア・ソング」/マルグリット・デュラス
  • ●70年代に殉じたユスターシュ
    • 「ママと娼婦」1973/ジャン・ユスターシュ

  • ●ポスト・ヌーヴェル・ヴァーグ
    • 「内なる傷痕」1971/フィリップ・ガレル
    • 「秘密の子供」1982/フィリプ・ガレル
    • 「小さな赤いビー玉」1975/ジャック・ドワイヨン
  • ●BBCにつづく世代
    • 「ショコラ」1987/クレール・ドニ
    • 「哀しみのスパイ」/エリック・ロシャン
    • 「エスター・カーン めざめの時」2000/アルノー・デプレシャン

2003-05-03/k.m


コメントをぜひ

  • k.m>ノブ・NAKADAさんの書評2003-05-09 (金) 21:15:29
  • k.m>ジャン・ユスターシュの「わるい仲間」を見た。ほんとうは「ママと娼婦」が見たかったのだけど、なにせ長い作品だし、ちょっと体力に自信のない気分だったので、これを。実際は「サンタクロースの目は青い」との2作がはいっていたのに、見られなくて返した。とってもヌーベルバーグらしい短編。あのパリをドキュメントタッチでエッセイ風に描く軽やかさは見ていて、とても心地よい。あまりにあっけない終わり方で、ホントにエピソードといった感じ。その内「ママと娼婦」にはチャレンジするつもり。2003-05-11 (日) 22:31:50
  • けみ>観たかった映画を一挙に整理できました。わかりやすい!2003-08-13 (水) 13:03:56
  • k.m>はじめまして。自分で上げておきながら上のリストではまだ「ゲームの規則」、「内なる傷痕」しか見られていません。けみさんはフランス映画では何がお好きですか?。僕は「ディーバ」、「ポンヌフの恋人」、「恋のエチュード」などが浮かびます。2003-08-13 (水) 17:30:55
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