ストレンジャー・ザン・パラダイス


  • 1984年作品:アメリカ・西ドイツ合作
  • 監督:ジム・ジャームッシュ
  • 出演: ジョン・ルーリー, エスター・バリント

ジャームッシュ長編2作目のモノクロ映画。

1シーン・1ショット。ゆっくりと切り替わる場面。乾いた人間関係。セリフの少ない対話。あてもなく向かう先。出会いと分かれ。ロードムーヴィ。白くとんでいる画像。どれも印象的で、退屈な内容なのだけれど、飽きのこない映画だ。なにも起こらないのに、どこまでも続いてほしいような感覚。そこへ参加しているような、落ち着きと臨場感。

突然押し掛けた訪問者が、いとこ同士という関係なのと、なにをして生活しているのか分からない家主である主人公の、ぶっきらぼうながら人間味のある雰囲気がよい。狭いワンルームでの男女の10日間の共同生活。一緒にTVを見て、電話が掛かってきて、いとこがそれに出て、寝ていた家主が出るなと怒って、掛かってきた名前を聞いても分からない。たったこれだけが、ほぼ前半の内容だ。

内容の淡泊さを助長しているのは、親戚の娘がとてもタンパクであることだ。全くの無表情で、感情をあらわさないというのでもなく、むしろその抑制された演出の中へ、かえって笑いをこらえるような、暗黙の楽しさを見いだせる。これは全体のテンポそのものにも含まれる面白さで、一話簡潔の4コマ漫画のように1シーンだけで十分に成立している完成度がある。一部が約30分の3部構成になっているが、その連続はむしろ程良く断絶しているがゆえに、新鮮さでもって受け入れることを要求してるようだ。

音楽だけが1シーンを繋ぐ物理的な役割をし、白く抜けた画像と遂になって全体をカタチ作る。ロードムーヴィ的な郷愁は、脱色されたこの映画を、ひときわ色鮮やかに染め上げて静かにエンディングを迎えるのだった。2003-04-20/k.m

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  • blau>この頃のジャームッシュ、大好きです。ひとりでむやみに踊りまくるシーンがあるのは、この作品でしょうか(うろ覚え…)?2003-04-23 (水) 23:01:52
  • k.m>そうですね。激しくはないですけど、まったりと一人で踊ってました・笑。雰囲気のとても良い映画で僕も好きになりましたです。2003-04-24 (木) 01:48:34
  • jun>ぼくはほとんど映画を見ないのですが、これは大学の友人の勧めで映画館で見ました。保坂和志もこの映画が好きだそうですね。『言葉の外』に収められたエッセイで書いていました。2003-04-24 (木) 01:57:53
  • k.m>確かにあの、何も起こらないのに終わらないで!ってかんじ。とても保坂小説と共鳴しました。2003-04-24 (木) 02:02:30
  • jun>この映画84年なんですねー。・・・保坂とstp2003-04-24 (木) 02:20:08
  • りえ>あの、もしかしたら、むやみに踊りまくっていたのは、『パーマネント・バケーション』ではないでしょうか。間違ってたら、すいません。ジム・ジャームッシュの映画は音楽もいいですね。2003-04-30 (水) 01:29:30
  • blau>きっとそうです。あれは激しく「踊りまくり」でした。なんだか謎が解けて、ほっ…。ありがとうございました。2003-04-30 (水) 15:46:00
  • jun>映画の中に「it's funny. you come to something new and everything looks the same」といセリフが出てくるんですね。ヨモタ犬彦の「ストレンジャー・ザン・ニューヨーク」という本の巻頭に掲げられていました。「こいつは奇妙だぜ。新しいことにとりつこうとしたとたんに、なにもかも前とまるっきり同じように見えてくる」。ヨモタさんには、外国滞在記の傑作がいくつかありますが、この本もその中の一つです。詳しくは ー> surround:RawYomota2003-05-06 (火) 14:41:23
  • k.m>ヨモタさんの映画評はとても好きですが、外国滞在記もよいのですねー。今度よんでみようかも。ところでそのセリフはどこだったかのー。雰囲気よく表してるんだけどー。2003-05-07 (水) 01:06:08
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最終更新:2008年04月11日 08:04