シロウが使い魔-16


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第16章 決着

         体は  剣で 出来ている
 「――――I am the bone of my sword.」

 (…ルイズの知らない異世界の言葉を紡ぎ出す士郎)

        血潮は鉄で     心は硝子
 「―――Steel is my body, and fire is my blood」

 (…その呪文はルイズの心の奥底まで届いてくる)

        幾たびの戦場を越えて不敗
 「―――I have created over a thousand blades.
     ただ一度の敗走もなく、
      Unaware of loss.
     ただ一度の勝利もなし
      Nor aware of gain」

 (…わたしが呼び出した、私の為の私だけの従者)

          担い手はここに孤り。
 「―――With stood pain to create weapons.
         剣の丘で鉄を鍛つ
       waiting for one's arrival」

 (…この人はこの世界にいる限り私を守り続けてくれるだろう)

      ならば、  我が生涯に 意味は不要ず
 「――I have no regrets.This is the only path」

 (…ならばわたしは、この従者のために何をすればいい)

         この体は、   無限の剣で出来ていた
 「―――My whole life was “unlimited blade works”」


 瞬間、周囲の全てが一転した。

 ――――炎が走る。

 燃えさかる火は壁となって境界を造り、世界を一変させる。
 現れたのは、荒野に無数の剣が乱立した、剣の丘であった。
 アンリミテッドブレイドワークス
 “無限の剣製”
 それが衛宮士郎の固有結界の名前である。

 (シ、シロウ……)
 ルイズは言葉も出ない。今まで見てきた、知っていた魔法とは根本的に違う。
 そこにある無数の剣は、まるで戦に敗れた死者を弔う墓標にも思えた。

 「うへぇ、なんだ、こりゃぁ~!」
 床に置き去りにされていたデルフリンガーは、驚きの声を上げる。
 「こりゃ、おったまげ~た。おどろいた。スゲェ居心地が悪い!前の武器屋の方が快適だね」
 どうやらこの空間がお気に召さないようだ。

 士郎が歩き出した。そうすると、前方にポッカリと窓が現れた。
 どうやら、未だにニューカッスル城であることに間違いないようだ。
 窓の外には多数の軍船、兵士、ドラゴンなどが見え隠れしている。



 いつの間にか士郎の左手には、一張の弓が握られていた。
 それは、いつか学院の屋上で使っていた、フーケに盗まれ取り戻した弓である。
 そして右手にも一振りの剣が現れる。
 弓に剣を番える士郎。
 目の前の窓から、矢(剣)を放つ。

 それは無音にも近い射出であった。矢は一直線に敵の一番大きい船に向かって飛ぶ。 

 その矢を視認できたものは士郎とルイズ以外に果たして居ただろうか?
 それが船に着弾するとともに……空は白一色で覆われた。

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 轟音と共に、船だったものが落ちていく。 その船の名は『レキシントン』。
 全長2百メイルの船はアルビオン、いやハルケギニア最大の船であったろう。
 それが只の一撃で沈んでゆく。 その様子を見ていたものは、自分の目を疑っただろう。

 誰もが言葉を失って空を見上げる。 そして2射目が放たれた。

 目標になったのは次に大きいと思われる戦列艦。 やはり一撃で沈む。

 事ここに至ってようやく、これは貴族軍に対する攻撃だと理解する戦場の人間達。
 王軍は勢いを増し、貴族軍は敵の砲撃におびえる。
 ニューカッスル城から兵が怒涛のようにあふれ出し、避難船までの道を完全に掌握した。

 貴族側の艦隊もおとなしくやられているわけではない。二射目の出所がニューカッスル城にある
 尖塔からだとわかると一斉に砲撃と魔法攻撃を開始する。
 視界が0になるほどの一斉砲撃である。この攻撃では、塔など跡形も残らないだろう。

 だが、塔の周りの煙が晴れると
 そこには先ほどとなんら変わりの無い塔と、花弁のような光が現れた。
 信じられないことに、一斉砲撃でも大した被害を受けていないようだった。

 花弁の光が消えると同時に、再びの射撃が始まった。
 その塔からの攻撃を受けると、船が一撃で沈む。
 ありえない攻撃力とありえない防御力を目の当たりにした貴族軍は恐慌状態に陥る。
 どの船、どの兵も一目散に退却をはじめた。

 塔のからの追撃で船を20隻落とされた時点で、貴族軍は城周辺からは完全に撤退した。


 貴族軍が今回の作戦に投入した軍船は40近い。
 『疲弊している敵の殲滅戦においては全軍をもって当たるべし』
 アルビオンに伝わる用兵術通りに、投入した兵はほぼ全軍である。
 それが結果、貴族軍側の被害を増すことになった。

