かくて勝者は不敵に笑う

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「あの野郎ぉおおおおおおおっ!!!?」 叫び倒すサプライズパーティー。 そしてそれをステルス鬼畜だと誤認した、三人のチーム。 敵をマーダーだと認識したネコミミストも、ステルス鬼畜に怨み積もった幻夜も迷わない。 666に至ってはむしろこの誤認すら都合が良い。 一対三の暴力がサプライズパーティーを呑み込もうと押し寄せる。 「終わりだ、ステルス鬼畜!!」 それが誰の叫びかは判らない。だがその言葉が彼の怒りに火を点けた。 (終わり? 一対三にというだけで? 『数で俺に敵うとでも?』  そんな勘違いは正してやるのが道理、躾てやるのが道理だろうよ!) だから。 「嘗めるな!」 たった一声でその突撃は断たれた。 一対三。普通なら勝ち目が薄い戦力差だ。 バトル・ロワイアルにおいて数の差はそのまま戦力差に直結する事が多い。 もちろん足手まといや完全な一般人はその数に入らない事が多い。 だが『戦える者』の数の差を覆す事は難しいのだ。 それが許されるのは一部のトップマーダーだけだ。 だから、数の差は多くのロワによって圧倒的な戦力差として襲い掛かる。 「な、なんだ!?」「馬鹿な、これは……!」 サプライズパーティーは心地よい驚愕を耳に聞き、愚かしい者達を嘲笑った。 「別に良いさ。おまえ達が俺をステルス鬼畜だと思おうと、サプライズパーティーだと思おうとな」 それは勝利宣言であり、自らを誇る言葉だった。 岸田洋一の姿をした彼は、やはりどちらにせよ鬼畜な様子で言う。 「元より俺は自らの愛を示すために、自己満足の為だけに書き続け、それをやり通す男。  他の者が俺をどう評価し名付けるかなどその副産物にすぎん。  サプライズパーティーの名は気に入っていたが、ステルス鬼畜と誤認するならそう呼べばいい」 その声は相手に届き、だがその言葉を理解する猶予は無いだろう。 何故なら戦況は一瞬で逆転していたのだから。 「証はこれだけでいい。そう、これが俺の生き様、いや書き様の証だ!」 痕の柏木姉妹が居た。柏木耕一も柳川祐也も居た。 雫の毒電波兄妹が居た、To Heartの格闘家と魔女の姉妹が居た、WHITE ALBUMのアイドル達が居た。 ルートによってバランスブレイクを謳われるRoutesの那須宗一も居た。 うたわれるもののハクオロやディーも居るし、アルルゥはムックルとガチャタラを従えて現れた。 KANONの川澄舞が剣を構え、AIRの国崎住人が拳を固め、ナイトライダーのルミラも姿を見せた。 ハカロワ1stにも3rdにも姿を見せないクーヤすら人型兵器アヴ・カムゥを駆って現れた。 未完結のハカロワ2ndには出ていたからだ。 ハカロワシリーズに登場するありとあらゆるキャラクター、その総勢は概ね二百程に達する。 約二百対三、それが今の戦力比だった。 「こんな……こんな出鱈目……!」 剰りに圧倒的すぎる力にネコミミストは絶句していた。 葉鍵キャラを出していたのはサプライズパーティーの方ではなかったか、など考えている状況ではない。 これは敵だ。目の前の男は。 目の前の、目を疑う程の大軍勢の向こうにいる岸田洋一の姿をした男は、敵だ。 それも絶望的なまでに、強い。 「こんな奴、一体どうすれば……」 男の一声でこの軍勢はその力を振るうだろう。 倒しきる事など出来るはずがない。可能性が有るとすれば逃げるしか―― 「生憎と、退路も塞がれたようだ」 「そんな……!」 666の声にネコミミストは背後を振り返る。そこには既に軍勢が回り込んでいた。 一定の距離を保ち、三人の獲物を牽制する。 おそらくは退路を塞ぐだけが目的なのだろう、間合いよりも幾分遠いであろう距離を保っている。 「……だが、おかしい」 「ほう、貴様もそう思うか」 666が呟き、幻夜もそれに同意する。 何がと問うネコミミストに、666は答えた。 「統制が取れすぎている。先走って襲ってくる者が居ないし、喋りすらしない」 幻夜も頷く。 「先程の神奈もそうだ。あれは葉鍵ロワ1stのラスボスだったはずだ。  だが独自の目的で動く事なく、呼び出した男の求めに応えた。その意味が判るか?」 「え…………わ、判らない」 「仕方のない奴だな。つまりこやつらは書き手たる奴が指示せねば動かんという事だ」 それは単純なる論理。 呼び出した男が指示しなければ動かず、男が死ねば共に消える。 「これでは作中の登場人物とは言えぬわ。ただの駒だ」 「登場人物の動きも生死も書き手が握る物だが、確かにその通りだ」 ステルス鬼畜に翻弄されたサプライズパーティーが僅かに捻れた一歩の歪み。 何故踏み外したのかなどネコミミスト達には判らない。 「だ、だけどどうすればいいんだ!?」 そも、その過ちはこの事態を打開する役に立つのか。 条件は変わらない。ネコミミスト達は参加者と同等の力を持つ二百の軍勢に囲まれている。 頭を取れば終わるといえど、どうやってそれを為す? この状況の何処に勝ち目があるというのか。 「この結界を破る手段は有るか?」 幻夜が問う。 周囲の世界は全てがモノクロに染められていた。これが軍勢を呼び出し維持している固有結界だ。 それ即ち目の前の相手がステルス鬼畜ではなくサプライズパーティーだという事だが、 ステルス鬼畜と呼び敵視し、それに相手が激昂し敵対してしまった後では意味が無い。 