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第7章


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ずっと真夏の太陽に照らされ続けていたこの街にもようやく雨が降ってきていた
夏休みで始めての雨、それがコンクリートに叩きつけられて激しい音を立てている
ラウンジはそれを聞きながら宿題をさっさと済ませ様としていた
クラウンの方はラウンジの部屋でごろごろと転がって漫画を読みながらポテトチップスを食べている
―バリバリモグモグ・・・―
「あはははは!」
―ガサガサ―
「ひゃはwおもしろー」
「うっるさい!!」
ポテトチップスを咥えたままクラウンは漫画を片手にラウンジの顔を見た
ラウンジは一直線にクラウンの咥えていたポテトチップスを奪い取ると口にそれを入れる
袋ごとポテトチップスを奪うとその入り口から手を突っ込んで取れるだけのポテチを掴んで口に入れた
「あぁぁー!私のなのに・・・」
「あんたがもしゃもしゃうるさいからでしょ!」
「う・・・」
少し涙を見せたクラウンにラウンジは漫画も取り上げて部屋の外に投げる

階段を転げ落ちていく漫画の音がなんとも言えない空気を放っていた
「・・・う・・・うぅ・・・ばか・・・」
グスグスと泣くのを我慢しながらクラウンはラウンジの部屋から出て行く
そんなクラウンにラウンジはポテトチップスの空を無理矢理渡した
「それ、アンタのゴミでしょ」
「・・・う・・・うぐ・・・ふぇ・・・」
悔しそうな顔と悲しそうな顔を一辺にしたかと思うとクラウンは涙を流し始める
声を出さないように小さな声で何か呟いているように聞こえたがラウンジは無視した
クラウンが泣くのはいつものことだ
暫くすると下の階から大きな鳴き声のような叫び声のような・・・不思議な声が響いてきた
「お兄ちゃぁぁん・・・おねぇちゃんがいぢめるぅうう!!」
      • またVIPに助けを求めてる・・・ラウンジは溜息をついた
VIPもクラウンにはかなり甘い、甘いというか・・・二人を見ていると本当に仲がよさそうに見える
まさか・・・自分が知らない所で二人は付き合っているとかじゃないだろうか?
急に不安になってシャーペンは全く進まない
「・・・まさか・・ねぇ」
自分に言い聞かせるように言ってみたが、なんとも不思議な気持ちだった

クラウンからの電話にVIPは溜息をつく
どうしていつもいつも自分に電話が掛かってくるのか、それが不思議だ
VIPはそこまでクラウンに世話を焼いたつもりはない、ただ成り行きに任せていただけだ
ぐじゃぐじゃの布団の上に寝転んで携帯を遠くに放り投げながらVIPは目を閉じる
虫の声が良く聞こえている・・・やっぱりのんびりと昼寝くらいしたいものだ
夏休みなのにどうしてこんなに忙しいのか・・・
天井の木目を見ながらVIPはもう一度溜息をついて体を起こした
「顔洗って・・・部屋も片付けないとな・・・」
あまり気が進まないが一応相手は女の子ということなのでそのくらいはしてないと失礼だろうとVIPは考えた
      • 結局考えただけで片付けることは無かったのだが
「ぐす・・・VIPお兄ちゃん・・・」
「・・・お前、ポテチくらいで泣くなよ」
「だって・・・だってぇ!!私のお小遣いで買ったのにぃ・・・」
また涙が溢れ出てきたのか目を両手で擦りながら唇を震わせているクラウンにVIPは頭を掻く
外は少し雨が降っていて、クラウンのサンダルはびしょびしょになっていた

「ちょっとそこで待っとけ、タオルとってくる」
「うん・・・」
ホントに、自分の弟よりも世話が焼ける・・・そう思いつつも構ってあげないわけにはいかないだろう
このまま追い返すなんてのは可愛そう過ぎるし、もし何かあっても・・・助けることができない
とにかく誰もが外で一人きりになる状態は極力避けたほうが良いだろうと考えていた
それがわかっているのかいないのか、クラウンはこうして歩いて来てしまったわけだが
「ほら、足拭けよ」
青色のふわふわとやわらかいタオルを差し出したVIPにクラウンはお礼を言って玄関に座る
その瞬間、玄関の向こう側で何か見えたような気がしたが・・・何もいないようだ
「なんだろうな?虫の声は聞こえる・・・気のせいか」
不思議そうに見上げるクラウンにVIPは苦笑いをする
クラウンの足を今まで見ることなんてなかったが、あんなに食べているのに細い
流石に男の自分と比べるのは失礼かと思ったが、かなり痩せている方に見えた
「ありがとう・・・」
「どうしたしまして」
タオルを受け取るとVIPはクラウンを自分の部屋に行くように言った

