ヴィンセント・ギャロ(性的な欲望が高まると殺人を犯してしまう奇病に苦しんでいる人。)と「ベティー・ブルー」のベアトリス・ダル(同様な奇病でさらに深刻な状態。)が共演。しかも「パリ18区、夜」のクレール・ドゥニ監督。これだけでもう、ミニ・シアターファン必見の映画と言える作品。
このデータベース的な組み合わせはフランス・日本合作というクレジットを見て納得。確かにどれも日本で人気なアイテムばかり。しかしヴィンセント・ギャロがこんなにも具合悪そうに押さえた演技を押し通しているのはちょっと物足りない。ベアトリスとの再会場面こそもっと衝撃的にすべきでは。あれがクライマックスだったのかと見終わって気づく程度だった。
そう言えば「パリ18区、夜」という作品も「何かがどうした」と覚えている訳でもない。今回の作品でも奇抜なストーリだが実際のインパクトはむしろ押し殺している。全てが都市に生きる人々のリアルだ、とでも言いたげに静かな描写を通してそれれは語られているからだ。それがこの監督のやり方なのだろう。そのことはおおむね賛成だし好きな作風だ。
特にラストでレイプされてしまうベットメイク役のアレックスは、ほとんどただ働いているシーンでしか登場していない。その淡々と捕らえる彼女の仕草がとてもパリを感じさせ(特に根拠ないが)、そのような都市における労働が、なにか巨大な歯車の一部としてすべての人物を匿名性の中へ押し殺していくような閉塞感を覚えさせられた。そこに十分な苦しさを共感してしまった僕は、むしろ本題の「死への衝動」へ入り込めず、ガーゴイルと名付けられたように、彼らを遠い世界の怪物にしか思えなかった。
2002.1215k.m
カテゴリー-映画
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