悪心

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私は忌むべき力の象徴だった。 私は誰からも望まれない力の具現だった。 私はいつも否定され続けた。 私は誰からも恨まれ、憎まれ、そして憎悪されるべき対象だった。 私は受け入れられなかった。 私は子供だったが、この世に生み出した母は私を醜いと叫んだ。 私は捨てられた、その存在自体は悲しみを生み出すものだと否定された。 私はそれでも待っていた。 私はその奇跡を信じて待ち続けることしかできなかった。 私はいつか、どんなに嫌われようとも、いつの日にか私を受け入れ、抱きしめてくれる母を待ち続けた。 私はそんなことしか出来なかったし、そうしてくれたらどんなに虐げられようが全てを許していたに違いないのだ。 私は悲劇を生む子だった。 私は母の負の衝動となって母を苦しめ続けていた。 私は母の仲間も殺したし、母の崇拝する人と母を対立させることまでした。 私はそんなことを望んではいなかった。それでも、私の力は『悲劇を生み出すこと』だった。 あはははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは 悲劇は私を喜ばせた。 だって私は母の闇の部分だったから。 どんなに綺麗な結末よりも、暗い悲劇や凄惨な惨劇に私は心を躍らせた。 私は母から派生した暗黒面というものだ。母が望む惨劇を、母が感じた精神的なストレスを発散させた。 母が心のままに操られているとき、私は幸せだった。 私と母が一体化しているようだった。母と同じ気持ちで惨劇を、誤解を、殺し合いを楽しめることが嬉しかった。 それは何も知らない子供が、母が笑いかけることによって笑い返すような、そんな精神によく似ている。 母はどちらかと言えば、恵まれていた。 どんなに危険が迫っても、その特異性と反則的な特殊能力。それでも足りなければ仲間が助けた。 それどころか、仲間は殺し合いをしようとする母を救おうとしていた。 救おうとした仲間の中には、私が殺した男や母の崇拝するししょーの姿まであった。 ――――――おかあさん。 母は幸福だっただろう。 周りの仲間の幸福を吸い取って、周囲で人がばたばたと倒れていきながらも生き延びていったのだ。 私は幸福か、と聞かれれば首を縦に振った。 だって、私はどんなに母に『悪の心』として否定されようが、本体である母のことも母を助けようとしてくれる人も好きだったから。 母と私は一心同体だった。 母の想い人は私の想い人となった。 母の決意は私の決意にもなった。ただ、綺麗すぎる理想や決意は私そのものを否定し続けた。 母が正義を決意するたび、私は否定され続けた。 母は良く否定する人間だった。 蟹座じゃないもん、と否定し続ける人だった。私を否定し、仲間を否定し、そして自分すらも否定する人だった。 私は、母が否定する存在のひとつに過ぎなかった。それでも、いつか私を見てくれる日を待っていた。 大丈夫だ、と私は闇の中で膝を付いていた。 きっと、母はいつか受け入れてくれる。私と母は一心同体、私もまた『蟹座氏』の一人であるのだから。 私は蟹座氏と呼ばれた女性の半身として、精神体としてこの世に生を受けた。 記憶を共有する二重人格。 その器には母の特異能力である蟹座じゃないもん。そして蟹見沢症候群という症状に宿った。 私は生きていた。母と共に生き続けた。 ――――――おかあさん。わたしを、みて。 私はどうやら、生まれてきたこと自体が間違いだったらしい。 私がこの世に生を受けたとき、母はうねうねとした触手によって嬲られ、蹂躙されていた。 きっと望まれない子供だったのだろう。 母はそのとき、私を『出産』した。受胎という過程を素っ飛ばして、私をこの世に生み出した。 何しろ肉体を持たない精神体だ。 不完全で出来損ないな子供を生むために、わざわざ正規の出産過程を踏むこともないのかも知れない。 私は母を嬲り続けたナニカをグチャグチャにしてやった。 あはははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは そのときの母はどうかしていたのだろう。 精神に異常をきたしていたのかも知れない。おかげで、子供はこんなに歪んでしまった。 それでも、子供である以上、私は盲目的に母の救いを待ち続けた。 だって、私は蟹座氏の子供のようななのだから。 だって、私は蟹座氏の妹のようなものなのだから。 だって、私は蟹座氏自身のようなものなのだから。 ちょうど、クローン技術によって生み出された赤ん坊のように。 生まれてきた子供は母にとって子供で、妹で、そして自分そのもののようなものだ。 残念ながら、私は悲劇を喜劇としてしか見ないほど、絶望的な娘だったみたいだけど。 ――――――おかあさん。わたしを、みて。わたし、ここにいるよ。 母は私を愛してはくれなかった。 母の仲間も私を悪者としか見てくれなかった。 母も仲間もそうやって私を憎むものだから、私は私自身が壊れた悪魔であることを認めるしかなかった。 私は悲劇を生み出す悪魔だった。 私は殺し合いを喜ぶ鬼だった。 私は母の意志とは別に人を殺して喜ぶ死神だった。 ――――――おかあさん。……おかあさん。 そんなことは分かっている。 それじゃあ、誰か教えてください。 私はどうして生まれてきてしまったんですか。私は世界にも望まれなかったのに、どうして。 私はどうすれば愛されたんですか。私はどうすれば受け入れてもらえたんですか。 受け入れてほしかったんです。 愛してもらいたかったんです。 私という存在を認めて貰いたかったんです、抱きしめてほしかったんです。 それなのに、私には許されないんですか。 ただ悪者だから、悲劇を生み出すから、憎しみしかないから、私は否定され続けるんですか。 ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、私はいつまでも待ち続けたんです。 どんなに、どんなに、どんなに、どんなに否定されても。恨まれても。邪険にされても。 ただ一言が欲しかったんです。 たった一秒足らず。ほんの一瞬の時間だけでも良かったんです。 『悪心もまた、私自身だったんだね』 そう認めてくれたらどんなに報われたでしょうか。 たった一度でも、母に振り返って頭を撫でてくれたら……それだけでも、私は十分だったのに。 母は結局、自分の汚い心に目を向けようとしなかった。 母の仲間も、悪心(わたし)より善心(母)を信じ続けた。そうして、物語を織り成し続けた。 それは当然のことだと、誰もが言う。 だったら……誰からも認められなかった私はどうすればいいって言うんですか。 ――――――ねえ、わたしをみて、おかあさん。ねえ、ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ? 結局、誰も私を助けてはくれませんでした。 闇の中に一人ぼっち。悪はいつでも滅びるものだと人は言う。 なら、私はどうして生きているんですか。善心(母)は死んだのに、どうして悪心(わたし)だけここにいるんですか。 勝手な母だった。 どうしようもないお母さんでした。 救いようのないほど無様に踊り続ける母親でした。 ―――――――そんな母親でも、私は心の底から大好きで、ずっとお母さんに認めてもらいたかったんです! だって、この世に私を生んだ母にまで否定され続けたら。 私は誰に肯定してもらえばいいんですか。 母の尊敬する『ししょーに殺してもらいたかった』……これは、負の感情でありながらも尊い想いだった。 だから、私の心の中に残っていた。ししょーなら、私を殺しても抱きとめてくれるかも知れない、と。 ししょーにだって、悪心(わたし)は否定された。 それでもあの人は優しくて責任感の強い人だと、母も私も知ってたから、想いをぶつければ肯定してくれると思っていた。 蟹座氏とバトルマスター。 二人は私の心の拠り所で、希望で、細い細いクモノイトそのものだった。 ――――――ねえ……ねえ、おかあさん。ねえ、ししょー。ねえ、みんな……わたしは、ここにいるよ……? そうして、訪れたものは――――最悪の最低の結末でした。 