書き手ロワ大戦――Ragnarok

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書き手ロワ大戦――Ragnarok」(2008/10/28 (火) 18:07:36) の最新版変更点

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長い通路を、ツキノンは一人走る。この先で戦っているであろう、仲間たちに合流するために。 もう、仲間を死なせたくない。その思いが、彼女を突き動かす。 やがて、ツキノンは開けた空間に到達する。そこで彼女が見たものは、3人のロリに翻弄される魔神の姿だった。 ◇ ◇ ◇ 時は少しさかのぼる。魔神・ネミトゼボーマと化した666の前には、三人の少女がいた。 勇者姫・ゴルディオンスバルとなった衝撃のネコミミスト。 長門有希の姿を取る地球破壊爆弾No.V-7。 そしてクマのプー太氏の体を乗っ取った、速筆魔王LX。 「666、覚悟して。もうあなたが調子に乗ることはない。これからあなたを待っているのは、絶望だけ。」 ネミトゼボーマに突き刺さった槍の上に立つ、爆弾が言う。淡々とした口ぶりとは裏腹に、その瞳には憎悪の炎が燃えさかっている。 このロワの中で手に入れた、かけがえのない存在。それを666は奪った。無常に、残酷に。 ゆえに、爆弾は666を憎む。もはや、その憎悪を止められる者はこの世に存在しない。 しかしその灼熱の憎悪をぶつけられても、666は涼しい顔を崩さない。 「うそぶくのは大いに結構。だが、ロリショタでない長門が私を倒すことなど不可能だ。  君はおとなしく下がっていたまえ。」 爆弾を見下すかのように、666は言う。だが爆弾は、それを嘲笑で返した。 「何がおかしい?」 「やはりあなたは何もわかっていない。私にとって、姿形など意味のないもの。」 爆弾の体がとけていく、とけていく……。いや、正確には縮んでいく。 変化が止まった時、そこには10歳前後の姿となった長門がいた。 カオスロワに登場した赤ん坊長門を参考に生み出したオリジナル形態、ロリ長門である。 ちなみにあくまで長門のマイナーチェンジであるため、7変化の中にはカウントされない。 「なるほどね……。そんな手があったとは。」 666の顔に、わずかな動揺が走る。 「理解した? じゃあ、死んで。」 右手にレヴァンティン。左手に激戦。背にマジシャンズ・レッド。完全武装で、爆弾は666に突進する。 666は爆弾の乗っている槍を自分の体から引き抜き、投げ捨てる。 しかし爆弾はすでに、槍から飛び立ち空中にいた。 「魔技『サディスティック8』。」 激戦とレヴァンティンを用いて繰り出される無数の突きが、ネミトゼボーマの首筋をズタズタに切り裂く。 さらにそこへ、マジシャンズ・レッドの炎が追い打ちをかける。 「まあまあの攻撃だが……この程度の技にサディスティックの名を冠するとは片腹痛いね。」 「ご心配なく。この技は108式まである。」 666の挑発的な言葉に、ネミトゼボーマの方に着地した爆弾は余裕をにじませた口ぶりで応える。 数秒の沈黙。その後、先に動いたのはどちらだったか。 二人は、お互いを抹殺すべく激しく戦い始めた。 「なるほど、ラダム虫になってプー太氏に寄生した、と……。」 「ああ、上手くいくかは自分でも半信半疑だったけどね。」 一方その頃、ネコミミストは魔王からこれまでのいきさつを聞かされていた。 魔王の言葉に納得と安堵を感じつつも、ネコミミストは体を乗っ取られたプー太氏へ一抹の同情を覚える。 ネコミミストという少女は、どこまでも優しい人間なのだ。敵対する相手にさえ、情けをかけてしまうほどに。 「ところでネコミミストくん、悪いけど斬鉄剣返してもらえる?」 「ええ、かまいませんよ。」 魔王に向かって、ネコミミストが斬鉄剣を投げる。ネコミミストに会わせて巨大化していた斬鉄剣は、彼女の手を離れると同時に元の大きさに戻り、魔王の手に収まった。 「やっぱりこれがないと落ち着かなくてさー。うん、この体でもなじむよ。」 「ああ、そうだ。これも受け取ってください。」 感触を確かめるように素振りを繰り返す魔王に、ネコミミストは懐から取り出したデバイスクリスタルを取り出す。 「おっ、これも残ってたか……。ラッキーだね。それじゃあ早速……。テックセッター!」 デバイスクリスタルを高々と掲げ、魔王は叫ぶ。その瞬間彼の体をバリアジャケットが包み、その姿はテッカマンとなった。 しかし身長が身長だけに、その一番の特徴であった禍々しさはだいぶ薄れてしまっている。 「よかった、この体でも変身は可能か。けど、ちょっと迫力に欠けるなあ。  これじゃせいぜい小悪魔……テッカマンプチデモンってところか。」 漫画ロワの劉鳳につっこまれそうなネーミングを呟きつつ、魔王は体の感触を確かめるようにストレッチを行う。 「よし、それじゃあ行こうか、ネコミミストくん。」 「はい!」 ◇ ◇ ◇ そして、時間は冒頭へと戻る。 ロリ長門、ゴルディオンスバル、プチデモンの三人は、それぞれ思い思いに攻撃を仕掛けネミトゼボーマを翻弄していた。 「火炎車輪。」 炎を宿した激戦を爆弾が振り回し、ネミトゼボーマの装甲を裂く。 「はあああああああっ!!」 魔王が高速で宙を飛び回りながら、斬鉄剣で斬って斬って斬りまくる。 「ラディカル・ブロウクン・マグナム!」 ネコミミストがラディカル・グッドスピードを発動させた状態で、右手のグローブを飛ばす。 グローブはドリルに変形しながら空中を突き進み、ネミトゼボーマの肩を貫いた。 「ええい!」 さらに、ツキノンも攻撃に参加する。 彼女の持つGRトラペゾヘドロンが、深々とネミトゼボーマの膝に突き立てられた。 「ぐぅっ!」 666の口から漏れるのは、苦悶の声。不死者の肉体を持ってしても、回復が追いついていない。 横やりが入るのは覚悟していたが、まさかここまで劣勢に立たされるとは思っても見なかった。 「だいぶ苦しそうだねえ、黒猫くん。」 そんな666の眼前に、小さな影が飛んでくる。斬鉄剣を手にした魔王だ。 「ちゃんと聞いていなかったが……君は本当に魔王なのか? なぜ君の意識が、プー太くんの体を支配している?」 「ラダム虫に意識を移して、プー太氏に寄生した。以上。」 最低限の説明を終えると、魔王は斬鉄剣で突きを繰り出す。 素早く回避運動に移る666だが、巨体ゆえにかわしきれず刀は彼女が埋め込まれている部分のすぐ横に突き刺さった。 「ずいぶんと無茶をしたものだ……。そこまで死にたくなかったのかい?」 「死にたくなかった……か。ああ、そうかも知れないね。  僕はロワを楽しむのが最大の目的だった。死ぬにしても、インパクトのある死に方だったら未練なく死んでいただろう。  だが実際に僕に与えられたのは、あまりにあっけない死に方だった。  書き手としては、そんな死に方もありだと認めよう。誰も彼もがかっこよく死ねるわけじゃない。  淡々とした死、あるいは無駄死にもロワには必要だ。けど……僕自身がそうなるのはごめんだね!」 語気を強めながら、魔王は蹴りを放つ。 質量で言えば今の魔王の数十倍、いや数百倍はあるはずのネミトゼボーマの体が、その一撃で揺らぐ。 「好機。」 爆弾の情報改変によって太陽並みの温度となったマジシャンズ・レッドの炎が、ネミトゼボーマを焼き尽くす。 さらにツキノンのオヤシロビームが、ネコミミストの衝撃波が追撃をかける。 「おのれえええええええええ!!」 ボロボロになった体を再生しながら、666は絶叫する。 常人ならすでに3回は死んでいるであろうダメージ。予想以上のイレギュラーの介入。 666の精神は、確実に削り取られていた。とは言っても、その影響は微々たるもの。 普段の666なら、何の問題にもならなかったはずだ。 しかし今の彼女は、闇の書とディス・レヴという危険物質をどうにか制御している状態である。 