「一応無くはないが、時間が掛かりすぎる。まず保たないだろう」 「奴の懐に飛び込む手は?」 666は頷いた。 「有る。この環境が幸いだ、始めてから十秒足らずで出来る。だが、それだけで私は疲れ果てる」 「つまり支度を始めた瞬間に襲い来る軍勢から僅か数秒を稼ぎ、誰か一人を送り込めば良いのだな」 幻夜は不敵に笑った。 「実に容易い」 「なら私が時間を稼ぐ!」 威勢良く言うネコミミストを、幻夜は嗤った。 「たわけ、ネコミミスト。我の見立てでは、貴様では一秒の時間も稼げぬわ」 「私だって戦える! 私だって……」 「アニロワ2ndの有力な書き手の一人であり、衝撃のアルベルトの衝撃波を持っているのだから、か?」 ネコミミストの言葉を幻夜が継いだ。そしてその上で、嗤った。 「だがこのバトル・ロワイアルにおいて貴様は、まだ非力な一人に過ぎぬわ」 「く……っ!!」 否定できない。 衝撃のネコミミストに力が有れば地球破壊爆弾にスクライドで出来ている書き手を殺されずに済んだ。 熱血王子に666の片目を切り裂かれずに済んだ。 もっと力が有れば……! 「だから貴様に手柄をくれてやるのだ、光栄に思うが良い」 幻夜・フォン・ボーツスレーは傲慢に宣った。 「我が時間を稼いでやる。貴様は666の力で奴の懐に飛び込み、一撃で仕留めろ」 「幻夜……! とどめを私がなんて……」 「心配するな、我とて僅か数秒で殺されなどせぬわ。  我にはゲドー・ザ・マジシャンに託された首輪フラグが有る。これを昇華させるまで死ねん」 それにな、と幻夜は笑った。 「貴様が投下したあの没SSを覚えているな」 「あ、あれは……その……」 『ネコミミスバルの旅 ~the beautiful world~』 衝撃のネコミミストがその名で呼ばれる所以。 スバルがネコミミを生やして、何故か色んな理由で同じくネコミミの生えた多数の参加者と擦れ違いつつ進み、 挙げ句に主催の目的もネコミミ万歳でしたでバトル・ロワイアルが終わる史上最大の怪作。 これを没スレに投下したネコミミストは、没の理由をこう書き綴っている。 『さすがに五十人も生還するのはちょっと…ねぇ?』 その作品の名を上げて、幻夜は笑った。 「五十人生還とは我も恐れ入った! はははっ、なかなかに悪くなかったぞ!」 「え……?」 これ以上なく輝かしい笑顔を浮かべて見せた。 まるで太陽のように眩く、そして神々しく。 「貴様ならば我ら三人の命運を託すに足るわ」 その横で、666も頷いた。 君に託すと。 そして二人の声が、重なる。 「「やってみせろ」」 ネコミミストは、答えた。 「…………応!」      ◇ ◇ ◇ 「遺言は終わったか?」 サプライズパーティーが問う。 ネコミミスト達はステルス鬼畜と誤認していた。だが、そんな事にもう意味はない。 ネコミミスト達の命を刈り取ろうとする言葉に、ネコミミストは応えた。 「遺言じゃない。私達は、誰一人欠けないで貴様を倒す」 サプライズパーティーの表情が歪む。歪な、笑みに。 そして応えた。 「ならば……死ね! 俺の書き様に破れて散れ!」 軍勢は一斉に襲い掛かった。 「我を嘗めるなよ」 荷物をそこに捨て置き、幻夜・フォン・ボーツスレーは悠然と歩み出て手にある大剣を振るった。 巳六。主人以外が持てば凄まじい重みで持てず、主人すら両手で振るう巨大な剣。 だがギルガメッシュと同じくあらゆる武器を使いこなす幻夜はそれを片手で振るった。 狩猟者、鬼の力を発現させ異形の姿で襲い来る柏木耕一と柳川祐也の爪を、弾いた。 その瞬間に概ね人型のまま異能を振るう女の鬼、柏木千鶴が妹の梓と楓を引き連れ懐に飛び込む。 鬼達が奏でる鬼神楽。無数の爪撃が幻夜を襲った。 だが幻夜の纏う黄金の鎧は強靱な防護を誇る鉄壁の防具。胴を裂き腹を刻んでも殺しはきれぬ。 更に一転した幻夜の大剣が鬼の一族を薙払った。これも殺しはきれぬ。それでも次撃は間に合うまい。 一秒が経過。 突如、幻夜の脳に凄まじい激痛とおぞましい映像が流れ込む。 雫の毒電波使い達が送り込む毒電波。原作最大の規模においては町一つを呑み込む精神攻撃。 僅かな間だと容易く耐えて、笑ってみせる。全ての毒電波は彼一人に集中され、666とネコミミストを襲わない。 二秒が経過。 To Heartの来栖川綾香が蹴りを、松原葵が掌底を叩き込む。To Heart2から朝霧麻亜子のドリルキックまで付いてくる。 衝撃に退くのは僅かに左足一歩。更に右足が宙を浮き、幻夜の体が更に一転。 人外の力を誇る渾身の後ろ回し蹴りが薙払う。 三秒が経過。 だが今度こそ崩された体勢にクーヤの駆る純白のアヴ・カムゥが巨大な長剣を振り下ろす。 「ぐ……っ!!」 辛うじて大剣巳六を翳し受け止め、しかし抑え込まれた。 四秒が経過。 そこに無数の力が降り注ぐ。 うたわれるものの法術。MOONの不可視の力。まじかるアンティークの魔法。ナイトライターの吸血鬼達の力。 一瞬で黄金の鎧に無数のひび割れが走り幾つもの穴が穿たれる。 五秒が経過。 Routeの那須宗一が銃を連射する。一射目は鎧を穿ち二射目が重なり鎧を破り、三射目が重なり心臓上の肋骨をへし折り逸れた。 続けて右からAIRの平安武士・柳也が古風な刀を、左から誰彼の強化兵・蝉丸が跋扈の剣を、 アヴ・カムゥから飛び降りてきたKANONの魔物を狩る者・川澄舞が上方から剣を突き刺した。 