Zero/stay night 06


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世界は違えども、授業前の教室というのは騒がしい。
だが、一人の少女が入って来た途端、教室の空気が凍り付く。
戦場の鴉すら払い散らす裂帛の気合を放つその少女こそ、
誰あろうルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールである。

(くっ、今日のルイズはどうしたんだ?)
(なんて殺気だ...肌が焼け付くようだぜ)
(触らぬルイズに祟り無しだ)

そんな噂をされていても、己の内の怒りに埋没しているルイズはまったく気付いていなかった。
(ったくっ、あんの、バカ使い魔はぁあァぁぁぁぁぁ)

話は早朝に遡る。
メイドといちゃついていたバカ使い魔を吹っ飛ばして、
オシオキに「朝ご飯抜き」って言ったら、
「英霊はメシ食わなくても別にいい」って食事の間中、実体化解いてどっか行っちゃうし。
アイツは私の使い魔だっていうのに、全く、全っ然、私が主導権握れていない。
いっそのこと、あの令呪とかいうのを使ってやろうかと思ったけど、そう言えばどうやって使うんだか知らなかった。

あのバカ使い魔は好き勝手やってるが、それは私の事を主として認めていないからなのだろう。
教室へ来て、他の子たちが召喚したいろんな使い魔を見た。
キュルケの使い魔同様、やっぱりパラメータが見えたけど、どれもこれも精々Dランク、
Eランクにすら届いていないのが殆どだった。間違いなく、私の使い魔は最強だろう。
でも、どんなに強い使い魔を召喚して、ソレを律する力を手に入れても、自分でコントロールできなければ自分の力では無い。
結局、私は思い通りにならないからって一人で怒って当たり散らして、使い魔に諭されてしまっている。
これじゃダメだ、主としての威厳を示すにはどうすれば...と、考え込んでいると、やはり思う通りにならない現実への苛立ちが鬱積していく。

そんな訳で、苛立ちのスパイラルに陥っているルイズは、烈々たる殺気を辺り構わず巻き散らしていた。
そのせいで、いつもなら口さがない中傷をする者も声をかけられずにいるらしい。
そんな微妙な空気の中、先生が授業のため教室へ入って来た。

「皆さん、春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。
 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
教室の空気読まずに微笑を浮かべてウンウンと頷く先生のおかげで、教室の空気が弛緩してくる。
ありがとうシュヴルーズ先生、と皆が感謝の念を浮かべる。

「それで、ミス・ヴァリエールは変わった使い魔を召喚したそうですが......」
前言撤回。空気読めこのメタボ教師!と皆の心が一つになる。
先生に呼びかけられたルイズは、しかし殺気を押し殺した声で答える。
「さあ?あんなバカ使い魔知りません」
なんかギギギ、とか歯が鳴ってるんですけど。フツーに癇癪を起こされるより万倍怖い。

だが、さらに空気読めない馬鹿が一人、ゲラゲラと笑い出す。
「使い魔に愛想尽かされたのか?流石はゼロのルイズ!」
いやいやいや、ソレは洒落になってないだろ、空気嫁マリコルヌ、と教室中が心の中でツッコミを入れ、
シュヴルーズ先生がマリコルヌをたしなめようとし、
フラストレーションが頂点に達したルイズが立ち上がった刹那、

まるでエア・ハンマーを食らったように、マリコルヌの体は後ろの席に叩き付けられた。
突然の事態に動顛する彼の眼前には、禍々しい魔力を放つ深紅の槍が、
目前の机も、自分が座っている椅子をもブチ抜いて突き刺さっている。

そして、先程までのルイズが可愛らしく思える程の、ホンモノの殺気を押し殺しもしない声が聞こえて来る。
「いい度胸だ小僧。我が主への侮辱はオレに対する侮辱も同じ。
 命捨てる覚悟は出来てるってコトだよなあ、オイ」

そんな、死の宣告にしか聞こえないセリフとともに、槍の突き刺さった机の前にランサーが実体化する。
その出現、その姿を目にし、教室の皆が、ルイズさえも息を呑む。

――――伝説に曰く、
かの英雄は、普段は女神も見惚れる美丈夫ではあったが、一度戦いに臨むと悪鬼の如く変貌した、と。

今の彼は、単に不心得者に誅罰下そうとしているだけであり、戦いに臨む程の気構えでは無かった。
それでも、その姿が顕現しただけで、教室の空気が完全に凍り付く。
誰も、言葉を発することすら侭ならない。

それは、ルイズも同様であった。
怖い。
恐怖で膝が震える。
このまま捨て置けば、マリコルヌは殺される。

アイツに、人を殺す事への躊躇は無い。
そこまで考えて、ハタと気がつく。
ならどうして、ランサーは一撃目を外したのかしら?
マリコルヌに恐怖を与えるため?そんな回りくどいことをする奴じゃない。
なら、どうして――――

