Zero/stay night 03


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膨大な魔力の奔流が、実体の無かった彼の体に確かな存在を与えていく。
どうやら、また召喚されたらしい。
と、そこまで考えてハタと気づく。
(ちょっと待て、「また」って何だオイ!)
英霊である自分は、一度『座』に帰還すれば、召喚されていた間の出来事は「経験」ではなく、単なる「知識」として認識されるはずである。
ならば、たった今召喚された自分は、実際に召喚された「体験」は初めてでなければならない。
つまり、今の自分は冬木の聖杯戦争を経験したままの自分なのか、等と思考を廻らせていた彼は、頭の中に書き込まれた『この世界』の情報を認識して驚愕する。
聖杯は、英霊に対して召喚された場所・時代の一般的な知識を一通り与えてくれる。
その書き込まれた知識を確認したところ、ここは『異世界』で、ハルケギニアと呼ばれる地域らしい。
文化の発達程度・様式などもわかるが、そんなことはどうでもいい。
(ってか『異世界』って何だ?!)
確かに、英霊として『座』に達したことで、時間軸からも解き放たれたとはいえ、異世界に召喚されることなどあるのだろうか?
何らかの精神改変を疑ったが、彼のルーンによる加護は全力展開では大抵の宝具すら防ぐことさえ出来る。
たとえ何らかの精神干渉が行われたとしても、干渉したことすら気づかせないなどあり得ない。
そもそも聖杯自体が『異世界』として此処を認識しているのか―――と考えていると、

「アンタ誰?」

と声をかけられた。
見ると、一人の少女が自分に声をかけている。
ルイズは不機嫌だった。
体中の魔力を使い果たして今は立っているのがやっとである。そんな状態になるまで全身全霊を振り絞り、
召喚の手応えも完璧(爆発したが)、だというのに召喚されたのは呆けた顔の人間。
(私は!神聖で!美しく!強大な!使い魔を召喚したかったのに!!何あのバカ面!)

しかし、ルイズの思惑とは反対に、ソレは間違いなくルイズの求めた使い魔である。
なんと言ってもケルト神話の光明神と一国の王女の間に生まれた子であり、その美丈夫ぶりは女神モルガンすらオトす程、
そのうえコノート率いる三国連合軍の前にただ一人立ちふさがって、7年間に渡って祖国を守った大英雄である。
これ以上ルイズの求める条件に合致する使い魔なんて、本スレを眺めてもそうは居ない。
だが、召喚に全魔力を使い果たした上、自分で貫いた左手がズキズキと痛んでいるルイズに、己の召喚した使い魔のスゴさに気づく余力はなかったのである。

