1、ルーンを刻んだカケラを持っていく

「1、ルーンを刻んだカケラを持っていく」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

1、ルーンを刻んだカケラを持っていく」(2007/12/24 (月) 21:56:07) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

ルイズはカトレアからもらったルーンを刻んだカケラを持っていく事にした。 カトレアの優しさが自分を救うと信じて!! ...結果から言えば、数十回にわたってルイズは召喚に失敗した。 一緒に召喚の儀式に参加していた生徒はルイズをのぞいて既に全員召喚に成功しており、今や召喚できていないのはルイズだけになっていた。 他の生徒たちが心ない中傷を投げる中、ルイズは己の覚える違和感について考えていた。 (何故?何がいけないの?) 何かがおかしい。が、何が間違っているのかわからない。 先程から自分が行っているサモン・サーヴァントでは、全く自分の魔力が消耗される感じが無い。 無論、『爆発』は起こっているのだが、今までの失敗のでは一応魔力が消耗されていた、と思う。 しかし、何ぶん今まで魔法が成功した事もないので、その感覚もあやふやなのだが。 (いけない、考えがズレてきてる) 何とか自分がサモン・サーヴァントを失敗する原因のみに思考を集中させようとする。 だが、そんな事に意味があるのだろうか?今までだって、何千回も失敗の原因を考えた。それでも、自分は一度も成功させられなかった。 何度考え直しても、思考はネガティヴな方向に転んでいく。 これだけ努力しても報われない。始祖ブリミルも自分を見放したというのか。もう自分を支えてくれるものは何も―――― そこまで考えて、ふいに自分が持ってくる事にしたルーンを刻んだカケラの事を思い出す。 自分の努力ではなし得ない、神に祈っても届かない、それでも、 (ちぃ姉さま、私に力をください) 自分が立派なメイジになると信じてくれる姉のためにも、ここで引き下がる事などあり得ない。 そう、貴族とは、決して敵に背を向けたりしないんだから――――!
ルイズはカトレアからもらったルーンを刻んだカケラを持っていく事にした。 カトレアの優しさが自分を救うと信じて!! ...結果から言えば、数十回にわたってルイズは召喚に失敗した。 一緒に召喚の儀式に参加していた生徒はルイズをのぞいて既に全員召喚に成功しており、今や召喚できていないのはルイズだけになっていた。 他の生徒たちが心ない中傷を投げる中、ルイズは己の覚える違和感について考えていた。 (何故?何がいけないの?) 何かがおかしい。が、何が間違っているのかわからない。 先程から自分が行っているサモン・サーヴァントでは、全く自分の魔力が消耗される感じが無い。 無論、『爆発』は起こっているのだが、今までの失敗のでは一応魔力が消耗されていた、と思う。 しかし、何ぶん今まで魔法が成功した事もないので、その感覚もあやふやなのだが。 (いけない、考えがズレてきてる) 何とか自分がサモン・サーヴァントを失敗する原因のみに思考を集中させようとする。 だが、そんな事に意味があるのだろうか?今までだって、何千回も失敗の原因を考えた。それでも、自分は一度も成功させられなかった。 何度考え直しても、思考はネガティヴな方向に転んでいく。 これだけ努力しても報われない。始祖ブリミルも自分を見放したというのか。もう自分を支えてくれるものは何も―――― そこまで考えて、ふいに自分が持ってくる事にしたルーンを刻んだカケラの事を思い出す。 自分の努力ではなし得ない、神に祈っても届かない、それでも、 (ちぃ姉さま、私に力をください) 自分が立派なメイジになると信じてくれる姉のためにも、ここで引き下がる事などあり得ない。 そう、貴族とは、決して敵に背を向けたりしないんだから――――! 願いを、決意を込めてルーンを握りしめる。 刹那、ルーンが輝き、ルイズの頭の中に見たことも聞いたこともない魔術様式が流れ込んでくる。 