わずかな消耗が、取り返しのつかない事態を招きかねない。今、まさに彼女は暴走の初期段階に足をつっこんでいた。 「人の恋路を……邪魔するなーっ!!」 四本の腕を、がむしゃらに振り回すネミトゼボーマ。しかし、ロリ軍団は全員その攻撃をかいくぐる。 忌々しい。忌々しい。忌々しい。邪魔だ。邪魔だ。邪魔だ。 私はネコミミストと戦いたいんだ。なのに、なんでその他大勢が割り込んでくるんだ。 お前たちは要らないんだ、不必要なんだ、どこかに消えろ。 邪魔。邪魔。邪魔。死ね。死ね。死ね。どいつもこいつも……。 「死んでしまえぇぇぇぇぇぇ!!」 制御を失った狂気に任せて、666は叫ぶ。 その右手には、レイジングハート。左手には、ミニ八卦炉。さらにその腰には、巨大な銃が装備される。 影丸から蒐集した杉田の力により呼び出した、G・インパクトキャノンだ。 「これは……!」 「一発でかいのが来そうだねえ……。」 とてつもない攻撃がくる。その予感に、ロリ軍団も気を引き締める。 「ここからいなくなれぇぇぇぇぇ!!」 右から、スターライトブレイカーex。左から、マスタースパーク。中央から、G・インパクトキャノン。 一つ一つが巨大である光の奔流が、三つ合わさって眼前の敵に放たれる。 殺してはいけないはずの、ネコミミストまで巻き込むことになるというのに。暴走を始めた666は、そんなことにも気づいていなかった。 「全員がこの攻撃を回避できる確率は、1%以下。」 「なら、跳ね返すしかないね。みんな、準備を!」 「了解なのです!」 爆弾が、レヴァンティンを構える。 ネコミミストが、左手を伸ばす。 魔王が、両肩にエネルギーを集中させる。 ツキノンが、両手をかざす。 「翔けよ、隼。シュツルムファルケン。」 「プロテクト・シェード!」 「ZEROボルテッカ!」 「オヤシロバリアー!」 ネコミミストとツキノンのバリアが砲撃を受け止め、爆弾と魔王の攻撃が砲撃を押し返す。 常軌を逸した力のぶつかり合いに、フォーグラー全体がきしむ。 「エネルギー量はほぼ互角。押し返すには、出力を上げる必要がある。」 「今でも結構無理してるのに、無茶な注文してくれるねえ!」 「私は事実を述べているだけ。」 「はいはい。それじゃあ、ありったけの魔力込めましょうかね!」 魔王が、ZEROボルテッカの出力を上げる。ネミトゼボーマの砲撃が、少しずつ押し返されていく。 (この調子なら……いける!) 勝利への自信を、少しずつ確信に変えていくネコミミスト。だが次の瞬間、事態は一変した。 「えっ!?」 プロテクト・シェードにかかる負担が、一気に大きくなる。ネミトゼボーマの砲撃が、突然こちらを押し返してきたのだ。 向こうの出力が上がっているわけではない。自分たちの出力が下がっているのだ。 ネコミミストは気づく。魔王の肩から、光が放射されていないことに。 (まさか……こんな時に魔力切れ?) ネコミミストは、そう考えた。だが、それが誤りであることがすぐに明らかにされる。 魔王の、いや、魔王だったものの言葉によって。 「残念でしたね、皆さん。」 「え……? 魔王さん、何を!」 「いえ、違います。私は、クマのプー太です。」 その一言で、ロリ軍団に電流走る……! 「そんな……乗っ取られた意識が回復した?」 「ええ、その通りです。敵に精神を乗っ取られたキャラが、ここぞという時に体を奪い返す。よくある燃え展開でしょ?」 「確かにそうですけど……。それは主人公側のキャラがやってこそで……。」 「うぬぼれないでください。まだあなた達がこの物語の主人公だと決まったわけじゃない。  黒猫さんが主人公として完結する可能性も、十分にあるんです。」 ネコミミストとプー太氏が問答をしている間にも、砲撃はじりじりとネコミミストたちに迫る。 「非常にまずい。このままだと、耐えられてあと2分。」 爆弾が冷静な口調で、悲観的な分析結果を口にする。 「それじゃあ、私はここで失礼しますね。皆さんがこの攻撃に耐えられたら、またお会いしましょう。」 テッカマンとしての力を行使し、プー太氏が宙に浮く。いったん後方に退避し、666の攻撃が炸裂したらまた戻ってくる。 プー太氏が頭に描いた行動は、そのようなものだった。ところが彼女の思惑とは裏腹に、その体は前へ前へと進んでいく。 「え? なんで? なんで?」 (甘いねえ。羊羹に蜂蜜かけて砂糖をまぶしたぐらい甘いよ、プー太氏。) 「な、ま、魔王さん? なんで?」 (なんでも何もないよ。体を奪い返されたのなら、さらに奪い返せばいい。  相手の意識を消滅させたわけでもないのに安心するのは甘いとしか言いようがないね。) 「くっ……!」 必死で体のコントロールを取り戻そうとするプー太氏。しかしその努力もむなしく、体はどんどんとネミトゼボーマに近づいていく。 「何を……する気ですか……! まさか特攻なんて考えてるんじゃ……。」 (当たらずとも遠からず、かな。プー太くん、君の記憶を読ませてもらったけど、君は一度死んだ後闇の書の守護プログラムとして蘇ったみたいだね。  しかも、君の元キャラはヴィータだ。つまり、君の体は完全にヴォルケンリッターと化している可能性が非常に高い。) 「それがどうかしたんですか?」 (ではヒント。アニロワ1stでの、ヴィータの死因は?) 「それはカズマのシェルブリッドに、自分の体を魔力として取り込ませて……はっ!」 (そう、ヴィータを始めとするヴォルケンリッターの体は、魔力の塊だ。  そして僕の必殺技、ZEROボルテッカは魔力をボルテッカとして放出する技。ここまで言えばわかるよね?) 「私の体を魔力に変換して撃ち出すつもりですか! やめなさい! そんなことしたら私に寄生しているあなたも……!」 (ああ、今度こそ死ぬだろうね。だが僕は、死そのものは恐れちゃいない。  ド派手に散って、しかも僕を虚仮にした黒猫に一矢報いることが出来るなら本望さ。) 「ですが! ここで命を捨てる必要があるんですか! もうこの物語は終末を間近にしている!  ここまで来ていながら、自殺に等しい方法で命を捨てるなんて……!」 (君が悪いんだよ。君があんな場面で悪あがきなんてするから、僕はみんなを守るためにこんな方法を取らざるをえなくなってしまった。  それに、死ぬのは必ずしもバッドエンドじゃない。ロワは生と死を描くドラマだ。  死は時として、生よりも価値があるものとして描かれる。  僕は生還にこだわりはない。ただ、その時その時を全力で駆け抜けたいだけさ。) プー太氏の言葉に耳を貸さず、魔王は両肩の砲門を開く。 (あー、でも……。彼女を悲しませることになるのは、ちょっと良心が痛むかな……。) 自分を心配げに見つめるネコミミストの視線に気づき、魔王の心にわずかなためらいが生まれる。 だが、彼はすぐさまそれを振り切る。 (まあ、ネコミミストくんなら大丈夫だろう。あんまり自信ないけど……。  悪いけど、僕の屍も背負っていってもらうよ!) じわじわと迫る破壊の光線に向けて、魔王の肩からそれに匹敵する光が放たれる。 「これが僕の、最後の輝きだ! ZEROボルテッカ・Last-X!」 テッカマンプチデモンから、最後のボルテッカが放たれる。これまでのボルテッカよりはるかに激しく、そして神々しい光が舞う。 それを放つ魔王の体は、手足の先から空気に溶けるように消えていく。 「聞け、黒猫! 僕は速筆魔王LX! 僕の生死を決められるのは、僕だけだ!!」 全身全霊の叫びと共に、光がさらに激しさを増す。それはネミトゼボーマの砲撃を完全に飲み込み、消し去った。 やがて、光が消える。光の主である魔王の姿は、もうどこにもなかった。 「ま……おう……?」 うわごとのように、ネコミミストが呟く。その足下に、上空から落ちてきた斬鉄剣が突き刺さった。 「どうせフェイクですよね……? あなたのことだから、またしぶとく生き残っておいしいところで出てくるんですよね……?」 信じたくない。