無数のヒビに覆われた鎧が、砕け散った。幻夜は血反吐を吐いた。 六秒が経過。 柳也が、坂神蝉丸が、川澄舞が跳び退く。クーヤのアヴ・カムゥも退き、幻夜は力無く膝を付く。 そこに影が落ちた。 見上げるとそこにはハクオロとディー、二柱のウィツァルネミテアが百mに及ぼうかという巨大な体を震わせていた。 二撃の神の拳が幻夜を叩き潰さんと降臨し―― 七秒が経過。 「懐中時計型航時機『カシオペア』起動」 自らの出した全ての支給品を何とか使いこなす程度の能力で辛うじて計算及び操作を実行。 サプライズパーティーの張った、固有結界内に満ちた膨大な魔力を利用。これが彼女の勝機。 派手好き地獄紳士『666』、衝撃のネコミミストと共に僅か二秒間の疑似時間停止を達成。 「うあああああああああああああああああああああああっ」 ネコミミスト、絶叫と共に足から衝撃波を噴射。 20m強の距離と無数の障害を一秒で詰め、一秒で落下しながら手に衝撃波を充填して狙いを定める。 ――そして時は動き出す。 ネコミミストの右手から衝撃波が放たれる。前触れの無いほぼ零距離からの限りなく零秒に近い攻撃。 避けられるはずなどなかった。 (ぁ…………) だが、外した。 空中の不安定な姿勢からの一撃は顔面の半分を抉るだけに留まってしまったのだ。 サプライズパーティーが仰け反り距離が離れ周囲のハカロワ軍勢がネコミミストを視認し勝機が失われ―― 「まだっ」 突きだした左手が、サプライズパーティーの喉元を掴んだ。 勝利を掴む左手。 零距離から放たれた衝撃波は、今度こそサプライズパーティーの頸部を吹き飛ばした。 同時に、二柱のウィツァルネミテアの拳が大地を穿った。 次の瞬間、固有結界により顕れていた全ての存在が消え去った。      ◇ ◇ ◇ 勝因を語るならそれはきっと、サプライズパーティーが数の差を埋められなかった事だろう。 サプライズパーティーは確かに戦力の差を埋め、それどころか大幅に逆転する事が出来た。 だがそれはあくまで戦闘員の差。 呼び出された増援はあくまでサプライズパーティーの力として呼び出されたのに過ぎなかった。 バトルロワイアルにおいて集団が強くなるのは、そこに多くの運命<フラグ>が集うからである。 バトルロワイアルの残酷に抗う為の運命<フラグ>が個々に覚醒を、奇跡を、ほんの僅かな偶然を。 それすら無くとも一人一人の行動が小さな何かを為し、積み重なって大きなうねりとなるのだ。 サプライズパーティーの数は結局の所とてつもなく強大な力でしかなかった。 それはネコミミスト達三人を打ち破るには、何かが欠けた力だったのだ。      ◇ ◇ ◇ 「幻夜ぁ!!」 戦いを終えたネコミミストが慌てて駆け戻る。 そこに広がっているのは無惨な、血溜まり。 幻夜・フォン・ボーツスレーの末路を示す光景。 あの黄金の鎧は無惨に砕け散り、その下の傷を露わにしている。 胸には二閃の切り傷が走り、腹はミンチのように刻まれていた。 頭部のありとあらゆる穴からは血が噴き出し、顔面を血塗れにしていた。 血塗れの顔面は、垣間見える全身の肌は、打撲痕で醜く膨れ上がっていた。 焼かれ、凍り付き、引き裂かれ、打たれ、焦がされ、傷付いていた。 銃弾に折られた肋骨が突き出ていた。 血が吹き出る両脇腹の傷は内臓を幾つも刺し貫き、右肩口から刺し貫かれた傷は脊髄も肋骨も打ち砕いていた。 最後まで剣を手放さなかった両腕は双方とも曲がる筈がない場所で何度も方向を変えていた。 最期まで生き延びるために足掻き退こうとした足は、神の拳に叩き潰され跡形も無く砕け散っていた。 大剣巳六は無数のヒビを浮かべながらも、主の意志を示すように大地に突き立っていた。 そう、幻夜は屈してなどいない。 幻夜は笑っていた。 「――よくやった」 ネコミミストは思わず涙を流す。 「やってない! わたしが、わたしがあそこで仕留め損ねなければ、一撃で仕留めていれば!  あの一瞬が無ければあなたは――」 「そうすれば……彼が生き残れたとでもいうのかい?」 「666……」 よろよろと666が歩み寄る。 流れ弾で負傷したのか脇腹から血を流しているが、どうやら手酷い怪我は無いらしい。 「よく見たまえ、彼の傷を。例え最後のあの巨拳を受けずとも足が残っただけ、どちらにせよ助かるものか」 「で、でもそんな、幻夜は殺されなどしないって……」 ネコミミストは再び幻夜の姿を振り返る。 そこにあるのはきっと、酷い惨殺の図。あまりにも無惨に殺された犠牲者の絵。 (え…………?) そう言うには、幻夜の顔は余りにも太々しかった。 まるで目の前に有る死の暗闇を吹き飛ばすかのように。 「馬鹿め……我らは、勝ったのだぞ。泣くな、笑え、胸を張れ……ネコミミスト!」 「幻夜! でも、あなたは殺されて……」 「まだ……生きておるわ…………たわけめっ」 幻夜は不敵な笑みを浮かべて見せた。 「我は奴に殺されて死ぬのでは、無い。奴を倒し、戦いを勝利で終え……その後で、死ぬのだ」 「そんな…………」 幻夜が死ぬ理由はサプライズパーティーとの戦いで受けた傷が原因だ。 だが戦いの中では死んでいない。戦いが終わってから死んだ。 だから殺されたのではない。 それは屁理屈に過ぎない。 ネコミミストは理解した。最初から幻夜は死を覚悟し、受け入れ、その上で足掻いて見せたのだと。 ウィツァルネミテアの拳より前に受けた傷だけで幻夜は既に致命傷だった。 