刻印・解読・染色・試行――――違う、今必要なのはそれじゃない。 そう、私が呼び出すのは『神聖で、美しく、強力な』使い魔なのだ。 通常のサモン・サーヴァントでは届かない。ならば、自分が求める使い魔を召喚するための、その魔術式を求めて、 さらに奥へ、奥へ、奥へ―――― 脳髄の尽くが焼け落ちるような錯覚の果て、彼女はその術式に辿り着く。 ――触媒による魔法陣 消去の中に退去、退去の陣を四つ刻んで召喚の陣で囲む。 その、意識に直接異界の術式を上書きされる負荷に、たまらずルイズは膝をつく。 それを、クラスメートたちは失意の表れと取ったらしく、中傷の声を収めて、ばつが悪そうにしている。 流石に気の毒に思ったキュルケが、声をかけようと近づいていく。 すると、ルイズはさっきまでの憔悴が嘘の様にすっ、と立ち上がる。 いぶかしげな皆の視線にまったく気づかないように、ルイズは何事かブツブツと呟き、次の瞬間、左手に持った己の杖で自分の右掌を貫いた! クラスメートたち、とりわけ女生徒から小さく悲鳴があがる。誰もがルイズは気が触れたと思った。 たまらずキュルケが声をかける。 「ちょ、ちょっとルイズ!いくらサモン・サーヴァントが成功しないからって―――」 「?ああ、キュルケ。何?今忙しいんだけど」 「忙しいって、アナタ何を―――」 そう言葉を続けようとするキュルケを無視して、ルイズは杖を右手に持ち帰ると、血を滴らせながら真剣な面持ちで地面に何か描き始めた。 最初、周囲の生徒からは、なぁ、アレ止めた方がいいんじゃね?などと声があがっていたが、 流血しながら黙々と地面に杖でラクガキを続けるルイズに薄気味悪さを感じ、誰も近づこうとするどころか、声をかけることすらできない。 最後には、彼らはルイズを無視して、友達と自分の使い魔自慢などを始める。 皆、自分から関りたくはないため、もはやルイズを相手にしないことにしたらしい。 自分たちがルイズを追いつめた、ということを認めたくないというのもあるのだろう。 だが、事態の異常さを正しく認識している者もいた。 教師であるコルベールと、生徒で唯二のトライアングル・メイジであるキュルケとタバサである。 ただ地面に何かを刻むだけの作業に、トライアングル・クラスの魔力を発している。 まだ未熟な他のメイジと違い、三人はルイズが地面に魔法陣を刻みながら発する強力な魔力を感じとっていた。 そう、ルイズが地面に刻んでいるのはデタラメなラクガキなどでは決して無く、確実に何かの意図のもとに法則性をもった紋様となっている。 何より、作業に没頭するルイズの目は気の触れた者のソレではなく、確たる理性の輝きを帯びたもの。 その危機迫る様子に、キュルケもタバサも、監督者としてルイズを制止すべきコルベールでさえも、他の生徒同様声をかけることができなかった。 そんな周囲の反応など眼中に無く、ルイズは魔法陣を描く作業に集中する 「閉じよ《みたせ》。閉じよ《みたせ》。閉じよ《みたせ》。閉じよ《みたせ》。閉じよ《みたせ》。  繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。」 知らなかった。四系統などという五元素魔術の紛いモノがはびこるハルケギニアでは、これほどの術式魔術は発達しなかった。 事前に知っていれば、魔法陣を描くための触媒も用意できたのに―――と、そんな自分の考えに頭を振る。 自分は『未だ』ゼロである。前もってわかっていても触媒など用意できなかっただろう。 だから、自分には自分の血液を使うしか方法は無い。だが、それでかまわない。 もとより、最初にルーンを得たオーディンは、世界樹ユグドラシルで首を吊ったうえ、魔槍グングニルで己を突き刺して オーディン――すなわち自分自身――に捧げてルーンを会得したのだ。自分しか懸けるモノのない私が、己を捧げるのは当然のこと―――― って、オーディンって誰よ、等とツッコミを入れてたら、魔法陣を書き間違えそうになる。 いけない、集中しなければ。これに失敗すれば、もう一度召喚する余力は自分に残されていない。 