その思いが、勝手に口をついて出る。だが爆弾は、そんなネコミミストの思いをはっきりと否定する。 「魔王のロストを確認……。彼の生存確率は0%。」 「地図氏……。間違いはないんですか……?」 「私のシステムに狂いはない。私としても無念だが、魔王の死は動かしようのない事実。」 「あ……ああああああ!!」 涙は流さない。きっと魔王はそれを喜ばないだろうから。 その代わりに、ネコミミストは叫ぶ。怒りと悲しみと無念をまとめて吐き出すために。 「うあああああああ!!」 そして、暴走する666も叫ぶ。一人しとめたとはいえ、自分の攻撃が相殺されたという苛立ちを込めて。 「死ね! 死ね! 死んでくれ!」 呪いの言葉をわめき散らしながら、666はエターナルソードを呼び出してその手に構える。 しかしその剣は、飛来した巨大な槍にあっさりと弾き落とされた。 「もはやあなたに同情の余地など芥子粒ほどもない。今すぐ殺す、無惨に殺す。」 爆弾の情報改変によって、床から無数の槍が次々と出現する。 爆弾は、それを一斉に666に投げつけようとして……そこで意識を手放した。 「え……?」 自分の脳天を直撃したあと床に落ちる拡声器を見つめながら、爆弾は崩れ落ちる。 いかに彼女と言えど、完全に予測の範囲外である味方からの攻撃には対処のしようがなかった。 「な……! 何をしているんですか、ネコミミストさん!」 仲間への攻撃という暴挙に出たネコミミストに、ツキノンは抗議の声をあげる。 だがネコミミストは、それを静かな表情で受け止めた。 「すいません……馬鹿なことだってのはわかってます……。けど、彼女との決着は私の手で付けたいんです。」 「それは……ただのわがままなのです。」 「ええ、百も承知です。ですがそれでも私は、わがままを貫き通します。  666は私の仲間だったんです。だから……落とし前は私の手で付けさせます!」 ネコミミストは静かに、ネミトゼボーマに向かって歩き出す。 「そうだ、来い、ネコミミスト! 私は君と戦いたいんだ! さあ!」 666は恍惚に染まった表情で、ネコミミストに呼びかける。 「666……。はっきり言って、私はあなたを憎みきれない。あなたの言葉がこれまでの私を支えるものの一つだったのは、否定できない事実だから。  けど、ロリスキーさんや魔王さんを死に追いやったことは許せない。だからせめて、私の手であなたに引導を渡す。」 (そうだ、それでいい! さあ来い、ネコミミスト! 君の手で私を滅ぼしてくれ!) 666が期待の眼差しを送る中で、ネコミミストは両手を合わせる。 「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……」 呪文と共に、右手の攻撃エネルギーと左手の防御エネルギーを融合させる。 吹き荒れる電磁嵐が、ネミトゼボーマの動きを封じる。 「ヘル・アンド・ヘブン!」 勇者王の必殺技名を叫び、ネコミミストは一気に加速する。 目指すのは、ネミトゼボーマの頭部。666が収まる、コアの部分。 「はああああああ!!」 雄叫びと共に、ネコミミストの拳がコアに突き立てられる。666は、それを無抵抗に受け入れる。 (さあ、私を倒せ、ネコミミスト! そして喰え! 私の愛は、それで完結する!!) 目前に迫った野望結実の瞬間に、666は心を躍らせる。だがここで、ネコミミストにとっても666にとっても予想外のことが起きた。 ゴルディオンスバルと化したネコミミストのパワーは、本人の予想すら上回るものだった。 全力でヘル・アンド・ヘブンを決行した結果、あまりの威力に666の体がネミトゼボーマの頭部を貫通して吹き飛んでしまったのである。 「え!?」 「な!?」 ネコミミストと666は、共に驚愕に顔を引きつらせる。 そして吹き飛んだ666は偶然か運命か、後方にあった旅の扉に吸い込まれていった。 (しまった! ここで終わらせられたのに、力加減を間違えるなんて単純なミスを……。) ここぞという場面でのミスに、顔をしかめるネコミミスト。その眼前では、コアを失ったネミトゼボーマが崩壊していく。 うずたかく積まれた瓦礫の山と化したそれのあちこちからは、組み込まれていた支給品たちが顔を出している。 しかし、ネコミミストはそんなものを見ていない。その視線は、微塵のずれもなく旅の扉へと向けられている。 (決着は必ず付ける! 待っていろ、666!) 巨大化を解除し、ネコミミストは走る。そして、旅の扉へその身を飛び込ませた。 「ああ、待ってください、ネコミミストさん!」 ツキノンも気絶した爆弾を背負い、慌ててネコミミストを追う。 こうして、数々の死闘が繰り広げられたフォーグラーからは、誰もいなくなった。 ◇ ◇ ◇ 「ずいぶんと荒れているようだね……。」 独り言を漏らしながら、666は敗者たちの屍が転がるラピュタの中を歩く。 いかなる戦いが繰り広げられたのか興味が引かれるところだが、まずは自分の現状を確認しておこう。 そう考え、666は目を閉じて集中に入る。 まずはダメージ。これはネミトゼボーマと分離したことにより、ほぼゼロに戻っている。 ヘル・アンド・ヘブンで受けたダメージは残っているが、じきに不死者の再生能力で回復するだろう。 不死者の能力に関しては問題なし。闇の書との契約も切れていない。まあ、手元にないので使うことは出来ないが……。 闇の書のみならず、支給品は全て手元にない。これでは、攻撃力不足は明らかだ。 (フォーグラーに戻って取ってくるか? いや、ネミトゼボーマになれない以上、3対1で戦う状況にするのは下策……。  どうにかもう一度、ネコミミストと1対1になれる状況を作らなくては……。  それを達成しつつ、出来れば戦力を整え直したい。何かいい方法はないものか。) 勘に頼ってラピュタ内を歩きながら、666は封印していたメタ視点を再び使用する。 これまではネミトゼボーマの制御に集中するために使用を控えていたが、もうその必要はない。 666の脳に流れ込んでくるメタ知識が、数分前にこのラピュタで起きた全てを彼女に伝える。 (なるほど、繋ぎ師がダイダルゲートを破壊して逝ったか……。  wiki管理人は心身共に満身創痍。読み手も戦える状態ではない。  これはいよいよ、私がラスボスになる可能性が高くなってきたか……。) 自分がどう行動すれば最善の結果となるか。過去の記憶も総動員しながら、彼女は考える。その結果、あるアイテムが彼女の脳裏に浮かんだ。 (あれは考察の中に登場しただけで、存在は確認されていなかったんだったか……。  仮にあったとしても、使い物になるかどうか……。  まあ、なければないで計画はいくらでも変更できる。有ったらラッキーぐらいの心構えで捜してみるか。) 今後の計画を組み立てながら、666はある場所を目指して歩く。 数分で、彼女は目的地に到着した。wiki管理人の部屋である。 遠慮など微塵もせず、666は部屋の中に踏み込む。そして、捜し物をすぐに発見した。 「よし。では早速作戦開始といくか。」 わずかに口元を歪めながら、666は呟く。その手には、中央にウジャト眼が刻まれた金色のリングが握られていた。 ◇ 「くっ……! どこだ、666!」 黄金の鎧を身に纏った勇者姫、ネコミミストはラピュタ内を走り回る。かつての仲間であり、今は宿敵と化した少女を捜して。 「旅の扉に入った時間は、そう変わらないのに……。こんな短時間でどこに行ったんだ!」 ネコミミストは知らないことだったが、FFDQロワの旅の扉は本家ドラクエのものとは違い行き先が固定されていない。 つまり同じ旅の扉に入っても、同じ場所に出るとは限らないのだ。 管理人が用意した旅の扉も、FFDQロワ出典であるがゆえにその行き先はランダムだった。 ほとんど時間をおかずに旅の扉に飛び込んだ666とネコミミストでも、ラピュタ内のまったく異なる場所に飛ばされてしまったのである。 そんな事情は知らぬまま、通路を走り続けるネコミミスト。