名状しがたき名も無き者

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誰もいない、交差点。 その中央に、突如として1つの光の柱が現れる。 それは人一人がすっぽりと包まれるにはちょうどいいほどの大きさを持ち、辺りを照らす。 光の柱はやがて、何重にもかぶせられた薄布を取り払うかのように、静かに虚空の中にほぐれ消え去った。 その後に、残されたもの。 1人の、黒いローブに包まれた、人影。 そのローブの下から覗ける、ぎょろりとした眼光。 ローブが、突如として崩れ去った。 否、これは崩れ去ったのはローブそのものではない。 ローブのその下の、肉体が崩れ落ちているのだ。 「……へへ……へ…………」 プシィーッ!! まるで火山近くの間欠泉から吹き上がった蒸気が、岩石のトンネルをこするかのような奇怪な音が、 ローブの表面から響く。 ローブは、すでにぐらぐらと煮えたぎる、衣服と粘液の中間の物質と化していた。 べちゃりぼちゃりと溶け崩れ、それが地面に黒い水溜りを作る。 その黒い水溜りに落ちる、人の形をした影は、一度瞬きを終えた後にはもう、人の形をしていなかった。 それどころか、生物の形さえも。 ビキビキ、ブチブチ、という不気味な音と共に、その生物の形をしていない何者かは膨脹する。 肉の表面からは無数の半ば液体化した腐肉色の泡がボコボコと吹き上がり、 その隙間からはまた新たな肉色の泡が伸び上がる。 吹き上がり、野放図にその質量を増幅させる腐肉のスライムは、刹那。 一気にその肉を中央に寄せ集め、伸び上がった。 ただれた肉のスライムは球状に変形し、その球からは五つの突起が伸び上がる。 そのうち二つは地面に着き、球体の本体を宙に持ち上げる。 そのうち二つは、球体の側面から生え、直ちに先端が裂けて巨大な爪を作り上げる。 そして最後の一つの突起は、球体の上部から伸び上がり、その中ほどには裂け目と二つの穴が出来上がる。 百足の足を思わせる歯列が、裂け目の上下から一気に生え揃い、二つの穴の中にはオレンジ色の球体が生成される。 いつの間にか、肉色のスライムは人間の形を取り戻していた。 その身長が優に3mを越え、しかも全身が筋肉を丸出しにしたようにも見える皮膚で覆われ、 かつ明らかに過剰とさえ言えるほどの超攻撃力を臭わせる巨大な鉤爪を両手両足に備えていることさえ無視すれば、 「人間の形」と言ってもまあ差し支えはあるまい。 その肉色のスライムは、彼のもといたスレッドの言葉を使えば、こう言い表すことが出来よう。 すなわち、「エクスフィギュア」と。 エクスフィギュアの胸の上部から、頭部と思わしき突起のてっぺんまで、肉色の皮膚が一気に裂ける。 その中から、蝶が羽化するかのようにして生え出てきたもの…… それは、完全に「イッちまっている」目つきをした、1人の青年の裸の上半身であった。 エクスフィギュア上部からまるで冬虫夏草のように生え出た男は、笑った。 嗤った。 これから我が身を駆け巡るであろう、快感の予感にその身を打ち震わせて。 「キヒヘハハハハハハハハハハハ!」とも、「グフュエヘヘヘヘヘヘヘ!」とも、 「フヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!」とも、どうとでも表現できそうで、けれどもやはり筆舌には尽くせぬ奇怪な笑い声で、 彼は笑う。 彼の頭部にもし一つバンダナでも巻けば、多くの者は我が目を疑わざるを得ないような事態になっていたであろう。 彼はグリッド……すなわち、テイルズロワでその翼をはかなく散らせた、あの青年。 しかし、「グリッド」の中身はもう、「グリッド」であるはずもなく。 