幻影の夏 虚言の零 (一発ネタ)

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――――それは夏の暑い夜。 あたしは自分の部屋に入ったその瞬間、“その匂い”に気付いた。 それと同時に、部屋の中央、明かりの消えた真っ暗闇の中で…何かが蠢いた。 ソレは、大きな丸いものを……例えるなら『人の頭ほどの大きさの何か』を鷲掴みにし… ソイツは……黒い貌の“何か”は…鋭い牙を突き刺し、食い千切り、その中身を貪り喰っていた… ごくごくと――― ごくごくとその液体を飲んでいた。 飲み込む以上の赤い水を、ソレは両目からこぼしていた。 だから足りない。 幾ら飲んでも満たされない。 「キ、キキ、キキキキキ……………!」 赤い涙を流しながらソレは笑った。 黒翼がはためく。 黒い眼がにじり寄る。 ぼたぼたと赤い液体が零れていく。 「………………………」 あたしは無言でソレに歩み寄ると………… その後頭部に向けて、テーブルの上の手帳を思いっきりぶん投げた。 「スイカくらい普通に食べなさいよっ!!」 ある夏の、暑い夜の事だった…… ---- [[幻影の夏 虚言の零]]
#navi(幻影の夏 虚言の零 ) ――――それは夏の暑い夜。 あたしは自分の部屋に入ったその瞬間、“その匂い”に気付いた。 それと同時に、部屋の中央、明かりの消えた真っ暗闇の中で…何かが蠢いた。 ソレは、大きな丸いものを……例えるなら『人の頭ほどの大きさの何か』を鷲掴みにし… ソイツは……黒い貌の“何か”は…鋭い牙を突き刺し、食い千切り、その中身を貪り喰っていた… ごくごくと――― ごくごくとその液体を飲んでいた。 飲み込む以上の赤い水を、ソレは両目からこぼしていた。 だから足りない。 幾ら飲んでも満たされない。 「キ、キキ、キキキキキ……………!」 赤い涙を流しながらソレは笑った。 黒翼がはためく。 黒い眼がにじり寄る。 ぼたぼたと赤い液体が零れていく。 「………………………」 あたしは無言でソレに歩み寄ると………… その後頭部に向けて、テーブルの上の手帳を思いっきりぶん投げた。 「スイカくらい普通に食べなさいよっ!!」 ある夏の、暑い夜の事だった…… #navi(幻影の夏 虚言の零 )

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