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第9章 思惑
「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
アンリエッタは女王の前に膝を突いたルイズへ抱きついた。
ルイズはかしこまって、アンリエッタを立たせようとするが、抱きついたまま離れない王女。
「……あ~、俺は紅茶でも入れてきますよ」
席を立つ士郎。
「彼は?」 とアンリエッタがルイズに尋ねる。
「えっと、彼は私の……使い魔(サーヴァント)です」
「そうなの。従者(サーヴァント)なのね。」
(ラ・ヴァリエール家くらいになると専属の従者を雇うのかしら?)
少々、行き違いがあるようだ。
部屋を出て厨房へ向かう士郎。夜になったばかりなので、まだ厨房では大勢働いていた。
メイドの一人に紅茶を用意してもらう。 ここで、シエスタが声をかけてきた。
「シロウさん、どうしたんですか?」
「いや、ちょっと紅茶を貰いにきたんだ」
「紅茶ですか? 仰っていただければ、幾らでもおいれしますのに」
「いや、俺がルイズにいれるんだけど……」
きゅぴーんとシエスタの目が光る。
「それなら、ちゃんとしたいれ方を覚えないといけませんね!」
「いや、今は急いでいるから、また今度教えてもらうよ」
「……約束ですよ! 私、絶対忘れませんから!」
なんか、シエスタが怖い士郎であった。
………
ルイズの部屋のそばまで来ると、扉の前で一匹の土メイジが、中の様子を伺っていた。
<ごちぃん>
ギーシュを殴りつける士郎。
「なにをしている」
「ぐぉぉっ。 いきなり殴るとは酷いね、君は」
扉を開け、ギーシュを部屋へ蹴り入れる。
「こいつが盗み聞きしてましたよ」
驚くルイズとアンリエッタ。
こんな簡単に盗み聞きされたら、先ほどの探知の魔法など意味がないだろうに。
「おい、出歯亀メイジ。どこまで話を聞いた?」
「え~と、なんかアルビオンに手紙を取り戻しに行って欲しいと姫殿下が仰られて……」
士郎はルイズと王女の反応を窺う。 どうやらそんな話をしていたようだ。
「で、コイツはどうしましょうか? 塔の天辺から吊るして、魔法でロープを切るとかしますか?」
ギーシュはがばっと床に伏せて、王女に嘆願する。
「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
「なんてほざいてますよ。お二方」 士郎はあくまで冷静だ。
「グラモン? あの、グラモン元帥の?」
「息子でございます。姫殿下」
「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」
なんかギーシュがその任務とやらに参加することになったようだ。たぶん自分もそのメンバーに
入っているのだろう。 仕方ないので、詳細を最初から訊くことにした。
………
「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。
すぐに件(くだん)の手紙を返してくれるでしょう」
そしてアンリエッタは、右手の薬指から指輪を引き抜き、ルイズへと手渡す。
「母君からいただいた『水のルビー』です。せめてものお守りです。
お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」
概要はこうだ。現在トリステインはゲルマニアとの同盟を結ぼうとしている状態で、
アンリエッタはそのためゲルマニアへ嫁ぐことになった。
だが、アンリエッタは過去、アルビオンの皇太子宛に一通の手紙をしたためた。
これが、同盟関係を妨げる障害になるらしい。
それなので、ルイズにアルビオンまで手紙を取り戻しに行ってほしいということらしい。
士郎としては、ルイズが行くというなら、付いて行くしかないだろう。
結局明日の早朝出発となった。
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『閃光』のワルドこと、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは振って沸いた
幸運に笑いが止まらなかった。。
この男、トリステインのグリフォン隊隊長でありながら実は、アルビオンの貴族派
『レコン・キスタ』と通じているのだ。
レコン・キスタの総司令と会ったときに、一つ頼みごとをされていた。
「魔法の使えない貴族が、人を使い魔にしたり未知の魔法を使うことがあったと情報を得たら、
是非知らせて欲しい。 伝説の『虚無』の魔法使いかもしれない」