周囲の人間は、召喚された使い魔の放つ尋常で無い魔力に気づいていた故に、ルイズの行動に胆を冷やしていた。
魔法を使ってもいないのにあれだけの魔力を放っている以上、スクウェアクラスのメイジに違いない。
そんなメイジを呼びつけておいて、あんな態度を取ってタダですむのだろうか?と。
無礼打ちにされてもおかしくない状況である。
一番危機感を抱いたのはコルベールである。
この場にいる人間で、唯一戦場を経験している彼は、召喚された者が『戦士』であることを感じ取っていた。
はっきり言って、自分では到底太刀打ちできない。
だが、たとえ自分の命を懸けてでも子供達だけは守らねば。
そう決意を固めてコルベールは杖を握りしめ、臨戦態勢を整える。
すると突然、青色の騎士はコルベールの方へ向き直ると、ニッと口元に笑みを浮かべて
「止めとけ止めとけ。アンタもそれなりに使えるみてぇだが、何の準備も無しじゃあオレの相手はつとまらねぇよ」
と声をかけてきた。
信じられない。長く実戦から遠ざかっていたとはいえ、かつては殺気すら相手に悟らせなかったというのに、自分が気構えを変えただけで気づいたというのか。
しかし、騎士の笑顔はどこまでも清開で、少しの邪気も感じられない。
その様子に、コルベールは僅か警戒を緩めると同時に、この男は自分とは違って颯爽と戦場を駈けるのだろう、と羨望と共に想像する。
自分の質問を無視してコルベールに言葉をかける使い魔(まだ契約してないが)に、ルイズはついにキレる。
「ちょっと、私が質問してるのよ!」
そう声をかけられて、ようやく気づいたかのように騎士はルイズに向きなおる
「あぁ、悪ぃ悪ィ。んで、お嬢ちゃんが俺のマスターなのか?」
「....ええ。アナタを召喚したのは間違いなく私よ。不本意だけど」
いや、そんな態度はさすがにヤバいだろ。とさらに青くなる周囲の人間をよそに、
騎士は大して機嫌を損ねた風でもなく、ルイズに問い返す。
「ん?じゃあ、お嬢ちゃんはホントは誰を召喚するつもりだったんだ?」
「そうね...どうせなら、ドラゴンとか大きくて強い幻獣がよかったわね」
それがなんでこんな、等と愚痴をこぼすルイズ。そんな放言をうけても、騎士はむしろ機嫌をよくしているらしく、豪快な笑声を放つ。
「ハッハッハ!いやぁ竜種ときたか!さすがにソイツは無理があんだろ。ん?―――あぁ、『コッチ』の竜ならあり得なくも無ぇのか?
 ま、オレを呼び出せただけでも大したモンだぜ?お嬢ちゃん」
「何よアンタ、私を馬鹿にしてるワケ!?」
「いんや。オレのマスターになろうって女だ、その位ぇ気宇壮大でなくっちゃいけねぇ....って、その左手どうしたんだ?」
「ああ、コレ?アンタを召喚するための魔法陣を描くのに使えるモノが無かったのよ」
その返事を受けて、騎士は驚いて問い返す。
「んで、自分の血を使った、と?」
「何よ、仕様がないじゃない。私には触媒に魔力を通すなんて真似できないもの。自分の血を使うしかないでしょ。
 ....ハァ、そこまでやったのに、何で人間、それも平民なんか」
いや、どう考えても平民じゃないから、と周囲が(心の中で)ツッコむ。
一方、騎士はルイズの言を聞いて一層感心した風にうなずくと、槍の実体化を解く。
目の前で長身の男の、その身の丈を上回る槍が一瞬で掻き消える怪異に一同が息を呑む中、騎士はそんな反応など意に介さずルイズへと歩み寄る。
「何か色々と勘違いしてるみてぇだが....ま、とりあえず手ぇ出しな」
そう言うとルイズの左手を取り、一言二言何事か呟く。すると、みるみるルイズ左手にあった傷口がふさがっていく。
「嬢ちゃんは魔力残ってねぇだろ?ま、半分はオレのせいみてぇなモンだしな。」
そう言って再びニッ、と人のよい笑みを見せる。
彼がルイズの手に施した治癒は、傷痕すらわからないほど完璧なもので、やはりかなりの使い手であることは間違い無い。
しかし、今の彼は両手でルイズの手を取っている。さっきの槍を消したのといい、尋常ならざる魔力といい、アレはもしや、先住魔法では...