そんな彼女の耳に、誰かの声が届く。 「ネコミミストさん、いますか!」 (この声は、ツキノンさん!) マックススピードのまま進行方向を変え、ネコミミストは声の聞こえてきた方向へ向かう。 程なくして、彼女はツキノンと合流することが出来た。その横に立つ、意識を取り戻した爆弾とも。 「あの、地図氏、えーと……。」 無表情で、しかし明らかに敵意のこもった視線で見つめられ、さしものネコミミストもたじろぐ。 「まあいい。あなたにも666に対して思うところがあるのは理解している。今回だけは許す。」 「ど、どうも……。」 「ただし、次はない。」 「はあ……。」 あれほどまでに燃えさかっていた闘志が、急激に冷えていくのを感じるネコミミスト。 それほどまでに、爆弾の放つ雰囲気は恐ろしかった。 とにかく強引にでも話題を変えようと、ネコミミストは新たな話題を振る。 「ところでお二人は、666の居場所の手がかりは何か……。」 「心配ない。どこに逃げようとも、私の参加者追跡システムからは逃れられない。」 「地図氏によると、ここをまっすぐ行けばいいらしいのです……って、お二人とも、あれ!」 ツキノンが指さした方向を、反射的に見る二人。窓の向こうには、ラピュタの縁に立つ666の姿があった。 彼女は、なんのためらいも見せずそこから飛び降りる。ネコミミストたちも、当然のようにそれを目で追った。 難なく着地を果たした666は、ゆっくりと歩き出す。外が白一色の世界に変化していることに驚かされたネコミミストたちだが、その興味はすぐにその白い世界に立つ二人の人物に移った。 一人はウルトラマンのような姿の少女。もう一人は整った身だしなみの少女。 そして彼女たちの足下には、腹を貫かれた無惨な姿で三人がよく知る青年が倒れている。 「繋ぎ師さん……!」 心底悔しそうに、ツキノンが呟く。ネコミミストも、唇を噛みしめて自分の感情を抑え込んでいた。 「落ち着いて、二人とも。666が動く。」 ただ一人、爆弾だけが冷静だった。少なくとも、表面上は。彼女の言葉通り、666が動く。 そして、状勢は一気に変化した。 ▼ K.Kと呼ばれた読み手は、嘆いていた。悲しんでいた。苦しんでいた。 自分に託された、最後の切り札。それを自分は、失ってしまった。 あれは本当に大切なものだったのに。書き手ロワという物語に終止符を打てる、特別なものだったのに。 それを、自分は独断専行の結果失ってしまった。 もう、自分に存在価値はないのか? ここにいる資格はないのか? いや、そんなはずはない! 自分には、自分にはまだ価値が……。 「ないよ、君に価値なんて。」 「え?」 間抜けな声が、K.Kの口から漏れる。それが、K.Kという人格が発する最後の声になった。 次の瞬間、彼女の首には黄金に輝く輪……千年リングがかけられていた。リングに付属する数本の針が、服の上からK.Kの胸に突き刺さる。 「…………ッ!!」 苦悶の声をあげようとするK.K。しかし、あまりの痛みに声が出ない。 「ああ、価値がないというのは精神のことだ。体はありがたく使わせてもらうよ。」 もだえ苦しむK.Kの手から、666がシークレットトレイルを奪い取る。 666はそれを核鉄に戻すと、自分の中に残ったありったけの「真・驚きの黒さ」を込めて黒い核鉄に変化させた。 そして、管理人に接近。事態が飲み込めず混乱しているがゆえに動けない彼女の胸を、容赦なく貫く。 そうしておいてから、潰れた心臓の変わりに黒い核鉄を埋め込む。これで驚きの黒さに汚染された、ヴィクター管理人のできあがりだ。 「面倒くさいことしてやがるな。直接驚きの黒さをぶつけてやりゃあいいじゃねえか。  そいつはあらゆる技を使えるんだから、最初からヴィクター化だって使用可能だろ?」 仕事を終えた666に、K.Kが話しかける。いや、その人物はもはやK.Kではなかった。 千年リングに宿る邪悪な盗賊王の魂……いわゆる「闇バクラ」である。 「おお、上手く体を乗っ取れたみたいだね。おめでとう、バクラくん。」 「はっ、元々こいつやてめえは俺の……正確には、俺の力を利用したそこの女のマインドパラサイトで作られた存在だ。  だからどいつにも、ほんのわずかだが俺の因子が混ざっている。それがあれば、体を乗っ取るのはたやすいんだよ。」 「なるほどね。」 「そんな話はどうでもいいんだよ。俺の質問に答えろ。」 「ああ、なんでヴィクター化なんて回りくどいことをしたのかって? 簡単な話だよ。  人間をまんべんなく染めるより、その人間の核となる部分を染めてしまった方がはるかに効率がいい。  その点を考えると、黒い核鉄は媒介として最適だったわけさ。」 「なるほどねえ。」 自分で聞いておきながら、バクラはどうでも良さそうに言葉を返す。 「ところで、君は私に協力してくれるかい、バクラくん。」 「なんで俺がそんなことを……と言いたいところだが、部屋の隅に放り投げられてたのを拾ってもらった恩があるからな……。  いいぜ、1回だけ協力してやる。そのあとは元の世界にとんずらさせてもらうけどな。」 「ああ、それでかまわない。そして……君も一緒に戦ってくれるよね、wiki管理人くん。」 「ああ、もちろんだよ、666。」 666の言葉を、管理人は即座に肯定する。その瞳は、どぶ川よりもさらに深く濁っていた。 「私の計画を邪魔しようとした奴らはいらない。皆殺しにしてあげよう……。  そして邪魔者がいなくなってからゆっくり、私は本懐を遂げる!」 「実に結構。だが、ネコミミストには手を出さないでくれたまえ。彼女は私の獲物だからね。」 「わかってるさ。」 666と管理人は、共に怪しく笑う。 666、読み手バクラ、黒管理人。今ここに、書き手ロワラスボスチームが誕生した。 「さて、管理人くん。早速で悪いんだが、君に一つ頼みがある。」 「何かな?」 「今、ネコミミストたちがこちらに向かっているはずだ。彼女たちが到着する前に、君の能力でフォーグラーに置いてきてしまった私の支給品を呼び寄せてほしいのだが。」 「そんなことか。おやすいご用だよ。」 管理人はあっさり666の頼みを引き受けると、空間の境界を操作して自分の目の前をフォーグラーとつなげる。 ニコロワ最終回に満を持して降臨した、八雲紫の能力である。 その能力によって生み出されたスキマから、次々とアイテムがこぼれ落ちる。 レイジングハート、ゲイボルク、ミニ八卦炉、そして闇の書……。 「感謝するよ。これで、また全力で戦える。」 コアドリルは、ネミトゼボーマの起動時に負荷が強すぎて壊れてしまった。だから、もう一度ネミトゼボーマになることは出来ない。 だが、これだけの装備が有れば十分に戦える。ネコミミストを存分に苦しめ、そして死ねる。 「さあ来い、我が愛しの君よ! 今度こそ最終決戦だ!」 666の視界に映るのは、キングゲイナーに変身した爆弾の手に乗ってこちらに向かってくるネコミミストとツキノンの姿。 書き手ロワの終焉を飾る戦いが、今始まる。 |301:[[First to Next 命の系譜]]|投下順に読む|302:[[その意志、刃に変えて]]| |301:[[First to Next 命の系譜]]|時系列順に読む|302:[[その意志、刃に変えて]]| |300:[[結束~UNITY~]]|地球破壊爆弾No.V-7|302:[[その意志、刃に変えて]]| |300:[[結束~UNITY~]]|ツキノン|302:[[その意志、刃に変えて]]| |300:[[結束~UNITY~]]|&color(red){速筆魔王LX}|| |300:[[結束~UNITY~]]|衝撃のネコミミスト|302:[[その意志、刃に変えて]]| |300:[[結束~UNITY~]]|派手好き地獄紳士666|302:[[その意志、刃に変えて]]| |301:[[First to Next 命の系譜]]|wiki管理人|302:[[その意志、刃に変えて]]| |301:[[First to Next 命の系譜]]|読み手(K.K.)|302:[[その意志、刃に変えて]]|
