シロウが使い魔-02


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第2章

 衛宮士郎の朝は早い。昨晩はかなり遅くまでコルベールの質問攻めにあったが、
 それでも体内時計は早朝に起きるように体を促したようだ。
 「日課の鍛錬……って言っても着替えが無いうちに汗を流すのもなぁ」
 昨日ルイズに約束してもらった衣食住の衣。つまり着替えを用意してもらうまでは
 着たきり雀になるため今着ている服を洗って乾かして着るという行為を
 繰り返さなくてはならないようだ。

 「さてと、では使い魔としての日課をすませるか」
 誰ともなしに呟いて、士郎はルイズの部屋へ洗濯物を取りに向かった。

 ルイズの部屋では、もちろんルイズは熟睡の最中であった。
 音を立てないように部屋に入った士郎は、毛布をはがして丸まっているルイズに
 そっと毛布を掛けなおしてやり、部屋の隅の籠に入っている洗濯物を籠ごと外へ運び出した。

 水場の場所は昨夜コルベールに聞いていたが、この世界の洗濯の方法なんかを
 聞いてなかったことに気がついた士郎。
 丁度近くを通りかかったメイドらしい黒髪の女性に声を掛けた。

 「すみません」
 「はい?あら、ここでは見かけない方ですね」
 「ちょっとお尋ねしたいのですが、この洗濯物を洗いたいのですが、やり方を知りたいのです」
 「……はぁ。洗濯物ですか…。これはどなたの洗濯物でしょうか?」
 「えっと、ルイズ…じゃない。ミス・ヴァリエールと言う生徒のものです」
 「そうですか。じゃあこれは私の方で洗濯いたしますわ」
 「え? それは悪いです。自分が任されたものなので」
 「あぁ、もしかして、あなたが昨日召喚されたという噂の平民のかたですか?」

 特に娯楽も無い全寮制の施設内においては、噂は何より退屈を紛らわせるものとなっていた。

 「えっと、多分その噂の平民です」
 「私はシエスタと申します。お名前伺ってもよろしいでしょうか?」
 「あ、俺は衛宮士郎。士郎って呼んでください」
 「シロウさんですか。では、シロウさん。この洗濯物は責任を持って、私シエスタが
  お預かりいたしました」(にこっ)

 どことなく間桐桜を思い出させる女性である。
 「ありがとう。ん~、でも一応洗濯するやり方とか一度覚えておきたいんだよなぁ」
 「そうですか。では今度時間のあるときに洗濯をお教えしますわ。
  でもそろそろ生徒さんが起きる時間だと思うんですけど……」
 意外と時間が経っていたようだ。
 「じゃあ洗濯お願いします。俺は急いでご主人様を起こしてくるんで。じゃぁ」
 「はい、いってらっしゃい」


 再び、ルイズの部屋

 「お~い、ルイズ。そろそろ起きないと遅刻するぞ」
 「…………ふが、…………む」(ぱちくり)
 「おはよう、お嬢様」
 「ぉはょぅ……。……ってあんた誰?」
 魔術師の女性は朝が弱いって法はないよなぁと思いつつ自分の名を名乗る士郎。
 「ああ、使い魔ね。昨日、契約したんだっけ」
 自分は魔法が成功したことが無いのに、魔法が使える使い魔なんて喚んでしまって
 コンプレックスが刺激される。

 「服着せて」
 ルイズはネグリジェを脱ぎ始めた。
 <ゴツン!>
 ルイズは士郎に拳骨で叩かれた。
 「いたぁ~~い!!」
 「自分でやれ!」
 貴族に手を上げるなんて!と文句を言いそうになるが、士郎が笑顔で怒っているのに気付き
 「ごめんなさい」
 と思わず謝ってしまった。

 「先に部屋の外で待っているからな」
 さっさと出て行く士郎。
 (なによ、私の使い魔の癖に。私がご主人様なのに……)と不満たっぷりのルイズ。
 それでも朝の仕度を自分独りですませるのであった。

