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シンブレイカー 第二十話

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匿名ユーザー

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 それからの日々は、私にとってまるで夢の中のできごとのようで、
常に温かい毛布が身体の表面を包んでいるような、不思議で安らぐ感覚が続いていた。
 見慣れたはずの自室の風景も、窓から見える田舎道も、川のせせらぎ、街中の喧騒も、
本来ならば全て失われていたはずのものだった。肺臓を満たす蒸し暑い夏の空気も、額から垂れる汗も、
友人たちとの他愛のない会話も、全ては私の世界には存在するはずのないものだったのだ。
 過去の記憶がふとした瞬間に頭をよぎり、そのたびに私は蘇ったのだという実感を得て、
またそのつど胸いっぱいの感謝の念と闘志がめらめらと湧き上がってくる。
 耕平、恵さん、高天原、八意、因幡……。大勢の人たちの支えが無ければ私はこうして立っていることも
できていない。
 でも、あらためて考えてみると、そんなのは当たり前のことなのだ。
 人は自分の想像以上に多くの人に支えられて生きているんだ。私の場合はわかりやすいできごとがあった
だけで、すべての人は10人や20人じゃとても足りない人たちのおかげで生きていられるんだ。
 そう思うとますます胸が温かくなり、地面を踏みしめる両足に力がみなぎった。
(もう二度と忘れるものか)
 この命は私だけのものじゃない。



 だが溺れる者がどんなにもがこうとも大河の流れを変えることはできない。
何も収穫が無いまま日付だけが進み、次の『×』が襲来すると思われる日が
いよいよ明日というところまで迫ってしまっていた。
 高天原は事務仕事に追われているようで、会うことすらままならないし、
因幡からは有益な情報は引き出せなかった。
 何も前進していない。
 私がときどきハーレーに乗って街外れを駆けるようになったのは、胸を締めつけるような焦燥感を振り払う
ためだったのかもしれない。バイクを停めて休憩しながらそんなことを考えた。
(もし女木戸市を離れたらどうなるのだろう)
 曇り空の下、織星山中腹の休憩所の駐車場で、火傷しそうなほど熱い缶コーヒーをすすりながら私は思った。
自嘲した。そんなことの結果はわかりきっている。
 黒く熱い液体は私の喉を焼き、胃袋に流れ込んだ。それからなんとなく缶を目線の高さまで掲げ、
どうしてこんな苦くて不味いものを人は好むようになったのだろうか。
 きっと、それが苦くて不味く、しかし心地よい香りを放つからだろう。
このままの香りで甘かったなら誰も見向きもしなかったんじゃなかろうか。もしかしたら、
人は苦痛なしには幸福を感じることができないのかもしれない。
 そこまで考えて、なんだか自分には似合わないなという思いがよぎり、私は残りをグイと一気に呑み干した。
 胸の奥が熱かった。



 ……そして、日が暮れ、また昇り、運命の日がやってきた。
 本日正午、女木戸市に第6の『×』が襲来する。



「答えは出たか」
 私を威圧的に見おろしながら、マイケル・サンダースはただそう問いかけてきた。
 私はその質問に答える前に、ぐるりと周囲に集まった人たちの顔を眺めた。天照研究所の一室には、
相対するマイケルと私を取り囲むように八意と一部の職員を除いた全員が揃っていて、そのすべてが、
私の言葉を待っている。 
 集団には因幡も高天原もいた。彼らはともに口を真一文字に結び、熱のこもった、
しかし疑うような色も見える視線で私を見ていた。高天原と目があったとき、私はどうしてか頬がゆるんだ。
 私は一週間前に研究所がフリーメイソンと交わした契約内容を思い返した。
(一週間以内に真実にたどり着かなければ、私を殺す……)
 うつむいた私はそのまま頭を再び目の前のマイケルへと向けた。
「私は私の秘密を知りました」
 静かな部屋に放り出された私の言葉はどのように聞こえたのだろうか。
 私は顔をあげ、マイケルの目を見すえた。
「それでも戦いを選びます」
 すると目の前の大男はゆっくりと目をとじ、また開く。まるで私がその選択をするのが判っていたかのよう
だった。
「おまえがこの世の理を破った大罪人でもか」
「はい」
「この先におまえの想像を絶する苦難がいくつも待ち受けているのが分かっていてもか」
「はい」
「おまえの存在が、街の人たちの害悪であってもか」
「はい」
「おまえは、真実を知ってもなお、おまえの愛する隣人たちと笑いあえるのか」
「はい」
「それはなぜだ」
「私は悪くないからです」
「罪は無いと?」
「一片も」
「ならば審判だ」
 マイケルはそこでくるりと踵をかえして部屋の出口へ向かい、扉の前で立ち止まる。
「思う存分『×』と戦え。その結果に私は従おう」
 そうして彼は静かに部屋を出ていった。