「最高だ……最高だぜ畜生が! ヒャハハハハハハハハハハハハ!!! あの野郎がいきなり俺様を呼びやがったと思ったら、『ここで参加者を好きなだけ殺してもいい』だとよ! ざけんじゃねえぞあのゲリクソ野郎が!!!」 そのエクスフィギュアは、大地を殴りつける。 叩きつけられた彼の拳を爆心地として、地面に一気にひび割れが走った。 ぐちゅり、ぐちゅりと彼のいびつな拳が、内臓のように蠕動する。 これ以上ないほどの愉悦が、これ以上ないほどの憤激に変わるまで、そう長い時間は要らなかった。 「ここで他にいるブタ野郎どもを思う存分ぶち殺していいってのぁなかなか愉快な話だが、 誰かに指図されてやんのは気に食わねえ……気に食わねえんだよクソボケが!! 次にテメエにあったらブチ殺す! 生皮引っぺがして筋肉を一つ一つ引き裂いて内臓をうどんみてえに引きずり出して テメエのチンポコをぶっこ抜いてキンタマに五寸釘をブチ込んでやらぁ!!!」 天に向け、品性下劣としか言いようのない最低の罵言を吐くエクスフィギュア。 だがそれもまた無理もないことか。 先ほど自らのいたスレッドから強制転移を受け、いきなり「下界のバトルロワイアルに参加して来い」と命じられた。 こんな扱いを受ければ、全く不快に思わない人種がいる方が珍しかろう。 もっとも、彼の場合「誰かの勝手な都合で呼び出されたこと」についてのみ不愉快に感じ、 そして「殺し合いへの参加を強要された事」についてはそれほど不愉快には感じてはいないのだが。 彼の右手が、突如沸騰した。 それは、さながら実体を持った混沌そのもの。 あるときはあぶくのように湧き出てはぱちんぱちんと弾け続ける、数千もの眼球。 あるときは不気味に蠢く触手の束。 あるときは四方八方どこから見ても球形にしか見えない正八面体。 あるときは蛭のようにビチビチとうねる、三つ又に裂けた象のペニス。 彼の右手はそんな不可解かつ常人の浅薄な語彙では表現しきれぬ、謎の物体と化していた。 彼の右手が混沌からようやく、辛うじて秩序のある形を取ることに成功したとき。 そこには、先ほどの巨大な爪を持つ類人猿じみた手は、どこにも存在していなかった。 代わりにそこにあったのは、苦悶の表情を浮かべる肉色の髑髏。 肉色の髑髏は極限まで開かれた顎の中から、長大かつ重厚な舌をびょろりと伸ばして、地平線を睨んでいる。 その舌の先は孔が空いており、すなわち今この肉色の髑髏が繰り出した舌は、中空の筒になっていることが推測できる。 そして、舌の先に空いたその穴からは、濁った高粘度の液体が滲み出している。 どう見ても、その液体は人体……否、まっとうな生命体にとって有益なものだと見えるものではなかった。 「『抑えられないグロ描写衝動』…… エクスフィアと水の民の遺伝子的相互作用を再現して、 更に闇のフィブリルを作用させて出来た純粋培養の酢飯細胞幹体を、 キバヤシ理論とデミテルの呪術で魔改造して俺様の体内で自在に操れるよう超進化を遂げさせた、 最凶最悪の生体融合型兵器…… まさか、もう一度こいつを使う機会が来ようとはなァ!! 『名無し』……『七氏』……それから『ナナシ』! この俺様を過去ログの闇の最深部に幽閉しただけで、安心したのは大間違いだぜ! フヘヘヘヘヘヘ……ヒャァッハハハハハハハハハハハハハァ――――ッ!!!」 エクスフィギュアは、突如としてその肉色の髑髏の舌を街路樹に向け、固定した。 肉色の髑髏の目が、きらりと光り。 次の瞬間には髑髏の舌の先から、例の粘液が発射された。 それは粘液とは言え、あまりに射出速度が高速。 もはや純粋な破壊力だけでも鉛の弾丸に匹敵しようかと言う勢いで、街路樹を幹の中ほどから爆散させる。 