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第15章 決闘
辺りには土埃の臭いや物が燃える臭いが立ち込めていた。砲弾と矢と魔法と怒声が飛び交う。
ルイズたち一行はウェールズ皇太子のもとへと走っていた。
一行といっても、ワルドの姿は無い。裏切りがほぼ確定したからだ。
「シロウっ!! あそこっ!!」
キュルケが何かを見つけた。 指差す先にはワルドの姿があった。
その姿はすぐ物陰に見えなくなる。
「キュルケ! ギーシュと一緒に奴の後をつけてくれ!」
「了解、ダーリン」
ルイズと士郎はウェールズのところへ、キュルケ、ギーシュはワルドを追う。
士郎は途中に出会った兵士にウェールズの居場所を聞く。
最初は城壁にいたのだが今は移動しているらしい。 全体が見える塔から指揮をしているようだ。
そこへ向かおうとして、途中城内で兵が騒いでいる場所があった。
何事かと見てみると、王の周りで幾人かの兵が泣いていた。
「お、王様~……」「我が君よ……」「陛下~、陛下~……」
王をよく見ると、王の肌は石としか呼べないものになっていた。
何者かによって石化させられてしまったようだ。
水メイジが必死に王の石化を解こうとしているのだが、何の役にもたっていないようだった。
これもワルドの仕業だとしたら、一刻も早く皇太子の元に向かわなければならない。
おそらく皇太子も狙われているのだから。
「ルイズっ!急ぐぞっ!!」
「う、うんっ…」
走っている最中、ルイズは士郎に気になったことを聞いた。
「今の、石化した王様って……。やっぱり……」
「ああ、多分、ワルドがやったんだろう」
「なんで!? なんでワルド子爵はあんな酷いことを」
「本人に聞かなきゃわかんないよ。 だから奴を早く見つけなきゃならないんだ」
ルイズと士郎はウェールズがいるという塔の部屋までたどり着いた。
頻繁に伝令が出入りしているので、扉は空いたままである。
士郎がまっ先に口を開く。
「失礼します。皇太子殿下、急ぎ伝えないといけないことがあって参りました」
「君たちか。なんだね? 伝えたいこととは」
「ワルドを見失いました。 それと陛下が……」
「ああ、父のことは先ほど聞いた。今は戦場の指揮せねばならない。父に関しては後回しだ」
その時突然、部屋の扉が閉まった。
士郎は嫌な気配を感じて、ルイズと扉の間に立ちふさがる。
「ルイズ! 皇太子のところまで下がれっ!! 皇太子、ルイズを頼みます」
扉の周りには人影は見えない。だが、確かに何かがいる……。
「ぐっ……」
うめき声が聞こえた。ウェールズの……
士郎が振り返ると、そこには膝をついたウェールズとルイズを後ろから抱えたワルドがいた。
「シロウっ!!!」
「ルイズっ!!!」
「おっと、近づかないでもらいたいな、シェロ君。ルイズの命がどうなってもいいのかね?」
「テメエっ……!!」
「君たちにはすっかり騙されていたよ。まさか僕がスパイだということに気づいていたなんて。
ちょっと腹が立ったから、お礼をしてあげようかな……」
「ぐはっ!」
士郎の肩に熱い痛みが走る。振り向くとそこにはもう一人のワルドが杖を振り下ろしていた。
「ハハハハ。どうだい? 僕の魔法で作った風のユビキタス(偏在)だ。
痛いかい? 手も足も出せないという状況。悔しいだろう? 歯がゆいだろう?」
肩を斬られたが、士郎はそんなことを気にせずにワルドを睨みつけた。
「テメェ、皇太子に何をした…」
「ああ、こいつら親子のことかい。 ちょっと毒針を打たせてもらったんだよ」
「毒針だとォ?」
「身体中が石になってしまう呪いの毒さ。これって希少なんだよ。エルフの秘術さ。
我々人間では解けない呪い。まぁあと1回くらいしか使えないけどね……ハハハハハハ」
ウェールズの全身は既に石と化している。先ほど見た王と同じ症状だ。
ルイズを拘束しているワルドの方へ一歩踏み出す士郎。
「近づくなといったはずだがね……。この毒針、今度はルイズを刺すことになるよ」
「お前はルイズを手に入れたかったんじゃないのか!?」
「ああ、そうさ。僕は手に入れる!! 世界を!! 全てを!!!
だから欲しかったのさ! ルイズを! ルイズの能力を!! ルイズの力を!!!」
ルイズは鳴き声になった。
「ワルド……」
「ルイズ、君は優秀なメイジにきっとなるだろう。それこそ始祖ブリミルの肩を並べるくらいに。
僕は君が『虚無』の魔法使いと言うことを知っているのだよ。
そしてそこにいるシェロ君。彼は君の使い魔だ。『ガンダールヴ』だと言うこともね」
ワルドは自分に酔いしれて、話し続ける。
「ルイズ、ああ僕のルイズ。君は僕と共に居るべきなんだ。君に世界を見せてあげよう。
僕と共においで。 いや迷うことなんてない。 ほら、いい返事を聞かせておくれ」
「…………嫌よ。」
ワルドの顔が険しくなる。
「なんだって? よく聞こえなかったんだが?」
「わたしは世界なんてどうでもいい! あなたはわたしの能力だけ求めている!!
