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第2章


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「お兄ちゃん、体もう大丈夫なの?」
「ん?あー・・・平気」
VIPは天国に対して特に興味なさそうに返事をする
天国もそれに対して別に興味なさそうに「ふーん、そっか」と言っただけだった
あれから2週間経ってなんとかVIPは普通に生活できるほどになった
結構血は出ていたが、傷は余り深くはなく家で安静にしていれば良いと言う事で家でパソコン三昧の毎日だった
ネトゲをやりまくっていた所為でネトゲ中毒になりそうだったが何とか復帰できた
「そうそう、ラウンジさんから電話があったよ」
天国は思い出したようにそういった
「?ラウンコから電話?」
あれからラウンジには一度も出会ってない
会う以前にVIPが家から一度も出ていないし、見舞いなんて来る訳が無い
大体仲良くもないラウンジから電話があるなんてまた嫌な予感がする
もうあんな化け物とやりあうなんて次は確実に死にます
本当にありがとうございました

「調子どうだ?もう痛くないか?」
「おいすー!もうおkだお」
シベリアは笑顔でVIPを小突くとVIPはシベリアの背中をおもいっきり叩いた
こうしていつもの様に挨拶をして、いつもの様に学校へと向かう
いつものことなのに今日は何故かいつもとは違う気分だ
虫の声が響いていて、あの事件から一層と夏に近づいた気がした
気持ち良かった日差しが暑く感じるほどに、夏はもうこの地域にやってきているようだ
「そうそう、お前の為にノートとっといてやったぞ」
「うはwwwありがてぇwwwww」
「まぁ、今学期のテストが夏休み明けに延期になってるからそれまでに勉強しとけよ」
「おkwwww」
シベリアからノートを貰い、VIPはそのノートを団扇の様にして自分を扇ぎながら学校に向かう
あ、っとシベリアが小さな声を漏らす、VIPはその声に不思議そうに顔を上げた
いつもラウンジと出会う通学路にはラウンジの姿は無かった
何故か不安になってVIPはその場所に立って周りをぐるりを見渡した
少し凹んだガードレールに錆び付いたカーブミラー、民家から覗いた木からは虫の声が聞こえていた
ジリジリと焼き付けるような太陽にVIPは深呼吸のようなため息をつくと少しだけ肩を落とす
「ラウンジ?」
「べ、べつにラウンコの事じゃねーよ!」
「あいつ、目が見えないらしいよ」
「・・・は?」
シベリアの言葉にVIPは間抜けな声を上げてシベリアの顔を見た
目が見えない?この前までちゃんと見えてたんじゃないのか?なんで・・・?
なんて言えばいいのか、まったく思いつかなかった
「まぁ、あの事の後、家に帰った辺りで倒れたらしくて」
「また・・・化け物が出たのか?」
「違うと思う、ただ・・・お前が言うような化け物を実際に見た一時的なショック症状らしいけど」
よくわからないと首を振るシベリアにVIPは何も言えずに学校への通学路を歩き出した
全てあの事件の所為で狂ったんだ
学校は静かだった
外の虫の鳴き声が聞こえるが学校の中は外よりは涼しい
いつも言い合いながら下駄箱で靴を脱いでいたというのに今日はとても静かだった
生徒も廊下には一人も出ていない、警戒して教室で固まっているようにと言われているのだろうか?
「早くいこう」
「うん・・・」
誰もいない廊下、虫の鳴き声が聞こえる、だからここは現実なんだ
あの時は虫の声も全てが止まったかのように静まり返っていた
恐怖で他の音が聞こえなかっただけなのかもしれないが
「・・・やっぱり夢じゃないんだな・・・」
職員室の前には花束が供えてあり、まだ微かに血の跡が残っていた
そこから一直線にある非常出口も新品の扉に変えられている
「大丈夫だよ!」
「・・・大丈夫なのかな・・・」
VIPが教室に入ると教室の中の空気が一瞬で凍りつくような気がした
VIPの顔を見て誰もがヒソヒソと言葉を交わし、まるで危険人物であるかのような扱われ方だ
何の言葉も見つけられないVIPはシベリアの言葉も余り聞かずに自分の席に着いた
腕を枕にして寝る体制になると、窓の外を見る
プールの水が涼しそうに輝いていて、風が吹くと校庭の木が揺れる
「そういえば・・・電話があったって・・・言ってたな」
「明後日手術なんだって」
「そっか」
こういうとき、自分が凄く情けない気がしてくる
ラウンジが一生に係わるような怪我をしてるのに自分はこんなかすり傷で何怖気づいてんだ
「見舞いに行こう、VIP今日暇だろ?」
「いかねぇ!」
自分の顔を隠しながらVIPはそう言って顔を上げようとしなかった
夕方までシベリアともあまり会話を交わさなかった
用事があるといって先に帰っていったシベリアにVIPは「乙」とだけ言って一人で教室に残っている
全部俺が悪いんだよな、夢で見たなんて言わなかったらこんなことにはならなかったのに
「VIP君」
VIPはその声にゆっくりと顔をあげた
ふっくらとした体つきに笑顔を薄らと浮かべて、お菓子は立っていた