それでもその場で殺されまいと生き足掻き、僅かな時間を生き延びて見せた。 奴に、負けなかった。 その成果を証明するものは、ここに一つ有った。 『アロー、アロー。みなさんお元気ですか? R-109の放送の時間がやってきました』 昼の放送が始まった。 3人は身動き一つせずにその放送を聞いた。 最後まで、聞き終えた。 その中に幻夜・フォン・ボーツスレーの名は、無かった。 それが彼の勝利の証だった。 「我…………ら……カハッ」 「ああ。私達は、勝ったのだ」 改めて勝利宣言をしようとして血を吐いた幻夜の言葉を継いで、666が宣言した。 「私達は……勝ったのだ…………」 「幻夜……666…………」 ネコミミストは気付いた。 666の残された左目が涙を流している事に。 666は悲しげに、それでも誇らしげな笑みを浮かべている事に。 「私達の自分の命はまだ残され、二人の仲間が居るのだ。第二回放送さえ乗り越えた仲間だ。  君達にはまだ同胞も居る。私達はまだ多くを残しているんだ、それを喜べばいいさ」 「あ…………」 ネコミミストは気付いた。 今の第二回放送で、LSロワのボマーの名が呼ばれた。 その前の第一回放送では温泉少女と深淵の名が呼ばれた。 LSロワで残ったのはもう、666一人だけだ。 (そうだ……目の前の幻夜や、あの男達だけじゃない。このロワの何処かで何人、何十人も死んでいるんだ……) その事に気づき、ネコミミストは打ちのめされた。 666もきっと、第一回放送でLSロワの仲間が残り一人になって平静で居られたはずはないのだ。 それなのに666は焦って動き回ろうともせず、ネコミミストの事を気遣い隠れて逃げ延びた。 冷静に、この島で会ったばかりの仲間が死地に踏み入るのを止めてくれた。 「わたしにはまだ……多くが残っている……」 ネコミミストの独白を聞いて、倒れ伏している幻夜が再び、もう一度笑って見せた。 こみ上げる血の塊を飲み下し、死の寸前の体を揺らして。 「そうだたわけめ……だから我らは、上を向いて笑えばいいのだ…………」 ここに勝者有りと傲慢に。 「くはっ、はは……はははははは……ははは…………はは……は……」 高らかに幻夜が笑い。 「ふふ……くす、ふふふ、ふふ…………」 666は涙を拭うと、ネコミミストの肩を抱いて静かに優しげに笑い。 「う……ぐすっ…………う……」 ネコミミストは。 「う……く……くく……あはっ、はは……うっ……はは……あはは…………」 涙をぼろぼろと零しながら、それでも笑った。 かくて勝者は不敵に笑う。 &color(red){【サプライズパーティー@葉鍵ロワ3 死亡】} &color(red){【幻夜・フォン・ボーツスレー@アニロワ2nd 死亡】} サプライズパーティーの永遠神剣第六位『冥加』と支給品一式が転がっています。 幻夜・フォン・ボーツスレーの巳六@舞-HiMEがヒビだらけで地に突き立っています。 幻夜の身につけている黄金の鎧@Fateは砕かれています。 支給品一式×2、未定支給品×1(本人確認済み)、未定支給品×2(未確認)、ゲドー・ザ・マジシャンの首輪は、 戦闘前に置いているので無傷のまま残っています。 【日中】【E-5 学校跡地】 【衝撃のネコミミスト@アニ2nd】 【装備】:拡声器 【所持品】:支給品一式 【状態】:精神的に消耗。 【思考・行動】 基本:殺し合いに乗るつもりは無い。前に進む。 1:スクライドの遺志を継ぎ、牙なき人の剣になる。積極的にマーダーキラー路線。 2:666を今のところ信用。 3:熱血王子と再会したら、今度こそ彼を止める。 ※衝撃波を使えます。掌からだけでなく、足の裏からも出せるようになりました。 ※「大あばれ鉄槌」を幼女好きの変態と勘違いしています。 【派手好き地獄紳士666@LSロワ】 【装備】:ゲート・オブ・バビロン@アニロワ2nd(※特殊仕様) 【所持品】:支給品一式 【状態】:右顔面に刀傷(右目失明)、身体中に細かい掠り傷。脇腹に浅い傷。魔力消費(小)。       精神的には割と充足。 【思考・行動】 基本:衝撃のネコミミストを地獄に落とし且つ狂わせずに生かす。ネコミミスト心から愛してる。 0:ネコミミストの仰せのままに。 1:ネコミミストを護りつつ、出来るだけ精神的に傷付く方向に陰ながら誘導する。 2:ネコミミストに愛されるよう務める。 3:死ぬ時は出来るだけネコミミストの心に傷を残す形で死ぬ。 ※ゲート・オブ・バビロンで出せるアイテムをどれも『一応は何とか使いこなせ』ます。  エリクシールは1本使用済みです(残り1本)。 ※「大あばれ鉄槌」を(ロリ的に)危険人物と断定しました。 |197:[[大いなる意思(後編)]]|投下順に読む|199:[[風雲?ロワ本編?何それ?]]| |197:[[大いなる意思(後編)]]|時系列順に読む|199:[[風雲?ロワ本編?何それ?]]| |178:[[それぞれの意地ゆえに]]|衝撃のネコミミスト|219:[[さよならは言わないで。だって――(前編)]]| |178:[[それぞれの意地ゆえに]]|派手好き地獄紳士666|219:[[さよならは言わないで。だって――(前編)]]| |178:[[それぞれの意地ゆえに]]|&color(red){幻夜・フォン・ボーツスレー}|| |178:[[それぞれの意地ゆえに]]|&color(red){サプライズパーティー}|| ----