長い通路を、ツキノンは一人走る。この先で戦っているであろう、仲間たちに合流するために。 もう、仲間を死なせたくない。その思いが、彼女を突き動かす。 やがて、ツキノンは開けた空間に到達する。そこで彼女が見たものは、3人のロリに翻弄される魔神の姿だった。 ◇ ◇ ◇ 時は少しさかのぼる。魔神・ネミトゼボーマと化した666の前には、三人の少女がいた。 勇者姫・ゴルディオンスバルとなった衝撃のネコミミスト。 長門有希の姿を取る地球破壊爆弾No.V-7。 そしてクマのプー太氏の体を乗っ取った、速筆魔王LX。 「666、覚悟して。もうあなたが調子に乗ることはない。これからあなたを待っているのは、絶望だけ。」 ネミトゼボーマに突き刺さった槍の上に立つ、爆弾が言う。淡々とした口ぶりとは裏腹に、その瞳には憎悪の炎が燃えさかっている。 このロワの中で手に入れた、かけがえのない存在。それを666は奪った。無常に、残酷に。 ゆえに、爆弾は666を憎む。もはや、その憎悪を止められる者はこの世に存在しない。 しかしその灼熱の憎悪をぶつけられても、666は涼しい顔を崩さない。 「うそぶくのは大いに結構。だが、ロリショタでない長門が私を倒すことなど不可能だ。  君はおとなしく下がっていたまえ。」 爆弾を見下すかのように、666は言う。だが爆弾は、それを嘲笑で返した。 「何がおかしい?」 「やはりあなたは何もわかっていない。私にとって、姿形など意味のないもの。」 爆弾の体がとけていく、とけていく……。いや、正確には縮んでいく。 変化が止まった時、そこには10歳前後の姿となった長門がいた。 カオスロワに登場した赤ん坊長門を参考に生み出したオリジナル形態、ロリ長門である。 ちなみにあくまで長門のマイナーチェンジであるため、7変化の中にはカウントされない。 「なるほどね……。そんな手があったとは。」 666の顔に、わずかな動揺が走る。 「理解した? じゃあ、死んで。」 右手にレヴァンティン。左手に激戦。背にマジシャンズ・レッド。完全武装で、爆弾は666に突進する。 666は爆弾の乗っている槍を自分の体から引き抜き、投げ捨てる。 しかし爆弾はすでに、槍から飛び立ち空中にいた。 「魔技『サディスティック8』。」 激戦とレヴァンティンを用いて繰り出される無数の突きが、ネミトゼボーマの首筋をズタズタに切り裂く。 さらにそこへ、マジシャンズ・レッドの炎が追い打ちをかける。 「まあまあの攻撃だが……この程度の技にサディスティックの名を冠するとは片腹痛いね。」 「ご心配なく。この技は108式まである。」 666の挑発的な言葉に、ネミトゼボーマの方に着地した爆弾は余裕をにじませた口ぶりで応える。 数秒の沈黙。その後、先に動いたのはどちらだったか。 二人は、お互いを抹殺すべく激しく戦い始めた。 「なるほど、ラダム虫になってプー太氏に寄生した、と……。」 「ああ、上手くいくかは自分でも半信半疑だったけどね。」 一方その頃、ネコミミストは魔王からこれまでのいきさつを聞かされていた。 魔王の言葉に納得と安堵を感じつつも、ネコミミストは体を乗っ取られたプー太氏へ一抹の同情を覚える。 ネコミミストという少女は、どこまでも優しい人間なのだ。敵対する相手にさえ、情けをかけてしまうほどに。 「ところでネコミミストくん、悪いけど斬鉄剣返してもらえる?」 「ええ、かまいませんよ。」 魔王に向かって、ネコミミストが斬鉄剣を投げる。ネコミミストに合わせて巨大化していた斬鉄剣は、彼女の手を離れると同時に元の大きさに戻り、魔王の手に収まった。 「やっぱりこれがないと落ち着かなくてさー。うん、この体でもなじむよ。」 「ああ、そうだ。これも受け取ってください。」 感触を確かめるように素振りを繰り返す魔王に、ネコミミストは懐から取り出したデバイスクリスタルを取り出す。 「おっ、これも残ってたか……。ラッキーだね。それじゃあ早速……。テックセッター!」 デバイスクリスタルを高々と掲げ、魔王は叫ぶ。その瞬間彼の体をバリアジャケットが包み、その姿はテッカマンとなった。 しかし身長が身長だけに、その一番の特徴であった禍々しさはだいぶ薄れてしまっている。 「よかった、この体でも変身は可能か。けど、ちょっと迫力に欠けるなあ。  これじゃせいぜい小悪魔……テッカマンプチデモンってところか。」 漫画ロワの劉鳳につっこまれそうなネーミングを呟きつつ、魔王は体の感触を確かめるようにストレッチを行う。 「よし、それじゃあ行こうか、ネコミミストくん。」 「はい!」 ◇ ◇ ◇ そして、時間は冒頭へと戻る。 ロリ長門、ゴルディオンスバル、プチデモンの三人は、それぞれ思い思いに攻撃を仕掛けネミトゼボーマを翻弄していた。 「火炎車輪。」 炎を宿した激戦を爆弾が振り回し、ネミトゼボーマの装甲を裂く。 「はあああああああっ!!」 魔王が高速で宙を飛び回りながら、斬鉄剣で斬って斬って斬りまくる。 「ラディカル・ブロウクン・マグナム!」 ネコミミストがラディカル・グッドスピードを発動させた状態で、右手のグローブを飛ばす。 グローブはドリルに変形しながら空中を突き進み、ネミトゼボーマの肩を貫いた。 「ええい!」 さらに、ツキノンも攻撃に参加する。 彼女の持つGRトラペゾヘドロンが、深々とネミトゼボーマの膝に突き立てられた。 「ぐぅっ!」 666の口から漏れるのは、苦悶の声。不死者の肉体を持ってしても、回復が追いついていない。 横やりが入るのは覚悟していたが、まさかここまで劣勢に立たされるとは思っても見なかった。 「だいぶ苦しそうだねえ、黒猫くん。」 そんな666の眼前に、小さな影が飛んでくる。斬鉄剣を手にした魔王だ。 「ちゃんと聞いていなかったが……君は本当に魔王なのか? なぜ君の意識が、プー太くんの体を支配している?」 「ラダム虫に意識を移して、プー太氏に寄生した。以上。」 最低限の説明を終えると、魔王は斬鉄剣で突きを繰り出す。 素早く回避運動に移る666だが、巨体ゆえにかわしきれず刀は彼女が埋め込まれている部分のすぐ横に突き刺さった。 「ずいぶんと無茶をしたものだ……。そこまで死にたくなかったのかい?」 「死にたくなかった……か。ああ、そうかも知れないね。  僕はロワを楽しむのが最大の目的だった。死ぬにしても、インパクトのある死に方だったら未練なく死んでいただろう。  だが実際に僕に与えられたのは、あまりにあっけない死に方だった。  書き手としては、そんな死に方もありだと認めよう。誰も彼もがかっこよく死ねるわけじゃない。  淡々とした死、あるいは無駄死にもロワには必要だ。けど……僕自身がそうなるのはごめんだね!」 語気を強めながら、魔王は蹴りを放つ。 質量で言えば今の魔王の数十倍、いや数百倍はあるはずのネミトゼボーマの体が、その一撃で揺らぐ。 「好機。」 爆弾の情報改変によって太陽並みの温度となったマジシャンズ・レッドの炎が、ネミトゼボーマを焼き尽くす。 さらにツキノンのオヤシロビームが、ネコミミストの衝撃波が追撃をかける。 「おのれえええええええええ!!」 ボロボロになった体を再生しながら、666は絶叫する。 常人ならすでに3回は死んでいるであろうダメージ。予想以上のイレギュラーの介入。 666の精神は、確実に削り取られていた。とは言っても、その影響は微々たるもの。 普段の666なら、何の問題にもならなかったはずだ。 しかし今の彼女は、闇の書とディス・レヴという危険物質をどうにか制御している状態である。 わずかな消耗が、取り返しのつかない事態を招きかねない。今、まさに彼女は暴走の初期段階に足をつっこんでいた。 「人の恋路を……邪魔するなーっ!!」 四本の腕を、がむしゃらに振り回すネミトゼボーマ。しかし、ロリ軍団は全員その攻撃をかいくぐる。 