街路樹を、たちまちのうちに悪臭を放つでゅるでゅるの液体に変えながら。 宙に吹き飛ばされた街路樹の上半分が地面に着くころ。 街路樹の上半分は、すでに原型をとどめている箇所など一箇所もなく。 それは、何も知らぬ人間が見れば、ただ大量の吐瀉物が地面から降って来ただけのようにも見えるだろう。 その地面に広がった吐瀉物は、元は街路樹だったと気付くことなくして。 地面に辛うじて残された街路樹の下半分も、ぐらぐらと沸騰しながら流れ落ちるその中。 頭部からグリッドの上半身を生やしたエクスフィギュアは、満足げに狂った微笑みを浮かべる。 「……いいぜ、砲身の変形具合も狙いも、毒液のブレンドも俺様の狙った通りじゃねえか! 俺様のカンは、まだまだ鈍っちゃいねえ!! キヒャハハハハハハハハハハハハハ!!! 見ろよあの街路樹! ブタのゲロみてえじゃねえかよ!!」 この場には自分以外誰もいないというのに、このエクスフィギュアは先ほどから誰とも知れぬ相手に叫ぶ。 3mを優に越える巨体から、悪夢のような笑い声が聞こえるその様子は、まさに悪趣味としか言いようがあるまい。 その笑い声が収まるまでには、およそ1分近い時間が必要となったであろうか。 ひとしきり笑ったエクスフィギュアは、その右手を再び混沌を経由して、もとの鉤爪を持った巨腕に戻す。 一度だけ深呼吸を行ってから、男は言い聞かせるようにして独り言を放った。 「さて、これからどうするかだが……」 もちろん、基本的な行動は決めている。 他の奴らをブチ殺す。それも、状況が限り惨たらしく、苦痛と恐怖を極限まで与えた上で。 そのためにはどうするか? もちろん、偵察を行わねばなるまい。 エクスフィギュアは、その巨大な鉤爪を器用に操り、体内に取り込んであった支給品入りの袋を取り出す。 その中に入っていた地図を、これまた器用に開いてみせて、この部隊の把握にとりかかる。 地図を参照するに、自分のこの居場所はG5あたりか。 エクスフィギュアは更にその周囲を見渡して、にやりと顔を歪める。 彼とて狂人ではあるが、腐ってもパロロワのSS職人。 地図を一瞥すれば、激戦区と思しき地形はおよそ推測が付く。 幸いにも、ここからならば激戦区と思わしき地区はかなり近い。 ブチ殺しまくり、決定。 では、そのブチ殺しを実行するための、『抑えられないグロ描写衝動』の形状は何にしようか? 毒液の射出量も射出速度も桁外れの、ひたすら大火力のみを追い求めた『メガグランチャー』形態でいくか? 毒液をそれなりの速度で発射でき、何より弾幕を張るには持って来いの『ウージーサブマシンガン』形態にするか? はたまた、最近ハマった某アニメに出てきたあれを真似して、広範囲掃射に特化した『庭師の如雨露』形態で決めるか? それから、体内でブレンドする毒も決めなければならない。 全身を腐食させ、最終的には悪臭を放つ下痢便のような汚物に相手を変える毒か? 毒液を受けた部位から蛆虫やゴキブリが湧いて、体内から蟲に食い殺されるような毒にするか? はたまた、喰らった瞬間口と肛門から内臓をウンコやゲロのように飛び散らす羽目になる、あの毒を調合するか? 彼は地図をもう一度小器用に懐にしまいこみながら考え、そして結論した。 砲身本体の形状は、先ほどの試射に使ったあの形態……『スナイパーライフル』形態で決定。 そしてブレンドする毒は、あまり捻らずに即効性の麻痺毒をチョイス。 市街地戦では、このチョイスがおそらく最も適切であろう。 市街地では当然のごとく建造物が多く存在する。その建造物が遮蔽となり、死角になる箇所も決して少なくはない。 ならば、射撃精度なら随一の『スナイパーライフル』形態での死角からの狙撃で、 獲物を一撃必殺で仕留めるのが最も戦術的に優れたチョイスであろう。 