シロウが使い魔-01


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第1章

 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!
 強く美しくそして生命力に溢れた使い魔よ!
 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」

 ピンク色をした髪の少女が、呪文を唱えた。
 それまで揶揄していた同級生も口を噤んで事の成り行きを見守る…

 <ちゅどーーーん>

 爆音とともにあたり一面煙に包まれる。
 またも爆発。つまりは召喚失敗。
 教師もほかの生徒も、召喚者本人さえ溜め息をつく中、
 うっすらと煙の中に何らかの影が見えた…

 「え!?召喚がおこなわれた!?」

 半信半疑で全員が見守る中現れたのは、
 尻餅をついた何処にでも居そうな平凡な少年であった。

 「なんだ!?突然平民が現れたぞ!」
 「ゼロのルイズが平民を喚び出したぞ!」
 ギャラリーが騒ぎ出す。

 初めての魔法の成功に喜びを表そうとしていた少女は
 その声に唖然となる。気を取り直したとたん、
 「もう一度!もう一度召喚をやり直させてください!!」
 と、教師のコルベールに噛み付くように訴えかけた。

 「残念だが、ミス・ヴァリエール。二年生に進級するときに行われる
 この『使い魔』召喚の儀式は神聖なものであり伝統でもある。
 呼び出したのが平民であろうと無かろうと関係ない。
 呼び出した『使い魔』と契約することはあらゆるルールに優先される。」

 正直、繰り返される失敗に辟易していた教師は会話自体早く終わらせたかった。

 「最初に喚び出された生き物とは必ず契約を行わなくてはいけない決まりです。
 平民が呼び出されたことは前代未聞ですが、とにかく彼を『使い魔』にするように」

 「そんな……」
 コルベールの態度から、これ以上抗議しても無駄なのがわかったのか
 ミス・ヴァリエールと呼ばれた少女は、契約を結ぶため召喚した少年の
 そばに跪いて…


──────────────────────────────
半時前

 衛宮士郎は日課になっている魔術の鍛錬をしようとしていた───

 終業式も問題なく終わり、遠坂にロンドン行きを誘われ了承し、
 春休みに入った当日の晩のことだった。
 土蔵の一角。挨拶することもできずに消えていった気高い少女と
 初めて顔をあわせた、あの場所に今度は鏡のようなものが出現した。

 聖杯戦争は一月前に終結し、聖杯と呼ばれた魔術装置は消滅したはずだった。
 魔術儀式は失敗に終わった。

 だから今眼前にあるものに対して衛宮士郎は何の判断もできずにいた。
 何らかの魔術が働いた結果、此処にこのような物が現れたことはわかる。
 「遠坂に連絡して、判断を仰ぐか…」
 母屋に戻り、遠坂凛に電話を入れるが留守番電話だった。
 正体不明の鏡が現れたことだけ告げて、電話を切る。

 再度土蔵に戻り、鏡を調べようと不用意に手を触れた瞬間に
 吸い込まれ、電流のような衝撃を食らったと思ったら
 衛宮士郎は知らない場所へと移動していた。

──────────────────────────────

 「あんた、感謝しなさいよ。 貴族である私とこんなことするなんて
 一生ありえないんだから!」
 頬を紅く染めながら少女は呪文を唱えだす。

 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 そして、己が唇と少年の唇を寄せようと…したとたん、
 少年は飛びずさった。少し少女と離れると慎重に立ち上がる。

 「ちょっと待ってくれ。いきなり説明もなしになんか物騒なことしようとして…」
 初めて出した少年の声は抗議であった。

 「私だって嫌よ!!それでも、おとなしく私のキスをうけなさいっ!」
 「何の説明もなしに人を勝手に使い魔にしようとしても、そんなの承知できるか!」

 召喚された直後は驚きのあまり少々呆けていたが、少女たちの会話から
 自分は召喚魔術によってここに呼び出され
 今まさに契約魔術を“勝手に”施されようとしていたと推測し、
 とりあえず逃げる方法を模索する。



 「普通の人間を使い魔にしようなんて、非常識にもほどがあるぞ!!」
 言葉をつむぎつつ、現状を確認する。

 時間は昼。場所は平原。近くに壁に囲まれた塔が見える。ぱっと見刑務所。
 周りにはマントを羽織った年の若い人間が20人くらい。禿げた中年が一人。
 その他に使い魔と思われる動物多数。幻想種っぽいものもいるがゴーレムの類か?…

 中年以外の人間は同じような格好とかもし出す雰囲気から
 魔術学校の生徒とか塾生と判断。中年の方は、教師だろう。
 遠くに見える森まで走って逃げるのが一番無難か…?