「・・・なんだよ」
「お見舞い、行くんだよね?」
「いかねぇって」
「行くんでしょ?はい!これ、ラウンジちゃんに渡しておいて」
お菓子は小さな包みをVIPの机の上に置くと軽い足取りで教室の扉へ駆けていく
「お願いだよ!ちゃんと渡しといてね」
そういうとお菓子はさっさと帰ってしまった
VIPはその包みをポケットに突っ込むとダラダラと教室の外に出た
赤く染まった廊下、一瞬ドキリとして体が引き攣るが夕焼けで赤く見えるだけだった
あの時のオカルトの顔、体、血・・・それに魘される日々は今でも続いている
寝ようとして目を閉じるとあの顔が血の涙を流しながら「ありがとう」と呟くのが見える
VIPは職員室に向かって歩き出していた
職員室の前に供えられた花束には昔先生に宛てた手紙や農学宛ての手紙が置いてあった
二人の写真がそこにあり、どちらも何が面白いのか凄くいい笑顔をしていた
オカルトだって、好きであんな姿になったんじゃない
痛い、苦しい、そう言いながらあいつは何かを探していたように思えた
何を探していたんだ?何か職員室に関係があるものなのだろうか?
「余り足を突っ込まないほうがいい」
背中で急に聞こえた声にVIPは心臓が止まりそうなほど緊張が高まる
心臓の音が耳元で聞こえているきがして、VIPは自分の後ろに何が居るのか確認することすらできなかった
「俺達に足を突っ込むと、この世界から消えることになる」
「・・・あんたが、二人を殺した?」
「俺達はその二人を殺した奴を追っている」
「俺だって!二人を殺したや―――」
最後まで言葉が出なかった
いきなり胸倉を掴まれて廊下の壁に叩きつけられ何か、刀のようなものを首に突きつけられる
「削除されたくなかったら、言うとおりにしろ」
黒いローブのような服は普段絶対に目にしない、現代に居きる人とは違う雰囲気をそいつは放っていた
銀色の髪に目があるのかさえ見えない、ただ黒いローブから銀色の髪が見えていた
「次にこの事に巻き込まれれば、確実に命は無い」
「・・・もしかして、あの時時間が戻ったのは・・・」
「それをお前に話す義務は無い」
そういってその黒いローブは何かに気が付いたように顔を上げると瞬間移動をするかのように消えた
さっきの黒ローブが消えて、急に音のボリュームを誰かが上げたような気がした
虫の鳴き声がうるさいくらいなのに、体中が冷え切っていて震えが止まらなかった
弱い、VIPは両手を強く握り締めながら自分の非力さに涙が出そうになった
あんなに得体の知れない連中が係わっている事件に足を突っ込んだら絶対に戻ってくれない
ただ、普通の高校生活が遅れれば問題なかったのに
「VIP?おい!大丈夫か!」
「あ・・あぁ・・・うん・・・」
本当に消えてしまいそうな声しか出せない
虫の声でVIPの声は掻き消されていたが頷いたので相手は理解したらしい
顔を上げるとそこには心配そうな顔をしている陸上競技の姿があった
程よく筋肉のある体に少し汗が見える、部活の帰りだろうか?
「なぁ、VIPが先生を殺したって話・・・嘘だよな?」
「・・・え?」
頭で理解できないその言葉が頭の中で何度もリピートされている
俺が、先生を、殺した
何が何だかわからない、怒りでもない、悲しみでもない、不思議な感情だった
とにかく何も思い浮かばず、呆然と言葉の意味を理解できない自分がいた
「俺が・・・先生を?」
「・・・ま、お前がそんなことするやつじゃないってみんな解ってるよ」
「そう・・・」
精神的に追い詰められてる
自分の知らない何かに押しつぶされそうな自分が怖かった
なんだか流れるように時間が進む
昨日はあの変な黒いローブの所為で家に帰ってからすぐに寝込んでしまった
次の日、起きたのは時計が10時を回ったくらいで、既に学校に行く気は起きない
頭が重くて体がダルイ、なんとなく風邪っぽい感じだった
熱は無いように思えるが、喉が痛い、目の奥がずきずきと痛む
病院にいかないと、ついでにラウンジの見舞いもしてこよう
VIPはのろのろと準備をすると外に出た
外は息をするのが辛いほど蒸し暑く、めまいと吐き気が一層強まった気がした
病院の中は涼しく、やっとまともな呼吸が出来たような気がしてふぅっと息を吐いた
平日の所為なのか人は少なくて、受付を済ませると椅子に座る
やはり思ったとおりに風邪のようだ
寝不足と最近色々あった事が原因なのか、薬を受け取ると看護士に話しかける
「すみません、ラウンジって人はここに入院していますか?」
「ご家族の方ですか?」
「いえ、同じ学校の同級生で、見舞いを頼まれてて」
「・・・ちょっと待ってくださいね」
そういって看護士の人は奥のほうで誰かと相談しているらしい
VIPは少し不審に思われたかと思いながらソワソワと辺りを見渡す
病院の中は日の光で明るいが、人の姿が余り見えずにとても静かだった
自分のスリッパの音が一番向こうまで届いてその音が響いて戻ってくるくらい静かだった
「もしかして、VIP君ですか?」
「え?はい」
「よく話は聞いてます。仲がとても良いらしいですね」
クスクス笑いながらその看護士は言う、周りから見たらそんな風に見えるのかな?