忌々しい。忌々しい。忌々しい。邪魔だ。邪魔だ。邪魔だ。 私はネコミミストと戦いたいんだ。なのに、なんでその他大勢が割り込んでくるんだ。 お前たちは要らないんだ、不必要なんだ、どこかに消えろ。 邪魔。邪魔。邪魔。死ね。死ね。死ね。どいつもこいつも……。 「死んでしまえぇぇぇぇぇぇ!!」 制御を失った狂気に任せて、666は叫ぶ。 その右手には、レイジングハート。左手には、ミニ八卦炉。さらにその腰には、巨大な銃が装備される。 影丸から蒐集した杉田の力により呼び出した、G・インパクトキャノンだ。 「これは……!」 「一発でかいのが来そうだねえ……。」 とてつもない攻撃がくる。その予感に、ロリ軍団も気を引き締める。 「ここからいなくなれぇぇぇぇぇ!!」 右から、スターライトブレイカーex。左から、マスタースパーク。中央から、G・インパクトキャノン。 一つ一つが巨大である光の奔流が、三つ合わさって眼前の敵に放たれる。 殺してはいけないはずの、ネコミミストまで巻き込むことになるというのに。暴走を始めた666は、そんなことにも気づいていなかった。 「全員がこの攻撃を回避できる確率は、1%以下。」 「なら、跳ね返すしかないね。みんな、準備を!」 「了解なのです!」 爆弾が、レヴァンティンを構える。 ネコミミストが、左手を伸ばす。 魔王が、両肩にエネルギーを集中させる。 ツキノンが、両手をかざす。 「翔けよ、隼。シュツルムファルケン。」 「プロテクト・シェード!」 「ZEROボルテッカ!」 「オヤシロバリアー!」 ネコミミストとツキノンのバリアが砲撃を受け止め、爆弾と魔王の攻撃が砲撃を押し返す。 常軌を逸した力のぶつかり合いに、フォーグラー全体がきしむ。 「エネルギー量はほぼ互角。押し返すには、出力を上げる必要がある。」 「今でも結構無理してるのに、無茶な注文してくれるねえ!」 「私は事実を述べているだけ。」 「はいはい。それじゃあ、ありったけの魔力込めましょうかね!」 魔王が、ZEROボルテッカの出力を上げる。ネミトゼボーマの砲撃が、少しずつ押し返されていく。 (この調子なら……いける!) 勝利への自信を、少しずつ確信に変えていくネコミミスト。だが次の瞬間、事態は一変した。 「えっ!?」 プロテクト・シェードにかかる負担が、一気に大きくなる。ネミトゼボーマの砲撃が、突然こちらを押し返してきたのだ。 向こうの出力が上がっているわけではない。自分たちの出力が下がっているのだ。 ネコミミストは気づく。魔王の肩から、光が放射されていないことに。 (まさか……こんな時に魔力切れ?) ネコミミストは、そう考えた。だが、それが誤りであることがすぐに明らかにされる。 魔王の、いや、魔王だったものの言葉によって。 「残念でしたね、皆さん。」 「え……? 魔王さん、何を!」 「いえ、違います。私は、クマのプー太です。」 その一言で、ロリ軍団に電流走る……! 「そんな……乗っ取られた意識が回復した?」 「ええ、その通りです。敵に精神を乗っ取られたキャラが、ここぞという時に体を奪い返す。よくある燃え展開でしょ?」 「確かにそうですけど……。それは主人公側のキャラがやってこそで……。」 「うぬぼれないでください。まだあなた達がこの物語の主人公だと決まったわけじゃない。  黒猫さんが主人公として完結する可能性も、十分にあるんです。」 ネコミミストとプー太氏が問答をしている間にも、砲撃はじりじりとネコミミストたちに迫る。 「非常にまずい。このままだと、耐えられてあと2分。」 爆弾が冷静な口調で、悲観的な分析結果を口にする。 「それじゃあ、私はここで失礼しますね。皆さんがこの攻撃に耐えられたら、またお会いしましょう。」 テッカマンとしての力を行使し、プー太氏が宙に浮く。いったん後方に退避し、666の攻撃が炸裂したらまた戻ってくる。 プー太氏が頭に描いた行動は、そのようなものだった。ところが彼女の思惑とは裏腹に、その体は前へ前へと進んでいく。 「え? なんで? なんで?」 (甘いねえ。羊羹に蜂蜜かけて砂糖をまぶしたぐらい甘いよ、プー太氏。) 「な、ま、魔王さん? なんで?」 (なんでも何もないよ。体を奪い返されたのなら、さらに奪い返せばいい。  相手の意識を消滅させたわけでもないのに安心するのは甘いとしか言いようがないね。) 「くっ……!」 必死で体のコントロールを取り戻そうとするプー太氏。しかしその努力もむなしく、体はどんどんとネミトゼボーマに近づいていく。 「何を……する気ですか……! まさか特攻なんて考えてるんじゃ……。」 (当たらずとも遠からず、かな。プー太くん、君の記憶を読ませてもらったけど、君は一度死んだ後闇の書の守護プログラムとして蘇ったみたいだね。  しかも、君の元キャラはヴィータだ。つまり、君の体は完全にヴォルケンリッターと化している可能性が非常に高い。) 「それがどうかしたんですか?」 (ではヒント。アニロワ1stでの、ヴィータの死因は?) 「それはカズマのシェルブリッドに、自分の体を魔力として取り込ませて……はっ!」 (そう、ヴィータを始めとするヴォルケンリッターの体は、魔力の塊だ。  そして僕の必殺技、ZEROボルテッカは魔力をボルテッカとして放出する技。ここまで言えばわかるよね?) 「私の体を魔力に変換して撃ち出すつもりですか! やめなさい! そんなことしたら私に寄生しているあなたも……!」 (ああ、今度こそ死ぬだろうね。だが僕は、死そのものは恐れちゃいない。  ド派手に散って、しかも僕を虚仮にした黒猫に一矢報いることが出来るなら本望さ。) 「ですが! ここで命を捨てる必要があるんですか! もうこの物語は終末を間近にしている!  ここまで来ていながら、自殺に等しい方法で命を捨てるなんて……!」 (君が悪いんだよ。君があんな場面で悪あがきなんてするから、僕はみんなを守るためにこんな方法を取らざるをえなくなってしまった。  それに、死ぬのは必ずしもバッドエンドじゃない。ロワは生と死を描くドラマだ。  死は時として、生よりも価値があるものとして描かれる。  僕は生還にこだわりはない。ただ、その時その時を全力で駆け抜けたいだけさ。) プー太氏の言葉に耳を貸さず、魔王は両肩の砲門を開く。 (あー、でも……。彼女を悲しませることになるのは、ちょっと良心が痛むかな……。) 自分を心配げに見つめるネコミミストの視線に気づき、魔王の心にわずかなためらいが生まれる。 だが、彼はすぐさまそれを振り切る。 (まあ、ネコミミストくんなら大丈夫だろう。あんまり自信ないけど……。  悪いけど、僕の屍も背負っていってもらうよ!) じわじわと迫る破壊の光線に向けて、魔王の肩からそれに匹敵する光が放たれる。 「これが僕の、最後の輝きだ! ZEROボルテッカ・Last-X!」 テッカマンプチデモンから、最後のボルテッカが放たれる。これまでのボルテッカよりはるかに激しく、そして神々しい光が舞う。 それを放つ魔王の体は、手足の先から空気に溶けるように消えていく。 「聞け、黒猫! 僕は速筆魔王LX! 僕の生死を決められるのは、僕だけだ!!」 全身全霊の叫びと共に、光がさらに激しさを増す。それはネミトゼボーマの砲撃を完全に飲み込み、消し去った。 やがて、光が消える。光の主である魔王の姿は、もうどこにもなかった。 「ま……おう……?」 うわごとのように、ネコミミストが呟く。その足下に、上空から落ちてきた斬鉄剣が突き刺さった。 「どうせフェイクですよね……? あなたのことだから、またしぶとく生き残っておいしいところで出てくるんですよね……?」 信じたくない。その思いが、勝手に口をついて出る。だが爆弾は、そんなネコミミストの思いをはっきりと否定する。 「魔王のロストを確認……。彼の生存確率は0%。」 「地図氏……。間違いはないんですか……?」 「私のシステムに狂いはない。私としても無念だが、魔王の死は動かしようのない事実。」 