無論、こんな巨大な体では気配を消しきるのは難しい相談だが、見つかったならばそれはそれ。 相手がこの異形の姿に恐れをなして逃げたなら、その背中を狙撃すればいい。 向かってくるならば、接近戦に向いた形状に砲身を変形させて、白兵戦を挑む。 最終的に麻痺毒を撃ち込むなどして、相手の抵抗力を奪えばいい。それだけのことだ。 そうしたなら、後に待つのは「お待ちかねの時間」である。 「最初の獲物はどうやってブチ殺すかなァ? 肉をカッ捌いて骨だけブッコ抜くか? 目ン玉とキンタマをくりぬいて、位置を逆にしてやんのも面白そうだし、 生きたまんま臓物を抉り取って、ぶちまけた後内臓のジズソーパズルと洒落込むのもゾクゾク来るぜ! たまんねえなぁ……たまんねえぜぇ!! ヒヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!! フヘハハハハハハハハハハハハ!!!」 げらげらと笑い転げるエクスフィギュアは、そして。 その右腕を先ほども使ったあの肉の髑髏の形態に変化させながら、その血みどろの歩みを始める事となる。 彼の名は、「nanasinn」。 鬱展開とグロ描写にかけてはLSロワと双璧をなすとされるテイルズロワ…… それを牽引した「四凶」の一角。 そして。 その「四凶」の他の3人ですら眉をひそめるほどに、あまりにも下劣かつ残虐で冷徹な、 傍若無人過ぎる振る舞いゆえに。 第六クールの中途より、他の3人の手により過去ログの闇の最深部に幽閉された、 最凶かつ最狂の書き手にして殺人鬼であることを知る者は、この舞台ではそう多くはなかった。 【昼】【G-5 道路】 【nanasinn@テイルズロワ】 【状態】:健康。殺る気120% 【装備】:『抑えられないグロ描写衝動』スナイパーライフル形態+即効性麻痺毒 【道具】:荷物一式、不明支給品×?(未確認) 【思考】 基本:見かけた奴らは皆殺し。ジョーカーとして招かれた自覚・使命感はゼロ 1:状況が許す限り、犠牲者には極限の苦痛と恐怖を与えてから殺す 2:そのためならば手段は一切選ばない 3:テイルズロワの他書き手に仲間意識はない(むしろ過去ログの闇に幽閉したことを恨んでいる)。やっぱり殺す 4:最終的には主催者も殺す。いきなり呼ばれてムカついている 5:自分の力が暴走しても、それはそれで面白い(下記参照) 【備考】 現在nanasinnは自身が「激戦区」と予想した場所へ移動中。詳細な行く先は以降の書き手に委ねます 【ロワ内性別】男 【外見設定】頭部からグリッドの上半身が生えた、身長3mを越えるエクスフィギュア 【特徴その他】 異能『抑えられないグロ描写衝動』: 自身の肉体を変形させることで、毒液を発射する能力を持つ腐肉製の火器を展開する。 砲身の形態や毒液のブレンドを変えることで、毒液の射程や効果範囲、毒の効果などを自在に調整可能。 高速で射出される毒液の持つ運動エネルギーで、対象を物理的に破壊・殺傷することも一応可能。 nanasinnは相手に苦痛や恐怖を与えることを主目的に、この異能を用いる。 ただしブレンドされる毒液は生命体由来の物質にしか効果はなく、石、金属、プラスチックなどとは全く反応しない。 またnanasinnはこの能力を完全に制御しておらず、暴走の危険を常に伴うが、 本人は暴走したらしたで、それもまた面白いと思っている。 |171:[[ハートブレイク・ショット]]|投下順に読む|173:[[没ネタから通しになった話]]| |171:[[ハートブレイク・ショット]]|時系列順に読む|174:[[これが過疎の力だ!]]| |141:[[黄昏、来まくって]]|nanasinn|174:[[これが過疎の力だ!]]|