そう考えていると、一瞬ランサーが眼だけ動かしてコッチを見た。
それで理解した。コイツは、私を――――


「止めなさい!」
凍り付いていた教室に、悲鳴の様な声が響き渡る。
それまで今現れた騎士に注視していた教室中が振り返ると、声の主たるルイズが、キッと眦を決して己の使い魔を睨みつけていた。
「そ、そんなヤツの放言など捨て置きなさい!
 仮にもこのルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔となったからには、無用の騒ぎを起こすのは許さないわよ!」

堂々と言い放った、と言ってやりたい所だが、所々声が裏返ってたり、膝が震えてたりして、虚勢を張ってるのが解ってしまう。
せっかく華を持たせてやったってのに――――
ま、取りあえずは及第点だな。
そんな感想を浮かべると、ランサーは軽く息を吐いて、愛槍の実体化を解く

「わぁーったよ......」
そう騎士が口にすると、マリコルヌの真ん前に突き刺さっていた槍が、霞のようにかき消える。
そして、騎士が二言三言、何事か呟くと、槍に貫かれた机・椅子・床のどれもが、時計の針を巻き戻した様に元通りになった。
騎士は、ガン、と元通りになった目前の机に足を乗せると、マリコルヌの方を覗き込んで、
「命拾いしたな小僧、せいぜいオレの主の厚情に感謝しな」
と、誰がどう聞いても「次はない」という最後通告にしか聞こえないセリフを吐いた。
「ハ、ハイ......」と、何とか口にすると、マリコルヌは体調が悪いと言って教室を出て行った。
何か下半身がグショグショになっていた気もしたが、見なかったことにするのが貴族の礼儀だろう。マリコルヌが退室するのを見届けて、ルイズは知らず溜め息を漏らす。
(何とかうまくいったみたいね)
さっきのは、ランサーが私に気を使ってくれたらしい。
あそこで私がマリコルヌに言い返しても、結局バカにされ返すだけだっただろう。
何時の間に教室に来ていたのか知らないけど、ランサーは私が使い魔の事で馬鹿にされてるのを見た瞬間、私の代わりに怒ってくれたのだ。
そしてそれを私に止めさせる事で、使い魔をちゃんと御せている事を皆の前で示させてくれた。
(......結局、私一人で空回ってただけなのね)
ランサーは私のことをちゃんと考えてくれてる。
そんな風に、自分の事を認めてくれるのは、下の姉のカトレアだけだったルイズにとっては、それだけの事が嬉しかった。

(そうよね、もっと私がちゃんとしなきゃ)
そうして、ようやくルイズの思考が+に向き始めた頃、
ランサーは、突然の事態に泡を食って腰を抜かしていたシュヴルーズ先生に近づくと、
その手を取って、惚れ惚れする様な仕草で立ち上がらせてから、
「御婦人の前で見苦しい所をお目にかけました。
 ですが私も我が主に忠を誓って使い魔となった身、主への非礼は見過ごせないのです。
 この身は何なりと罰を受けますので、どうか我が主への咎は無きようお計らいください」
なんて、まるで別人格に乗っ取られたみたいな恭しさで頭を垂れていた。

さすがに騎士、年長の女性への礼も出来ているらしい。
しかし、さっきからの様子を見てると、コイツは単に女性に対してのみ気を使ってるだけのような気がしてくる。
メイドしかり、先生しかり。
だとすれば、さっきのも私だから、じゃなくって私が女の子だから、なのかも......
なんかシュヴルーズ先生もやたらと照れすぎだし、自分の年考えてよね。
あと周りの女子生徒も何人か変な眼でバカ使い魔を見つめてるし......
これはやっぱり、さっきのは気の迷いね。アイツが私に気を使ったりする訳ないのよ!

勝手に結論して、勝手にルイズが怒りに震えている頃、別な意味で震えている少女がもう一人いた。
初日にランサーの非実体化を見て気絶した、タバサである。
(......本当に幽霊じゃないの?)
(幽霊なんて、あの方に失礼なのね、お姉様。
 あのお方は精霊の力の行使手として、私なんか足下にすら及ばない、
 むしろ精霊そのものと言った方がいいかも知れないほどのお方なのね~!)
タバサの問いに念話で答えているのは、窓の外に控えている彼女の使い魔であるシルフィードである。
周囲には風竜と思われているが、その実体は強烈なブレスや先住魔法を使いこなす風韻竜と呼ばれる絶滅種だった。
精霊のチカラ―――人間種には先住魔法と呼ばれるソレ―――の使い手である彼女の使い魔は、
ランサーが人々の願いによって精霊の域にまで昇華した存在だと本能的に理解していた。
(......そう)
(そうなのね。お姉様、あのお方なら昨日お姉様が聞いたことを知ってるかもしれないのね)
昨日、タバサは己の使い魔に、人の心を元に戻す秘薬について尋ねた。
高い知能を持ち、先住魔法を操る韻竜なら、あるいは......と思って尋ねたのだったが、
未だ幼生のシルフィードは知らない、と答えた。
だが、あの使い魔なら?
幼生とは言え、韻竜の力すら凌ぐ先住魔法の使い手ともなれば、自分の求める情報を知っている可能性は高い。
(だけど......)
接触には慎重を要する。北花壇騎士として幾多の死線をくぐり抜けて来たタバサには判る。
あの使い魔の戦闘能力はケタ外れだ。
今のところ大人しく使い魔をやっているようだが、相手の意図が判らない間は迂闊に母の事を漏らす訳にはいかない。
それに、
(......本当に幽霊じゃない?)
(だからホントなのね!)
まだ、幽霊の可能性も捨てきれないし――――
さて、追従の甲斐あって、つつがなく授業は始まった。
いや、むしろ教師の女性がやたら張り切ってる気がするが、アレは新学期だからだろう。
ルイズの隣に腰掛け、ランサーは授業を眺めていた。
実体化を解いて待機していた方が良かったのだが、周囲がマスターにどう反応するか判らない以上、常に最悪を想定するべきだ。

