シロウが使い魔-12


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第12章 試合

 「ということで、君と戦うことにしたから……」
 突然のワルドの宣告。

 ここは先程の脱走した兵士がいた隠れ家近くの森の中。
 ワルドに連れ出された士郎。 他のメンバーは隠れ家に待機している。

 士郎は「へ?」と気の抜けた返事をした。

 「な、なんでですか?」
 「おいおい、今までの話を聞いてなかったのかい?
  さっき、ルイズが僕のところへ来て、
  『あなたのプロポーズを断りに来たの。だって、シェロが断れって言うんだもの』
  って言ってきた。 これは君からの宣戦布告なんだろう?」

 「いやいや、今から王族軍へ接触しようってこんな時に決闘なんて、正気ですか?」

 「こんな時だからだよ。この機会を逃せば次に君と雌雄を決する機会が来るとは限らない。
  安心したまえ、もし君が倒れても、ちゃんと船には運んであげるから……さッ!」

 ワルドは言いつつものすごい勢いで突っ込んでくる。

 士郎は距離を取ろうとバックステップを踏みつつ、デルフリンガーを抜き構える。

 <ぎんっ!!>
 ワルドの杖とデルフが交差し火花を上げる。鍔迫り合いの状態のままワルドが問う。
 「君は、魔法を使わないのかい?」

 「魔法よりこっちの方が得意なんすよっ!!」と士郎はデルフを押し込む。

 「ふむ!そうかい!でも、こっちは遠慮なく魔法を使わせてもらうよ!」

 ワルドはバックステップを踏み、少し距離をとった。だがすぐさま連撃に移る。

 「魔法衛士隊のメイジはただ魔法を唱えるのではない!
  詠唱さえ戦闘に特化されている!構え、受け、突きなどの動作の中にも詠唱が行われる!
  杖を剣としつつも!魔法を発動できるのさ!」

 ご丁寧に説明してくれるワルド。そして呪文を詠唱した。
 「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」

 デルフが警告を発する。
 「相棒!くるぜ!」

 空気の塊が士郎を横殴りに弾き飛ばす。10メイルは飛ばされただろうか。
 だが、士郎はなんとか空中で体制を整え無事に受身を取る。そして剣を構えた。

 「ほほぅ。この程度の魔法は君には通じないかな……。
  だが、杖を持たないメイジなど僕の敵たりえない。それを証明しよう。

  デル・ウィンデ!」

 不可視の刃『エア・カッター』が士郎に襲いかかる。

 士郎は見えないながらも気配から『エア・カッター』を両断しようと剣を振るう。

 「無駄だよ、シェロ君。 その程度の迎撃で僕の『エア・カッター』は受けきれない!」




 その通りであった。
 手応えからみるに士郎は『エア・カッター』を両断することには成功したようだ。
 が、その魔法の勢いはそれで消しきれず、士郎の二の腕に傷を負わせた。

 「僕はこうして、『エア・カッター』だけを唱え続けるだけで君を倒せるのさ…。
  デル・ウィンデ! デル・ウィンデ!! デル・ウィンデ!!!」

 こうなると士郎は防戦一方である。デルフを盾がわりにして左右に避け続けるしかない。
 それでも『エア・カッター』を確実に避けれるわけでもなく細かい傷を負っていく士郎。

 ましてや、ワルドの魔法を避けるためには大きく横っ飛びするくらいしか方法がない。
 ワルドの魔法による精神力の消耗より、士郎の体力の消耗がどう見ても早い……



 ……かに見えた。

 何度か左右に避けていた士郎だが、なぜか最初のように『エア・カッター』を両断する方法に
 変えた。

 「ほほう、なにか意図でもあるのかい?
  でもその方法では、『エア・カッター』の威力は消しきれないことは証明済みだろう」

 その後、3度(たび)ワルドは『エア・カッター』を詠唱した。
 だがよく見ると、士郎が今以上の傷を負うような気配がない。

 「何?……」

 「もう無駄ですよ。その攻撃は見切った……」

 「何…だと…」

 再度『エア・カッター』を唱えるワルド。だが士郎の剣のひと振りで消え失せる魔法。
 士郎がなにか魔法を使っているのか、それとも純粋な剣技によってなのか、
 もはや『エア・カッター』が士郎に届くことはなかった。