誰もいない、交差点。 その中央に、突如として1つの光の柱が現れる。 それは人一人がすっぽりと包まれるにはちょうどいいほどの大きさを持ち、辺りを照らす。 光の柱はやがて、何重にもかぶせられた薄布を取り払うかのように、静かに虚空の中にほぐれ消え去った。 その後に、残されたもの。 1人の、黒いローブに包まれた、人影。 そのローブの下から覗ける、ぎょろりとした眼光。 ローブが、突如として崩れ去った。 否、これは崩れ去ったのはローブそのものではない。 ローブのその下の、肉体が崩れ落ちているのだ。 「……へへ……へ…………」 プシィーッ!! まるで火山近くの間欠泉から吹き上がった蒸気が、岩石のトンネルをこするかのような奇怪な音が、 ローブの表面から響く。 ローブは、すでにぐらぐらと煮えたぎる、衣服と粘液の中間の物質と化していた。 べちゃりぼちゃりと溶け崩れ、それが地面に黒い水溜りを作る。 その黒い水溜りに落ちる、人の形をした影は、一度瞬きを終えた後にはもう、人の形をしていなかった。 それどころか、生物の形さえも。 ビキビキ、ブチブチ、という不気味な音と共に、その生物の形をしていない何者かは膨脹する。 肉の表面からは無数の半ば液体化した腐肉色の泡がボコボコと吹き上がり、 その隙間からはまた新たな肉色の泡が伸び上がる。 吹き上がり、野放図にその質量を増幅させる腐肉のスライムは、刹那。 一気にその肉を中央に寄せ集め、伸び上がった。 ただれた肉のスライムは球状に変形し、その球からは五つの突起が伸び上がる。 そのうち二つは地面に着き、球体の本体を宙に持ち上げる。 そのうち二つは、球体の側面から生え、直ちに先端が裂けて巨大な爪を作り上げる。 そして最後の一つの突起は、球体の上部から伸び上がり、その中ほどには裂け目と二つの穴が出来上がる。 百足の足を思わせる歯列が、裂け目の上下から一気に生え揃い、二つの穴の中にはオレンジ色の球体が生成される。 いつの間にか、肉色のスライムは人間の形を取り戻していた。 その身長が優に3mを越え、しかも全身が筋肉を丸出しにしたようにも見える皮膚で覆われ、 かつ明らかに過剰とさえ言えるほどの超攻撃力を臭わせる巨大な鉤爪を両手両足に備えていることさえ無視すれば、 「人間の形」と言ってもまあ差し支えはあるまい。 その肉色のスライムは、彼のもといたスレッドの言葉を使えば、こう言い表すことが出来よう。 すなわち、「エクスフィギュア」と。 エクスフィギュアの胸の上部から、頭部と思わしき突起のてっぺんまで、肉色の皮膚が一気に裂ける。 その中から、蝶が羽化するかのようにして生え出てきたもの…… それは、完全に「イッちまっている」目つきをした、1人の青年の裸の上半身であった。 エクスフィギュア上部からまるで冬虫夏草のように生え出た男は、笑った。 嗤った。 これから我が身を駆け巡るであろう、快感の予感にその身を打ち震わせて。 「キヒヘハハハハハハハハハハハ!」とも、「グフュエヘヘヘヘヘヘヘ!」とも、 「フヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!」とも、どうとでも表現できそうで、けれどもやはり筆舌には尽くせぬ奇怪な笑い声で、 彼は笑う。 彼の頭部にもし一つバンダナでも巻けば、多くの者は我が目を疑わざるを得ないような事態になっていたであろう。 彼はグリッド……すなわち、テイルズロワでその翼をはかなく散らせた、あの青年。 しかし、「グリッド」の中身はもう、「グリッド」であるはずもなく。 「最高だ……最高だぜ畜生が! ヒャハハハハハハハハハハハハ!!! あの野郎がいきなり俺様を呼びやがったと思ったら、『ここで参加者を好きなだけ殺してもいい』だとよ! ざけんじゃねえぞあのゲリクソ野郎が!!!」 