「……転輪経ドライブ、回転数安定。
 タオエンジン内比率正常。
 思考ベースはキリスト教データ13を使用。
 Sジェネレータ出力、起動可能域まで3、2、1、到達。
 シンブレイバー、待機状態に入りました。」
 操縦席の異空間に響く、研究所職員がそう淡々と読み上げる声を聞き流しながら、
私はその中で準備運動をしつつ、考えこんでいた。
 マイケルの言っていた『審判』とはなんなのだろう。
 私はてっきりマイケル自身が手を下してくるのかと思っていたが、あのあと彼は研究所内から姿を消して
しまった。私の戦いを見届けて、その結果で判断するつもりなのだろうか。高天原に意見をきこうと思ったが、
なぜだか彼は張りつめた表情でさっさと行ってしまった。行き先のなくなった質問を因幡にぶつけると、
彼女は「かもね」とひとことだけ返した。
 シンブレイバーの中の空気は暖かくはなく、かといって冷たくもないものだったが、今回はなぜか
そのどっちつかずさに不安を覚えた。正体のわからない息苦しさ……
 私はかぶりをふった。
 何も恐れることはない。肉体的な痛みなんて問題じゃない。
 立ちふさがるものはこの剣で全て斬り伏せてみせる。
 私はシンブレイバーの頭を仰ぎ見た。刃のついた仮面の下の表情は読み取れない。
ふと、この巨人の素顔が気にかかった――
「第6の『×』、出現!」
 突然の大声に私はやや驚きつつも視線を戻した。しかしシンブレイバーはいまだドームの中で
横たわっている状態なので、周囲には施設の内壁とまだ閉じられたままの天井の裏側しか見えない。
私が街の映像を要求する前に目の前の空間にいつものような像が浮かんだ。
 その像は市内の様子を俯瞰したもので、下のほうにこのドームの端が見切れている。
視点は南方を見渡していた。街の果ての方に巨大な黒い塊が見えた。
 職員が報告する。
「『×』は女木戸市南方、三州川周辺に出現。目標の形状は巨大な円環状……車輪です」
「『車輪轢き』でしょうか。保護班は『×』の性質も考慮にいれた作業をお願いします」
 答えたのは高天原だった。どことなく声に張りがないように感じられる。私は少し心配になったが、
今はそんな場合じゃないと自分に言い聞かせる。
「シンブレイバー、出撃してください」
 彼の指示とともに私は巨人を立ち上がらせた。ドームの天井が蓮の花のように開き、私を送り出す。
 操縦席の高い視点から見ると、『×』はまだまだ遠いが、間にある建物よりも巨大なために、
その形状ははっきりわかった。まるで一輪の黒く太い車輪が、まるで観覧車のように建物の向こうにぬっと
頭を出している。
「大きな車輪。どうやって人を処刑するんだろう」
 すると高天原が答えた。
「罪人の四肢を固定し、その上を重い車輪で轢くんです。この刑に処された人はそうして両手両足を
砕かれたあと、車輪に縛り付けられてさらし者にされます」
 私は身震いした。
「そんな残虐な……」
「ええ、非人道的です。『×』は回を追うごとに厳しくなっています。志野さん、どうかお気をつけて」
 私は頷き、シンブレイバーの右脚に付いている大剣を手にとる。一歩踏み出し、かまえた。
抜き身の剣身が紅く輝く。
「いきます」と私。
「ええ」と高天原。
 私は呼吸を静め、叫んだ。
「我に罪無し汝に罪無し! シンブレイバー、いきます!」
 巨人は剣を掲げたまま歩きだす。相手の出方をうかがいながらのその動きはジリジリとした
警戒しながらのものだ。私は集中よりも緊張で呼吸がかすかに震えているのを感じた。
 『×』がわずかに動いた、と報告があった。『×』はその車輪状の体を回転させて
三州川と市街地のあいだで一番高いビルへと近づいたようだった。私はさらに距離をつめる。
 『×』はそれからまたぴたりと止まった。私はその挙動の不気味さに巨人の足をとめ、高天原に訊いた。
「ちょっかい出してもいい? 」
「ちょっかい? 」
「剣を一本投げてみる」
「それは……いいかもしれませんね」
「よし!」
 私は巨人の大剣を地面に刺し(アスファルトが砕けた)、シンブレイバーの両腕に接続されている
やや小型の剣を一本手にとった。すると私の意思を読みとって、柄と刃の接続部が手前に折れ曲がり、
ブーメラン状になる。
 私はそれを『×』に向けて投げ――
「――待ってください! 」
 いきなりの高天原の大声に、あわやブーメランを取り落としそうになった。
 何があったのかと私は訊く。
「『×』の前に、誰かいます! 」
 耳を疑った。
 逃げ遅れた一般人だろうか、研究所職員ならそんなところにいるはずがない。
(じゃあまさか……)
 私は得体のしれない恐怖を感じた。