「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我らが始祖ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ。  降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」 細心の注意と最大の魔力を注ぎつつ、ルイズは慎重に魔法陣を描いていく。 そして、遂に魔法陣が完成すると、ルイズは自分の魔力が最高潮に達していることに気づく。 あぁ、とルイズは得心する。今までの失敗は、私にこの瞬間に召喚を行わせるためだったのかと。 ならば、後は全ての魔力を注ぎ込み、私の『神聖で、美しく、強力な』使い魔を呼び出すだけ。 「―――告げる。  汝の身は我が下に、我が名運は汝の剣に。  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うのなら応えよ―――!」 そうルイズが唱えると、魔法陣を中心としてあり得ないほどの膨大な魔力が渦巻き始める。 突然のことに、使い魔自慢をしていたクラスメートたちも、一様に驚いてルイズの方へ振り返る。 否、振り返ろうとした。しかし、ルイズの周りに渦巻く魔力はもはや肉眼で捉えることを許されるような、生やさしい者ではない。 その光ならざる極光に、誰もが顔を背けて目を塞ぐ。 「誓いを此処に。  我は常世総ての善と成る者、常世総ての悪を敷く者。」 詠唱を続けながらも、ルイズは歓喜に包まれていた。 己の魔力が、確かな術式を成していく感覚は今まで、一度もスペルを成功させたことの無いルイズにとって 初めての体験であり、その確かな手応えは既に彼女の心を歓奮で埋め尽くしていた。 だが、最高潮に達していた魔力も、召喚に費やされることで早くも底をつき始めていた。 だが、今まで魔力を出し切るという経験の無いルイズにとって、その感覚すら心地好い。 (何、コレ?魔力を消費するのがこんなに気持ちイイなんて――――) その充足感も、快感すらも魔力に変換して、ルイズは召喚の文言を唱え続ける。 「我に従え。ならばこの命運、汝が剣に預けよう。  汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」 スクウェア・スペルすら軽く凌駕する暴風を巻き散らしながら、魔力の奔流が一点に収束していく。 その気配にその場に居合わせた者が一様に息を呑み、ルイズが成功を確信した瞬間―――― あたりを薙ぎ払う大爆発で、全員(ルイズ含む)が吹っ飛ばされた。 「ーーーッッッッ!ちょっとルイズ!あれだけ期待させといてまた失敗なワケ!?」 「う、うるさいわねっツェルプストー!私だって成功したと―――」 言い止して、ルイズも、周囲の皆も気づく。爆発の中心に、強大な魔力を持つ『何か』がいることに。 爆風が風に拭われていくと、その魔力を放つ何者かが一騎、どこか呆けたような顔をして突っ立っていた。 そう、呆けた表情をしていても、纏う空気・放たれる魔力、いづれも彼が強壮な『騎士』である事実を、見る者全てに問答無用理屈無用に理解させた。 騎士は髪から身につける物まで全て青、アクセントの様に銀がちりばめられた軽鎧は、見たことも無い材質である。 髪は側頭部では刈り上げられた短髪だが、後頭部は腰に届くほどの長髪。それを、銀の輪で束ねている。 そして、右手には深紅の槍。見る者が見れば、その槍自体も莫大な魔力を秘めていることがわかる。 「これは、どこかの騎士を呼び出したのか?」 「いや、槍もってるだろ。平民じゃねぇの?」 「バカ、あんな魔力を放ってる平民がいるもんか。近衛騎士隊は剣に模した杖を使うって言うぜ。」 「んじゃほんとに騎士様?ヤバいんじゃないの、それ」 などと、勝手な憶測をもとに喧々囂々、騒然とする周囲をよそに、ルイズは不機嫌な顔をしてツカツカと青色の騎士に歩み寄ると、 無い胸を張って、傲岸不遜に 「アンタ誰?」 と言い放った。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。