そのエクスフィギュアは、大地を殴りつける。 叩きつけられた彼の拳を爆心地として、地面に一気にひび割れが走った。 ぐちゅり、ぐちゅりと彼のいびつな拳が、内臓のように蠕動する。 これ以上ないほどの愉悦が、これ以上ないほどの憤激に変わるまで、そう長い時間は要らなかった。 「ここで他にいるブタ野郎どもを思う存分ぶち殺していいってのぁなかなか愉快な話だが、 誰かに指図されてやんのは気に食わねえ……気に食わねえんだよクソボケが!! 次にテメエにあったらブチ殺す! 生皮引っぺがして筋肉を一つ一つ引き裂いて内臓をうどんみてえに引きずり出して テメエのチンポコをぶっこ抜いてキンタマに五寸釘をブチ込んでやらぁ!!!」 天に向け、品性下劣としか言いようのない最低の罵言を吐くエクスフィギュア。 だがそれもまた無理もないことか。 先ほど自らのいたスレッドから強制転移を受け、いきなり「下界のバトルロワイアルに参加して来い」と命じられた。 こんな扱いを受ければ、全く不快に思わない人種がいる方が珍しかろう。 もっとも、彼の場合「誰かの勝手な都合で呼び出されたこと」についてのみ不愉快に感じ、 そして「殺し合いへの参加を強要された事」についてはそれほど不愉快には感じてはいないのだが。 彼の右手が、突如沸騰した。 それは、さながら実体を持った混沌そのもの。 あるときはあぶくのように湧き出てはぱちんぱちんと弾け続ける、数千もの眼球。 あるときは不気味に蠢く触手の束。 あるときは四方八方どこから見ても球形にしか見えない正八面体。 あるときは蛭のようにビチビチとうねる、三つ又に裂けた象のペニス。 彼の右手はそんな不可解かつ常人の浅薄な語彙では表現しきれぬ、謎の物体と化していた。 彼の右手が混沌からようやく、辛うじて秩序のある形を取ることに成功したとき。 そこには、先ほどの巨大な爪を持つ類人猿じみた手は、どこにも存在していなかった。 代わりにそこにあったのは、苦悶の表情を浮かべる肉色の髑髏。 肉色の髑髏は極限まで開かれた顎の中から、長大かつ重厚な舌をびょろりと伸ばして、地平線を睨んでいる。 その舌の先は孔が空いており、すなわち今この肉色の髑髏が繰り出した舌は、中空の筒になっていることが推測できる。 そして、舌の先に空いたその穴からは、濁った高粘度の液体が滲み出している。 どう見ても、その液体は人体……否、まっとうな生命体にとって有益なものだと見えるものではなかった。 「『抑えられないグロ描写衝動』…… エクスフィアと水の民の遺伝子的相互作用を再現して、 更に闇のフィブリルを作用させて出来た純粋培養の酢飯細胞幹体を、 キバヤシ理論とデミテルの呪術で魔改造して俺様の体内で自在に操れるよう超進化を遂げさせた、 最凶最悪の生体融合型兵器…… まさか、もう一度こいつを使う機会が来ようとはなァ!! 『名無し』……『七氏』……それから『ナナシ』! この俺様を過去ログの闇の最深部に幽閉しただけで、安心したのは大間違いだぜ! フヘヘヘヘヘヘ……ヒャァッハハハハハハハハハハハハハァ――――ッ!!!」 エクスフィギュアは、突如としてその肉色の髑髏の舌を街路樹に向け、固定した。 肉色の髑髏の目が、きらりと光り。 次の瞬間には髑髏の舌の先から、例の粘液が発射された。 それは粘液とは言え、あまりに射出速度が高速。 もはや純粋な破壊力だけでも鉛の弾丸に匹敵しようかと言う勢いで、街路樹を幹の中ほどから爆散させる。 街路樹を、たちまちのうちに悪臭を放つでゅるでゅるの液体に変えながら。 宙に吹き飛ばされた街路樹の上半分が地面に着くころ。 