「観測班、ズームしてください」
 高天原頼人はそう言って、自身も指令室に浮かぶ映像を食い入るように見つめた。
 『×』の目の前にそびえ立つビルの屋上にはたしかに人影があった。
しかしその人物は『×』の目の前にいるにも関わらず、2本の足でしっかりと立ち、車輪の表面を眺めている。
 スーツを着た大柄な男性で、長めの金髪が強い風になびいていた……
(やはり、彼か……!)高天原は歯噛みした。
「マイケルさん!?」
 志野真実の声がスピーカーから飛び出した。
 高天原はマイクに向かって言う。
「志野さん、覚悟してください」
 彼にはマイケルが何のためにそこに立っているのかわかっていた。
「おそらく、この戦いこそが、あなたにとって最もつらいものとなるでしょう」
 そう言って高天原はマイクから離れ、声を張り上げる。
「マイケルとその周辺の精神パタンをモニター、報告おねがいします。一番から!」
 すると部屋の様々な場所から順番に報告の声があがる。
「マイケル自身の精神の性質変化確認、魔学によるものです。
 変化パタンはヤオ増長、しかし全体はキリ――いえ、ユダヤ教です。」
「マイケルの周囲の精神体にも性質変化確認、『×』の持つパタンに近づいています。
 精神体ごとの境界線が曖昧になり、『×』との同一化が進行中です」
「魔学機械に使用されているベースコードを特定しました。コードレクイエム、ディエス・イレ」
「マイケルの体内にブレイクモードの反応を確認」
 そこまで聴いた高天原は片手を掲げ、報告を遮る。
「彼の目的がわかりました」
 彼は再びマイクを手にとる。
「志野さん、選択のときです」