 でも、遮蔽物も無いこの場所だと後ろからガンド(呪い)の一斉掃射なんてこともある。
 とりあえずは話し合いしかなさそうだ。教師と思われる中年に尋ねる。

 「説明も無く、こっちの意思も問わずに一方的な契約なんて従えない!
 ここの魔術師はそんなに横暴なのか!?」
 中年教師は、ふむとしばらく考えた後、
 「わかりました。確かに一方的過ぎたかもしれません。ミス・ヴァリエールは
 そこの呼び出した少年に説明をしてもらいましょう。
 そして、納得してもらってから私の目の前でコントラクト・サーヴァントして下さい。
 コントラクト・サーヴァントを確認した時点で進級を認めることにしますので…。
 そのほかの皆さんは教室に戻り次の授業の準備をするように。解散」

 一連のやり取りが終わると、生徒たちは
 「ゼロのルイズは呼び出した使い魔にも反抗されてる」とか
 「空も飛んで帰れないんだからゆっくり歩いて帰れよ」とか色々野次を飛ばす。

 そして驚くことに空に浮かんで戻っていく。浮遊の魔術なんて
 魔術の水準はかなり高そうだ。

 「えーっと、ルイズ?…さんは飛行しないのかな?」
 「うるさいわね!!あんた飛べないんでしょ!だから合わせてあげているだけよ!」
 おこられた。
 「とりあえず私の部屋に行くわよ。一応説明してあげるから、終わったら契約よ!」
 聞く耳を持っていないようだ。

 歩いて移動する間に考える。
 此処はイギリスか何処かの地方だろうか。言葉が通じるようになっているのは魔術だろう。
 目の前を歩くルイズも他の生徒たちも派手な色の髪だった。なにかの習慣だろうか。
 土蔵からこの異国と思われる場所までは一瞬だったはず。聖杯なみの機能が働いたのか。
 なぜ自分が巻き込まれることになったのか。
 遠坂はどう思うだろうか。心配かけないように連絡を早めに入れなければ。

 恋人と呼べるまで親しくなった少女のことを思いだしつつ、ルイズの自室に入っていくのだった。


 「で、あんた誰?」

 開口一番、ルイズは士郎に問うた。

 「俺の名は衛宮士郎。日本の魔術師。半人前だけど…。年齢は18歳」
 「あ、あんたメイジなの!?」
 「いや、メイジって魔法使いのことだろ?俺は単なる魔術師だから」
 「?…魔術師って魔法使いのマイナーな呼び方なんじゃないの?」

 なにか言葉の齟齬が発生しているようだ。
 鏡を潜ったときの電撃のようなものに『翻訳』の魔術が付随していたとして、
 その魔術は不完全なものだったのだろうか?

 ちなみに士郎は召喚されたときから、周りの人間が日本語を話しているとは
 思わなかったし、自分が日本語でコミュニケーションしているとは思ってない。
 第3巻の4章あたりで初めて気づくなんてことは無かった。

 「魔法は文明に再現不能な奇跡であって、魔術とは違うだろ。」
 「わけわかんないこと言わないで!なんでもいいから、あなたの魔法見せてみなさい。
  そしたら、メイジかどうかはっきりするから」
 「なんでもよくは無いけど、いいよ」

 士郎は自分も魔術師ということを証明しようと強化の魔術を行うことにした。
 不要な木材かなにか無いか尋ねたら、ルイズ自ら部屋を出ていき、薪を調達してきた。
 せっつくように魔術を促されるままに強化を行った。なんとか成功…
 杖を使わなかったので先住魔法がどうのこうの言われたが。

 「『固定化』ってことは土系統のメイジなのね…」
 強度の増した薪を手に、なんだか悔しそうな目で士郎は睨まれた気がした。
 士郎にとって投影の方が簡単なのだが、それを誰かに教える気は今は無かった。

 「さっきの話の続きなんだけど、ニホンってどこ?あと18歳には見えないわ」
 「日本は極東にある島国。ここじゃ知られていないのか?て言うかここはイギリス?」
 「イギリスってのも何処よ?ここはトリステインの魔法学院!」
 「トリステインってのは何処か知らないが、イギリスはわかるだろ?イングランド」

 このまましばらく質問の応酬が続く。

 そして、かみ合わない議論に士郎ははたと気付き質問する。
 「ちょっとまて。ここは《地球》にある欧州の何処かじゃないのか?」
 「地球とか欧州もわからないわよ!トリステインはハルケギニア大陸の国!」

 士郎はここに到って、現在地球以外の場所に居る可能性に思い至る。
 パラレルワールド?遠坂の先祖が目指した平行世界ってやつなのか?