己の左手に視線を落とす。
最初、この契約のルーンで厄介なのは、強制的に契約者に対する好意を刷り込まれることだと思った。
だが、それは己のルーンによる守護で抵抗《レジスト》できる程度の物でしかない。
むしろ問題は戦闘時のパラメータ向上の方だ。
先程、契約してから初めて愛槍を手にしたのだが、瞬間、
まるで令呪によるアシストを受けた様な、大規模な魔力の奔流が身の内からあふれ出した。
そのせいで、あの小僧の真ん前の机だけを貫くつもりが、床まで貫いてしまった。

ほんの一瞬であったが、あれがこの少女との契約で授かった力だったのだろう。
そう、ほんの一瞬で、あれほどの『意図的に制御できない』魔力があふれ出したのである。
(コイツは、思ったより厄介な代物かもな......)
武器を手にするだけで、まるで一撃必殺の力を込めた時の様に魔力が湧いて来る。
おそらく、武器を手にしている限り、常にその状態なのだろう。
それはつまり、武器を持っているだけで魔力を消耗し続ける、ということを意味する。
おそらく、宝具を使った時の魔力消費も跳ね上がっているだろう。

元来、ランサーの戦闘における優位点は宝具の魔力消費が少ない事である。
いかに強大な力を得られても、自分の今までの利点を逆に弱点にされたのでは、
いかに《クランの猛犬》といえども、手練を相手にした時、勝利が確実な物とは言い難い。
だからこそ、この世界の魔術―――この辺りで一般的な四系統と呼ばれる魔術―――について把握しておく必要もある。
そんな理由から、ランサーはマスターと一緒に授業を受けることにしたのだが、
こうして教えを受ける少年少女に雑じっていると、なんとなく師の元にいた頃を思い出してしまう。
雰囲気も内容も全く違うのに、ただ若者が集って学んでいるというだけで、あの頃が懐かしく思えてしまう。

(ハ、ガラにも無い事考えてんな......)
ランサーが僅かに感慨に耽っている内に、授業は進み、教師の女性が手本を見せていた。
短くルーンを呟いただけで、教壇の上の石が金属に変化する。
「なんつーデタラメな魔術だ......」
知らず、嘆息に近い声を漏らす。
小源《オド》のみを用いて、あんな短詠唱で物質変換を行うなど、『向こう』の魔術形式の常識を逸脱している。
四系統というのは、思ったより厄介な魔術形式なのかもしれない。

「なにがデタラメなのよ?」
隣から声がかかる。
「ああ、悪いな嬢ちゃん。あんまりにもオレの知ってる魔術とは違うんでな、少し驚いただけだ」
「アンタ、『錬金』も出来ないの?さっきは机とか直してたのに」
「アレは本来そうあるべき姿に戻しただけだ。因果を元に戻すのと、物質そのものを変換するのとじゃあ難易度が違うだろ。
 大体、魔術回路の特性が違い過ぎる。オレには四系統は使えそうに無えな」
「ふ~ん、それじゃあアンタはどんな事なら出来るワケ?」
「そうだな、使えるのは治癒だの解呪だの、戦闘補助ばっかりだな。
 ルーン魔術には、相手を直接攻撃するルーンなんて2つしか無えし、何よりオレは槍のほうが強いしな」
と、視線を感じる。見ると、先生がお嬢ちゃんの方を睨んでいた。
あ~、師の話を聞かないとヒドい目に逢うってのは、ドコの世界でも同じらしい。「ミス・ヴァリエール、おしゃべりをする暇があるのなら、貴女にやって貰いましょう」
使い魔のせいで、エラい事になってしまった。
教室中がビクついてる。
いつもならヤジが飛んで来るのだが、さっきのマリコルヌの一件で、みんな黙り込んでしまっている。
キュルケが唯一、なんのかんのとシュヴルーズ先生に中止を求めていたが、それも自分で封殺した。
既に先生(とバカ使い魔)以外、みんなが机の下に隠れている。
キュルケの友達の...えっと、タバサ、だっけ?彼女は無言で教室を出て行った。馬鹿にするにも程がある。
そうよ、私はランサーのマスター。
サモン・サーヴァントだって、コントラクト・サーヴァントだって上手くいった。
使い魔との視覚共有だって問題なく出来てる。
なら、『錬金』ぐらい、成功する筈――――
意を決して、精神を集中すると、ルーンと共に渾身の魔力を込めて杖を振り下ろす。