「あの野郎ぉおおおおおおおっ!!!?」 叫び倒すサプライズパーティー。 そしてそれをステルス鬼畜だと誤認した、三人のチーム。 敵をマーダーだと認識したネコミミストも、ステルス鬼畜に怨み積もった幻夜も迷わない。 666に至ってはむしろこの誤認すら都合が良い。 一対三の暴力がサプライズパーティーを呑み込もうと押し寄せる。 「終わりだ、ステルス鬼畜!!」 それが誰の叫びかは判らない。だがその言葉が彼の怒りに火を点けた。 (終わり? 一対三にというだけで? 『数で俺に敵うとでも?』  そんな勘違いは正してやるのが道理、躾てやるのが道理だろうよ!) だから。 「嘗めるな!」 たった一声でその突撃は断たれた。 一対三。普通なら勝ち目が薄い戦力差だ。 バトル・ロワイアルにおいて数の差はそのまま戦力差に直結する事が多い。 もちろん足手まといや完全な一般人はその数に入らない事が多い。 だが『戦える者』の数の差を覆す事は難しいのだ。 それが許されるのは一部のトップマーダーだけだ。 だから、数の差は多くのロワによって圧倒的な戦力差として襲い掛かる。 「な、なんだ!?」「馬鹿な、これは……!」 サプライズパーティーは心地よい驚愕を耳に聞き、愚かしい者達を嘲笑った。 「別に良いさ。おまえ達が俺をステルス鬼畜だと思おうと、サプライズパーティーだと思おうとな」 それは勝利宣言であり、自らを誇る言葉だった。 岸田洋一の姿をした彼は、やはりどちらにせよ鬼畜な様子で言う。 「元より俺は自らの愛を示すために、自己満足の為だけに書き続け、それをやり通す男。  他の者が俺をどう評価し名付けるかなどその副産物にすぎん。  サプライズパーティーの名は気に入っていたが、ステルス鬼畜と誤認するならそう呼べばいい」 その声は相手に届き、だがその言葉を理解する猶予は無いだろう。 何故なら戦況は一瞬で逆転していたのだから。 「証はこれだけでいい。そう、これが俺の生き様、いや書き様の証だ!」 痕の柏木姉妹が居た。柏木耕一も柳川祐也も居た。 雫の毒電波兄妹が居た、To Heartの格闘家と魔女の姉妹が居た、WHITE ALBUMのアイドル達が居た。 ルートによってバランスブレイクを謳われるRoutesの那須宗一も居た。 うたわれるもののハクオロやディーも居るし、アルルゥはムックルとガチャタラを従えて現れた。 KANONの川澄舞が剣を構え、AIRの国崎住人が拳を固め、ナイトライダーのルミラも姿を見せた。 ハカロワ1stにも3rdにも姿を見せないクーヤすら人型兵器アヴ・カムゥを駆って現れた。 未完結のハカロワ2ndには出ていたからだ。 ハカロワシリーズに登場するありとあらゆるキャラクター、その総勢は概ね二百程に達する。 約二百対三、それが今の戦力比だった。 「こんな……こんな出鱈目……!」 剰りに圧倒的すぎる力にネコミミストは絶句していた。 葉鍵キャラを出していたのはサプライズパーティーの方ではなかったか、など考えている状況ではない。 これは敵だ。目の前の男は。 目の前の、目を疑う程の大軍勢の向こうにいる岸田洋一の姿をした男は、敵だ。 それも絶望的なまでに、強い。 「こんな奴、一体どうすれば……」 男の一声でこの軍勢はその力を振るうだろう。 倒しきる事など出来るはずがない。可能性が有るとすれば逃げるしか―― 「生憎と、退路も塞がれたようだ」 「そんな……!」 666の声にネコミミストは背後を振り返る。そこには既に軍勢が回り込んでいた。 一定の距離を保ち、三人の獲物を牽制する。 おそらくは退路を塞ぐだけが目的なのだろう、間合いよりも幾分遠いであろう距離を保っている。 「……だが、おかしい」 「ほう、貴様もそう思うか」 666が呟き、幻夜もそれに同意する。 何がと問うネコミミストに、666は答えた。 「統制が取れすぎている。先走って襲ってくる者が居ないし、喋りすらしない」 幻夜も頷く。 「先程の神奈もそうだ。あれは葉鍵ロワ1stのラスボスだったはずだ。  だが独自の目的で動く事なく、呼び出した男の求めに応えた。その意味が判るか?」 「え…………わ、判らない」 「仕方のない奴だな。つまりこやつらは書き手たる奴が指示せねば動かんという事だ」 それは単純なる論理。 呼び出した男が指示しなければ動かず、男が死ねば共に消える。 「これでは作中の登場人物とは言えぬわ。ただの駒だ」 「登場人物の動きも生死も書き手が握る物だが、確かにその通りだ」 ステルス鬼畜に翻弄されたサプライズパーティーが僅かに捻れた一歩の歪み。 何故踏み外したのかなどネコミミスト達には判らない。 「だ、だけどどうすればいいんだ!?」 そも、その過ちはこの事態を打開する役に立つのか。 条件は変わらない。ネコミミスト達は参加者と同等の力を持つ二百の軍勢に囲まれている。 頭を取れば終わるといえど、どうやってそれを為す? この状況の何処に勝ち目があるというのか。 「この結界を破る手段は有るか?」 幻夜が問う。 周囲の世界は全てがモノクロに染められていた。これが軍勢を呼び出し維持している固有結界だ。 それ即ち目の前の相手がステルス鬼畜ではなくサプライズパーティーだという事だが、 ステルス鬼畜と呼び敵視し、それに相手が激昂し敵対してしまった後では意味が無い。 「一応無くはないが、時間が掛かりすぎる。まず保たないだろう」 「奴の懐に飛び込む手は?」 