そんなの死んでもお断りだわ!! たとえ脅されたってあなたの言うことなんて聞かないっ!!!」
「……そうかい。そういえば昔から、君は聞き分けの悪い子だったね。 そんな子には御仕置きだ!」
「待て、ワルドっ!! ルイズ~っ!!」
士郎の叫びも虚しく、ワルドは毒針をルイズに打ち込んだ。
「いやぁぁぁっ!!!」
ルイズはワルドに抱きかかえられたまま、足元から石化していく。
「ワルドぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
デルフリンガーを抜き放った士郎はワルドへ切りかかる。
「おっと、危ない」
ワルドはルイズを放し、士郎の剣から逃れる。
士郎はルイズを抱え、壁際へと下がる。そっとルイズを壁に立てかけ、その前に立ちふさがった。
「お前だけは決して許さない。俺の目の前に這い蹲らせてやる」
ぎりっと奥歯を噛み締める士郎。
「ほほう、出来るかな? こっちは一人ではないんだよ」
ワルドがそう言うと、新たに2人のワルドが現れる。合計4人のワルド。
<ドン、ドン、ドン> 扉が激しく叩かれた。
「殿下!! どうかされましたか!? 殿下!! 開けてください、殿下!!」
「ちっ! あまり時間は残されてないか」
ワルドが舌打ちをする。
「まぁいい。ルイズと手紙は手に入らなかったが、陛下と皇太子の命はいただいたからな。
あとは君を倒して、おさらばといこうか」
「ああ、そうかよ。できるものならやってみろ!」
士郎を囲むようにワルドはばらけた。そして、別々に斬り掛かってくる。
唐突に激しい破裂音が部屋の中で響く。
風のメイジは元来耳がいい。それがワルドに致命的な隙を作ることになった。
その隙をついて、デルフリンガーが『偏在』の1体を餌食とした。
ワルドは憎々しげに音の源を探す。
見るとルイズが体の半ばまで石化されながら杖を持ち魔法を唱えたようなのだ。
「ざ……、ざまぁ……、みな……さい」
「くそっ、最後の最後まで思い通りにならないガキだったか……」
腹立ち紛れにルイズへ向かい杖を振り下ろす一体のワルド。
完全に石化したルイズの腕が、へし折られて落下する。
─
──
───
────!!!!!!!!!
「ワ ル ド ぉぉぉォぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」
怒髪天を衝く。士郎の怒りが頂点に達した。
「なっ!」
ワルドが驚きの声を上げる。
士郎が叫んだと思ったその瞬間に、残り2体のワルドが既に斬り伏せられていた。
慌てて新たに『偏在』を呼び出す呪文を唱えるワルド。
士郎は大人しく、ワルドが『偏在』を呼び出すのを待っている。
先ほどと同じように士郎を取り囲むように『偏在』を配置した………はずであった。
が、
士郎の体が一瞬ぶれたと思った瞬間には、『偏在』は居なくなっていた。
「ば、馬鹿な……。 そ、そんな非常識な……。 何者なんだ……、お、お前は……」
──────────────────────────────
このときデルフリンガーは思い出していた。
自分が長年『ガンダールヴ』の相棒として存在していたことを。
そして、『ガンダールヴ』は心を震わせれば震わせるほど力が増していくことを。
今の相棒に敵などいない。 敵など片っ端から切り伏せてしまうだろう。
──────────────────────────────
ワルドは半狂乱になって残りの魔法を打ち尽くす。
『エア・カッター』 『エア・ハンマー』 『ウィンド・ブレイク』
『ライトニング・クラウド』 『ライトニング』
打てる限りの魔法を唱える。きっと限界以上の魔法を出し切っただろう。
それは己が命を削ってまで撃った証拠だ。
しかしその全ては士郎に届くことはなく、デルフリンガーの糧となった。
「もう終わりか?ワルド……。魔法の貯蔵は出し尽くしたようだな」
「ま、待て。 待ってくれ。 頼む、助けてくれ」
一歩一歩とワルドに迫る士郎。
「ルイズなら元に戻せる! 『レコン・キスタ』に戻れば解呪の秘薬もあるはずだ!!」
「もう遅い──」
ワルドは自身の力が急激に抜けていくのを感じた。
「あ……。ぁ………」
無念のうちに人生に幕を下ろしたワルドであった。
………
部屋の扉が開かれ、兵士がどっと雪崩込む。一目散に皇太子の元へと走る。
他の兵と共にキュルケとギーシュが士郎の元へと飛び込んできた。
「シロウ!! ワルドはっ!?」
ワルドの死体を指さす士郎。そしてルイズの所へと歩いていく。