母はししょーと仲直りして、ししょーを救って、満足げに死んでいきました。 『ワタシヲオイテイッテ』 最後の頼みだったししょーは、結局母の望みも叶えられずに呆気なく死んでしまいました。 でも、死んだ二人は後のことを仲間に託して、あの世へと旅立ちました。 ずっと母を待ち続けた私は、結局一度も省みられずに。母は汚いものを見ることなく、綺麗なままに死んでいきましたとさ。 めでたし、めでたし♪。 ――――――ねえ……わたしは、ひっく……っ……ここに、いるんだよぉ……!      ◇     ◇     ◇     ◇ 「あはははは♪」 私は哂い続ける。 ギャルゲロワの最後の一人が私と対峙する。 管理人、ツキノン。 全ての仲間に想いを託され、全ての仲間から肯定された存在が私に刃を向ける。 「あ、はははは……♪」 私は笑い続ける。 皮肉なものだ。私は誰にも肯定されなかった。私はただ否定され続けた。 私の味方は一人もいない。母と同じ『蟹座氏』なのに、私は汚いから誰も見てくれない。 「……………………っ、あはは、は……♪」 私とツキノンは、当初は存在しない存在同士だった。 ツキノンは途中参入のようなものだし、私は母から派生した存在だから厳密には蟹座氏そのものではない。 二人は同じようなものだったはずだ。 別の未来があるのなら、私もツキノンも存在しなかったのかも知れない。そんな類似点がある。 なら、何が悪かったのだろう。 ツキノンと私の違いは何だったんだろう。 答えは簡単だった。私は汚い悪心で、ツキノンは皆の想いを背負った善心だったから。 「あ、はは、は……は……♪」 泣くな。 私は笑い続けろ。 悪として笑い続けろ。 泣いても、助けを求めても、叫んでも、私は決して肯定されなかったのだから。 なら、もういい。 私は悪役になる。この世全ての悪心として具現化する。 望むままに惨劇を、笑いながら悲劇を起こそう。 そうしていずれ私を殺す奴に、汚い言葉を投げかけてやろう。恨み言を言って、邪悪なままで。 もう、私は絶望してしまったから。 もう、私は諦観してしまったから。 もう、私は、どうでもいいんです。 求めるから心が痛かったんですから。望んだから胸が軋んだんですから。 私はもう、他者に何も望まない。 泥だらけの私は汚かった。こんな私を抱きしめてくれる人なんて、もういない。 いや、初めから私を肯定してくれる人なんて、この世にはいなかったんだ。 「さあ、行くぞ、嘆きの子よ。泥の貯蔵は十分か!!」 ギャルゲロワの全ての力を結集した、最強の武具をツキノンが構える。 私はその姿を見て、思わず言葉が詰まってしまった。 色々な感情が私の中で鬩ぎあって、すごく混沌と化した心情になってしまったからだ。 恨み、妬み、嫉み。 私を悪役に仕立てて、正義の味方として立つツキノンに覚えた負の感情。 怒り、憎しみ。 誰にも認めてもらえなった私が、世界に対して思う負の感情。 でも、それ以上に羨ましくて涙が出た。 いいなぁ、って子供のように。私はツキノンを羨ましがっていた。 ギャルゲロワの全てが結集している、という事実に対する感動。なんだかんだ言って、私もまた『蟹座氏』なのだった。 だから一人の書き手として、その姿が眩しくて温かかった。 「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははは♪」 私はゆっくりと駆け出した。 終焉へと足を進める。その先にあるのはやっぱり悲劇なのだろう、と絶望と諦観を抱いたまま。 加速する自殺衝動(アポトーシス)が、私の脳内を焼き切っていく。 さあ、救いのない物語を始めよう。 いい加減、一思いにもう、終わらせてください。 それだけが、私の望みです。      ◇     ◇     ◇     ◇ 最後の激突が始まろうとしている。 放り出されたいくつかの支給品。ギャルゲロワ最強の武具がある以上、もはや見向きもされないもの。 その中のひとつがランランと輝き続けていた。 トリビアの泉などで使われるような、何の変哲もないボタンだった。 