 「そろそろやめません?」 士郎が尋ねるが、
 「まだだっ!!」 ムキになったワルドが応える。
 「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」

 士郎を最初に吹き飛ばした魔法の詠唱だ。
 士郎はワルドの動きをつぶさに見て、おおよその魔法の方向を見極める。「左だっ!!」

 魔法の発動と同時に、デルフがその魔法のただ中に突き出される。

 「なっ!!」 ワルドが声を上げる。
 たったのひと突きで、魔法が掻き消えてしまった。

 「僕の魔法をこうもあっさり破るとは……いったい、何をしたんだい?」
 「それは秘密ですよ」
 士郎はにやりと笑う。




 「……ふん、じゃあ次の魔法で最後としよう……」

 呪文を唱え始めるワルド。『ライトニング・クラウド』の呪文である。
 ワルドの頭上の空気が冷え始めた。ひんやりとした空気が士郎にも伝わってくる。

 士郎は慎重にワルドの出方を見る。

 「相棒!くるぞ!!」

 空気が震え、パチンと音がすると同時に、稲妻が士郎とデルフめがけて飛んでくる。

 稲妻はデルフを直撃し、士郎は後方に跳ね飛ばされた……

 ………

 (少々本気になってしまった……)
 ワルドは士郎の方へと歩いていく。

 「す、すまない。ここまでやるつもりはなかったのだ……」
 ひょっとして死んでしまったのでは、と思いながらも士郎に声をかける。


 「……痛てて。ちょっとシャレになんないんじゃないですか?」
 不満げな声で士郎が応えた。地面に大の字になったままだが。

 (!!!。馬鹿な!!またしても無傷だとっ!!)

 「お~い、相棒~。大丈夫かぁ~?」
 「!!!」ワルドは慌てて声の出どころを探す。驚くことに剣がしゃべっているようだ。

 「シ、シェロ君、これはインテリジェンスソードかい?」

 「よぉ、魔法使いの旦那。俺様の名前はデルフリンガー。気軽にデルフって呼んでくれな」

 「ああ、そういうことか。僕の魔法をことごとく破ったのはこの剣のせいだな」
 起き上がった士郎がそれに答えた。
 「そういうことです。俺も今さっき、そんな芸当ができることを知ったんですけどね」

 士郎は歩いてきてデルフを拾い上げると、鞘に戻し背負う。
 「もうこの辺でいいでしょう?」

 さすがにワルドもこれ以上の戦闘を行おうとは思わなかった。
 「いや、悪かったね。でもルイズに変なことを吹き込む君も悪いんだ」

 「ああ、そのことですか。いや、プロポーズはせめてこの任務が完全に終わってからに
  してくれれば、こちらもとやかく言わないですよ」

 「まぁ、それは君の言い分の方が正しいか……。 では、さっさとその任務を果たしに行こう」
 ワルドはすたすたと歩いていってしまった。




 ワルドは帰り際思った。
 (魔法が通じない相手か……。こいつは少々厄介だな。
  これからの“私の”任務に邪魔になる可能性があるな……)

 士郎も思う。
 (魔法衛士隊隊長の腕は伊達じゃない。スパイがワルドだとしたら、無傷じゃすまない。
  いや、王軍が壊滅させられることもあるかもしれない…。どうすれば……)

 互いに相手の腹の探りあいになる。
 だが士郎は正直、陰謀戦などには向いていない。
 キュルケあたりと相談して対応を決めようかと士郎は考えた。


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