静かな部屋に雨の音と自分の走らせるペンの音だけが響いているようだ
時計の音は遠くに聞こえて、机の前にある窓には水滴が沢山ついていた
さっきまで妹のいたソファーには何もない、こんなに静かだと逆に気持ちが悪いくらいだった
こんなことなら・・・追い出すんじゃなかったな・・・
何処からか見られているような気がして、少しだけ寒気がした
テレビでもつけよう、そうしたら少しは気分が紛れるから・・・
椅子から立ち上がりテレビに手を伸ばすと同時に家のチャイムが鳴る
―ピンポーン―
ビクっと震えてラウンジは少し迷ってから手に特殊警棒を持ってゆっくりと階段を降りる
家の中は静かで、いつもの家とは少し雰囲気が違う感じがした
「どなたですか?」
「・・・俺だよ、VIP」
その声は紛れもなくVIPであって、ラウンジはほっと溜息をつくと玄関の鍵をさっさと開けた
びしょぬれのVIPは何処かから急いで走ってきたように見える
「ごめんごめん、ふぅ・・・」
「さっき、クラウンが電話してたみたいだけど・・・」
ラウンジが首をかしげながら言うとVIPはにっこりと微笑みながら
「うん、だから来たんだよ」っといつもと違う、さわやかな声で言ってのけた
いつもと雰囲気が全く違うVIPにラウンジは少し驚くがまた気まぐれなのかと眉間に皺をよせた
「そんなに怖い顔しないでよ、可愛い顔なのに」
「な・・・アンタ、本当にVIPなの?」
ラウンジは特殊警棒を背中で持ち直しながらそのVIPの様な人物に向かっていう
「うん、俺はVIPだよ」
そいつは・・・微笑んだ

「・・・なんだこの感じ・・・?」
VIPは首をかしげながらザワザワと空気が揺れるのを感じていた
体の奥から凍るような感覚が頭の中から爪先まで一気に駆け巡るような感覚
それはいつものアレが出た時と同じ感覚に似ている
「クラウン!」
「あ・・・あぁ・・・あああああああ!!!!」
虫の声が遠くなる、やばい、世界が特殊な空間へ移動するのが手に取るように見えた
周りの音が消え、自分達が完全に隔離された空間に移される
急いで自分の部屋に戻ると頭を押さえたままのクラウンが背中から煙をあげていた・・・
いや、本当にこれは煙なのだ
焼けるような臭い・・・それは人間が焼ける・・・その時に出るような・・・頭の奥を刺激する臭いだ
思わず口を押さえながらクラウンに向かってバットを構える
「はぁ・・・うぅ・・・」
何が起こったんだ?クラウンが急に立ち上がる・・・
犬のような白い尻尾に少し先端が折れたような白い犬のような耳が頭に生えている
両手両足が白い毛皮に覆われているように見えた

「何だ・・・?」
「・・・はぁ・・・はぁ・・・お兄ちゃん・・・?」
クラウンはVIPの姿を見ると急に涙をボロボロと流し始め大声をあげて泣き出した
人間と違う・・・別の生き物・・・これがクラウンの力・・・なのだろうか?
VIPはバットを下ろすとクラウンの頭を撫でた
「今は、化け物を探そう・・・」
そのとき、クラウンの携帯に着信が入る
携帯の画面にはお姉ちゃんと表示されていて、どうやら姉が心配してかけてきたらしい
VIPは携帯を耳元に当てる
「もしもし」
「・・・VIP・・・?え?どうして・・・?あなたがこっちにも・・・」
途中で声が聞こえなくなり、何かが叩きつけられるような鈍い音が聞こえた
受話器の向こうの誰かがこう言ったのが聞こえた
「俺はVIPだよ」
虫の声は聞こえない

VIPは不気味に笑いながら携帯の電源を切りそれを投げ捨てる
ラウンジは肩で息をしながら背の低いベットの下に手を伸す
木の棒のような感触をしっかり確かめるとVIPを挑発するように睨み付けた
「アンタはVIPじゃない」
「俺はVIPだよ」
ケタケタと笑ったかと思うとVIPの腕の皮膚が焼けたかのように黒く変化する
顔は笑っている・・・気持ち悪いほどの笑顔で自分の右腕が黒く焼け爛れるのを見ている
「ヒヒ・・・俺、俺が、俺の、俺、VIPだ」
口から赤い液体が飛び散り目玉が飛び出し空中でブラブラとぶらさがっている
髪が抜け、左腕の肉が腐り床にぼたぼたと落ちる
ラウンジはそれを見て口元を押さえる
いつも一緒に居た人間が、たとえ偽者であったとしても、この姿にされるという事に恐怖を覚えた
「怖くなんかないっ」自分に言い聞かせているのに、震えが止まらない・・・
もしかしたらこれが本物のVIPなのかもしれない、それなら治す方法を探さなければ
いや、電話に出た向こうのVIPは・・・妹の電話を使っていた・・・あいつが偽者?
あいつが偽者ならこのVIPは偽者にこの姿にされたと言う事なのだろうか・・・?

