ありうるひとつの可能性-03


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☆キャスターの場合

予想外だった。考えもしなかった。ありえなかった。
マスターの中でもっとも抗魔力が低いであろうこの少年をここ柳洞寺まで「魔法で」連れてきたのは良かった。そこで邪魔が入るのもまだ良かった。
「なに。通りすがりだ。だが、ここでこいつを見捨てたら俺の今のご主人様が悲しむ」
他のマスターをも気にかけるその姿勢その優しさ。まるでアイツのよう。
「アサシンはどうしたの」
「門の外でセイバーと戦っている。何者かは知らないがセイバーを足止めするとは中々の使い手だな」
「まったく、あの馬鹿犬!アンタを通した時点で英雄失格よ!!」
だけどそれは似ているだけ。こいつを始末することに躊躇はない。
「あんたアーチャーの癖に剣なんか引っさげちゃって、マスターは相当苦労しているでしょうね。
よりによって出来損ないなんか呼んじゃうなんて」
今の自分のマスターは、心ここにあらず、と言うかそもそも心がないのか。心をどこかにおいてきたのか。あったのはあの日私に向けた優しさだけ。
だから、聖杯の力を私は欲した。彼は何も望んでいないだろう。でも何かしてあげたい。
何か望んでいたのに、結局それを諦めてしまった彼の二の舞はさせない。
「出来損ないの魔術師に、出来損ないの弓兵。ともすればやはり私の敵はバーサーカーぐらいね。
安心しなさい。聖杯は私がちゃんと手に入れてあげる。まずはそこの弓兵を消し飛ばして、それから坊やの令呪を頂くわ」
いつからだろう。私はいつの間にか歪んでしまった。「ゼロ」と呼ばれていたあの頃よりも、
魔法が失敗してばかりいたあの頃よりも。もしかすると歪んでなんかいないのかもしれない。
ただ貴族の誇りが、私の根本が、私のために消えていったあいつと一緒に無くなってしまっただけなのかもしれない。
「『出来損ない』あるいは『無能』あるいは『ゼロ』。そういった類の人を蔑む言葉は嫌いじゃなかったのか、伝説のメイジ?」
弓兵もどきが口を開く。いやまって。
「あんた今なんていった?『ゼロ』?『メイジ』?」
この世界でメイジと呼ぶこととは少ない。魔術師や魔法使いとでも呼ぶべきのはず。
「ああ、そう言った。だからどうした元ご主人様?」
まさかこいつは。
「俺もかなり驚いた。でも一度惚れた相手を見間違えるなんざありえねえからな。
まあ、あれだ。奇跡の再会って事で」
あり得ないことはないが、あり得ないと言っても問題ない確率。
主人と従者が同じ時代に召喚される。奇跡なんてものではない。
コイツはまさかでたらめを言っているのか?いやでも。だがまさか。
「まだ疑ってるようだな。なら見せてやるよ。『ゼロと呼ばれたご主人様』」
そう言うと彼は腰に下げていた剣をするりと引き抜いた。
片刃の剣。西洋の剣であるが、まるでその輝きは日本刀を思い出させる。
彼は最初その剣を背負っていたが、かなり長身に育ち、私の最後の記憶では腰にそれを下げていた。
アーチャーがそれを握るとソイツの左手の甲が輝きだす。
「宝具らしい宝具はもっていないが、強いて言うならこれが俺の第一の宝具。
武器を持った俺を強くする、神の盾の印(ガンダールブ・ルーン)」
抜いた剣の切っ先をこちらに向けながらそう言う。
「でもってもうひとつ。おい!おきろデルフリンガー!」
剣に叫ぶように、いや、私は知っている。実際剣に向かって叫んでいる。
それは意志を持つ剣。インテリジェンスソード。
「ん?おっ!おっ!久しぶりだなー相棒!いやほんと久しぶりな気がするぜ。さーて今日の相手は誰だ?
ってうおっ!!娘っ子じゃねえか」
「奇妙な運命の巡り会わせでな、どーにも元ご主人様と相対することになっちまった。まあよろしく頼むぜ、デルフリンガー」
「おでれーた。相棒だけでなく娘っ子まで英雄になってたとは」
どうしようもない。大いなる誤算。間違ってしまった世界。
こいつを倒さないことには先へは進めない。
口が開かない私に彼は続ける。
「まだ疑ってるのか?しょうがない。凛には怒られるだろうが名乗ってしまおう」
名乗るまでもない。だがアイツは姫様からもらったマントをひらめかせ、証である剣とルーンを闇夜に光らせながら、
恥じることなく堂々と。私に名乗った。
「俺の名前は――――」


「平賀才人。英霊サイトだ」

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