「あ……ああああああ!!」 涙は流さない。きっと魔王はそれを喜ばないだろうから。 その代わりに、ネコミミストは叫ぶ。怒りと悲しみと無念をまとめて吐き出すために。 「うあああああああ!!」 そして、暴走する666も叫ぶ。一人しとめたとはいえ、自分の攻撃が相殺されたという苛立ちを込めて。 「死ね! 死ね! 死んでくれ!」 呪いの言葉をわめき散らしながら、666はエターナルソードを呼び出してその手に構える。 しかしその剣は、飛来した巨大な槍にあっさりと弾き落とされた。 「もはやあなたに同情の余地など芥子粒ほどもない。今すぐ殺す、無惨に殺す。」 爆弾の情報改変によって、床から無数の槍が次々と出現する。 爆弾は、それを一斉に666に投げつけようとして……そこで意識を手放した。 「え……?」 自分の脳天を直撃したあと床に落ちる拡声器を見つめながら、爆弾は崩れ落ちる。 いかに彼女と言えど、完全に予測の範囲外である味方からの攻撃には対処のしようがなかった。 「な……! 何をしているんですか、ネコミミストさん!」 仲間への攻撃という暴挙に出たネコミミストに、ツキノンは抗議の声をあげる。 だがネコミミストは、それを静かな表情で受け止めた。 「すいません……馬鹿なことだってのはわかってます……。けど、彼女との決着は私の手で付けたいんです。」 「それは……ただのわがままなのです。」 「ええ、百も承知です。ですがそれでも私は、わがままを貫き通します。  666は私の仲間だったんです。だから……落とし前は私の手で付けさせます!」 ネコミミストは静かに、ネミトゼボーマに向かって歩き出す。 「そうだ、来い、ネコミミスト! 私は君と戦いたいんだ! さあ!」 666は恍惚に染まった表情で、ネコミミストに呼びかける。 「666……。はっきり言って、私はあなたを憎みきれない。あなたの言葉がこれまでの私を支えるものの一つだったのは、否定できない事実だから。  けど、ロリスキーさんや魔王さんを死に追いやったことは許せない。だからせめて、私の手であなたに引導を渡す。」 (そうだ、それでいい! さあ来い、ネコミミスト! 君の手で私を滅ぼしてくれ!) 666が期待の眼差しを送る中で、ネコミミストは両手を合わせる。 「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……」 呪文と共に、右手の攻撃エネルギーと左手の防御エネルギーを融合させる。 吹き荒れる電磁嵐が、ネミトゼボーマの動きを封じる。 「ヘル・アンド・ヘブン!」 勇者王の必殺技名を叫び、ネコミミストは一気に加速する。 目指すのは、ネミトゼボーマの頭部。666が収まる、コアの部分。 「はああああああ!!」 雄叫びと共に、ネコミミストの拳がコアに突き立てられる。666は、それを無抵抗に受け入れる。 (さあ、私を倒せ、ネコミミスト! そして喰え! 私の愛は、それで完結する!!) 目前に迫った野望結実の瞬間に、666は心を躍らせる。だがここで、ネコミミストにとっても666にとっても予想外のことが起きた。 ゴルディオンスバルと化したネコミミストのパワーは、本人の予想すら上回るものだった。 全力でヘル・アンド・ヘブンを決行した結果、あまりの威力に666の体がネミトゼボーマの頭部を貫通して吹き飛んでしまったのである。 「え!?」 「な!?」 ネコミミストと666は、共に驚愕に顔を引きつらせる。 そして吹き飛んだ666は偶然か運命か、後方にあった旅の扉に吸い込まれていった。 (しまった! ここで終わらせられたのに、力加減を間違えるなんて単純なミスを……。) ここぞという場面でのミスに、顔をしかめるネコミミスト。その眼前では、コアを失ったネミトゼボーマが崩壊していく。 うずたかく積まれた瓦礫の山と化したそれのあちこちからは、組み込まれていた支給品たちが顔を出している。 しかし、ネコミミストはそんなものを見ていない。その視線は、微塵のずれもなく旅の扉へと向けられている。 (決着は必ず付ける! 待っていろ、666!) 巨大化を解除し、ネコミミストは走る。そして、旅の扉へその身を飛び込ませた。 「ああ、待ってください、ネコミミストさん!」 ツキノンも気絶した爆弾を背負い、慌ててネコミミストを追う。 こうして、数々の死闘が繰り広げられたフォーグラーからは、誰もいなくなった。 ◇ ◇ ◇ 「ずいぶんと荒れているようだね……。」 独り言を漏らしながら、666は敗者たちの屍が転がるラピュタの中を歩く。 いかなる戦いが繰り広げられたのか興味が引かれるところだが、まずは自分の現状を確認しておこう。 そう考え、666は目を閉じて集中に入る。 まずはダメージ。これはネミトゼボーマと分離したことにより、ほぼゼロに戻っている。 ヘル・アンド・ヘブンで受けたダメージは残っているが、じきに不死者の再生能力で回復するだろう。 不死者の能力に関しては問題なし。闇の書との契約も切れていない。まあ、手元にないので使うことは出来ないが……。 闇の書のみならず、支給品は全て手元にない。これでは、攻撃力不足は明らかだ。 (フォーグラーに戻って取ってくるか? いや、ネミトゼボーマになれない以上、3対1で戦う状況にするのは下策……。  どうにかもう一度、ネコミミストと1対1になれる状況を作らなくては……。  それを達成しつつ、出来れば戦力を整え直したい。何かいい方法はないものか。) 勘に頼ってラピュタ内を歩きながら、666は封印していたメタ視点を再び使用する。 これまではネミトゼボーマの制御に集中するために使用を控えていたが、もうその必要はない。 666の脳に流れ込んでくるメタ知識が、数分前にこのラピュタで起きた全てを彼女に伝える。 (なるほど、繋ぎ師がダイダルゲートを破壊して逝ったか……。  wiki管理人は心身共に満身創痍。読み手も戦える状態ではない。  これはいよいよ、私がラスボスになる可能性が高くなってきたか……。) 自分がどう行動すれば最善の結果となるか。過去の記憶も総動員しながら、彼女は考える。その結果、あるアイテムが彼女の脳裏に浮かんだ。 (あれは考察の中に登場しただけで、存在は確認されていなかったんだったか……。  仮にあったとしても、使い物になるかどうか……。  まあ、なければないで計画はいくらでも変更できる。有ったらラッキーぐらいの心構えで捜してみるか。) 今後の計画を組み立てながら、666はある場所を目指して歩く。 数分で、彼女は目的地に到着した。wiki管理人の部屋である。 遠慮など微塵もせず、666は部屋の中に踏み込む。そして、捜し物をすぐに発見した。 「よし。では早速作戦開始といくか。」 わずかに口元を歪めながら、666は呟く。その手には、中央にウジャト眼が刻まれた金色のリングが握られていた。 ◇ 「くっ……! どこだ、666!」 黄金の鎧を身に纏った勇者姫、ネコミミストはラピュタ内を走り回る。かつての仲間であり、今は宿敵と化した少女を捜して。 「旅の扉に入った時間は、そう変わらないのに……。こんな短時間でどこに行ったんだ!」 ネコミミストは知らないことだったが、FFDQロワの旅の扉は本家ドラクエのものとは違い行き先が固定されていない。 つまり同じ旅の扉に入っても、同じ場所に出るとは限らないのだ。 管理人が用意した旅の扉も、FFDQロワ出典であるがゆえにその行き先はランダムだった。 ほとんど時間をおかずに旅の扉に飛び込んだ666とネコミミストでも、ラピュタ内のまったく異なる場所に飛ばされてしまったのである。 そんな事情は知らぬまま、通路を走り続けるネコミミスト。そんな彼女の耳に、誰かの声が届く。 「ネコミミストさん、いますか!」 (この声は、ツキノンさん!) マックススピードのまま進行方向を変え、ネコミミストは声の聞こえてきた方向へ向かう。 程なくして、彼女はツキノンと合流することが出来た。