VIPの右腕が振り下ろされ、ラウンジはベットの下から柄の長い大きな木槌を引っ張りだすと飛び込むように腕を避けた
ベットが自分の居た場所を中心にして押し潰されている
VIPがこちらを向く前にラウンジは走りだし階段を転びそうになりながら駆け降りた
本体を倒せばいいんだ、そうしたら全部治る
ラウンジは木槌を強く握り締め玄関を開けると息を切らしながら走り続けた
涙が止まらない
クラウンはもう殺されてしまったんだろうか・・・シベリアは・・・自分しか居ないような気がした
涙で前が霞んで、後ろから追い掛けて来るVIPがすぐそこに居る気がした・・・
VIPの左腕がラウンジを引っ掻こうとしたがラウンジが石に偶然躓いたお陰で掠っただけだ
絶対に助けるから・・・木槌を強く握り締めラウンジは走り続けた

雨の音が一段と強くなったように感じて、VIPは目を擦りながら走り続ける
目も開けれないほどの強い雨、霰のような強さでぶつかる雨が痛い
クラウンはVIPの跡を追いかけるように走っていて、耳や尻尾が雨で重くなっているように見えた
ふと気が付くと目の前にあるのはオカルトの家があった筈の空き地だった
雨が地面に打ち付けられて砂埃のような匂いが当たり一面を覆っている
VIPは息を切らしていることも忘れて辺りを見渡す
全く逆の方向であるはずのここに辿り着くというのは・・・どういうことなんだ?
バットを握り締めながら上を向くと、誰かの足音が大きく聞こえた気がした
「やっと・・・見つけた・・・」
「ラウンジ!?よかった!生きてた」
VIPはそう言いながらラウンジに駆け寄るが、ラウンジはそれを待っていたかのようにニヤリと微笑む
体を回転させるように大きな木槌をVIP目掛けて右から左へと振る
VIPはそれをバットで受け止めようとするが重さの違いなのか、受けきれずに地面に叩きつけられた
「なんで・・・っ」
息が出来ない・・・さっきまで走ってきた所為もあってなのか、地面に叩きつけられた所為で息ができなかった
眩暈と吐き気が襲ってきて、雨の音がどこか遠くに聞こえた
「俺がVIPだ」
ラウンジの肩を叩くようにそいつは言うとVIPを見下ろしてケタケタと笑う
腐った肉の臭いにVIPは吐き気が強まるのを感じる
飛び出した眼球、腐った腕、こげた腕・・・骨が飛び出した足、肉が抉れている腹
まるで自分の死体を見ているかのような錯覚に陥る
「VIP・・・今・・・助けるから・・・」
うわ言のように呟いたラウンジはVIPの頭に向かって木槌を振り下ろした
鈍い音が・・・辺りに響く・・・低い声・・・血が、アスファルトに広がった

「おに・・・いちゃ・・・ん」
クラウンの細い声が聞こえて、VIPは閉じていた目を開いた
目の前にクラウンの顔があって、クラウンの腕が潰れ、アスファルトを血で染める
いつもならすぐ泣く癖に、クラウンは微笑んでいた
「間に合った・・・」
痛いなら、泣けば良いのに・・・苦しいなら、言ってくれれば良いのに・・・
クラウンが自分のつぶれた腕を庇いながらVIPの上から退いて電信柱の横まで這って行くとそこで溜息をついた
血の付いた木槌をもう一度振りかぶるラウンジ、その目に光を感じない
VIPは自分に似たゾンビに殺意を抱きながらラウンジを睨みつける
振り上げた木槌が、ラウンジの力が全て込められた木槌が振り下ろされる
それを見て素早く右に転がりバットを握る手に力を込めた
ラウンジの木槌が地面に辺り、鈍い音が響く・・・地面が揺れたような感覚にVIPは顔を顰めた
こいつは、本物のラウンジなのだろうか?
いや、偽者に違いない・・・このラウンジを殺して、ラウンジを助けないと・・・
VIPはラウンジの顔に向かってバットを左から右へと切るように振り回す
ラウンジはそれを擦れ擦れで避けるが、掠った感覚がVIPの腕に伝わってきた
その瞬間ラウンジの頬の肉が弾け飛び血が雨に混ざってアスファルトの上に落ちる
バットを振り切ったVIPはその場から離れようとするが、ラウンジの木槌がVIPの横腹を殴りつける
鈍い音がした・・・体の奥から響いてくる痛み、それの所為なのかVIPは血を吐き出した
息が苦しい、動くだけで・・・体の奥から・・・体が壊れていくような・・・気がした