 王軍損害  中型輸送艦 1隻     中破
         風竜     5頭
         兵士     死者21名 重症者 19名
 貴族軍損害 旗艦レキシントン     大破
         大型戦列艦 15隻    大破12・中破3
         大型輸送艦 2隻     大破2
         中型戦列艦 2隻     大破1・中破1
         火竜     7頭
         風竜     9頭
         兵士     死者225名 重症者460名
 なお貴族軍の兵士被害の多くは、船の墜落によってである。

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 士郎はぐったりしてしゃがみこむ。さすがに今回の投影は士郎にとってもオーバーワークであった。
 固有結界の展開自体はデルフリンガーに回してもらった魔力で補うことができたが、
 弓の投影と“熾天覆う七つの円環”と呼ばれる光の花弁は、士郎の残りの魔力を根こそぎ
 持っていった。 矢として使った“偽・螺旋剣”の投影自体に魔力消費は発生しなかったものの
 ワルドとの戦闘の直後に20もの連続投影・連続射撃を行ったので、ほとほと疲れ果てた。

 「ね、ねぇ、シロウ。今のって魔法?? あんなの見たこと無いわよ。 幻覚?」
 「ぁ~……、今のが固有結界。術者の心象世界を現実に侵食させる……魔術」
 そういうとふらふらと歩き出す士郎。
 ルイズはあわててデルフリンガーを拾い上げて、士郎について行く。

 ………

 士郎は途中で兵士に(石化された)王様の場所を聞き出して、そこへと向かった。

 先ほどまでは、城内は混乱の極みに達していた。だが、敵兵が一斉撤退を始めたので、
 今はその騒ぎも収拾に向かっていた。
 戦場へ指示を飛ばしていた皇太子も今は落ち着いて、王の様子を見に来ていた。

 「ああ、使者殿!! 大戦果だった。我が軍の被害は最小限ですみ、敵に大打撃を与えた。
  これもひとえに使者殿のおかげ。 このお礼はしてもし足りないほど。
  だから、なんなりと申して欲しい」
 士郎としてはこそばゆいほどの言葉であった。
 「あ、いえ。 ありがとうございます。 とりあえず王様の石化を解きにきたのですが」
 「そうか! そうだな、早速お願いしよう。 始めてくれたまえ!!」
 「では、水メイジ以外の人のご退室をお願いします」
 「いや、そうか! 気が利かなぬですまぬな。
  なにやら特別な秘術があるようだ。 ほら、皆の者、部屋から出るぞ!!」

 皇太子は水メイジ一人を残して、兵と共に部屋を出て行った。

 「え~と、水メイジの人。 すまないけど、頼みがあるんだ。
  俺がこれから石化を解く方法を……他言無用にして欲しいんだけど」
 「それはもちろんです。私は後ろを向いておりますので、済んだらお声をおかけください」

 これで投影魔術を知られるのは最小限で済みそうだ。皇太子を治したときに水メイジに見られた
 だけで、あとはキュルケとギーシュ、そして今一緒にいるルイズの計4人。
        トレース オン
 「────投影、開始」

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 戦いは一段落となった。 圧倒的優位であったはずの貴族軍は多数の死者・怪我人を出し、
 また多くの兵士が捕虜となった。 ただ、王軍は篭城戦をしている側なので、捕虜を
 収容する余裕などあまり無い。 早々に身代金にての捕虜返還をおこなう予定だ。

 篭城側の王軍は捕虜に糧食を分けないことを公に宣言した。
 貴族軍側が王軍の物資の消耗を狙わないように、先手を打ったのである。
 これにより、貴族軍が捕虜引渡しを行わないとなると、貴族軍の士気は低下するだろう。
 といっても、元々白旗を上げた避難船を襲うような貴族軍などには、士気や規律など
 既に有って無いようなものだった。
 今回の大敗でそれはさらに酷いものになるだろう。

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 謁見室では国王、皇太子とルイズ一行、軍の重鎮が集まっていた。

 「父上、無事元の姿に戻られたようで何よりです」
 「うむ、わし自身は石にされていたときのことは憶えておらんので、なんとも言えんのだがな」
 とアルビオン国王が笑う。
 「使者殿にはその上、敵の排除までしていただきました。何か御礼をと思うのですが」
 「ふむ、そうだな。 だいぶ目減りしたとはいえ宝物庫にはまだ高価なものも残っておる。
  好きなものを一つずつ選んでいってもらおうではないか」

 「いけません、国王陛下。そんな過分な褒美をいただくわけには参りません」
 あわててルイズが言っても、
 「どうせこの城も長くは持たん。 貴族軍どもに漁られるくらいならこのようなときに
  贈ってしまうほうが有意義というものだ。 残りはできる限り避難船に積んでしまえ」
 国王は意に介さない。 皇太子も軍の重鎮達もうんうんと頷くばかり。