 ルイズが部屋を出るのと、隣の部屋から赤い髪の女性が出るのは同時であった。
 「おはよう。ルイズ」
 「おはよう。キュルケ」
 「そこに居るのは、あなたの使い魔?」
 キュルケと呼ばれた女性は、にやけながらルイズに質問する。
 「あっはっは!本当に平民を使い魔にしたのね!すごいじゃない!」

 顔に朱がさすルイズ。

 「じゃあ私の使い魔も紹介してあげる。フレイム、出てらっしゃい~」
 キュルケの部屋から巨大なトカゲが現れる。
 「それ、サラマンダー?」
 「そうよ。火竜山脈のサラマンダーよ。私にぴったり。ところで使い魔さん、お名前は?」
 (幻想種の生きたサラマンダーをまじまじ見つめていた士郎はあわてて答える)
 「え、衛宮士郎」
 「エミヤシロ? 変な名前ね。まぁいいわ。じゃあお先に」
 そう言うと、颯爽とキュルケは去っていった。サラマンダーもかわいい動きで後を追う。

 「くやし~~~!!サラマンダーを召喚したからって、自慢げに!!」
 「まぁ俺とサラマンダーじゃ比べ物にならないよな……。ごめんな」
 自虐的な士郎におもわずルイズは
 「ちがうの。あなたが駄目ってわけじゃないの。あなただってメイジだし…」
 とフォローを入れてしまう。メイジという単語に何か思いついたルイズは
 「あの、士郎がメイジって事、他の人には内緒にしてもらっていい?」
 と尋ねた。

 ………


 トリステイン魔法学校の食堂は、学園敷地中央の本塔にある。
 生徒は、学年ごとに色分けされたマントを身に付け、
 やはり学年ごとに分かれ一つの長テーブルの席についていた。

 豪華な装飾、花、フルーツ。室内は貴族が使うにふさわしいように華美を極めている。

 ルイズはその中を歩いていき、一つの席の傍で立ち止まる。
 上流階級のマナーなど知らない士郎だが、空気を読む能力を発揮して、椅子を引く。
 「ありがとう」と軽く会釈をしてルイズは席に着いた。
 ルイズの席のそばに立ち指示を待っていると、「!!」とルイズは声を出さずに
 何か微妙な反応をした。

 「し、ししし、士郎。あ、ああの、じ、実はあななたの、しょ食事用意するように
  い、言うのを忘れてたの忘れてたの。だから、使用人に頼んで、ちゅ厨房がどこかで
  食事を摂ってもらえる?こ今回だけ」

 なぜか異常に言葉をかみながら話すルイズに違和感を覚えながらも、素直に使用人の一人へ
 声を掛けて食堂を出て行く士郎。

 ルイズの足元には、ペットのえさと見間違える粗末な食事が皿に入っていた。
 それをつま先で必死になってテーブルの奥へ隠すルイズがいた。

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 厨房ではシエスタも働いていて、料理長に口を利いてもらい士郎は無事に食事を摂れた。
 やはり人間の使い魔を召喚した噂を知っていて、とても同情的だったのは言うまでも無い。
 賄いのシチューはとてもおいしゅうございました。

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 魔法学院の教室は一言で言えば大学の講義室のようである。階段状に座席が配置されていた。
 ルイズが士郎とともに教室へ入ると、他の生徒から失笑が聞こえてきた。
 むっとしつつ席へつくルイズ。士郎はその隣へ座る。
 召喚された直後は余裕が無かったため他の使い魔を見る機会は無かったが、
 改めてじっくり幻想種やら色々な動物を鑑賞する士郎。
 烏や蛇、猫や梟(梟の使い魔で凛を思い出した)と幻想種以外において生態系が地球と
 重なることに、本当に異世界かどうかと一瞬疑ってしまう。

 そこへ中年の女性が前方の扉から入ってきた。教師のようだ。
 「おはようございます」「おはよう」と挨拶が終わると教師が口を開く。
 「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですね。
  私はこの新学期に皆さんの様々な使い魔たちを見るのが楽しみなのですよ」
 と、ルイズと隣の士郎を見て
 「おやおや、変わった使い魔を召喚したのですね。ミス・ヴァリエール」
 教師がとぼけた声で言うと、これに教室中がどっと沸く。