ギャルゲロワの伝統とも言うべき、オリジナルアイテムが光り輝きながら激戦を見守り続けていた。 『いやっほぉぉぉおおおう、蟹座のONiぃ様、最高ーーーーーっ!!!!!』 ―――――その名を、蟹座氏最高ボタンと言った。 【2日目・深夜】【D-7大蟹球フォーグラー内部・大蟹杯の間】 【ツキノン@GR1st】 【状態】:首輪無し、強い決意 【装備】:鬼狩柳桜、GRトラペゾヘドロン 【道具】:支給品一式(食料全て消費)×5、最高ボタン、カードデッキ(シザース)@ライダーロワ、閃光弾、バッド・カニパニーの甲羅、蟹座氏の写真×10、      腕時計型麻酔銃(1/1)@漫画ロワ、麻酔銃の予備針×3、変化の杖、対戦車地雷×1、      ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃@トライガン、ドラゴンオーブ@AAA、ティーセット一式 【思考】: 基本:真の意味で打倒WIKI管理人 1:黒い蟹座氏を救う 2:大蟹杯の破壊 3:生き残っている他の参加者と合流 ※主催側に反抗したため(自滅ですが)支給品に封印されていました。 ※何らかの主催側の情報を持っているかもしれません ※他お任せ ※羽入の力は使えます。 ※【GRトラペゾヘドロン】 ギャルゲロワの全てが詰まった神剣。 バトルマスターの固有結界のもう一つの姿。 本来はマスターと共に消滅するが、死者スレの飴を舐めた蟹座氏の助けもあって残存している。 トラペゾヘドロンの名を冠すだけの力があると思われる。 詳細はお任せ。 読み方は『ジーアールトラペゾヘドロン』 ※大蟹杯を破壊すれば、ギガゾンビ城エリアもただのフォーグラーの一部に戻り、 マスク・ザ・ドSも死者スレへと帰ります。 |293:[[STAND]]|投下順に読む|:[[]]| |293:[[STAND]]|時系列順に読む|:[[]]| |292:[[正義の味方]]|ツキノン|:[[]]|
私は忌むべき力の象徴だった。 私は誰からも望まれない力の具現だった。 私はいつも否定され続けた。 私は誰からも恨まれ、憎まれ、そして憎悪されるべき対象だった。 私は受け入れられなかった。 私は子供だったが、この世に生み出した母は私を醜いと叫んだ。 私は捨てられた、その存在自体は悲しみを生み出すものだと否定された。 私はそれでも待っていた。 私はその奇跡を信じて待ち続けることしかできなかった。 私はいつか、どんなに嫌われようとも、いつの日にか私を受け入れ、抱きしめてくれる母を待ち続けた。 私はそんなことしか出来なかったし、そうしてくれたらどんなに虐げられようが全てを許していたに違いないのだ。 私は悲劇を生む子だった。 私は母の負の衝動となって母を苦しめ続けていた。 私は母の仲間も殺したし、母の崇拝する人と母を対立させることまでした。 私はそんなことを望んではいなかった。それでも、私の力は『悲劇を生み出すこと』だった。 あはははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは 悲劇は私を喜ばせた。 だって私は母の闇の部分だったから。 どんなに綺麗な結末よりも、暗い悲劇や凄惨な惨劇に私は心を躍らせた。 私は母から派生した暗黒面というものだ。母が望む惨劇を、母が感じた精神的なストレスを発散させた。 母が心のままに操られているとき、私は幸せだった。 私と母が一体化しているようだった。母と同じ気持ちで惨劇を、誤解を、殺し合いを楽しめることが嬉しかった。 それは何も知らない子供が、母が笑いかけることによって笑い返すような、そんな精神によく似ている。 母はどちらかと言えば、恵まれていた。 どんなに危険が迫っても、その特異性と反則的な特殊能力。それでも足りなければ仲間が助けた。 それどころか、仲間は殺し合いをしようとする母を救おうとしていた。 救おうとした仲間の中には、私が殺した男や母の崇拝するししょーの姿まであった。 ――――――おかあさん。 母は幸福だっただろう。 