頭が上げれない、ラウンジを見ることが出来なかった
息が苦しい、体を動かすだけで激痛が走る
肋骨が折れている・・・そんな考えが頭を過ぎる
「・・・これで・・・終わり・・・」
ラウンジの声がまるで無機質な機械の音声であるかのように聞こえた
ああ・・・これでそうか、終わりなのか・・・
「ラウンジ!」
振り下ろそうとした木槌が鋭い爪に受け流されて地面を殴りつける
顔を逆さにしたような仮面を被り、鋭い爪の生えた何かがラウンジの持っている木槌を蹴り飛ばす
「ドッペルゲンガーか・・・」
シベリアの声にVIPは苦しそうに顔を上げる
「遅くなって悪い、ちょっとテリヤキマックチキンが食べたくて」
この町にはマクドナルドがひとつしか存在しない、シベリアはクラウンとVIPを素早く見る
「まだ死ぬような怪我は無いな」
ゆっくりと顔を上げるラウンジをシベリアが殴りつけラウンジが地面に倒れる
そのラウンジの背後から這い出してきた腐ったゾンビ・・・VIPにそっくりのその姿・・・
だが、VIPが死に掛けているというのもあるのか、腐った姿が少しずつ元に戻りつつある
シベリアは一度深く溜息を付くと両手をゆっくりと構える
「久しぶりの出番だし、VIPもラウンジもクラウンも居ないなら俺が止めを刺せるんだよな」
地面を蹴るシベリアにそのVIPはニヤリと笑いながらVIPの落としたバットを握りシベリアに振り下ろす
それを左の手で塞ぎ、右の手で腐った体を切り裂いた
どす黒い血が噴出し、ボロボロの綿のような内臓が地面にぼたぼた落ちる
上半身が地面に叩きつけられているのにも関わらず、内臓を乗せたままの脚はシベリアに蹴りを入れた
上半身の方は飛び出した内蔵を引き摺りながら腕を使ってシベリアに物凄い形相の顔で走ってくる
飛び退くと同時にVIPの頭を引き裂く、半分だけ残った頭から脳みそが零れ出す
「こうなると本物の化け物だな・・・」
弱点はどこなんだ?蹴りを受け止め、振り下ろそうとする腕を掴んで地面に頭から叩きつけた
顔面がつぶれ、足が間接から下がなくなっているというのにまだ暴れ続けている
殺すことは不可能なんじゃないのか・・・?シベリアは構えなおす

「・・・左目・・・」
「え?」
シベリアはラウンジの方を見て気の抜けたような返事を返す
向かってくる奴に左目は付いて・・・いる・・・
シベリアは目を閉じてふぅっと息をするともう一度両手を構え、左目に狙いを定める
間接が無くなった内臓を乗せたままの足を爪で真っ二つに切り裂くと飛び掛ってきた上半身が現れる
切り裂いた勢いのまま右の手の爪で左目を一気に貫いた
貫くと同時に勢いよく飛び掛ってきた体は首が取れ、グシャグシャになった体がシベリアにぶつかった
完全に動きを止めた体と足がビクビクと痙攣しながら闇に溶けるように消え、爪に刺さっていた顔も消える
空間が急に縮むような間隔と、急に戻ってきた虫の音が煩く聞こえた
ジンジンと、雨のあがったアスファルトを虫の声だけが響いていた

「やっぱり、生き残ったわね」
医歯薬看護の言葉に骨折の治療がほとんど終わったVIPは苦笑いをする
まるで今回は諦めたみたいな言い方にクラウンはふぅっと溜息を付く
「ごめんなさい・・・」
ラウンジが呟くのが聞こえて、VIPはぐっと背を伸ばした
「ごめんなさい・・・じゃねーよ」
声の真似をしながらVIPは口を尖らせて意地悪そうにいうと立ち上がる
医歯薬看護に修正してもらった傷を擦りながらVIPはラウンジの前に立った
VIPの姿にラウンジは悲しそうに顔を伏せる
「えーっと・・・まぁ・・・あれだ、あんま気にすんな」
「・・・優しいんだ」
「や、やさしくねーよ!ラウンコ!ばーかばーくぁwせdrftgyふじこlp;」
真っ赤になって反論するVIPにラウンジは少しだけ嬉しそうに微笑む
「ありがと・・・」
「う・・・」
こういうの苦手なんだよな・・・っと呟くVIPにクラウンはクスクスと笑う
医歯薬看護が修正人じゃなかったら顔の傷直せなかっただろうし・・・
VIPは窓の外に目をやる、またいつもの様に虫の声が響いていた