バベル


  • 監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
  • 出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、 ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子

モロッコの場面、冒頭から何か息苦しさがあり銃を受け渡されてそれをもてあそぶ兄弟の危なっかしさ。彼らにはどこか殺伐とした空気があって、それは思春期特有のものかも知れないが、銃を持っているせいか断絶感が漂っていた。

一方でブラッド・ピットら演じるアメリカ人夫婦は行き詰っていて、旅行中なのにくつろぐ気配もない。さらに舞台が日本へうつり菊地凛子演じる女子高生(無理あり)で息苦しさは頂点に達しそうだった。心に響く切ない音楽、広大で荒涼とした大地。コミュニケーション不全に溺れる夫婦、そして女子高生。

不全と息苦しさはこの後も続き、様々な場面で展開される。そして不法労働者の乳児が子供を連れメキシコとアメリカを横断する中、耐えようもないほどに成長した不快感は、もはや後戻りできない状態を向かえついに破綻した。劇中で誰もが追い詰められた瞬間となって。

このように4つの物語は徐々にシンクロして行くのだけど、その折重なった共時性に見ているこちら側が酔ってしまいそうな地点でもう一度自立的な展開へ戻っていく。その絶妙なタイミングと造り込みが素晴らしい。

聖書におけるバベルの塔の物語とは、世界にさまざまな言語が存在する理由を説明するためのようだけど、その多様性と相互の断絶は人間を混沌へと落とし込むワナのようだ。

経済が急速にグローバリズムへ向かうほどに、世界は益々断絶からくる困難へと落ち込んでいる。映画には僅かに希望を感じたけれど、それぞれの場所で小さく見つけていくほかないのだろうか、そんな不安を募らせてもいた。2007-12-10/k.m

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最終更新:2008年04月11日 08:07