 一行は結局、厚意をありがたく頂戴することにした。早速、宝物庫に案内される。

 ………

 「ねぇ、シロウ。どうしよう……。なにか選ばないといけないのかな?」
 「俺に言われても……」
 「なによ、あんた達。 シロウなんて大活躍だったじゃないの。
  2、3品選んだって文句は言われないわよ」
 「そうそう、僕らだって命がけで戦ったんだ。ご褒美の一つは欲しいところだよ」
 ギーシュは早速、物色を始めた。金色の鎧に興味を引かれているようだ。
 タバサは杯(さかずき)にディティクトマジックを掛けている。
 キュルケは刀剣の類を見に行った。士郎にプレゼントでもしようと思っているのだろう。

 「ダーリン。ねぇ、ここの剣の中でどの剣が一番上等?」
 キュルケが尋ねてきたので仕方なしに見に行く士郎。
 「!!!。この刀は───、日本刀!!」
 独特の反りの入った鞘に収められている刀がそこにあった。何故このような物がここにあるのか、
 士郎は刀を手にとってみる。どうやら戦時中に作られた軍刀のようだ。
 という事は、この世界と士郎のいる世界は過去何らかの形で繋がった事があるのだろう。
 「ふ~ん、その剣がいいのね。 じゃあ、あたしはそれを選ぶわっ」
 キュルケは士郎が掴んだ刀を持っていった。

 宝物庫にそのほかには、士郎の世界の物は無いようだった。

 とりあえず士郎自身は一番みすぼらしくみえた宝を選んだ。オルゴールのようだ。
 ルイズはマントを手にとっていた。タグが付いており、そこには『浮遊』が掛けられているとの
 説明が入っている。
 タバサが選んだのは杯。それはマジックアイテムで『水作成』でいくらでも水が湧き出る。
 ギーシュは結局、黄金色の鎧を選んだ。早速着込んでいる。 あれでまともに動けるのだろうか。

 ………

 宝物戸から現れた一行を見て、皇太子は早速訊ねる。
 「おや、使者殿。そのようなモノ一つでよろしいのか? 他にも色々あったろうに」
 「ああ、いいんですよ。あまり嵩張るものを貰っても困りますから」
 「ずいぶんと欲がない……。では、これを贈るので是非貰って欲しい」
 皇太子は自分の嵌めている風のルビーを士郎に差し出した。
 「これって国宝なんじゃ………?」
 「いや、いいのだ。既に国としてのアルビオンは無くなったも同然。国宝だのなんだのと、
  そのような事に価値は無い。それに使者殿には是非に自慢できるものを贈りたいのだ」
 「……わかりました。では、遠慮なく頂戴いたします」




 「で、君たちはあと一晩くらいは泊まっていかれるか?」
 「いえ、私たちは学生の身ですので、学院になるべく早く戻ろうと思っております。皇太子陛下」
 ルイズが応えた。
 「おお、そうか。城の方から出るようだと、また敵に襲われるかもしれん。
  大陸の裏から船で途中まで送ろう」

 こうして、ルイズ一行はアルビオンを後にするのだった。

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 「ひ~、ひ~、重い……」
 「お前、そんなの選ぶ前から分かるだろ。なんで甲冑なんて選んだんだよ」
 「これが一番高価そうに思えたんだから、仕方ないだろう」
 「『浮遊』を唱えればいいんじゃないの?」
 「さっきの戦闘で魔法はほとんど出し尽くして……、もう…、唱え、られない……」
 「ったく、しょうがねぇ奴──。ルイズ、ちょっとだけ貰ったマント貸してやってくれ」
 「え~~~、せっかく私が頂いたのに……。(ぶつぶつ)まぁ可哀想だから貸してあげるわよ」

 「ふぅ、やっと普通に歩ける。ありがとう、ミス・ヴァリエール」
 丁寧に感謝するギーシュ。
 「貸すだけなんだからね!!後で返してもらうんだからね!!」
 「わ、わかっているよ」

 ………

 「でね、そこでダーリンが颯爽と魔剣を取り出して、皇太子をずいって刺したのよ。
  私も驚いたわ。だって石になったとはいえこの国の王子様よ。
  そしたら、見る間に皇太子の肌艶が普通の人に戻っていったんだもの……」
 「興味深い───」
 「その後はルイズにも、同じように魔剣を刺したの。あの魔剣、すごいデザインだったわ。
  こうギザギザなのよ。色もいろんな色が禍々しい感じで浮き出していたわね」
 「他に情報は?」
 「ん~、あとはダーリンに直接訊いた方がいいんじゃない? だって私も詳しくは知らないもの」
 「わかった」


 「お~い、君たち、そろそろ大陸が見えてくるぞ。準備をしてくれ」
 「「「はーい」」」

 トリステインへの帰路についた一行であった。



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