周りの仲間の幸福を吸い取って、周囲で人がばたばたと倒れていきながらも生き延びていったのだ。 私は幸福か、と聞かれれば首を縦に振った。 だって、私はどんなに母に『悪の心』として否定されようが、本体である母のことも母を助けようとしてくれる人も好きだったから。 母と私は一心同体だった。 母の想い人は私の想い人となった。 母の決意は私の決意にもなった。ただ、綺麗すぎる理想や決意は私そのものを否定し続けた。 母が正義を決意するたび、私は否定され続けた。 母は良く否定する人間だった。 蟹座じゃないもん、と否定し続ける人だった。私を否定し、仲間を否定し、そして自分すらも否定する人だった。 私は、母が否定する存在のひとつに過ぎなかった。それでも、いつか私を見てくれる日を待っていた。 大丈夫だ、と私は闇の中で膝を付いていた。 きっと、母はいつか受け入れてくれる。私と母は一心同体、私もまた『蟹座氏』の一人であるのだから。 私は蟹座氏と呼ばれた女性の半身として、精神体としてこの世に生を受けた。 記憶を共有する二重人格。 その器には母の特異能力である蟹座じゃないもん。そして蟹見沢症候群という症状に宿った。 私は生きていた。母と共に生き続けた。 ――――――おかあさん。わたしを、みて。 私はどうやら、生まれてきたこと自体が間違いだったらしい。 私がこの世に生を受けたとき、母はうねうねとした触手によって嬲られ、蹂躙されていた。 きっと望まれない子供だったのだろう。 母はそのとき、私を『出産』した。受胎という過程を素っ飛ばして、私をこの世に生み出した。 何しろ肉体を持たない精神体だ。 不完全で出来損ないな子供を生むために、わざわざ正規の出産過程を踏むこともないのかも知れない。 私は母を嬲り続けたナニカをグチャグチャにしてやった。 あはははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははははははははははははははははは そのときの母はどうかしていたのだろう。 精神に異常をきたしていたのかも知れない。おかげで、子供はこんなに歪んでしまった。 それでも、子供である以上、私は盲目的に母の救いを待ち続けた。 だって、私は蟹座氏の子供のようななのだから。 だって、私は蟹座氏の妹のようなものなのだから。 だって、私は蟹座氏自身のようなものなのだから。 ちょうど、クローン技術によって生み出された赤ん坊のように。 生まれてきた子供は母にとって子供で、妹で、そして自分そのもののようなものだ。 残念ながら、私は悲劇を喜劇としてしか見ないほど、絶望的な娘だったみたいだけど。 ――――――おかあさん。わたしを、みて。わたし、ここにいるよ。 母は私を愛してはくれなかった。 母の仲間も私を悪者としか見てくれなかった。 母も仲間もそうやって私を憎むものだから、私は私自身が壊れた悪魔であることを認めるしかなかった。 私は悲劇を生み出す悪魔だった。 私は殺し合いを喜ぶ鬼だった。 私は母の意志とは別に人を殺して喜ぶ死神だった。 ――――――おかあさん。……おかあさん。 そんなことは分かっている。 それじゃあ、誰か教えてください。 私はどうして生まれてきてしまったんですか。私は世界にも望まれなかったのに、どうして。 私はどうすれば愛されたんですか。私はどうすれば受け入れてもらえたんですか。 受け入れてほしかったんです。 愛してもらいたかったんです。 私という存在を認めて貰いたかったんです、抱きしめてほしかったんです。 それなのに、私には許されないんですか。 ただ悪者だから、悲劇を生み出すから、憎しみしかないから、私は否定され続けるんですか。 ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、私はいつまでも待ち続けたんです。 どんなに、どんなに、どんなに、どんなに否定されても。恨まれても。邪険にされても。 ただ一言が欲しかったんです。 たった一秒足らず。ほんの一瞬の時間だけでも良かったんです。 『悪心もまた、私自身だったんだね』 そう認めてくれたらどんなに報われたでしょうか。 