瞬間、光と暴風が教室中を呑み込んだ。


そして、教室にはルイズとランサーだけが残された。

ルイズによって引き起こされた爆発で気絶したシュヴルーズ先生は、大したケガも無く、すぐに意識を取り戻した。
そして、すぐさま罰として教室の片付けを命じられたのである。

「......何か言ったらどうなの?」
「あー、ムシャクシャしたからって、何でもかんでも吹っ飛ばすのはどうかと思う」
「違うわよ!私、魔法が使えないの!何にも!全然!だから『ゼロ』のルイズ!魔法が使えないから!」
恍けた事を言う使い魔に、ガーッと当たり散らしてしまい、自己嫌悪で俯いてしまう。
......もうダメだ。ただでさえ魔法が使えないのを知られてしまったのに、その上当たり散らすなんて。
今度こそ愛想つかされた。マリコルヌの言う通りね、こんな私じゃ、この使い魔に釣り合わない。
そんな自分が惨めで、もうどうしていいか判らない。

そうして、立ち尽くしたまま泣いていると、そっと、頬に温かな感触を覚える。
思わず顔をあげると、ランサーが指で涙を拭ってくれていた。
「泣くな。お嬢ちゃんは笑ってるほうが可愛いぜ」
「よ、余計なお世話よッ!どうせ、アンタだって私の事バカにしてるんでしょう?!」
軽口を叩いて、ニッ、と微笑んで来るランサーに、どうしていいか判らなくって、またも当たり散らしてしまう。
「何言ってんだ、お嬢ちゃんは間違いなく優秀な魔術師の素質を持ってる」
「嘘」
「嘘じゃ無えって......オイ、そこのヤツ、ちょっとツラ貸せ」
唐突に、ランサーが窓の外に向って声をかける。
そこには、ガラスを桟ごと吹き飛ばされてただの穴となった窓から、こちらを覗き込んでいる風竜がいた。
「きゅい?!」
「そうだ、オマエだよ。とっととコッチ来い」
あれは確かタバサの使い魔、えーと、名前は――――

マスター:
名前:イルククゥ
性別:メス
筋力:B   魔力:B
耐久:C   幸運:E
敏捷:C+  宝具:-
クラス別能力
言語運用:A 人語を人間同様に運用できる。
       言語運用を持つ者同士の会話も可能。

パラメータが見えて来る。
そう言えば、この風竜だけは他の使い魔と違って教室に入れなかったから、初めてパラメータを見た。
流石に風竜、この能力値は使い魔中(私の使い魔を除けば)間違いなく最高だろう。
でも、何でやたらと幸運だけ低いのかしら?
それに、何故かマスターの名前が表示されない。タバサの使い魔に間違いないと思うんだけど...そのタバサの使い魔?であるイルククゥは困った様にしながらも、ランサーの言う通りに窓から首を突っ込んで来た。
「じゃあオマエ、オレに向って全力でブレスを吐け」
「ハア?!」「きゅいきゅい?!」
私とイルククゥは、期せずして声を揃える。
それはそうだろう。風竜のブレスは、火竜程では無いにしろ強力だ。
トライアングルクラスのメイジでも、防ぐのは難しいだろう。
「っちょ、ちょっとアンタ何言ってんのよ!」
「あーいいからいいから。お嬢ちゃんはオレの後ろから動くなよ。
 それとオマエ、手加減したら殺すぞ」
「ちょっと、待――――」
待って、と口にするより早く、ランサーの恫喝に恐れをなした風竜が火を吹いてしまう。
視界が炎に埋め尽くされる。
ああ、ごめんなさいお父様お母様お姉様方。ルイズは最期まで魔法を使えないまま命を落とします――――

しかし、先立つ不孝を詫び終わっても、全く熱くないのは何でだろう。
よく見ると、風竜のブレスはランサーのかなり手前で、そこに壁があるかの様に左右に割れている。
「これが、オレのルーンによる守護だ。この程度の炎なんざ、どうと言う事も無い」
まるで、世間話をするような気軽さでランサーが声をかけて来る。
ついに風竜の方が根負けしてブレスを止めてしまう。
それほどの魔法を使ったのに、ランサーは顔色ひとつ変えない。
「......それで?アンタの魔法が強力なのは解ったけど。何、自慢してるの?」
「だから、何でそう卑屈になるんだ。落ち込む暇があるんなら、もう少し胆を据えて貰いてえな」
「ーーーッ!何よ!やっぱりバカにしてるでしょう!」
「だから違うって。あのなあ、オレのルーンの守護は確かに強力だ。
 だがな、その強力な守護を、お嬢ちゃんの魔術は無効化してるんだよ」
「え?」
「昨日の夜、オレのこと吹っ飛ばしただろう?あの時も、オレのルーンの守護は確かに働いてた。
 それでもお嬢ちゃんはオレを吹っ飛ばしたんだよ。この意味、判るな?」

