シロウが使い魔-14


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第14章 謁見

 一行が城に到着したその夜にささやかながらパーティが開かれた。

 「皆、今宵はこれからの戦いへの英気を養うのと、
   トリステインから来た方たちの歓迎、
   そしてこれから送り出す我らが家族のしばしの別れを惜しむための
   合同パーティである。

   大いに飲み、食べ、笑い、泣き、楽しんでもらいたい!!!」

 ………

 壇上のウェールズの姿を見ながら、ルイズは士郎に尋ねた。
 「家族を送り出すって、戦時だから避難させるってことかしら?」
 「そうじゃないか? 女性や子供の姿が見えるから」
 「どの国へ避難させるのかしら……」

 「トリステインで受け入れたいってこと?」
 キュルケが口をはさむ。
 「えぇ、できればそうしたいわ」
 「といっても、姫殿下に許可とか得てるわけじゃないだろう」
 ギーシュが質問する。
 「でも、姫殿下も同じ気持ちだと思うわ」 ルイズが反論する。
 ここでワルドが、
 「じゃあ、使いを出してみればいいんじゃないか?
  ええと、タバサ君だっけ? 彼女の竜が一番早く飛べそうだけどね」
 「断る。かなり疲労しているから」 タバサの返事はそっけない。

 「そうか……。僕のグリフォンを使って連絡を取ってもいいけど……」
 「まぁそれはきちんと謁見して、話を伺ってから決めましょう」

 ………

 戦時下のため、お世辞にも豪勢とは言えないが、それでも気持ちのこもった料理が並んだ。

 一行はそれぞれパーティを楽しんでいた。
 タバサは黙々と食べ物を口に運ぶ。
 キュルケはいろんな人たちと談笑し、華を振りまいていた。
 ギーシュの周りにもそれなりに輪ができていた。どうやら、魔法瓶の売り込みをしているようだ。

 ルイズも作り笑いながら、うまく他の人と語らっていた。

 ワルドは、壁に背をあずけて何かを考えているようだった。

 そんなワルドを横目に見ながら、士郎はウェールズと話をしている。
 「どうだい? 楽しんでもらえてるかな?」
 「あ、はい。 まぁ楽しんでますよ」
 「おや、君はお酒は飲まないのかな?」
 「あんまり飲めないんですよ。 でも、この紅茶は美味しいですね」
 「アルビオンの水で淹れたお茶は美味しいんだよ。どんどん飲んでくれて結構だから」
 「いや、そんなには…」
 と、苦笑する士郎。


 「まぁ、それもそうか」と、ウェールズは去ろうとする。

 「あ、皇子。なんか落としましたよ」
 と、士郎はしゃがみこんで紙を拾い上げた。手紙のようだ。
 「ん?これは……。 やぁすまないね。ありがとう」
 手紙を受け取るウェールズ。

 「それじゃあ、後ほどまた会おう」

 ………

 パーティも終わり、一行は王に呼ばれ謁見室と思われる場所に呼ばれた。

 玉座についているのはアルビオン王であるジェームズ1世。
 ウェールズは玉座の前にある段の下で、皆の方を向き立っている。
 一行の顔を見回して王が述べる。
 「遠路はるばる、よく来ていただいた。 トリステインの姫殿下が遣わした使節の方々。
  先に謝っておこう。 本来なら先に謁見を済まして、パーティを開くべきだったのだが、
  我が兵たちの家族はこれから脱出の準備に取り掛からねばならぬ関係で、
  このような順番に相成った。 申し訳ない」

 一行の代表であるルイズが応える。
 「いえ、過分のお言葉、痛み入ります」

 ウェールズが引き継ぐ。
 「では、使者殿の用向きを伺うとしようか」

 「え~、すいません。皇太子殿下。お人払いをお願いできますでしょうか?」
 「ふむ、2人きりで話がしたいと……?」
 「できることでしたら、お願いします」

 だが、ワルドが
 「いや、ルイズ。ここで話してしまったほうがいい」
 と、ルイズに囁いた。
 「え? でも……」
 「ここは正式な謁見の場だ。 内密にするかどうかの判断は彼らがしなければならないと思う」
 「…………、そうね。 わかった」

 ルイズは再度言い直す。
 「ウェールズ皇太子殿下、実はアンリエッタ姫殿下から一つの下命を受けました。
  姫殿下から皇太子殿下に送られた手紙を受け取りに参ったのです」
 「……なるほど。相分かった。理由は皆まで言わないでも理解した。アンリエッタらしい」