街路樹の上半分は、すでに原型をとどめている箇所など一箇所もなく。 それは、何も知らぬ人間が見れば、ただ大量の吐瀉物が地面から降って来ただけのようにも見えるだろう。 その地面に広がった吐瀉物は、元は街路樹だったと気付くことなくして。 地面に辛うじて残された街路樹の下半分も、ぐらぐらと沸騰しながら流れ落ちるその中。 頭部からグリッドの上半身を生やしたエクスフィギュアは、満足げに狂った微笑みを浮かべる。 「……いいぜ、砲身の変形具合も狙いも、毒液のブレンドも俺様の狙った通りじゃねえか! 俺様のカンは、まだまだ鈍っちゃいねえ!! キヒャハハハハハハハハハハハハハ!!! 見ろよあの街路樹! ブタのゲロみてえじゃねえかよ!!」 この場には自分以外誰もいないというのに、このエクスフィギュアは先ほどから誰とも知れぬ相手に叫ぶ。 3mを優に越える巨体から、悪夢のような笑い声が聞こえるその様子は、まさに悪趣味としか言いようがあるまい。 その笑い声が収まるまでには、およそ1分近い時間が必要となったであろうか。 ひとしきり笑ったエクスフィギュアは、その右手を再び混沌を経由して、もとの鉤爪を持った巨腕に戻す。 一度だけ深呼吸を行ってから、男は言い聞かせるようにして独り言を放った。 「さて、これからどうするかだが……」 もちろん、基本的な行動は決めている。 他の奴らをブチ殺す。それも、状況が限り惨たらしく、苦痛と恐怖を極限まで与えた上で。 そのためにはどうするか? もちろん、偵察を行わねばなるまい。 エクスフィギュアは、その巨大な鉤爪を器用に操り、体内に取り込んであった支給品入りの袋を取り出す。 その中に入っていた地図を、これまた器用に開いてみせて、この部隊の把握にとりかかる。 地図を参照するに、自分のこの居場所はG5あたりか。 エクスフィギュアは更にその周囲を見渡して、にやりと顔を歪める。 彼とて狂人ではあるが、腐ってもパロロワのSS職人。 地図を一瞥すれば、激戦区と思しき地形はおよそ推測が付く。 幸いにも、ここからならば激戦区と思わしき地区はかなり近い。 ブチ殺しまくり、決定。 では、そのブチ殺しを実行するための、『抑えられないグロ描写衝動』の形状は何にしようか? 毒液の射出量も射出速度も桁外れの、ひたすら大火力のみを追い求めた『メガグランチャー』形態でいくか? 毒液をそれなりの速度で発射でき、何より弾幕を張るには持って来いの『ウージーサブマシンガン』形態にするか? はたまた、最近ハマった某アニメに出てきたあれを真似して、広範囲掃射に特化した『庭師の如雨露』形態で決めるか? それから、体内でブレンドする毒も決めなければならない。 全身を腐食させ、最終的には悪臭を放つ下痢便のような汚物に相手を変える毒か? 毒液を受けた部位から蛆虫やゴキブリが湧いて、体内から蟲に食い殺されるような毒にするか? はたまた、喰らった瞬間口と肛門から内臓をウンコやゲロのように飛び散らす羽目になる、あの毒を調合するか? 彼は地図をもう一度小器用に懐にしまいこみながら考え、そして結論した。 砲身本体の形状は、先ほどの試射に使ったあの形態……『スナイパーライフル』形態で決定。 そしてブレンドする毒は、あまり捻らずに即効性の麻痺毒をチョイス。 市街地戦では、このチョイスがおそらく最も適切であろう。 市街地では当然のごとく建造物が多く存在する。その建造物が遮蔽となり、死角になる箇所も決して少なくはない。 ならば、射撃精度なら随一の『スナイパーライフル』形態での死角からの狙撃で、 獲物を一撃必殺で仕留めるのが最も戦術的に優れたチョイスであろう。 無論、こんな巨大な体では気配を消しきるのは難しい相談だが、見つかったならばそれはそれ。 