私の失敗が、ランサーの防御魔法を無視して吹っ飛ばした?
「それって、私の魔法がアンタより強いってこと?」
「そうだ。オレを魔術で吹っ飛ばすなんざ、並大抵の魔術師に出来やしねえ。
 お嬢ちゃんは、間違いなく才能のある魔術師だ。もっと自信を持て」
「でも......私、ろくに魔法を成功させられないのよ?才能があるって言うんなら、どうして――――」
「あー、取りあえず長くなりそうだから、ソコ座れ」
「あ、うん」
促されるまま、比較的無事な椅子に座る。
さて、と、言葉を切って、ランサーはまるで先生みたいに、私の前で話出した。

「いいか?お嬢ちゃんは魔術が使えないワケじゃねえ。
 本当に魔術が使えないんなら、爆発自体起こる筈が無い」
そう言われればそうだ。子供の頃から、魔法の失敗=爆発だと思っていたせいで気付かなかったが、
よくよく思い返してみると、私以外に魔法の失敗で爆発が起こったなんて話は聞いたことが無い。
「じゃあ、何で私の魔法は成功しないのよ」
「そりゃ簡単だ。お嬢ちゃんには、四系統魔術は使えないからだよ」
「何よソレ!じゃあやっぱり魔法は使えないって事じゃない!」
「だーかーらー、何で四系統が使えないと魔術が使えない事になるんだよ。
 だったら、オレのルーン魔術は何なんだ」
「......待って、それって、つまり――――」
考えてもみなかった。魔法=四系統と思っていたけど、現に目の前には四系統とは全く異なる魔術の使い手がいる。
そもそも、人間の扱うのが四系統、エルフなんかの亜人が使うのが先住、と区分されているけど、
ソレは四系統以外にも魔法が存在するということに他ならないのではないだろうか。「ったく、これは本当に基本的な話からしないとダメみたいだな。
 いいか、そもそも魔力とは何だ?」
「何って、精神力でしょ?」
「違う。
 なら訊くがなお嬢ちゃん、魔法薬を錬成した場合、その薬の効力全てが作った魔術師の込めた魔力で賄われているのか?」
そうか、魔法薬を作る際には一応魔法は使うものの、その効果の大半は薬を作るのに使った原料によるものだ。
「それじゃあ、メイジの精神力だけじゃなく、魔力の源は他にもあるってこと?」
「そりゃそうだ、魔力の源なんていくらでも種類がある。
 例えば吸血種なんかは、血液を媒介にして魔力をやり取りする。
 夢魔の類なんかは、恐怖や歓喜、人間の感情自体を糧にしている。
 それに、オレみたいな人間霊に分類されるモノは、同じ存在の第二要素や第三要素を魔力として吸収できる」
「第二とか第三って、何よ?」
「精神と魂だ。要は、ヒトを殺して魔力を蓄えられるってこったな」
「なっ――――」

「安心しろ。オレにその気は無え。お嬢ちゃんから供給される魔力は十分過ぎるくらいだからな。
 ま、それもお嬢ちゃんが優秀な魔術師である証拠なんだぜ?」
「そ、そうなの?」
「ああ。サーヴァントと契約している限り、魔術師はサーヴァントがこの世に留まる為の魔力を供給し続ける必要がある。
 どんな優秀な魔術師でも、サーヴァントを召喚して契約した直後は、魔力の大半を持ってかれて苦労する物なんだが」
「?私、何ともないわよ」
「お嬢ちゃんはお嬢ちゃん個人が持ってる魔力量がケタ外れに多いんだ。
 フツーだったら、丸一日寝込んでもおかしくないんだがな」
「ふーん」
ナルホド。私は気を失ったとはいえ、ほんの数時間で目が覚めたし、別に体調も何ともなかった。

「......って、ちょっと待ってよ。じゃあ、アンタに運ばれてる途中で気絶したのも、そのせいだったんじゃないの?」
「ま、ソレもあるかもな。
 とにかく、サーヴァントと契約している限り、魔術師はかなりの魔力をサーヴァントの維持に使わせられる。
 それでもお嬢ちゃんが何とも無いってことは、要するに、お嬢ちゃんが持ってる小源《オド》の量は半端じゃないってこった。」
「オド?」
「そういや魔力源についての話の途中だったな。
 さっきも言ったとおり、魔力の源にはいろんな種類があるが、大きく分けると2種類に分けられる。
 個人が生成できる魔力、小源《オド》と、自然・世界に満ちた魔力《マナ》。
 四系統ってのは、この小源《オド》のみを効率よく運用することに特化した魔術系統ってことだな」
「そう言えば、先住魔法っていうのは、エルフたち亜人が『精霊の力』って呼ぶものを使うって聞いたけど」
「その『精霊の力』ってのは先ず間違いなく大源《マナ》のことだろ。
 オマエらの分類では四系統以外の、大源《マナ》を使う魔術はみんな先住魔法ってことらしいから、
 オレのルーン魔術も先住魔法に分類されるみてえだな」
「せ、先住魔法!?」
先住魔法って言ったら、始祖ブリミルでさえ打ち勝てなかった強力な魔法のはず。
自分の使い魔が強い強いとは思っていたけど、まさかそれ程だったとは――――