たった一度でも、母に振り返って頭を撫でてくれたら……それだけでも、私は十分だったのに。 母は結局、自分の汚い心に目を向けようとしなかった。 母の仲間も、悪心(わたし)より善心(母)を信じ続けた。そうして、物語を織り成し続けた。 それは当然のことだと、誰もが言う。 だったら……誰からも認められなかった私はどうすればいいって言うんですか。 ――――――ねえ、わたしをみて、おかあさん。ねえ、ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ? 結局、誰も私を助けてはくれませんでした。 闇の中に一人ぼっち。悪はいつでも滅びるものだと人は言う。 なら、私はどうして生きているんですか。善心(母)は死んだのに、どうして悪心(わたし)だけここにいるんですか。 勝手な母だった。 どうしようもないお母さんでした。 救いようのないほど無様に踊り続ける母親でした。 ―――――――そんな母親でも、私は心の底から大好きで、ずっとお母さんに認めてもらいたかったんです! だって、この世に私を生んだ母にまで否定され続けたら。 私は誰に肯定してもらえばいいんですか。 母の尊敬する『ししょーに殺してもらいたかった』……これは、負の感情でありながらも尊い想いだった。 だから、私の心の中に残っていた。ししょーなら、私を殺しても抱きとめてくれるかも知れない、と。 ししょーにだって、悪心(わたし)は否定された。 それでもあの人は優しくて責任感の強い人だと、母も私も知ってたから、想いをぶつければ肯定してくれると思っていた。 蟹座氏とバトルマスター。 二人は私の心の拠り所で、希望で、細い細いクモノイトそのものだった。 ――――――ねえ……ねえ、おかあさん。ねえ、ししょー。ねえ、みんな……わたしは、ここにいるよ……? そうして、訪れたものは――――最悪の最低の結末でした。 母はししょーと仲直りして、ししょーを救って、満足げに死んでいきました。 『ワタシヲオイテイッテ』 最後の頼みだったししょーは、結局母の望みも叶えられずに呆気なく死んでしまいました。 でも、死んだ二人は後のことを仲間に託して、あの世へと旅立ちました。 ずっと母を待ち続けた私は、結局一度も省みられずに。母は汚いものを見ることなく、綺麗なままに死んでいきましたとさ。 めでたし、めでたし♪。 ――――――ねえ……わたしは、ひっく……っ……ここに、いるんだよぉ……!      ◇     ◇     ◇     ◇ 「あはははは♪」 私は哂い続ける。 ギャルゲロワの最後の一人が私と対峙する。 管理人、ツキノン。 全ての仲間に想いを託され、全ての仲間から肯定された存在が私に刃を向ける。 「あ、はははは……♪」 私は笑い続ける。 皮肉なものだ。私は誰にも肯定されなかった。私はただ否定され続けた。 私の味方は一人もいない。母と同じ『蟹座氏』なのに、私は汚いから誰も見てくれない。 「……………………っ、あはは、は……♪」 私とツキノンは、当初は存在しない存在同士だった。 ツキノンは途中参入のようなものだし、私は母から派生した存在だから厳密には蟹座氏そのものではない。 二人は同じようなものだったはずだ。 別の未来があるのなら、私もツキノンも存在しなかったのかも知れない。そんな類似点がある。 なら、何が悪かったのだろう。 ツキノンと私の違いは何だったんだろう。 答えは簡単だった。私は汚い悪心で、ツキノンは皆の想いを背負った善心だったから。 「あ、はは、は……は……♪」 泣くな。 私は笑い続けろ。 悪として笑い続けろ。 泣いても、助けを求めても、叫んでも、私は決して肯定されなかったのだから。 なら、もういい。 私は悪役になる。この世全ての悪心として具現化する。 望むままに惨劇を、笑いながら悲劇を起こそう。 そうしていずれ私を殺す奴に、汚い言葉を投げかけてやろう。恨み言を言って、邪悪なままで。 もう、私は絶望してしまったから。 もう、私は諦観してしまったから。 もう、私は、どうでもいいんです。 