相手がこの異形の姿に恐れをなして逃げたなら、その背中を狙撃すればいい。 向かってくるならば、接近戦に向いた形状に砲身を変形させて、白兵戦を挑む。 最終的に麻痺毒を撃ち込むなどして、相手の抵抗力を奪えばいい。それだけのことだ。 そうしたなら、後に待つのは「お待ちかねの時間」である。 「最初の獲物はどうやってブチ殺すかなァ? 肉をカッ捌いて骨だけブッコ抜くか? 目ン玉とキンタマをくりぬいて、位置を逆にしてやんのも面白そうだし、 生きたまんま臓物を抉り取って、ぶちまけた後内臓のジズソーパズルと洒落込むのもゾクゾク来るぜ! たまんねえなぁ……たまんねえぜぇ!! ヒヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!! フヘハハハハハハハハハハハハ!!!」 げらげらと笑い転げるエクスフィギュアは、そして。 その右腕を先ほども使ったあの肉の髑髏の形態に変化させながら、その血みどろの歩みを始める事となる。 彼の名は、「nanasinn」。 鬱展開とグロ描写にかけてはLSロワと双璧をなすとされるテイルズロワ…… それを牽引した「四凶」の一角。 そして。 その「四凶」の他の3人ですら眉をひそめるほどに、あまりにも下劣かつ残虐で冷徹な、 傍若無人過ぎる振る舞いゆえに。 第六クールの中途より、他の3人の手により過去ログの闇の最深部に幽閉された、 最凶かつ最狂の書き手にして殺人鬼であることを知る者は、この舞台ではそう多くはなかった。 【昼】【G-5 道路】 【nanasinn@テイルズロワ】 【状態】:健康。殺る気120% 【装備】:『抑えられないグロ描写衝動』スナイパーライフル形態+即効性麻痺毒 【道具】:荷物一式、不明支給品×?(未確認) 【思考】 基本:見かけた奴らは皆殺し。ジョーカーとして招かれた自覚・使命感はゼロ 1:状況が許す限り、犠牲者には極限の苦痛と恐怖を与えてから殺す 2:そのためならば手段は一切選ばない 3:テイルズロワの他書き手に仲間意識はない(むしろ過去ログの闇に幽閉したことを恨んでいる)。やっぱり殺す 4:最終的には主催者も殺す。いきなり呼ばれてムカついている 5:自分の力が暴走しても、それはそれで面白い(下記参照) 【備考】 現在nanasinnは自身が「激戦区」と予想した場所へ移動中。詳細な行く先は以降の書き手に委ねます 【ロワ内性別】男 【外見設定】頭部からグリッドの上半身が生えた、身長3mを越えるエクスフィギュア 【特徴その他】 異能『抑えられないグロ描写衝動』: 自身の肉体を変形させることで、毒液を発射する能力を持つ腐肉製の火器を展開する。 砲身の形態や毒液のブレンドを変えることで、毒液の射程や効果範囲、毒の効果などを自在に調整可能。 高速で射出される毒液の持つ運動エネルギーで、対象を物理的に破壊・殺傷することも一応可能。 nanasinnは相手に苦痛や恐怖を与えることを主目的に、この異能を用いる。 ただしブレンドされる毒液は生命体由来の物質にしか効果はなく、石、金属、プラスチックなどとは全く反応しない。 またnanasinnはこの能力を完全に制御しておらず、暴走の危険を常に伴うが、 本人は暴走したらしたで、それもまた面白いと思っている。 |172:[[ハートブレイク・ショット]]|投下順に読む|174:[[没ネタから通しになった話]]| |172:[[ハートブレイク・ショット]]|時系列順に読む|175:[[これが過疎の力だ!]]| |142:[[黄昏、来まくって]]|nanasinn|175:[[これが過疎の力だ!]]|

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