「そもそも魔力源で魔術系統を線引きするってのがおかしな話だ。
 魔術系統なんてのは千差万別。
 オレの使うルーン魔術の他にも、宝石魔術・降霊魔術・宝石魔術・召喚魔術・治癒魔術、
 毛色の違う所では占星術・数秘術・錬金術・錬丹術・朴占術・神道・陰陽道――――
 どれも形式は違っていても、大抵は魔力源として大源《マナ》も小源《オド》も両方使っている。
 どうやらオマエらは四系統っていう小源《オド》しか使わねえ魔術だけを発達させたせいで、
 魔力=精神力、魔術=四系統、それ以外=先住魔法なんてデタラメな線引きをしちまってるみてえだな」
「錬金術ってのもあったけど、ソレは『錬金』とは違うの?」
「ああ、名前が似通ってるだけで全くの別モンだな。
 『錬金』ってのは物質変換のみを行う魔術だが、
 錬金術ってのは病んでいる状態の金属を完全な状態の金属、つまり金にする方法を通して
 人間を完全な状態、つまり不老不死にしようっていう魔術系統だ。要は人体運営についての魔術だな」ふむふむ、といつのまにかランサーの話に引き込まれている自分に気付く。
今まで、なんとかして魔法が使える様になろうと、ひたすらに魔法の勉強に打ち込んで来た。
でも、どんなに勉強して、どんなに練習しても、何の成果も得られなかった。
ランサーの言う通り、私には、四系統は使えない。

だけど、その前提が間違っているとしたら?
私は魔法が使えて、四系統以外にも魔法の系統が存在する。それはつまり――――

「それじゃあ、私は四系統以外の魔法が使えるってこと?」
「オレの召喚や契約が成功している以上そう考えるべきだろう。
 ま、お嬢ちゃんの魔術回路自体が属性特化型なんだろうな」
「魔術回路?」
「魔術師だけが持つ魔力を生成するための神経みたいな物だ。
 ソレを持たない限り魔術は決して使えない。
 恐らく、この世界で貴族と平民が厳密に分たれているのも魔術回路を維持するためだろうな。
 四系統の運用に特化した魔術回路を持つ人間だけを特権階級として隔離することで、
 魔術師の家系や魔術回路だけでなく、魔術そのものの衰退を防いでいる。この仕組みを考え出したヤツは大したモンだな」
「魔法って衰退するものなの?」
「オレの元いた世界じゃあ、魔力を使わない、人の手による技術が進歩したせいで、
 ほとんどの魔法が今じゃあ魔術になっちまってる」
はて、魔法が魔術になるとは一体どういうコトだろう?
そういえばこの使い魔は、さっきから『魔法』という言葉を使わず、『魔術』と言い続けている。
「ねえ、魔法と魔術って違うものなの?」
「元は同じモンだけどな。オレの世界じゃあ、金と時間さえあれば魔力を使わずに再現できるものを魔術、
 どんなに金と時間をかけても再現不可能なものを魔法と分類している。
 今では技術の進歩のせいで、魔法はたった5つしか残っていないがな」
「5つって、どんな?」
「平行世界の運営とか、魂の物質化とか、無の否定、時間旅行とかだな。
 ま、コッチの世界じゃ魔術の方が発達してるせいで技術が遅れてるから、四系統もほぼ魔法と言って問題無いだろ」