誰もがその想像に息を呑む中、ルイズは落ち着いているどころか、少し、ほんの少し感心しただけ、といった様子で
「ふ~ん、コレがルーン魔術なワケ?」
などと、余人には意味不明の言葉を口にする。
「そうだが...なんだ嬢ちゃん、ルーン魔術を知ってるのか?『コッチ』じゃあみんな四系統ってのを使うんじゃないのか」
「私も知らないわよ。でもさっき...って、アレ?」
と、ルイズは急に戸惑った表情を浮かべ、言葉を詰まらせる。
「ん?どうかしたか」
「いえ、さっきまで頭の中にイロイロ流れ込んできたんだけど....何か、よく思いだせないっていうか」
「流れ込んだ?どういう事だオイ」
怪訝そうに訪ねてくる騎士の言葉を受けて、ルイズはさっきまでの事を思い返してみる。
「えっと、召喚に何度も失敗して、みんなに馬鹿にされて、それでちぃ姉さまから貰ったお守りを握ったら...」
そう言って、握り閉めたままの左手を開いてみせる。
さっきまで光っていたような気がしたのだが、今は何の変哲も無いただのカケラに戻っている。
だが、それを目にした騎士の目つきが変わる。
「...ちょっと、ソレ見せて貰ってもいいか?」
「いいけど....気をつけてよ。ちぃ姉さまから貰った大事なモノなんだから。」
そう言ってカケラを騎士に渡してから、ルイズはこの男と自然に話している自分を不思議に思う。
本来の自分なら、こんな見ず知らずの男にちぃ姉さまから貰った大事な宝物を渡したりしないのに...
騎士はルイズの間近で、難しい顔をしながら自分の渡したカケラをためつすがめつしている。
しかし、さっきは呆けた顔をしていたので気づかなかったが、この男、かなりの美形である。
その上、(何だかよく覚えてないが)ルーン魔術なる強力な魔法も使えるのだ。
もしかしてコイツってかなりの当たりなんじゃ、ていうかさっき手握られてなかった?とそこまで思い出してルイズは顔を真っ赤にする。
(...まあ、使い魔なんだから、て言うかこの人が私の使い魔?じゃあこれから四六時中一緒にいて――――
 だ、ダメ!いけないわ、結婚前にそんな....でも、使い魔なんだし...)
などと、ルイズが的外れな妄想を駆け巡らしていると、騎士は嘆息と共に言葉を吐く。
「成る程な。コイツが聖遺物の代わりになってた訳か。
 しっかし、まさかコイツを使える人間が、よりによって『コッチ』に居るたぁ...」

その声を聞いて、ようやくルイズの意識が現実に戻ってくる
「へ?せ、せせせ聖遺物?ア、アアアアアンタそれが何だかわかるの?」
「?どうかしたかお嬢ちゃん」
「な、何でもないわよ!そ、それよりソレって一体なんなの?!」
「あぁ、オレたちみたいな英霊を召喚するにはソイツが生前使っていたモンとか、何か縁のある品物が必要なんだよ」
「じゃあソレって元々アナタのだったの?」
「いや、生きてた頃に師匠んトコで見ただけなんだが...コイツを使えるなんざ本当に大したモンだぜ、お嬢ちゃん」
「...アナタ、さっきから『生前』とか『生きてた頃』って言ってない?」
「おう。『ココ』の『今』が何時かイマイチわかんねぇが、前に召喚された時はオレが死んでから2000年近く経ってたな」
「...ってことは、アンタって...幽霊?」

その単語を聞いた途端、青い髪の少女が一人、ビクッと体を震わせたのだが、
それは周囲の驚嘆の波に呑まれて気づかれることは無かった。

「いや、そんな霊格の低いヤツと一緒にされたくねえんだが」
「そんなこと言われても解んないわよ。大体、ホントに幽霊なの?」
「だから違ぇっての。まぁ、霊体化は出来るが」
そう騎士が言った途端、スゥ、と騎士の姿が掻き消えるように見えなくなる。
いくら魔法使いが当たり前の世界と言えど、幽霊など一般に居る訳ではない。当然、騎士の霊体化を目にした彼らは大混乱になる。
「き、消えた~!」
「落ち着け、素数を数えて落ち着くんだ!」
「魔法で消えただけなんじゃない?」
「ディテクト・マジックにも反応しないぞ!」
「じゃやっぱり幽霊?!」

その発言がトドメとなって、青い髪の少女は遂に卒倒する。
「タバサ?!ちょっとしっかりしなさい、タバサ!タバサ!!」
「うおぉ、あの沈着冷静なタバサさんが倒れた!」
「衛生兵!メェディイーッック!!」
「ああもう!早く医務室に!」

