概要

青水現象とは、何らかの理由により銅イオンが溶け出し、冷却液が青く染まる現象。
溶け出した金属イオンはゲル状の物質となって流路に堆積していくので、
最悪の場合は流路が詰まり、水漏れや熱暴走を引き起こす。

原理

青水現象の原因は二つ考えられる。一つは、銅イオンと脂肪酸が結びついて作られる銅石鹸。
もう一つは、アンモニアとの反応によって作られる水酸化銅である。銅石鹸の場合は、水路に
残っていた油分と銅イオンの反応によって生じていると考えられ、その原因は主に組み立て前の
洗浄不足である。水酸化銅の場合は、冷却液の腐敗によるアンモニアの発生が考えられるが、
腐敗菌の栄養源が不明確な事や、殺菌効果の高い銅イオン水の中で腐敗菌が生存できるのか
等の疑問点があり、推測の域を出ない。

原理的には、アンモニアとの反応や電蝕等の理由から水冷パーツに使用されている金属類が
溶け出し、アンモニアと結び付いて水酸化アルミニウムや水酸化銅としてゲル化、同時に
水酸化銅によって冷却液が青く染まると考えられる。また、冷却液に不純物が混ざる事によって、
環境によっては電蝕も同時に引き起こし、金属イオンの溶出が更に進行すると考えられる。

水冷PCでは流路を流れる冷却液が20~40℃と温かく保たれている事に加えて、ポンプによっ
常に攪拌されているので、化学反応や腐敗が進みやすい環境となっており、冷却水の腐敗や
藻の発生は過去に事例が幾つか存在する。

スレッド内の青水発生事例では、aqua computer製のACfluidという防蝕用冷却液添加剤の
角型ボトル入りの旧モデルを使用している事例が2例あり、これが原因ではとする見方がある。
しかし、精製水のみの環境下での発生例もある為、一概にこれが原因とも言い切れない。
また、ネチャネチャとした物体が大量に付着していたという報告もあり、これについては
バイオフィルム(菌の群体)ではないかとも考えられる。

実例

innovatek製GPUヘッドでの事例。このGPUヘッドは全体に肉厚のアルミを用い、GPUチップと
接する部分に銅製ベースを埋め込んだ構造。フィッティングはニッケルメッキの真鍮製である。
特にフィッティングの接続部周辺が激しく腐食しており、電蝕の併発も疑われる。
フィッティングのネジ部分はメッキが薄くなりやすく、過度に締め付けると剥げてしまい腐食の
一因となる。Oリング付きのGネジフィッティングであれば、エルボ等の緩みやいタイプ以外は
レンチ等の工具は必要なく、手で強く締めるだけで十分である。

拡大画像。青白いゲル状の物体は水酸化アルミニウムと水酸化銅の混合物、
焦げ付きの様に見える赤黒い模様は酸化銅ではないかと思われる。

対策

銅石鹸の場合は、組み立て前の十分な洗浄で比較的容易に防げるが、冷却液の防腐は難しい。
最大の対策は防腐剤の使用であるが、単体の水冷PC用防腐添加剤は製品化されていない。
代表的な防腐剤であるパラベンを薬局等で入手して冷却液に添加する方法もあるが、
元々のクーラントとの間で余計なトラブルを起こす可能性もあり推奨は出来ない。

メーカー製クーラントには、パラベンが防腐剤として最初から添加されている場合があり、
主成分であるプロピレングリコールやエチレングリコールにも防腐効果がある。従って、
精製水や防蝕添加剤のみといった運用を避け、メーカー製クーラントやLLCを使用する
というのが順当な対策となる。

万一、青水が発生してしまった場合のヘッドのメンテナンス法であるが、ゲル状の物質は
洗い流すか、家庭用のアルカリ性塩素系漂白剤に短時間漬ける事で溶かせる。また、赤黒い
付着物は酸性洗剤で落とせるが、両者が混ざると塩素ガスが発生するので同時使用は厳禁。
また、酸性洗剤は大抵の金属やプラスチックを傷めるので多用は控えた方が賢明である。
アルミ製ヘッドの場合は、メンテナンスして綺麗になったとしてもアルマイトが破れている
可能性が高く、再使用は推奨しない。


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  • 多分赤い奴は冷却液にアンモニウム混ざり、銅メッキ液に近い状態になった結果、金属パーツに析出した結果だと思われます。対策としてはこまめに冷却液のphを計測し、アルカリ性に寄って来たらこうかんするのがいいかと -- (名無しさん) 2020-05-21 10:10:14
  • メッキ作業従事者です -- (名無しさん) 2020-05-21 10:04:31

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最終更新:2008年02月07日 03:42