「選択のとき? 」
 私は聞き返した。しかし高天原はそれ以上の言葉は継がず、沈黙する。
仕方なく私は屋上の映像を注視した。
 建物の屋上を俯瞰する映像の中ではマイケル・サンダースが『×』に向かって立っている。
スーツの上着の前を開け、吹きすさぶ強風の中、ただ立つその背には、何か決意のようなものが感じられた。
 するといきなりマイケルは上着を脱ぎすてる。いや上着だけでなく、その下のワイシャツも乱暴にボタンを
引きちぎり、下着すらも脱ぎ、風に乗せて捨て去った。
 露わになったマイケルの上半身は引き締まった筋肉に覆われている。
その鎧のような表面に彼自身の鋼の自制心が表れているように見え、
なんだか服を脱ぐ前よりもその背が大きく感じられた。
 だが私の目を引いたのは彼の肉体の逞しさではなく、背骨に沿って這い上がっているビニールのケーブルを
備えた、彼の両わき腹の後方に埋め込まれた魔学機械だった。私がその痛々しさに思わず視線を反らすと、
今度は太い両腕全体に彫り込まれた複雑なデザインのタトゥーに気がついた。独特な模様はやはり魔学のもの
だろう。私はその凄まじさに驚嘆するよりも、一種の狂気を感じ取って、小さな悲鳴をあげた。
「あれは……!? 」
 高天原が静かに答える。
「ひとことで言えば、カオスマンの古いモデルです。
 マイケルも天照耕平と同様に、かつて魔学のトラブルバスターとして活躍していたことがあるのです。
 そして、今の彼はブレイクモードにあります」
 私はぎょっとする。
「ブレイクモード!? いったいなにを――」
「きました! 」
 私の言葉は中断された。再び屋上の映像に視線をやると、赤い光に包まれたマイケルが片手を『×』
にかざしている。
 そして、信じられないことが起こった。
 マイケルが掲げた右腕に『×』の表面からいきなり生えた触手のようなものが何本も絡みつき、
あっという間に彼の体全体を飲み込んだのだ。直後『車輪轢き』の『×』全体があの赤い光を放ちはじめ、
その身が大きくねじれる。『×』は黒い体を何度も何度もねじり、やがて巨大な角柱となる、と同時に
さらにその横からやや短い2本の角柱が垂直になるように飛び出し、巨大な十字架を形づくる。
 唖然としながら見ていると、さらにその十字架の背面から何かが飛び出した。私はあっと声をあげる。
 それは巨大な一対の翼だった。気づいた直後、十字架の腕が柔らかく垂れ下がり、2本の人間の腕となる。
中央の角柱も表面に凹凸が生まれ、人の姿になった。
 まばたきの直後には、翼を持つ巨人がそこに立っていた。
 私は戦慄した。
 だってあの姿は!
「『大天使 ミカエル』顕現しました! 」高天原の声がした。
「そんな、なんで! 」
 声が裏返っているのを自覚した。
「マイケルのブレイクモードによりミカエルが召喚されました」
「なんで『×』が! 」
「処刑というものはそもそも神聖な行為であり、キリスト教の天使との親和性は非常に高いものなのです。
 それを利用して、マイケルは魔学を用いた『×』との融合を果たしました。
 気をつけてください! 敵は今までのものと違って、知性を持っています! 」
「『敵』……」
「そうです、敵です」
 高天原はそう言い切った。その口調に私は総毛立つほどの恐怖をおぼえる。
「嫌だよ、なんで人と戦わなきゃいけないの! 」
「あれはもう人ではありません、『×』です」
「だってそれって、私に――」
「――『人』殺しじゃあありませんよ」
 口調から、高天原が優しく微笑んでいるのがわかった。私はさらに声を荒らげる。
「ふざけんな! 私は下りる! 」
 しかし彼は無視した。
「ほら、きました! 」
 その声にはっとして前を見ると、目の前に巨大な何かが迫っていた。上体を反らしてなんとか避け、
すれ違ったそれが巨大な西洋剣の切っ先だと知る。その剣を振るったものはシンブレイバーの
すぐ頭上を羽ばたきの音を残して通り過ぎていった。
 私はふり返る。天照研究所の施設上空にそれはいた。