 「それであんた、私の使い魔にはなってもらえるの?」
 平民と思っていた少年?がメイジらしいと判り少し弱気になるルイズ。
 「その前に…、
  ここが地球じゃないのなら、自分は異世界からやってきたことになる」



──────────────────────────────

 遠坂凛は怒っていた。

 弟子であり恋人である衛宮士郎からの留守電を聞いて急いで衛宮家に来てみたが
 その家は鍵を空けたまま、家主はどこかへ消えていた。

 土蔵の中へ行き調べてみた。魔術の痕跡らしきものは確かにあった。
 何も無い空間へ向かって、魔力のひもみたいなのが伸びている…ような感じがする。
 そのひもを辿ってみたいが、手を触れると消えてしまいそうなので
 うかつに触れない。

 「あいつ、勝手に調べようとしてどこぞへ飛ばされたんじゃないでしょうね…」
 その通りである。
 ただ、それが異世界だとは遠坂凛もこの時点では思いついてはいない。

 凛と士郎の間にあったはずの魔力のリンクは今は消えている。

──────────────────────────────

 「それほんと?」
 ルイズは疑わしげに訊いてくる。

 「ここが異空間だろうが異世界だろうが幽界だろうがそれはいいんだ。
  自分としては、元の世界に戻して欲しい」
 「無理よ。だって、送り返す魔法なんて聞いたことないし…」
 「さっきの教師も知らないってことか?」
 「ミスタ・コルベール?訊いてみないと判らないわ」
 「……」

 「あの…、帰る方法が見つからないようだったら、しばらく私の使い魔やってもらえない?
  進級できないと困るの!お願い!」
 ルイズは手を合わせて懇願する。士郎は手を合わせるって行為は、ここでもするんだなぁと
 変なことを考えつつ返事をする。
 「じゃあまずコルベール先生だっけ?その人に訊いてから、帰る方法がすぐに見つからない
  場合は使い魔を仮にやるよ。でもその場合は、帰る方法を探すことを約束してもらう」
 「うん、それでいいわ」
 「契約のことだけど、精神支配とかそういうのはなしで頼む」
 「えっと大丈夫だと思うわ」(根拠は無いけど)

 2人は、屋外にあるコルベールの自室に向かうことにした。

 道すがら「あの人は変わり者だから」とルイズに言われたが、魔道に関わる人間は
 変わり者が多いのが普通じゃないのかなと士郎は思った。

 「ミスタ・コルベールいらっしゃいますか?」
 学園の一角に建てられた掘っ立て小屋の前でルイズは声をあげた。

 <がちゃ>
 「ああミス・ヴァリエールでしたか。それで使い魔君との話はつきましたかな?」
 中から中年教師が現れる。それと同時に鼻につく匂いもする。
 (ここにはあんまり来たくないのよね)ルイズは思った。

 「とりあえず中に入ってくれたまえ」


 中は見るからに錬金術師の部屋といった感じで魔道の道具や本、地図、生物が所狭しと
 並んでいた。その中にコルベールが先ほどまで研究してたと思われる奇妙な道具があった。

 目を閉じ手を触れ、中を魔術で《覗き視る》。視覚情報としての設計図があらわれる。
 (原始的だけど、これは間違いなくエンジンだな)
 「おぉ、それに目をつけるとは使い魔君はなかなかの目利きだな」
 突然説明をしようとするコルベール。
 「それはだな…
  「気化した燃料をピストン上の空間に流し込み、燃料を爆発させることでピストンが押し戻され
   それを動力として回転運動が発生する…ですね」
 そ、そうだ。よくわかったな」

 「ミスタ・コルベール!私が喚び出した彼はメイジだったんです。
  だからもう一度他の生物の召喚をさせてもらえないでしょうか?」
 おかしな機械に興味の無いルイズは、コルベールに話しかけた。

 「……、メイジ?先ほどディテクトマジックしたときには魔法の痕跡は感じなかったが」

  『ディテクトマジック』
    魔法を探知する魔法。先住魔法は探知できないらしい

 「彼に『固定化』の魔法を見せてもらいました。土系統のメイジだと思います」
 「ちょっと待ってくれ。その前に俺は別の世界から召喚されたんです。俺の世界は魔道は
 一般に隠匿されて、科学が発達した世界です。そこに帰りたいんです」