求めるから心が痛かったんですから。望んだから胸が軋んだんですから。 私はもう、他者に何も望まない。 泥だらけの私は汚かった。こんな私を抱きしめてくれる人なんて、もういない。 いや、初めから私を肯定してくれる人なんて、この世にはいなかったんだ。 「さあ、行くぞ、嘆きの子よ。泥の貯蔵は十分か!!」 ギャルゲロワの全ての力を結集した、最強の武具をツキノンが構える。 私はその姿を見て、思わず言葉が詰まってしまった。 色々な感情が私の中で鬩ぎあって、すごく混沌と化した心情になってしまったからだ。 恨み、妬み、嫉み。 私を悪役に仕立てて、正義の味方として立つツキノンに覚えた負の感情。 怒り、憎しみ。 誰にも認めてもらえなった私が、世界に対して思う負の感情。 でも、それ以上に羨ましくて涙が出た。 いいなぁ、って子供のように。私はツキノンを羨ましがっていた。 ギャルゲロワの全てが結集している、という事実に対する感動。なんだかんだ言って、私もまた『蟹座氏』なのだった。 だから一人の書き手として、その姿が眩しくて温かかった。 「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははは♪」 私はゆっくりと駆け出した。 終焉へと足を進める。その先にあるのはやっぱり悲劇なのだろう、と絶望と諦観を抱いたまま。 加速する自殺衝動(アポトーシス)が、私の脳内を焼き切っていく。 さあ、救いのない物語を始めよう。 いい加減、一思いにもう、終わらせてください。 それだけが、私の望みです。      ◇     ◇     ◇     ◇ 最後の激突が始まろうとしている。 放り出されたいくつかの支給品。ギャルゲロワ最強の武具がある以上、もはや見向きもされないもの。 その中のひとつがランランと輝き続けていた。 トリビアの泉などで使われるような、何の変哲もないボタンだった。 ギャルゲロワの伝統とも言うべき、オリジナルアイテムが光り輝きながら激戦を見守り続けていた。 『いやっほぉぉぉおおおう、蟹座のONiぃ様、最高ーーーーーっ!!!!!』 ―――――その名を、蟹座氏最高ボタンと言った。 【2日目・深夜】【D-7大蟹球フォーグラー内部・大蟹杯の間】 【ツキノン@GR1st】 【状態】:首輪無し、強い決意 【装備】:鬼狩柳桜、GRトラペゾヘドロン 【道具】:支給品一式(食料全て消費)×5、最高ボタン、カードデッキ(シザース)@ライダーロワ、閃光弾、バッド・カニパニーの甲羅、蟹座氏の写真×10、      腕時計型麻酔銃(1/1)@漫画ロワ、麻酔銃の予備針×3、変化の杖、対戦車地雷×1、      ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃@トライガン、ドラゴンオーブ@AAA、ティーセット一式 【思考】: 基本:真の意味で打倒WIKI管理人 1:黒い蟹座氏を救う 2:大蟹杯の破壊 3:生き残っている他の参加者と合流 ※主催側に反抗したため(自滅ですが)支給品に封印されていました。 ※何らかの主催側の情報を持っているかもしれません ※他お任せ ※羽入の力は使えます。 ※【GRトラペゾヘドロン】 ギャルゲロワの全てが詰まった神剣。 バトルマスターの固有結界のもう一つの姿。 本来はマスターと共に消滅するが、死者スレの飴を舐めた蟹座氏の助けもあって残存している。 トラペゾヘドロンの名を冠すだけの力があると思われる。 詳細はお任せ。 読み方は『ジーアールトラペゾヘドロン』 ※大蟹杯を破壊すれば、ギガゾンビ城エリアもただのフォーグラーの一部に戻り、 マスク・ザ・ドSも死者スレへと帰ります。 |293:[[STAND]]|投下順に読む|295:[[愛する人に祝福を]]| |293:[[STAND]]|時系列順に読む|295:[[愛する人に祝福を]]| |292:[[正義の味方]]|ツキノン|295:[[愛する人に祝福を]]|

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