その横に立つ、意識を取り戻した爆弾とも。 「あの、地図氏、えーと……。」 無表情で、しかし明らかに敵意のこもった視線で見つめられ、さしものネコミミストもたじろぐ。 「まあいい。あなたにも666に対して思うところがあるのは理解している。今回だけは許す。」 「ど、どうも……。」 「ただし、次はない。」 「はあ……。」 あれほどまでに燃えさかっていた闘志が、急激に冷えていくのを感じるネコミミスト。 それほどまでに、爆弾の放つ雰囲気は恐ろしかった。 とにかく強引にでも話題を変えようと、ネコミミストは新たな話題を振る。 「ところでお二人は、666の居場所の手がかりは何か……。」 「心配ない。どこに逃げようとも、私の参加者追跡システムからは逃れられない。」 「地図氏によると、ここをまっすぐ行けばいいらしいのです……って、お二人とも、あれ!」 ツキノンが指さした方向を、反射的に見る二人。窓の向こうには、ラピュタの縁に立つ666の姿があった。 彼女は、なんのためらいも見せずそこから飛び降りる。ネコミミストたちも、当然のようにそれを目で追った。 難なく着地を果たした666は、ゆっくりと歩き出す。外が白一色の世界に変化していることに驚かされたネコミミストたちだが、その興味はすぐにその白い世界に立つ二人の人物に移った。 一人はウルトラマンのような姿の少女。もう一人は整った身だしなみの少女。 そして彼女たちの足下には、腹を貫かれた無惨な姿で三人がよく知る青年が倒れている。 「繋ぎ師さん……!」 心底悔しそうに、ツキノンが呟く。ネコミミストも、唇を噛みしめて自分の感情を抑え込んでいた。 「落ち着いて、二人とも。666が動く。」 ただ一人、爆弾だけが冷静だった。少なくとも、表面上は。彼女の言葉通り、666が動く。 そして、状勢は一気に変化した。 ▼ K.Kと呼ばれた読み手は、嘆いていた。悲しんでいた。苦しんでいた。 自分に託された、最後の切り札。それを自分は、失ってしまった。 あれは本当に大切なものだったのに。書き手ロワという物語に終止符を打てる、特別なものだったのに。 それを、自分は独断専行の結果失ってしまった。 もう、自分に存在価値はないのか? ここにいる資格はないのか? いや、そんなはずはない! 自分には、自分にはまだ価値が……。 「ないよ、君に価値なんて。」 「え?」 間抜けな声が、K.Kの口から漏れる。それが、K.Kという人格が発する最後の声になった。 次の瞬間、彼女の首には黄金に輝く輪……千年リングがかけられていた。リングに付属する数本の針が、服の上からK.Kの胸に突き刺さる。 「…………ッ!!」 苦悶の声をあげようとするK.K。しかし、あまりの痛みに声が出ない。 「ああ、価値がないというのは精神のことだ。体はありがたく使わせてもらうよ。」 もだえ苦しむK.Kの手から、666がシークレットトレイルを奪い取る。 666はそれを核鉄に戻すと、自分の中に残ったありったけの「真・驚きの黒さ」を込めて黒い核鉄に変化させた。 そして、管理人に接近。事態が飲み込めず混乱しているがゆえに動けない彼女の胸を、容赦なく貫く。 そうしておいてから、潰れた心臓の変わりに黒い核鉄を埋め込む。これで驚きの黒さに汚染された、ヴィクター管理人のできあがりだ。 「面倒くさいことしてやがるな。直接驚きの黒さをぶつけてやりゃあいいじゃねえか。  そいつはあらゆる技を使えるんだから、最初からヴィクター化だって使用可能だろ?」 仕事を終えた666に、K.Kが話しかける。いや、その人物はもはやK.Kではなかった。 千年リングに宿る邪悪な盗賊王の魂……いわゆる「闇バクラ」である。 「おお、上手く体を乗っ取れたみたいだね。おめでとう、バクラくん。」 「はっ、元々こいつやてめえは俺の……正確には、俺の力を利用したそこの女のマインドパラサイトで作られた存在だ。  だからどいつにも、ほんのわずかだが俺の因子が混ざっている。それがあれば、体を乗っ取るのはたやすいんだよ。」 「なるほどね。」 「そんな話はどうでもいいんだよ。俺の質問に答えろ。」 「ああ、なんでヴィクター化なんて回りくどいことをしたのかって? 簡単な話だよ。  人間をまんべんなく染めるより、その人間の核となる部分を染めてしまった方がはるかに効率がいい。  その点を考えると、黒い核鉄は媒介として最適だったわけさ。」 「なるほどねえ。」 自分で聞いておきながら、バクラはどうでも良さそうに言葉を返す。 「ところで、君は私に協力してくれるかい、バクラくん。」 「なんで俺がそんなことを……と言いたいところだが、部屋の隅に放り投げられてたのを拾ってもらった恩があるからな……。  いいぜ、1回だけ協力してやる。そのあとは元の世界にとんずらさせてもらうけどな。」 「ああ、それでかまわない。そして……君も一緒に戦ってくれるよね、wiki管理人くん。」 「ああ、もちろんだよ、666。」 666の言葉を、管理人は即座に肯定する。その瞳は、どぶ川よりもさらに深く濁っていた。 「私の計画を邪魔しようとした奴らはいらない。皆殺しにしてあげよう……。  そして邪魔者がいなくなってからゆっくり、私は本懐を遂げる!」 「実に結構。だが、ネコミミストには手を出さないでくれたまえ。彼女は私の獲物だからね。」 「わかってるさ。」 666と管理人は、共に怪しく笑う。 666、読み手バクラ、黒管理人。今ここに、書き手ロワラスボスチームが誕生した。 「さて、管理人くん。早速で悪いんだが、君に一つ頼みがある。」 「何かな?」 「今、ネコミミストたちがこちらに向かっているはずだ。彼女たちが到着する前に、君の能力でフォーグラーに置いてきてしまった私の支給品を呼び寄せてほしいのだが。」 「そんなことか。おやすいご用だよ。」 管理人はあっさり666の頼みを引き受けると、空間の境界を操作して自分の目の前をフォーグラーとつなげる。 ニコロワ最終回に満を持して降臨した、八雲紫の能力である。 その能力によって生み出されたスキマから、次々とアイテムがこぼれ落ちる。 レイジングハート、ゲイボルク、ミニ八卦炉、そして闇の書……。 「感謝するよ。これで、また全力で戦える。」 コアドリルは、ネミトゼボーマの起動時に負荷が強すぎて壊れてしまった。だから、もう一度ネミトゼボーマになることは出来ない。 だが、これだけの装備が有れば十分に戦える。ネコミミストを存分に苦しめ、そして死ねる。 「さあ来い、我が愛しの君よ! 今度こそ最終決戦だ!」 666の視界に映るのは、キングゲイナーに変身した爆弾の手に乗ってこちらに向かってくるネコミミストとツキノンの姿。 書き手ロワの終焉を飾る戦いが、今始まる。 |301:[[First to Next 命の系譜]]|投下順に読む|302:[[その意志、刃に変えて]]| |301:[[First to Next 命の系譜]]|時系列順に読む|302:[[その意志、刃に変えて]]| |300:[[結束~UNITY~]]|地球破壊爆弾No.V-7|302:[[その意志、刃に変えて]]| |300:[[結束~UNITY~]]|ツキノン|302:[[その意志、刃に変えて]]| |300:[[結束~UNITY~]]|&color(red){速筆魔王LX}|| |300:[[結束~UNITY~]]|衝撃のネコミミスト|302:[[その意志、刃に変えて]]| |300:[[結束~UNITY~]]|派手好き地獄紳士666|302:[[その意志、刃に変えて]]| |301:[[First to Next 命の系譜]]|wiki管理人|302:[[その意志、刃に変えて]]| |301:[[First to Next 命の系譜]]|読み手(K.K.)|302:[[その意志、刃に変えて]]|

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