666は頷いた。 「有る。この環境が幸いだ、始めてから十秒足らずで出来る。だが、それだけで私は疲れ果てる」 「つまり支度を始めた瞬間に襲い来る軍勢から僅か数秒を稼ぎ、誰か一人を送り込めば良いのだな」 幻夜は不敵に笑った。 「実に容易い」 「なら私が時間を稼ぐ!」 威勢良く言うネコミミストを、幻夜は嗤った。 「たわけ、ネコミミスト。我の見立てでは、貴様では一秒の時間も稼げぬわ」 「私だって戦える! 私だって……」 「アニロワ2ndの有力な書き手の一人であり、衝撃のアルベルトの衝撃波を持っているのだから、か?」 ネコミミストの言葉を幻夜が継いだ。そしてその上で、嗤った。 「だがこのバトル・ロワイアルにおいて貴様は、まだ非力な一人に過ぎぬわ」 「く……っ!!」 否定できない。 衝撃のネコミミストに力が有れば地球破壊爆弾にスクライドで出来ている書き手を殺されずに済んだ。 熱血王子に666の片目を切り裂かれずに済んだ。 もっと力が有れば……! 「だから貴様に手柄をくれてやるのだ、光栄に思うが良い」 幻夜・フォン・ボーツスレーは傲慢に宣った。 「我が時間を稼いでやる。貴様は666の力で奴の懐に飛び込み、一撃で仕留めろ」 「幻夜……! とどめを私がなんて……」 「心配するな、我とて僅か数秒で殺されなどせぬわ。  我にはゲドー・ザ・マジシャンに託された首輪フラグが有る。これを昇華させるまで死ねん」 それにな、と幻夜は笑った。 「貴様が投下したあの没SSを覚えているな」 「あ、あれは……その……」 『ネコミミスバルの旅 ~the beautiful world~』 衝撃のネコミミストがその名で呼ばれる所以。 スバルがネコミミを生やして、何故か色んな理由で同じくネコミミの生えた多数の参加者と擦れ違いつつ進み、 挙げ句に主催の目的もネコミミ万歳でしたでバトル・ロワイアルが終わる史上最大の怪作。 これを没スレに投下したネコミミストは、没の理由をこう書き綴っている。 『さすがに五十人も生還するのはちょっと…ねぇ?』 その作品の名を上げて、幻夜は笑った。 「五十人生還とは我も恐れ入った! はははっ、なかなかに悪くなかったぞ!」 「え……?」 これ以上なく輝かしい笑顔を浮かべて見せた。 まるで太陽のように眩く、そして神々しく。 「貴様ならば我ら三人の命運を託すに足るわ」 その横で、666も頷いた。 君に託すと。 そして二人の声が、重なる。 「「やってみせろ」」 ネコミミストは、答えた。 「…………応!」      ◇ ◇ ◇ 「遺言は終わったか?」 サプライズパーティーが問う。 ネコミミスト達はステルス鬼畜と誤認していた。だが、そんな事にもう意味はない。 ネコミミスト達の命を刈り取ろうとする言葉に、ネコミミストは応えた。 「遺言じゃない。私達は、誰一人欠けないで貴様を倒す」 サプライズパーティーの表情が歪む。歪な、笑みに。 そして応えた。 「ならば……死ね! 俺の書き様に破れて散れ!」 軍勢は一斉に襲い掛かった。 「我を嘗めるなよ」 荷物をそこに捨て置き、幻夜・フォン・ボーツスレーは悠然と歩み出て手にある大剣を振るった。 巳六。主人以外が持てば凄まじい重みで持てず、主人すら両手で振るう巨大な剣。 だがギルガメッシュと同じくあらゆる武器を使いこなす幻夜はそれを片手で振るった。 狩猟者、鬼の力を発現させ異形の姿で襲い来る柏木耕一と柳川祐也の爪を、弾いた。 その瞬間に概ね人型のまま異能を振るう女の鬼、柏木千鶴が妹の梓と楓を引き連れ懐に飛び込む。 鬼達が奏でる鬼神楽。無数の爪撃が幻夜を襲った。 だが幻夜の纏う黄金の鎧は強靱な防護を誇る鉄壁の防具。胴を裂き腹を刻んでも殺しはきれぬ。 更に一転した幻夜の大剣が鬼の一族を薙払った。これも殺しはきれぬ。それでも次撃は間に合うまい。 一秒が経過。 突如、幻夜の脳に凄まじい激痛とおぞましい映像が流れ込む。 雫の毒電波使い達が送り込む毒電波。原作最大の規模においては町一つを呑み込む精神攻撃。 僅かな間だと容易く耐えて、笑ってみせる。全ての毒電波は彼一人に集中され、666とネコミミストを襲わない。 二秒が経過。 To Heartの来栖川綾香が蹴りを、松原葵が掌底を叩き込む。To Heart2から朝霧麻亜子のドリルキックまで付いてくる。 衝撃に退くのは僅かに左足一歩。更に右足が宙を浮き、幻夜の体が更に一転。 人外の力を誇る渾身の後ろ回し蹴りが薙払う。 三秒が経過。 だが今度こそ崩された体勢にクーヤの駆る純白のアヴ・カムゥが巨大な長剣を振り下ろす。 「ぐ……っ!!」 辛うじて大剣巳六を翳し受け止め、しかし抑え込まれた。 四秒が経過。 そこに無数の力が降り注ぐ。 うたわれるものの法術。MOONの不可視の力。まじかるアンティークの魔法。ナイトライターの吸血鬼達の力。 一瞬で黄金の鎧に無数のひび割れが走り幾つもの穴が穿たれる。 五秒が経過。 Routeの那須宗一が銃を連射する。一射目は鎧を穿ち二射目が重なり鎧を破り、三射目が重なり心臓上の肋骨をへし折り逸れた。 続けて右からAIRの平安武士・柳也が古風な刀を、左から誰彼の強化兵・蝉丸が跋扈の剣を、 アヴ・カムゥから飛び降りてきたKANONの魔物を狩る者・川澄舞が上方から剣を突き刺した。 無数のヒビに覆われた鎧が、砕け散った。幻夜は血反吐を吐いた。 六秒が経過。 柳也が、坂神蝉丸が、川澄舞が跳び退く。