転がっているルイズの腕を拾い上げると、ギーシュに呼びかける。
「ギーシュ! この腕、元通りにくっつけることができるか?」
「え?腕? ………うわぁぁぁぁっ、ルイズっ!!!!」
「きゃあぁ! ルイズっ!!!」
「いいから答えろ! 腕を元に戻すことができるか?」
「あ、あぁ石なら、素材が石なら、僕の…分野だが……。どうするんだ?」
「できるだけ慎重に元に戻してくれ。 石化の呪いなら治せるかもしれない」
ざわっ……。
皇太子のそばにいた兵士が色めき立つ。
「ほ、本当なのか??」「殿下も元に戻してもらえるのか!?」「まずは殿下を……」
士郎は落ち着いた様子で
「ギーシュは慎重にルイズの腕をくっつけててくれ。 俺は皇太子殿下の石化を解いてみる。
あと、人払いを。 ギーシュとキュルケ、あと水メイジ以外は部屋から出ていってもらいたい」
渋る兵士もいたが、比較的素直に要求に応じる面々。
トレース オ ン
士郎はマントで手元を隠すと、(────投影、開始)
『ルールブレイカー』を取り出す。
水メイジに言う。
「今から皇太子殿下の解呪を試みます。石化が解けたら速やかに皇太子殿下の体に異常がないか、
調べてください。 いきます。」
士郎は勢いよく皇太子の胸元めがけて、投影した剣を突き立てる。
するとどうだろう。ウェールズの肌に血色が戻ってきて、柔軟さを取り戻した。
膝を突いたままのウェールズは前方に倒れこむ。
だが呼吸はしっかりしているようだ。
しばらくして意識も回復するウェールズ。
水メイジが容態を確認しているが、特に異常も見られない。
「う、私はいったい……」
「殿下! 殿下は敵の凶刃に倒れられたのです。 トリステインの使者殿に救っていただきました」
「はっ! 戦は! 避難船はどうなったッ!?」
「目下のところ、救出隊が善戦しておりますが、如何せん敵の数も多く……」
士郎はウェールズが回復したと見ると、すぐにルイズの元へ移る。
「ギーシュ、様子はどうだ?」
「ああ、仕上がりは完璧さ。 今まで(腕が)欠けていたなんて誰も思えないだろう」
「ありがとう。ギーシュ。お礼は後でしてやるよ」
士郎は早速ルイズの石化も解きにかかる。
………
「……ワルドぉ!! お前なんて[ピー]してやる~!!」
意識の戻ったルイズの最初の台詞だ。
「あんた、何物騒なこと口走ってんのよ」
キュルケが少々涙目ながら、冷静に突っ込みを入れる。
「あれ?? キュルケ?? それにギーシュも。 シロウ! 戦いはどうなったの?」
「ワルドはあそこにいるよ。もう動かないけどな」
「そういえば私は石になっちゃったはずだけど」
「俺が治した」
「ふふん、僕も手伝ったんだぜ」
ギーシュの余計な茶々。
「ルイズ、何処も異常ないか、あそこにいる水メイジに体を見てもらってくれ。
俺は殿下と少々話がある」
「おお、え~シェロ殿だったな。助けてもらってすまない。 礼は何でもするぞ」
「殿下、ではこの場所をしばらくお借りてもよろしいでしょうか?
もしかしたら、見える範囲の敵なら一掃できるかもしれません」
「何っ!!?
……わかった、私は謁見室に移って指揮を取るのでここは自由に使ってもらって構わん。
父上も心配だしな。 後ほど、父の解呪も頼んでもよいか?」
「了解しました」
ウェールズとルイズの容態を見た水メイジは部屋から出て行き、謁見室へと移動する。
「さて、デルフ。お前に訊くが、さっきの戦いでかなりの魔法を吸収したよな?」
「おう相棒。そうさなぁ、まだ余裕はあるが、それでも結構な量を食わせてもらった」
「それをこっちに回せるか?」
「回すだと?
ああ、オメエさん、メイジだもんな。俺っちの魔法の力をそっちで使いたいってわけか。
いいぜ、いくらでも分けてやるぜ。 相棒の頼みとあっちゃ断れねえからな」
(これで魔力は足りるか?)
………
キュルケとギーシュには、王軍の援護を頼んだ。一人でも救援は多いほうがいい。
「ルイズ、以前俺が言ったことを覚えているか?」
「なに?」
「街への買い物に出た日、固有結界って教えただろ?」
「うん、なんかよくわかんない説明だったけど」
「今から見せてやるよ。 俺の固有結界。 これが俺の魔術の全て。
《強化》も《投影》も、すべては今から見せる魔術のかけら……」
体は 剣で 出来ている
「――――I am the bone of my sword.」
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