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短編ノベルゲーム、マッチ売りの少女パロ
ツールはYuuki! Novel
>>1(>>30) 絵
>>8(>>32) BGM
>>36 シナリオ
>>70、>>74、>>96 雑用

ヒロインラフ
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ストーリー


「…ハァ……」
 寒い…。
「…ハァ……」
 吐く息は白く、両手はかじかんで真っ赤だ。

「…ハァ……」
 そして、その両手には、未だ一つも売れる事のないマッチ…。


「…マッチ、マッチはいかがですか?」
道行く人に声をかけても、マッチは売れない。

「どなたか、マッチはいかがですか?」
 大晦日、新しい年の始まりを迎える人たちの楽しそうな笑い声に、
少女の声は掻き消される。


「ハァ」
 寒さと不安で疲れた少女は近くの花壇に腰を下ろす。

「売れないな…」
 マッチを見つめつぶやく。真っ赤になった手は力が入らず、
体は震えが止まらない。

「今時、こんなマッチなんか売れる訳ないよ…。でも、このままじゃ年が越せない…」
 少女は貧しく、家には幾ばくの蓄えもない。


ヒューゥゥ…
「うぅっ」
 時折吹く風が、少女の体を厳しく冷やす。

 ふと、視界に入るもの。
 商店街に飾られた、揺れるキャンドルの火。

 「そうか!」
 少女は持っていたマッチを一本取り出し、火を点ける。
 小さな、小さな炎だが、少女は安堵する。
 「暖かい…」
 少女にとってはまるで暖炉のようなマッチの炎は、しかしすぐに消えてしまった。

「あっ…」
 とたん、再び少女は寒さに凍える。

「くっ」
 もう一本、マッチに火を灯す。
瞬間広がる、暖かい部屋でのパーティーの風景。
綺麗な白いテーブルクロス。豪華な料理。大きなクリスマスツリー。

「わぁ」
これだけ大きく立派なツリー。天辺の飾りもさぞ素晴らしいものだろう。
それを見ようと少女が顔を上げた時、暖かい風景はマッチの炎と共に消え、町の景色に戻っていく。

 だが顔を上げた少女の目に入ってきたのは、町の景色だけではなかった。
 少女を見下ろす一人の青年。年は少女よりいくらか上のようだ。ばっちり目が合ってしまった。

「え? あ、あの」
「あぁ、すまない。なんだか炎を見つめてぼうっとしていたから気になってね」
青年は優しく微笑みながら少女の前にしゃがみこんだ。
「こんな寒そうな格好で、手が真っ赤じゃないか。どうしたんだい一体」
手袋をした青年の手が、冷え切った少女の手を包む。
「あの、マッチを売りに…。あ、マッチいかがですか?」
「マッチ…。これを売る時は薄着をするものなのかい?」
「いえ、そういう訳ではないですけど…。もうこれ位しか着る物がなくて…。うち、貧乏なんです」
「ご両親は?」
「もう居ません。今は親戚の方にお世話になっているんですけど、その…」
「やっかい者あつかい…か」
「はい…。あの、マッチ、買っていただけませんか?」
「すまない。あいにくマッチを使う予定がなくてね」
 そういうと、青年は少女に自分のコートを差し出し、去っていった。

一人残された少女は、そのコートを羽織る。
「少し、大きいな」
去り際の青年の後姿を思い出す。
「っ…」
思わず溢れる一粒の涙。優しくされた故、一人になった時の不安は増大する。
「う、うぅ…」
一度流れると、なかなか止まらない。次から次へと涙が零れ落ちる。

 いっそ身投げでもしようか。
 そう思った少女は立ち上がり、一歩を踏み出す。

「おや。もう帰るのかい?」
 聞き覚えのある声に振り返ると、先ほどの青年が立っていた。

「マッチは売れたかい?」
「いえ、でももういいんです」
「ん?」
「この近くに、町で一番大きな教会があるの知ってますか?」
「ああ、知っているとも」
「その教会の屋根から飛んで、母さんと父さんのところへ行きます。生きてても、何もないし…」
 涙で濡れたほほが冷たい。
「それは困ったな」
「どうしてですか? あなたには関係のない事です」
「そうでもないな。あの教会の土地は私が貸したものでね。あそこで死なれるのはあまり喜ばしくない。それに…」
 青年は少女に近づき、ふるえる肩を抱き寄せる。
「!?」
「生憎、やっと見つけた理想の女性を簡単に手放すほど、僕は愚かではないよ」
「何を、言ってるん…ですか」
「やれやれ。これでもかなり緊張して言ったんだがね」
 そう言うと、青年は少女に跪き、その小さく震える手の甲に口付ける。
「一目見た時から運命を感じていた。私の、妻になってもらえないか」

「私、あなたの事、何も知りません」
「僕も、君の事で知っているのはほんの少しだけだ」
「そんな人に、いきなり妻になれなんて言われても、困ります」
「しかし、僕は君を手放すつもりはないよ」
「…どうしてもですか?」
「どうしてもだ」
 青年はその綺麗な瞳で少女の目を正面から見据える。
まっすぐで、奥まで覗き込めそうなほど、青年の瞳は美しく澄んでいた。

「っ!」
「ん?」
「…まぁ、どうしてもと言うなら、ついていってもいいです」
「ふむ。ではさっそく挙式の手配を…」
「ち、違います! あなたの妻になるなんて言ってません!」
「…ではどういう事だね?」
「その、あなたがどんな人か見極めるために、しばらく一緒に暮らす、という事で…」
「なるほど。なかなかいい案だね。しかし僕はそんなに信用ないかい?」
「いえ、そういう訳でもないんですけど、信用する根拠がない訳じゃない…し…」
「ほう」
「あああ、違うんです! 別に、あなたの瞳が綺麗だったとか、優しそうな笑顔だったとか、
コートを貸してくれたとか、それで好きになったとかじゃないですから!」
「それは残念。少し期待してしまった」
「ななな、何を期待するっていうんです。かか、勘違いしないでください!」
「何をあわてているんだい?」
「あわててなんか! いません!」


寒さに震え赤くなっていた少女のほほは、更に赤くなる。
日付が変わり、新しい年が始まる日。
ここに、少女の新しい日々、そして二人の愛の物語が始まろうとしていた。

Fin


今までのスレの流れ とても暇な人用

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最終更新:2007年12月27日 02:20