ワルドは魔法の使えない魔法使いと聞いて、真っ先にルイズのことを思い出した。
『虚無』について調べたりもした。『ガンダールヴ』『ヴィンダールヴ』『ミョズニトニルン』
という名称の使い魔を従えていたらしい。 このあたりはまだ士郎達も知らないことだ。
そして最近学院で、人が使い魔として召喚されたとの噂を聞いた。
これがルイズの仕業なら、『虚無』の力をこの手に出来るチャンスかもしれない。
丁度、学院に立ち寄る偶然がおきて、しかも王女自らがアルビオンまでの任務を頼んできた。
ルイズの情報を仕入れるチャンスだ。
王女はルイズにも任務を頼むようだ。もうここまで幸運が重なると怖いくらいだ。
明日はまず、ルイズの使い魔を確認しよう。と思うワルドであった。
──────────────────────────────
王女の我侭のせいで、突然魔法学院などに泊まることになったマザリーニは、仕事をしていた。
本来なら城に戻ってやらなければならない書類仕事だが、幾許かを学院まで届けてもらった。
認可、不認可の印を押していく。
<こんこん>
そんなマザリーニの部屋の扉をノックするものがいた。
「誰だ?」
「枢機卿、学院の教師が面会を求めてきておりますが……」
なんぞ、嘆願や文句でもあるのだろう。 突然の来訪はこちらの都合によってである。
学院側にとってはいい迷惑だっただろう。
さすがに、話くらいは聞かなければなるまいと、客を通すように伝える。
面倒くさいことにならなければよいなと思いながら。
──────────────────────────────
翌朝
朝もやけむる学院の門前にルイズがやってきた。ギーシュが先に待っていた。
「やぁおはよう、ルイズ君。清清しい朝だね」
「あれ?あんただけ?」
「他の皆は、今準備をしているとこだよ」
「みんな?? シロウだけじゃないの?」
「おや、今回の任務のメンバーはこれだけかね?」
朝もやの中から登場してきたのは、ワルドである。
「ワルド様!!」 ルイズが思わず立ち尽くす。
「僕はこの学院の土メイジ、ギーシュ・ド・グラモン。そちらのお名前をお聞かせ願いたい」
ギーシュが現れたハンサムに張り合う。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
「これは失礼しました。今回の任務にご同行されるのでしょうか?」
「陛下直々の任務だからな。 よろしく頼むよ」
ギーシュとワルドのやり取りの間呆然としていたルイズがはっとして、尋ねる。
「私、聞いてないです! ワルドさま……」
「久しぶりだね。 僕のルイズ!」
ルイズに駆け寄り、その体を抱えあげるワルド。
「昨夜突然に陛下に命ぜられてね。 しばらく一緒の旅になる。 楽しみだね」
「相変わらず軽いなきみは! まるで羽のようだ」
「……お恥ずかしいですわ」
「ところで改めて尋ねるが、今回の任務、私を含め3人なのかね?」
「いえ、6人です」 士郎の声が聞こえた。
<ばさっ、ばさっ>
大きな羽ばたきの音と共に青い竜の背に、士郎、タバサ、キュルケの3人が乗って現れる。
「シロウっ!……。……?」 ルイズが驚く。現したその姿に改めて驚く。
学院のマントに白髪姿の衛宮士郎。凄く違和感があった。背中にはデルフリンガーを背負って……
ワルドが皆に尋ねる。
「ふむ、君達も今回のメンバーなのかな? ルイズは知らなかったみたいだけど」
「はぁ~い、私はキュルケよ、おひげが素敵な2枚目さん。よろしくね」
ワルドにしなだれかかるキュルケ。それを押しやるワルド。
「すまんな。婚約者が誤解すると困るんだ」
ルイズに目をやるワルド。するとルイズが顔を赤らめてうつむいた。
「なあに? あんたの婚約者だったの?」
キュルケがつまらなさそうに言う。
「えっと、あの青い髪の子があたしの親友タバサ。それでこっちの白い髪の男の子はシェロ」
「よろしく」 一言で済ます士郎。タバサは頷くだけだ。
「え?」 理解が出来ないルイズ。シェロって誰??
「よろしく。では、出発しようか。 ルイズは私と一緒にグリフォンに乗ろう……」
「あ~、申し訳ないんだけど、ルイズと話があるんで、そっちにギーシュを乗せてください」
士郎がそう言う。 ワルドもルイズと話をしたいというので後で乗り換えるということにして、
まずはタバサの竜に士郎、ルイズ、キュルケ、タバサと乗り、グリフォンにワルド、ギーシュと
乗ることになった。
見知らぬ男とグリフォンに跨ることになったワルドは、やはり少々不機嫌だった。
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