なんか大変な事になってしまった、とルイズは呆然とする。
気絶した生徒を他の生徒と共にキュルケが学院へと連れて行く。
そうして喧噪がやや収まった所で、再びランサーが姿を表す。
「やれやれ。こんなコトで動顛するたぁ、今どきの魔術師は随分と軟弱だな」
「今も昔も無いでしょ!幽霊が目の前で出たり消えたりしたら誰だって驚くわよ!」
「そうかぁ?第一、幽霊じゃなくて英霊だって言っただろ、お嬢ちゃん」
そんな、全くこちらの気を斟酌するつもりの無いかのような態度に、ルイズは再びイライラがこみ上げてくる
(あーもう、さっきのは一時の気の迷いね。大体なによ、さっきから黙って聞いてりゃお嬢ちゃんお嬢ちゃんって―――!)
「幽霊は幽霊でしょ!それに私も『お嬢ちゃん』じゃなくて
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールって名前があるのよ!」
「ああ、そういやお互いまだ名乗ってもいなかったんだったな。悪かった、マスター」
騎士にあっさり謝られて、ルイズは気組みを外されてしまい、「わ、わかればいいのよ」とモゴモゴはっきりしない返事をする。
「オレのことは――――まぁ、ランサーとでも呼んでくれ」
「ハッキリしないわね。ランサーって『槍兵』って事でしょ?そうじゃなくって、アナタの名前は何なのよ」
先程までの自分を棚上げしてルイズは詰問する。
「いや、別に教えてもいいんだけどよ、オレたちはマスター以外には名前は名乗らないのがキマリなんだが....」
騎士はそこで言葉を切って、ルイズの後ろを見る。確かに、今はルイズの他に先生や生徒、多くの人間が居る。
「ま、まぁそれはいいとして、呼び方はランサー、でいいわけ?」
「ん、多分な」
その微妙な答えに、またもルイズの機嫌が悪くなり、自然と語気も荒くなる。
「何よ、アナタがランサーって言ったんでしょ!」
「いや、そうなんだが....ランサーってのは前に召喚された時のクラス名だ。
 英霊は召喚された時のクラスの名前を名乗るんだけどよ、さっきからソレが読み取れねえんだよな。
 クラスも4つしか無ぇみてえだし....まぁ、正式に契約すれば解るだろ」
そう言われて、ルイズは初めて自分がいまだコントラクト・サーヴァントを行っていないことを思い出した。
しかし、コントラクト・サーヴァントをするという事はキスするということで、幽霊とキスした場合ってカウントされるのかしら?
そんな妄想でルイズがぐるぐるしていると、騎士は虚空から現れた時に手にしていた紅槍を取り出す。
すわ無礼打ちか?と一同が息を呑む中、騎士は槍をルイズの前に平行になる様に臥せる。
「こういう事はちゃんとしとかねぇとな。じゃ、仕切り直しってことで...」
そうして、ルイズの前で片膝を付く。その姿は、ハルケギニアの人間から見ても、あくまで無謬、どこまでも優美な『騎士』の礼だった。

騎士―――今や一片の疑いも無く―――は、硬く、それでいて艶のある声で、朗々と誓約を謳いあげる。
「サーヴァント・ランサー、召喚に従い参上した。
 ―――これより、我が身・我が槍は御身が下に在り。
 我が名と我が誇りに懸けてここに誓約する」

その、予想外に立派で、優雅で、従順な騎士の仕儀に、ルイズは再び赤面してしまう。
いくら公爵家の娘とはいえ、このように騎士から忠を誓われることなどこれまでの人生で無かったのだ。
正直どうしていいかわからなくなってしまい、コルベールに助けを求める。
「先生!こ、ここここの場合どうしたら?!」
コルベールは少し思案する。どうやら彼は生きている騎士では無いようだから、たとえ使い魔にしても国際問題にはならないだろう。
加えて、彼は元々呼び出される用意があったようだし、現に彼女に忠を誓うと言っている。危険は無いと見ていいだろう。ならば――――
「契約しなさい。君が呼び出し、彼も答えると言ってるんだ。何も問題は無い」
「でも....」
ルイズは反論しようとするが、うまく言葉にできない。人だし、幽霊だし、カッコいい男性だし―――
(で、でも、もう召喚をやり直す魔力も無いし、とりあえず強そうだし、それにいつまでも跪かせておけないし)
し、仕方ないわよね!と、自分の中で正当化を終えたルイズは、彼に近づくと、コントラクト・サーヴァントを唱える
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
詠唱を終えると、いまだ騎士の礼を取り続ける男の顔を持ち上げて口づけをする。
(!!い、意外と柔らか―――――)「痛ッ!」
キスの感触の余韻すら感じる暇もなく、ルイズは左腕に灼熱するような痛みを覚えて悲鳴をあげる。
その様子に、コルベールは慌てて駆け寄ろうとするが、騎士は軽く手をあげてそれを制する。
「あー、お嬢ちゃん大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわよ!なんなのよコレ!契約のルーンはアナタに刻まれるんじゃないの?!」
「ああ、コレのことか?」
そう言って騎士は左手を見せて寄越す。そこには確かに契約で生じたと思われるルーンが刻まれていた。
「しっかし、色々とえげつねぇ術式だなコレ」
「そ、それはコッチの台詞よ!なんなのよコレ!」
「ああ、ソイツは令呪っつってな。ま、簡単に言えば、英霊を制御するための強力な魔術式だ。3回しか使えねえから気ィつけな」
「なんでそんなモノ必要なのよ。普通の契約で十分じゃない!」
「そりゃあ決まってる。オレたち英霊がオマエら魔術師じゃ手も足も出ねえほど強ぇからだよ」
そう言って笑みを浮かべる自分の使い魔を見て、ルイズは早くも契約を後悔したくなってきた。