 時間を掛けて士郎はコルベールに詳しく説明する。
 異世界から召喚されたと判断した根拠や、士郎の世界のことを。
 コルベールも話を聞いて、衛宮士郎なる人物が異世界人だと納得する。

 「う~む。だが、送還の魔法など私も聞いたことが無い。
  図書館の書籍など洗いざらい調べればどうかはわからんが。
  とりあえず送還方法が見つかるまで彼女の使い魔に収まってくれると
  彼女も進級できるのだが、どうだろうか?」

 士郎は大いに悩みつつも「わかりました」と答えた。

 「ではミス・ヴァリエールは『コントラクト・サーヴァント』をしてくれたまえ」
 再召喚は結局させてもらえず、契約を促されたルイズ。
 「わかりました」
 しぶしぶだが、やはり契約を終わらせるしかないルイズ。
 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
  五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 契約の儀を再び行い……士郎と唇を合わせる。

 (遠坂ゴメン…)
 士郎は心の中で師匠であり恋人でもある女の子に詫びを入れた。

 「終わりました」
 ルイズも顔を真っ赤にしている。


 少し待つと、士郎の全身が熱くなる。
 「ぐっ!!」
 (これは魔術の鍛錬にしくじったときと同じ!)
 歯を食いしばり、呼吸を強引に鎮める。
 「がまんして。『使い魔のルーン』が刻まれているの。」
 士郎は鍛錬に失敗しそうになったときと同じ手順を取ろうかと思ったが、
 意外にもあっさり苦痛はおさまる。

 士郎はかつて令呪があった場所になにかの文字が現れたのに気がついた。
 「珍しいルーンだな」
 ルーンを見てコルベールはつぶやいた。

 「ところでルイズさん」
 「あんたもメイジならもういっその事、呼び捨てでいいわよ。」
 異世界に召喚した弱みからか、ルイズはどこか卑屈になっていた。
 「じゃあルイズ。この世界の使い魔って何をすればいいんだ?」
 「えっと使い魔の見聞きしたものは主人にも伝わるって言うのが…」
 「できるの?」
 「できないみたい。次に秘薬の入手とかかしら。秘薬とか採ってこれる?」
 「この世界の情報を知識として持ってないからなぁ」

 「まぁいいわ。最後に主人を守る…って無理よね」
 「敵にもよるけど、ある程度なら戦うことはできるぞ」
 「だって魔術?とかも半人前なんでしょ?」
 「剣でならそこそこ戦える」
 「幻獣とかと戦えるくらいじゃないと意味無いわ。じゃあ他に雑用ね。掃除洗濯」
 「下着とか以外ならやるよ。家では家事は一通り自分でこなしていたからな」
 自分の下着も洗ってもらおうとしていたルイズは、はしたない事を頼もうとして気づき
 顔をひっそり赤らめた。


 「じゃあ今度はこっちからの要求だな」
 「え!?使い魔が要求するの!?」
 「当たり前だ。これは契約なんだから。契約とはそういうもんだろ」
 「…そうね。契約だものね」
 「まずは、自分が元の世界に戻る手段をきちんと探すこと。次に衣食住を確保すること。
  この2つかな。とりあえず思いつくのは」
 「送還の方法はもちろん探してあげるわよ。着るものは今度街に行って買ってあげる。
  食べ物は食堂があるし一緒に食べればいいわ。住まいはさっき居た私の部屋があるし」

 「住む場所は却下」
 士郎は文句を言う。
 「なんでよ!」
 「女の子と一緒の部屋に寝起きなんてできない!」
 「大丈夫よ。私は使い魔に対してなんて、なんとも思わないわ」
 何度も赤面していたことを棚にあげてルイズは言う。

 ここで使い魔のルーンの書き写しが終わったコルベールが口を挟む。
 「では寝起きはここでするというのはどうかね?」
 「俺は助かりますが、いいんですか?」
 「もちろんだとも。その代わりといっては何だが、君の世界の話を聞きたいのだ」
 「それくらいなら。エンジンとかの設計図程度なら作れますよ」
 「おお!それは是非に欲しいな。買い取ってもいいぞ」

 自分を無視して進められる会話にルイズはむっとして
 「じゃあ勝手にすれば!た・だ・し、毎朝私を起こしにくるようにしてよね!
  部屋の鍵は開けておくから!それじゃ!」
 と、コルベールの部屋の扉を乱暴に開けて帰っていってしまった。

 「なんか俺、怒らせるようなこと言いましたか?」
 「さぁなぁ。あの年頃のこは色々複雑なのだと思うよ」

 こうして、ハルケギニアでの衛宮士郎の使い魔生活が始まった。


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