魔法が衰退しない仕組みを考えた人物――――そんな者がいるとしたら、それは始祖ブリミルに他ならない。
こんな6000年も後のことまでお見通しだったのだとしたら、まさに神と呼ばれるのも当然かも知れない。
「でも、アンタの話を聞いてると、ソッチの世界のほうが魔術が進んでる気がするけど」
「それは四系統の弊害だな。四系統は確かに便利な魔術系統だろう。
 だが四系統には致命的な欠陥がある」
「致命的な欠陥?」
「考えてもみろ、なんで四系統はスクウェアが最高なんだ?何故5つ6つ、10や20と掛け合わせられない」
「それは、メイジ一人で使える魔力に限界があるからじゃないの?」
「そうだ。四系統は魔術師個人が生成する魔力しか使わないせいで、上限がかなり低くなっちまってるんだよ。
 魔術師個人が生成できる魔力と、世界に満ちている魔力だったら、後者のほうがデカいのは当たり前だろう」
「そっか、エルフが強いわけよね」
エルフに挑むには十倍の戦力が必要と言われるけど、個人の力で世界そのものに挑もうとしたらそうなるのも当然だろう。
誰だ、こんな系統考え出したのは――――って、そう言えば始祖様だったわね......
始祖様って以外とヌケてたのかしら?等と、聞き咎められたら不敬罪に問われそうなコトを考えてしまう。
「また話がそれたな。
 で、だ。お嬢ちゃんの魔術回路は、あくまで四系統を使えないってだけで、魔術自体が使えない訳じゃない。
 ごく稀に、そういう属性特化した魔術回路を持ったヤツが生まれる事があるんだ」
そうだった。そもそも私が優秀なメイジだっていう話だった。
「そう言えば、さっきも言ってたけど、その属性特化って何なの?」
「さっきの先生が土系統だったみたいに、魔術師にも属性ってのがあるだろ?
 ソレのさらに限定されたカタチ、たった一つの魔術しか使えない魔術回路のコトだ」
「なんかそう聞くとダメなメイジっぽいわね」
「ま、たしかに汎用性には欠けるがな。
 例えばだな、『剣』に特化した魔術師の場合、ソイツは剣を作ることしか出来ない。
 だが、他の魔術を使えないかわりに、ソイツは自分のイメージだけで、何も無い所から剣を作り出し、それを半永久的に維持できる」
「何も、無い?」
普通、メイジが剣を作る場合、『錬金』で素材を加工して剣を錬成する。
それを、元になる物無しに作り出すなんて、確かにとんでもないメイジだろう。
つまり、属性特化したメイジというのは、ソレしか出来ない代わりに、
その唯一を『究極の一』にまで昇華させることができる、ということなのだろう。

「でも、それなら私は『爆発』に特化したメイジってことなの?
 だけど、こんなのちょっとした火のメイジなら誰でも出来ることじゃない」
そう、火の系統には爆発を起こす呪文がある。
急激な熱量の増大を生み出す事で、空気の膨張を引き起こしているのだ。
だが、ランサーは否定する。
「お嬢ちゃんの爆発はそんな生易しいモンじゃ無い。
 オレのルーンによる守護の中には、火や熱を防ぐものもあるんだが、
 今日、オレはソイツを使ってお嬢ちゃんの『爆発』を押さえこもうとしたが、ダメだった。
 つまり、お嬢ちゃんの爆発は、熱によって空気が膨張してるんじゃないってことだ」
「でも、教室全体がススだらけになってるじゃない」
「それなんだよ。お嬢ちゃんの爆発は、熱量が原因じゃない、なのに熱量を発生させている、そんな有り得ないモンなワケだ
 おそらく、お嬢ちゃんの『爆発』は、お嬢ちゃんの魔術特性の『結果』でしかない。
 お嬢ちゃんの属性は、爆発じゃない、もっと違う『何か』だ」

つまり、私は四系統が使えないだけで、魔法自体が使えないんじゃなくって、『何か』に特化した魔術回路を持ったメイジ、ということか。
確かに、そう考えるとつじつまが合う。
でも――――

「結局、私が魔法を使えない事に変わりは無いじゃないの。
 私が何に特化したメイジか、アンタにも解らないんでしょ?」
「ああ、それは判らねえ。
 だが、お嬢ちゃんが使える魔術系統なら判るぜ」
「へ?」
「なんてツラしてんだ、全く」
そりゃマヌケ面にだってなる。今までの人生、どれほど努力しても使えなかった魔法を、私が、使える?
「そ、そそそその系統って何?!」
「何って、ルーン魔術だろ?」
「は?ルーン魔術って、アンタが使ってる......」
先住魔法?

「な、何言ってるのよ!先住魔法なんて使えるワケ無いでしょう?!」
「じゃあ聞くが、お嬢ちゃんがオレを召喚した魔術式、ソレはコッチのモンか?」
「それは――――」
そうだ。『サモン・サーヴァント』に何度も失敗したあと、ルーンが光って、頭の中に流れ込んできた術式でコイツを召喚したのだ。
「お嬢ちゃんが持ってるルーン、ソイツは『最後』のルーンっつってな、
 ルーン魔術を初めて会得したオーディンしか使い方を知らねえっていう秘中の秘だ。
 だが、お嬢ちゃんはどうやったかは判らねえが、そのルーンからオレを召喚する魔術式を引き出した。
 ソレはつまり、お嬢ちゃんがルーン魔術を使うことができるってコトだろ?」
私が、先住魔法を、使える?
「で、でも、私、何をやっても爆発させるんじゃ......」
「オレが思うに、お嬢ちゃんは自分の小源《オド》を使うと爆発を起こしちまうんじゃねえか?
 よし、取りあえず試してみるぞ。オイ、オマエ。もう一回だ」
「きゅい~?!」
ランサーはブレスの吹きすぎでダウンしていた風竜に声をかける。
もう一回?試す?それって――――
「わ、私が防ぐの?」
「おうよ」
気軽な返事と共に、ランサーは自分の装身具の一つを放って寄越す。
曇り一つないのに、全く光沢を放たないという不思議なソレには、ルーンが彫り込まれていた。
「ソイツはさっき言った火や熱を防ぐためのルーンだ。
 落ち着いて、オレを召喚した時のことを思い出せば出来る筈だ」
「ちょ、ちょっと待って、イキナリそんな命がけだなんて」
「ああ、お嬢ちゃんは離れてていい。ブレスを食らうのはオレだけだ」
「は?」
今、コイツは何て言ったの?
「もともとオレが言い出したことだしな。オレなら例えブレスを食らっても治癒でスグに直せる。
 それに――――」
命をかけると言うのに、いつもと変わらぬ飄々とした態度で、使い魔はさも当たり前のように言う。
「オレは信じてるからな。このオレを召喚できたマスターのことを」