 皇太子は何事か思い出に浸っている。ふふふと小さく笑みをこぼした。

 「わかった。手紙は後ほど受け渡そう。その代わりといってはなんだが、一つ頼みがある」
 「なんでしょうか?皇太子殿下」
 「我が兵たちの家族の亡命……いや、避難先としてトリステインを選択したいのだ。
  受け入れを正式に要請する」
 「わかりました。 では、それは国に連絡を取りたいと思います」
 「よろしく頼む。 他に何か用向きが無いようなら、謁見はこれで終わろうと思うが、よいか?」
 「はい、ありがとうございました」

 ルイズは優雅に一礼をした。
 ワルドもキュルケ、タバサ、ギーシュも貴族の作法に則って礼をする。
 士郎だけ深く頭を下げる礼をした。 他の者は不思議な目で士郎を見た。

 ………



 ウェールズに呼ばれて、ルイズと士郎、そしてワルドがウェールズの居室に案内された。
 「すまないな。来てもらって」

 ルイズはとんでもございませんと返し、こう続けた。
 「先ほどはお渡しできませんでしたが、姫殿下より密書を言付かっております」
 「ふむ、密書か……」
 「こちらでございます」

 ルイズは懐よりアンリエッタの手紙を取り出し、ウェールズに渡した。

 ウェールズは丁寧に封を切ると、中の手紙を取り出し読み始めた。

 「ああ、彼女の婚姻はほぼ決まったようだな……。愛らしいアンリエッタ……」

 手紙を最後まで読んだウェールズは3人に向き直る。

 「先程の避難先の受け入れ要請での連絡は不要になったよ。
  既にこの手紙に避難民の受け入れが明記されていた」
 微笑むウェールズ。

 「さて、あとは昔、彼女から送られた手紙だね……。
  ……
  これは、どうしても返却しなければならないだろうか?」

 「え!?」 予想もしないウェールズの反応にルイズは驚く。

 「ああ、勘違いしないでくれたまえ。返すことは問題ないんだ。
  でも、これを君に渡すと君の身が狙われないかと思ってね。
  万が一、貴族派やレコンキスタ共に奪われたなんてことになると、アンリエッタに
  顔向けできないよ」

 「では、燃やしてしまいましょう」 士郎がそう言う。
 「まて!」 ワルドが慌てる。
 「それは本末転倒だろう。姫殿下からの要請は手紙を持ち帰ることではないのか?」
 「そうよ! 何、勝手に物騒なこと言い出してるのよ!!」

 「だってさ、本来の目的はゲルマニアとの婚姻を滞りなく進める障害の除去が目的だろ。
  わざわざ危険を冒して、手紙を敵に奪われましたなんて笑い話にもならないよ」
 「僕がいて、みすみす奪われるようなことになると思うのかい?」
 「でも、行動は常に最悪の事態を想定して動くべきです。
  燃やせば、奪われることは絶対に無いし、襲われるリスクや隠す必要もなくなる」
 「君は民間人だからいいが、私は近衛なんだ。姫殿下のご命令であれば、遂行する必要がある」

 <パチパチ>
 焦げ臭い臭いと共にそんな音が聞こえてきた。

 「ああ、君たち。すまないな。(討論が)長くなりそうだから、勝手に処分させてもらった」

 「え??」ワルドとルイズが慌てて振り向くと、ウェールズはランプの蓋を開けて、
 手紙に火をつけていた。すでに粗方燃えてしまっている。

 ガックリ膝を付くワルド。
 「わ、私の任務が……」

 「まぁ気を取り直してくれ。他のことだったらいろいろ協力するから」

 これで会談はお開きとなった。




──────────────────────────────

 「ふむ、敵陣に潜り込むことは成功したのだな」
  「はい。やつらは明日、兵の家族を脱出させるようですが……」
 「ああ、それは既に聞いている」
  「では、一斉攻撃はその後でよろしいのでしょうか?」
 「ふふ、何を言っている? 船を沈める絶好の機会ではないか」
  「!!! では、軍人ではないものが乗っている船を一斉に沈めると!?」
 「何者が乗っているかなど、我らの知るところではない。
  城から発進しているのなら、それは軍事行動と取られても致し方あるまい」