 天使だった。
 視界を分断するほどに巨大な翼を背中から生やした、巨大な人型の存在がそこにあった。
その存在は『×』とは違い、聖なる気に満ち、清浄な光をまとっていた。
 人型はブラックスーツにサングラスをかけ、美しい金の長髪は風とは関係なしになびいている。
その片手には西洋のロングソードを持ち、腰には鞘を提げていた。
 私は圧倒されていた。この存在に刃を向けるのは、たとえどんなに自らの正当性に確信があろうと
間違っているのではないかという疑問を抱かせるほど、それほど神々しく在ったのだ。
事実、その姿を目の当たりにして、一瞬だが剣を握る指の力が緩んだのだった。
 天照研究所の職員たちも目を奪われていた。その巨人の生命力にあふれた腕が持ち上がり、
ミケランジェロの絵画が霞むほどに美しい所作でシンブレイバーを指さすまで、誰もが見蕩れたままだった。
 きっとその存在がミカエルそのものだったなら誰も逆らうことはできなかっただろう。
だがその存在が発した声を聞き、私と職員たちは正気に戻ったのだった。
「審判だ」
 その低く力強い声は紛れもなくマイケル・サンダースのものだった。
私は夢見心地からいきなり現実に引き戻され、慌てて剣をかまえなおす。
 同時に職員たちももとに戻ったようだった。様々な報告の声が再び聞こえてくるようになる。 
「今からおまえの罪が果たして許されるのか、そうでないかを量ろう」
 ミカエルは言った。
 私は相手をまっすぐに見据える。
「どうやってさ」
「簡単だ」
 天使は剣の切っ先を持ち上げた。
「私を――ミカエルを倒して見せろ。
 おまえが真に無垢であり、一片の汚れが無いならば、正当なるものそのものである大天使が倒されない
道理はない」
「正当そのもの? 」
 私はせせら笑う。
「あんたは自分自身を人質にしているじゃないか。
 そんなやつと私が戦う理由は無い! 私が断つのは自分の罪だけだ! 」
「そのとおりだ。
 しかしどちらにしろ、おまえは裁かれなければならない。
 もしおまえこそが正当であり、私が自らの目的のためだけに天使を利用したというのなら、
私こそが罪だ。
 だがおまえこそが罪ならば、おまえはここで死なずともいずれ『×』にやられるだろう。
それだけじゃない、おまえに加担した天照研究所の人々も罪を償わなければならなくなる」
「え……? 」
 私の反応に天使は眉をひそめた。
「知らなかったのか? 
 おまえを庇ったときからおまえの周りの人間たちも罪を負ったのだ。もちろん程度は軽いが……」
 絶句した。知らなかった。
「そんなことは些細なことです! 」
 高天原が力強い口調で言い放った。
「私たちの望みは今不当に奪われようとしているひとりの生命を守り、
またそのために巻き添えとなる街の人々に償いをすることです。そのための罪は罪となるはずがない!
 たとえ罪でも、それがどうした! 」
 彼の声には理性よりも激しい想いがこもっていた。熱く、腹にひびくような声だった。
「志野さんの人生を邪魔するあらゆるものは我々の敵です、ただのそれだけです!
 あなたがそれを望むなら! 」
 私は高天原のその言葉にまるで頬に平手打ちをくらった気分になった。
 そうだ、何をためらっているんだ。
 この私の命は自分だけのものじゃないんだ。
 自分だけのものじゃないなら、どうして自分の意思だけで剣を納めることができるのか。
(そんなことはできっこない)
 私は目を強くとじ、また開く。唇を舐め、頭を傾けて首を鳴らした。
「すいませんでした、高天原さん」
 そうしてまた剣を強く握る。
「彼は『敵』です」
 見えないが、高天原が頷くのがわかった。
 天使も満足げに剣をかまえなおし、シンブレイバーを見下ろす。
「今こそ断罪のとき! 」
「おまえの罪を断たせてもらう! 」
 二体の巨人が叫び、剣を振りかざしたのは同時だった。

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