クーヤのアヴ・カムゥも退き、幻夜は力無く膝を付く。 そこに影が落ちた。 見上げるとそこにはハクオロとディー、二柱のウィツァルネミテアが百mに及ぼうかという巨大な体を震わせていた。 二撃の神の拳が幻夜を叩き潰さんと降臨し―― 七秒が経過。 「懐中時計型航時機『カシオペア』起動」 自らの出した全ての支給品を何とか使いこなす程度の能力で辛うじて計算及び操作を実行。 サプライズパーティーの張った、固有結界内に満ちた膨大な魔力を利用。これが彼女の勝機。 派手好き地獄紳士『666』、衝撃のネコミミストと共に僅か二秒間の疑似時間停止を達成。 「うあああああああああああああああああああああああっ」 ネコミミスト、絶叫と共に足から衝撃波を噴射。 20m強の距離と無数の障害を一秒で詰め、一秒で落下しながら手に衝撃波を充填して狙いを定める。 ――そして時は動き出す。 ネコミミストの右手から衝撃波が放たれる。前触れの無いほぼ零距離からの限りなく零秒に近い攻撃。 避けられるはずなどなかった。 (ぁ…………) だが、外した。 空中の不安定な姿勢からの一撃は顔面の半分を抉るだけに留まってしまったのだ。 サプライズパーティーが仰け反り距離が離れ周囲のハカロワ軍勢がネコミミストを視認し勝機が失われ―― 「まだっ」 突きだした左手が、サプライズパーティーの喉元を掴んだ。 勝利を掴む左手。 零距離から放たれた衝撃波は、今度こそサプライズパーティーの頸部を吹き飛ばした。 同時に、二柱のウィツァルネミテアの拳が大地を穿った。 次の瞬間、固有結界により顕れていた全ての存在が消え去った。      ◇ ◇ ◇ 勝因を語るならそれはきっと、サプライズパーティーが数の差を埋められなかった事だろう。 サプライズパーティーは確かに戦力の差を埋め、それどころか大幅に逆転する事が出来た。 だがそれはあくまで戦闘員の差。 呼び出された増援はあくまでサプライズパーティーの力として呼び出されたのに過ぎなかった。 バトルロワイアルにおいて集団が強くなるのは、そこに多くの運命<フラグ>が集うからである。 バトルロワイアルの残酷に抗う為の運命<フラグ>が個々に覚醒を、奇跡を、ほんの僅かな偶然を。 それすら無くとも一人一人の行動が小さな何かを為し、積み重なって大きなうねりとなるのだ。 サプライズパーティーの数は結局の所とてつもなく強大な力でしかなかった。 それはネコミミスト達三人を打ち破るには、何かが欠けた力だったのだ。      ◇ ◇ ◇ 「幻夜ぁ!!」 戦いを終えたネコミミストが慌てて駆け戻る。 そこに広がっているのは無惨な、血溜まり。 幻夜・フォン・ボーツスレーの末路を示す光景。 あの黄金の鎧は無惨に砕け散り、その下の傷を露わにしている。 胸には二閃の切り傷が走り、腹はミンチのように刻まれていた。 頭部のありとあらゆる穴からは血が噴き出し、顔面を血塗れにしていた。 血塗れの顔面は、垣間見える全身の肌は、打撲痕で醜く膨れ上がっていた。 焼かれ、凍り付き、引き裂かれ、打たれ、焦がされ、傷付いていた。 銃弾に折られた肋骨が突き出ていた。 血が吹き出る両脇腹の傷は内臓を幾つも刺し貫き、右肩口から刺し貫かれた傷は脊髄も肋骨も打ち砕いていた。 最後まで剣を手放さなかった両腕は双方とも曲がる筈がない場所で何度も方向を変えていた。 最期まで生き延びるために足掻き退こうとした足は、神の拳に叩き潰され跡形も無く砕け散っていた。 大剣巳六は無数のヒビを浮かべながらも、主の意志を示すように大地に突き立っていた。 そう、幻夜は屈してなどいない。 幻夜は笑っていた。 「――よくやった」 ネコミミストは思わず涙を流す。 「やってない! わたしが、わたしがあそこで仕留め損ねなければ、一撃で仕留めていれば!  あの一瞬が無ければあなたは――」 「そうすれば……彼が生き残れたとでもいうのかい?」 「666……」 よろよろと666が歩み寄る。 流れ弾で負傷したのか脇腹から血を流しているが、どうやら手酷い怪我は無いらしい。 「よく見たまえ、彼の傷を。例え最後のあの巨拳を受けずとも足が残っただけ、どちらにせよ助かるものか」 「で、でもそんな、幻夜は殺されなどしないって……」 ネコミミストは再び幻夜の姿を振り返る。 そこにあるのはきっと、酷い惨殺の図。あまりにも無惨に殺された犠牲者の絵。 (え…………?) そう言うには、幻夜の顔は余りにも太々しかった。 まるで目の前に有る死の暗闇を吹き飛ばすかのように。 「馬鹿め……我らは、勝ったのだぞ。泣くな、笑え、胸を張れ……ネコミミスト!」 「幻夜! でも、あなたは殺されて……」 「まだ……生きておるわ…………たわけめっ」 幻夜は不敵な笑みを浮かべて見せた。 「我は奴に殺されて死ぬのでは、無い。奴を倒し、戦いを勝利で終え……その後で、死ぬのだ」 「そんな…………」 幻夜が死ぬ理由はサプライズパーティーとの戦いで受けた傷が原因だ。 だが戦いの中では死んでいない。戦いが終わってから死んだ。 だから殺されたのではない。 それは屁理屈に過ぎない。 ネコミミストは理解した。最初から幻夜は死を覚悟し、受け入れ、その上で足掻いて見せたのだと。 ウィツァルネミテアの拳より前に受けた傷だけで幻夜は既に致命傷だった。 それでもその場で殺されまいと生き足掻き、僅かな時間を生き延びて見せた。 奴に、負けなかった。 その成果を証明するものは、ここに一つ有った。 