 えげつない攻めをする。そうは思っていても顔に出すような愚かなまねは決してしない。
 命令どおりに任務をこなすだけだ。そう、男は思った。

 「ああ、王や皇太子は極力きれいな状態でいてもらいたい。
  そのために、渡した『毒針』をうまく活用してくれたまえ」
  「御意」

 男はその言葉を残すと何処かへと消えた。

──────────────────────────────

 翌朝……

 城の一画に武装を取り払われた大型船が5隻停まっていた。
 もちろん軍旗も外され、代わりに白旗が掛かっている。

 兵が大声で指示を飛ばしている。
 「昨日の指示通り、手荷物は極力減らしてください。家族ごとに集まり、離れないようにして下さい。
  兵の指示に速やかに従ってください。 では、乗船してください。」

 この城のどこにこれだけ居たのかと思うほどの人が、船の周りに集まっていた。
 兵の指示に従い、停泊中の各船に吸い込まれていく。

 城の中からその様子を見下ろす皇太子と共に、一行はいた。

 「君達はどのようにして国に戻るつもりかね? あの船に一緒に乗っていくかね?」
 「私達は竜とグリフォンに乗って帰る予定です。皇太子殿下」
 ルイズが応える。

 「ふむ、そうか。島の抜け穴から帰るようなら、雲が晴れるまでは真っ直ぐ下りていけばいい。
  この時期なら、そちらの大陸とはそれほど距離は無いから、無事着けるだろう」
 「はい、ありがとうございます」
 「では、私はここで失礼するよ。兵の指揮もしなければならないからね」

 そういうと、ウェールズは扉をくぐり去っていった。

 ………




 避難船がまず1隻飛び立った。ニューカッスル城の周りには現在、敵船は見当たらない。
 王軍側は、敵軍も気を利かせて兵を下げているのだろうと、胸をなでおろした。

 船が十分な高度に達すると移動を開始した………

 その直後、轟音と共に大砲が放たれた。

 同時に避難船のマストが根元からへし折れる。この世界の船は、海に浮かぶ船と大した違いは無い。
 浮力を『風石』と呼ばれるもので得ているのが違っているくらいだ。
 マストが折られた程度だと、急に墜落するものではないが満足に移動はできない。
 避難船は徐々に高度を落としていく。

 避難船が高度を下げ始めたと同時に何処に隠れていたのか、
 敵兵がわらわらと避難戦へ向かっていく。

 城壁から船の行方を見守っていた皇太子は声を荒げた。
 「船を守れ~ッ!!! 敵兵を近づけるなぁっ!! 乗員を城へ連れもどせぇっ!!!」

 なんだこれは!避難船を急襲するとは!! ウェールズ達王軍側は猛り狂う。
 ニューカッスル城から王軍が雪崩出る。
 城の周りに隠れていた貴族軍の兵がそれを迎え撃つ。
 乱戦になると同時に、貴族側の軍船が多数現れた。

 城の中からこの様子を見ていたルイズ達。
 「ど、どうしよう!シロウ。 あたし達、どうすればいいッ!?」
 士郎は周りを見る。 ワルドが居ない!
 「しまった!! ワルドを見失ったッ!!」

 一行も周りを見るが確かにワルドは影も形も無い。
 士郎は皆に指示を飛ばす。
 「タバサ、竜を呼び出してくれ。 奴のグリフォンはどうしてる?」
 「厩につながれている。 今のところワルドがグリフォンを操ろうとしている気配は無い」
 タバサが精神感応で即座に情報を得る。
 「よし、奴は城内で破壊工作をするかもしれない。タバサ、空から監視してくれ」
 「了解」
 「ギーシュとキュルケは俺とルイズと一緒に皇太子のところへ急ぐぞ。
  奴が居なくなったことを早く伝えないと」
 「わかったわ」「まかせろ」

 「え? え? え?」
 ルイズは展開についていけない。ワルドのスパイ疑惑を聞かされていないので当然である。

 「ルイズ! 周囲に気をつけてくれ。 いつワルドが襲ってくるかわからない。
  ギーシュ、キュルケ頼むぞッ!!」

 一行は走り出した。移動しながらルイズは士郎に疑問をぶつけた。 
 「ちょ、ちょっと、どういうことか説明してよッ!!」
 「ワルドが敵のスパイの可能性があるんだっ! このタイミングで姿を消すってことは
  疑いが濃厚になった!」
 「なに、それ! いつから疑っていたのよッ!!」
 「最初から」
 「なんで私に教えてくれなかったのよッ!!」
 キュルケが口を挟む。
 「あなた、疑っていることを相手に隠し通せる性格なの?」
 「うっ!!」
 「わかった?」
 ルイズはそれ以降、憮然と黙り込んでしまう。

 今は皇太子の下へ急ぐ一行であった。




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