そんなルイズの内面など露知らず、コルベールはルイズとランサーの刻印を興味深げにスケッチしている。
「いやはや、幽霊との契約は前代未聞でしたが、やはり普通の契約とは大分勝手が違うようですな。
 これで契約は完了ですが...時に、お呼びする時はランサーでよろしいのですかな?騎士殿」
「あー、ソレなんだが、『ガンダールブ』って何だか知ってるか?」
「確か、始祖ブリミルの使い魔がそんな名だったような気がしますが」
「そうか....やっぱ呼び名はランサーってことにしてくれ。オレもその方が呼ばれ慣れてるしな」
「わかりました....それでは皆さん、全員の召喚が終わりましたので戻りますぞ」
そのコルベールの言葉を受けて、生徒たちは『フライ』を唱えて飛んでいく。
その光景を眺めながら、半ばあきれた様にランサーがつぶやく。
「はぁー、アレが四系統魔術か、デタラメにも程があるぜ。で、マスターも飛べんのか?」
「う、うるさいわね!飛べないわよ....今は」
でもいつかは飛べるように、とルイズがごにょごにょ小声で言い訳するのを無視して、
ランサーはつかつかとルイズの側までくると、やおらルイズをお姫様抱っこの状態に抱き上げる。
「な、ななななな何すんのよ!!」
と激しく動揺するルイズをよそに、ランサーはすました顔で、
「いや、オレの召喚で魔力使い果たしちまったんだろ?だったらこの位はしてやんねぇとな」
そう言って、ルイズに微笑みかける。

そんな風に、抱き上げられた上に、ごく間近でそんな笑みを向けられてしまい、ルイズの動揺はさらに加速する。
(だ、だだだ抱き上げられるなんて!そんな私初めてでいえ小さい頃にはあったような気もするけど、このまま学院まで連れてってくれるのかしら?
 ていうか胸板とか腕とかすごくガッチリしてて安心できるって言うかなんていうか男の人の匂いが、って何考えてるのよ私は?!
 これじゃまるでヘンタ――――)

と、ルイズの妄想がかなりアブノーマルな方向に行きかけた時、
「よし、あそこまで行きゃいいんだな。それじゃしっかりつかまってろよ。お嬢ちゃん」
そうランサーは声をかける。ルイズがまた『お嬢ちゃん』呼ばわりされた事に抗議しようとすると、突然体全体に強烈な力がかかってルイズは目を閉じる。
直後、浮遊感と吹き付ける風を感じてルイズが目を開けると、地上十数メイルの高さを飛んでいる。
「あ、アナタ『フライ』が使えたの?!」
「?いや、ただジャンプしてるだけだぜ」
「へ?ソレって――――ェええええ?!」
ルイズが聞き返す暇もなく、二人は落下を始める。
ルイズが上に引っ張られるような感覚に慣れる間もなく、着地と同時にランサーは数歩走ると再び跳躍する。
その2度目の跳躍で先行していた生徒たちを追い越してしまう。
自分たちをポカンとして見ている彼らを見ながら、ルイズは意識を手放した。


ツールボックス

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