――――それで、覚悟が決まった。
まだまだ言いたい事は沢山あったけど、乾いた口の中の僅か残った唾と一緒に飲み下す。

私の様子を見て、私の覚悟を見て取ったのか、使い魔はそれ以上何も言わずに風竜の前へと歩いて行く。
あの使い魔は、
人の言う事聞かないし、            
女性と見れば見境無いみたいだし、
急にヘンに優しくして、私を困らせるし、
とにかく、無性に、イライラさせられるけど、

アイツは、私を「信じる」と言ってくれた。
魔法の一つも満足に使えない、落ちこぼれのメイジである、この私を。

ならば、成功する。
自分のためじゃない。
使い魔の「信頼」に答えるためなら、何だってできるハズ。

そう、私は、ランサーのマスターなんだから......!

「いいか、自分自身を窓だと思え。
 外から吹いて来る風を、ただ招き入れるだけでいい」

使い魔が声をかけて来る。
大丈夫、絶対に、成功させてみせる!
決意を込めて、ただ頷きを一つ、返して見せる。

「よし、やれ!」
ランサーが、風竜に号令をかける。
僅か逡巡を見せた風竜だが、ランサーの眼光を受けて、意を決したように炎を吐く。
火系統のスクウェアにも匹敵する猛火は、あらゆる物を消し炭と化すだろう。
その暴威から、守る。
元より、ルーンの加護とはそういうもの。相手を打ち倒すための力などではない。
大切なモノを守りたい。そのために犠牲を払って願いをかける。
何十年、何百年、何千年という間の、
何百人、何千人、何万人という人々の祈り。
その果てに成った、儀式・供物を以て神秘と接触する魔術形式《フォーマルクラフト》。
それこそがルーン魔術。

使い魔は、「私の成功」に己を懸けた
ならば、過つ道理など、この世のどこにも、在りはしない――――!


知らず、つぶっていた目蓋を開く。
そこには、万物を焼き尽くす猛火と、
一部の傷も無い、いつもと変わらぬ使い魔の姿があった。

「な?言ったろ、成功するって」
真ん前で真っ二つに割れた炎が、さも当然の事であるかの様に、使い魔が変わらぬ笑みで言葉をかけて来る。
それで、嬉しさが込み上げてきて、淑女にあるまじき大声をあげてしまう。

「ーーーッッッッッ!ぃやったぁーーーー!」
全身で喜びを表現する。
で、つい、力を込めてしまう。
そうすると、いつもの調子で、つい、自分の魔力までこめてしまう。

私の魔力は、『どんな』魔法でも爆発させる。
ソレは、四系統だけでなく、ルーン魔術も例外では無いようで、

教室は、本日2度目の爆発に見舞われた。


「......だから、何でもかんでも吹っ飛ばすのはどうかと思う」
「......きゅい~」
「......ゴメンなさい」
一人と一匹に、素直に謝る。
私の渾身の魔力を籠められたルーンは、あえなく粉々に砕け散り、
風竜のブレスとも相まって、前回の比ではない爆発を生み出した。

一番の被害者は風竜のイルククゥだろう。
窓から頭を突っ込んでいたせいで回避も出来ぬまま、口の中にまで爆発を食らってしまった。
今はランサーの治癒を受けている。

「私も、そんな風にちゃんと使えるようになるのかしら......」
「大丈夫だ。さっきだって、一応は成功したんだ。あとは魔力のコントロールだけだろ」
風竜の治療を終えたランサーが、そう答えながらコッチにやって来る。

「ま、覚悟はしておけよ。
 オレの修行は師匠仕込みだからな。生半なことじゃあ着いてこれねぇぜ?」
「フン、何言ってるの。私を誰だと思ってるの?」
胸を張って、答える。

「私は、貴方を召喚した、サーヴァントのマスターなんだから!」
いつものような、虚勢を張るのでは無い。本心から、そう口にした。

「ああ、そうだったな。
 それじゃあ、改めて。よろしく頼むぜ、主《マスター》」
「こちらこそ。今後ともよろしく頼むわ、師匠《マスター》」

――――何だか、思ってたのとは違うけど、これが私たちの主従の絆、なのよね。

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