『アロー、アロー。みなさんお元気ですか? R-109の放送の時間がやってきました』 昼の放送が始まった。 3人は身動き一つせずにその放送を聞いた。 最後まで、聞き終えた。 その中に幻夜・フォン・ボーツスレーの名は、無かった。 それが彼の勝利の証だった。 「我…………ら……カハッ」 「ああ。私達は、勝ったのだ」 改めて勝利宣言をしようとして血を吐いた幻夜の言葉を継いで、666が宣言した。 「私達は……勝ったのだ…………」 「幻夜……666…………」 ネコミミストは気付いた。 666の残された左目が涙を流している事に。 666は悲しげに、それでも誇らしげな笑みを浮かべている事に。 「私達の自分の命はまだ残され、二人の仲間が居るのだ。第二回放送さえ乗り越えた仲間だ。  君達にはまだ同胞も居る。私達はまだ多くを残しているんだ、それを喜べばいいさ」 「あ…………」 ネコミミストは気付いた。 今の第二回放送で、LSロワのボマーの名が呼ばれた。 その前の第一回放送では温泉少女と深淵の名が呼ばれた。 LSロワで残ったのはもう、666一人だけだ。 (そうだ……目の前の幻夜や、あの男達だけじゃない。このロワの何処かで何人、何十人も死んでいるんだ……) その事に気づき、ネコミミストは打ちのめされた。 666もきっと、第一回放送でLSロワの仲間が残り一人になって平静で居られたはずはないのだ。 それなのに666は焦って動き回ろうともせず、ネコミミストの事を気遣い隠れて逃げ延びた。 冷静に、この島で会ったばかりの仲間が死地に踏み入るのを止めてくれた。 「わたしにはまだ……多くが残っている……」 ネコミミストの独白を聞いて、倒れ伏している幻夜が再び、もう一度笑って見せた。 こみ上げる血の塊を飲み下し、死の寸前の体を揺らして。 「そうだたわけめ……だから我らは、上を向いて笑えばいいのだ…………」 ここに勝者有りと傲慢に。 「くはっ、はは……はははははは……ははは…………はは……は……」 高らかに幻夜が笑い。 「ふふ……くす、ふふふ、ふふ…………」 666は涙を拭うと、ネコミミストの肩を抱いて静かに優しげに笑い。 「う……ぐすっ…………う……」 ネコミミストは。 「う……く……くく……あはっ、はは……うっ……はは……あはは…………」 涙をぼろぼろと零しながら、それでも笑った。 かくて勝者は不敵に笑う。 &color(red){【サプライズパーティー@葉鍵ロワ3 死亡】} &color(red){【幻夜・フォン・ボーツスレー@アニロワ2nd 死亡】} サプライズパーティーの永遠神剣第六位『冥加』と支給品一式が転がっています。 幻夜・フォン・ボーツスレーの巳六@舞-HiMEがヒビだらけで地に突き立っています。 幻夜の身につけている黄金の鎧@Fateは砕かれています。 支給品一式×2、未定支給品×1(本人確認済み)、未定支給品×2(未確認)、ゲドー・ザ・マジシャンの首輪は、 戦闘前に置いているので無傷のまま残っています。 【日中】【E-5 学校跡地】 【衝撃のネコミミスト@アニ2nd】 【装備】:拡声器 【所持品】:支給品一式 【状態】:精神的に消耗。 【思考・行動】 基本:殺し合いに乗るつもりは無い。前に進む。 1:スクライドの遺志を継ぎ、牙なき人の剣になる。積極的にマーダーキラー路線。 2:666を今のところ信用。 3:熱血王子と再会したら、今度こそ彼を止める。 ※衝撃波を使えます。掌からだけでなく、足の裏からも出せるようになりました。 ※「大あばれ鉄槌」を幼女好きの変態と勘違いしています。 【派手好き地獄紳士666@LSロワ】 【装備】:ゲート・オブ・バビロン@アニロワ2nd(※特殊仕様) 【所持品】:支給品一式 【状態】:右顔面に刀傷(右目失明)、身体中に細かい掠り傷。脇腹に浅い傷。魔力消費(小)。       精神的には割と充足。 【思考・行動】 基本:衝撃のネコミミストを地獄に落とし且つ狂わせずに生かす。ネコミミスト心から愛してる。 0:ネコミミストの仰せのままに。 1:ネコミミストを護りつつ、出来るだけ精神的に傷付く方向に陰ながら誘導する。 2:ネコミミストに愛されるよう務める。 3:死ぬ時は出来るだけネコミミストの心に傷を残す形で死ぬ。 ※ゲート・オブ・バビロンで出せるアイテムをどれも『一応は何とか使いこなせ』ます。  エリクシールは1本使用済みです(残り1本)。 ※「大あばれ鉄槌」を(ロリ的に)危険人物と断定しました。 |198:[[大いなる意思(後編)]]|投下順に読む|200:[[風雲?ロワ本編?何それ?]]| |198:[[大いなる意思(後編)]]|時系列順に読む|200:[[風雲?ロワ本編?何それ?]]| |179:[[それぞれの意地ゆえに]]|衝撃のネコミミスト|220:[[さよならは言わないで。だって――(前編)]]| |179:[[それぞれの意地ゆえに]]|派手好き地獄紳士666|220:[[さよならは言わないで。だって――(前編)]]| |179:[[それぞれの意地ゆえに]]|&color(red){幻夜・フォン・ボーツスレー}|| |179:[[それぞれの意地ゆえに]]|&color(red){サプライズパーティー}|| ----

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