 「ゼロのルイズ!召喚できないからって、平民を連れてくるなよ!」
 ルイズは反論しようと一瞬立ち上がったが、そのまま何も言わずに席に着く。
 (ただの平民じゃなくてメイジなのよ!)と出かかったのを抑えたためだった。
 (そんな事言ったら、ゼロのルイズより使い魔の方が魔法が上手なんて言われる)

 女性教師はさすがにルイズを気の毒に思ったのか判らないが、ルイズに暴言を吐いた少年
 (名をマリコルヌと言う)に向かい杖を振るう。彼の口に赤土が張り付いた。
 「お友達をゼロとかで呼んではいけません。わかりましたか?」教師は言う。
 教室の笑いも収まる。

 「では授業を始めますよ。
  私の二つ名は『赤土』赤土のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を一年間講義します。
  魔法の四大系統はご存知ですね?ミスタ・マリコルヌ」
 ようやくと口に張り付いた粘土をはがしたマリコルヌが答える。
 「『火』『水』『土』『風』の四つです」
 「そのとおり。それに失われた系統魔法『虚無』を合わせて全部で五つの系統が存在します。
  その五つの系統の中で『土』はもっとも重要なポジションを占めると私は考えます。
  私が『土』系統だからという理由での身びいきではありません」

 士郎は“五大元素”の属性を持つ師匠(恋人)の事を思い出した。
 この世界に遠坂が生まれていたら、その伝説の『虚無』とやらも使えていたのだろうかと。

 講義は進んでいく。この世界では石の切り出しも農作物の収穫も《魔法》が使われるらしい。
 確かに科学文明の発達していないこの世界では《魔法》と呼ばれてもおかしくは無いのだろう。


 「今から皆さんに『土』系統の基本である『錬金』を覚えてもらいます。よろしいですか?」
 と、シュヴルーズは教壇の上に用意した石ころに向かい、詠唱とともに小ぶりな杖を振るう。
 石ころはピカピカ光る金属へと変わっていた。

 「ゴゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ!」キュルケが身を乗り出す。
 「違います。ただの真鋳です。ゴールド練成は『スクウェア』クラスでないと。
  私はただの……」
 もったいつけてシュヴルーズは言う。
 「『トライアングル』ですから……」

 やり取りを見てて士郎はルイズに尋ねた。
 「ルイズ、もしかして使える系統の数によって『スクウェア』『トライアングル』になるのか?」
 「そうよ。系統が多いほど使える魔法も強力になって、必要な精神力も減るの。
  1つは『ドット』2つは『ライン』で、3つ4つが『トライアングル』『スクウェア』」

 このやり取りをシュヴルーズに見咎められる。
 「ミス・ヴァリエール。授業中の私語は慎みなさい。おしゃべりしているくらいでしたら、
  あなたにもやってもらいましょう。この石を『錬金』で望む金属に変えてもらいます」

 キュルケが口を挟む。
 「先生、危険です。やめておいた方がいいと思います……」
 「どうしてでしょう。ミス・ツェルプストー」
 「ルイズを教えるのは初めてですよね?」
 「ええ、でも彼女が努力家というのは知っております。さぁ、ミス・ヴァリエール。失敗を恐れずに」

 「わかりました。やります」
 決意をした顔で教壇まで歩いていくルイズ。教室がざわつく。
 キュルケは「ルイズ。やめて」と声を出す。

 ルイズが目を瞑りルーンの詠唱と杖を振るころには、教室の前方の生徒は椅子の下へ避難していた。

 <ちゅどーーーーん!!>

 机ごと石ころが爆発する。シュブルーズとルイズは黒板に叩きつけられ使い魔たちは大暴れする。
 教室は阿鼻叫喚の嵐だが、ルイズはそんな中すっくと立ち上がり
 「ちょっと失敗したみたいね」
 と、言い放った。

 「ちょっとじゃないだろ!ゼロのルイズ」
 「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないかよ!」

 ここで士郎はルイズの二つ名が『ゼロ』、
 つまり『ゼロのルイズ』と呼ばれていることを知るのであった。


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