VIPは「そうなんですか?」なんて言いながら少し苦笑いを返す
「部屋は2階の左から2番目の部屋です」
「ありがとうございます」
頭を下げるとVIPは急ぎ足で病室へと向かった
やはり病院だけあって少し不気味な雰囲気と薬の臭いがしていて、落ち着かない
2階に上る階段は少し薄暗くて、エレベーターで行こうと思ったがやはり登っていこう
2階には人の姿は無く、VIPは教えられた通りの部屋へ向かった
「ラウンジ」
「・・・VIP・・・?」
部屋の中は涼しかった
窓から見えるのは住宅街で、山の上にこの病院があるため見晴らしはかなり良いようだ
窓からの日差しが眩しいくらいで、こんな場所に住めてもっと色々充実してたら面白そうだとVIPは思った
ラウンジの顔を見ると目に包帯が巻かれていて、とても弱弱しく微笑んでいるのが口元で解った
「な、なんだよ!市んだって聞いたのに生きてるじゃん!」
「うん」
「・・・ごめん」
VIPは自分の言葉がそのままの意味でしか通じないことに気が付いて素直に謝る
視覚があれば相手の表情で相手が何を思って言っている言葉なのか理解することが出来るが今は音だけしか聞こえないのだ
「どうしたの?」
「見舞いに来た。・・・お菓子に届け物頼まれてさ」
「そっか・・・」
ラウンジがそう言って外の方に顔を向ける
そちらに窓があるというのがわかっているんだろう、そのまま沈黙が流れる
とてつもなく長く感じる沈黙の中でVIPは小さい包みを取り出すとラウンジの手のひらに乗せた
片手で持てる大きさの包みの中には感触から恐らくクッキーが入っているのではないかと予想できた
「・・・あ、VIP、これ開けてみて」
「うん?いいけど」
小さい包みをラウンジから受け取って包みを開けた
中には綺麗な色に焼けた美味しそうなクッキーが入っていたが少し崩れてしまっているようだ
昨日のあの時に割れてしまったんだろう
「クッキーだ」
「うん、良い匂いだね」
「食べる?」
「食べたいけど、口が何処だかわかんないから」
苦笑い、ラウンジの苦笑いが何故か自分の心に突き刺さる
元はといえば自分の所為なんだ、あの時一人で行ってればよかった
そう思うと何故か悔しかった
自分に漫画みたいな力があればよかったのに
「ラウンジ、ちょい口あけてみ」
「?」
不思議そうにラウンジはこちらを向いて小さく口を開いた
VIPは小さいクッキーの欠片と取るとラウンジの口に運ぶ
「うまい?」
「あはは・・・ありがと、美味しいよ」
「よかたwwwこれでお菓子にちゃんと報告できるww」
VIPは嬉しそうに弾んだ声でラウンジに言い、ラウンジもその言葉に微笑む
両手を握り締めて涙を流しながらVIPは必死に声をあげて楽しそうに喋り続けた
明日には夏休みか、そう思うとこの1ヶ月が本当にあっという間に過ぎたことに驚く
こんなに早く1ヶ月が終わったのは久しぶりだ
いつもは退屈な日々に流されてて、グダグダと長い日が続くだけだったのに
「おーっす!今日で夏休みだな!」
「おいすー、シベリア」
「おはようございます、先輩」
天国はシベリアに挨拶をして、友達と待ち合わせがあるからと走っていってしまった
新入生だった天国にも友達ができたらしく、最近は一緒に行くことは少なくなっている
「それにしても、早いよなw何して遊ぶ?」
「俺はなーんも計画ねぇよww何すっかなぁ」
何をしようかなんて遊ぼうか、そんな終わりの無い話をしながらシベリアと通学路を歩く
ラウンジがいない通学路も、日が立つとこれが当たり前に思えてしまう
だから、いつも出会うこの場所でも、VIPもシベリアも振り返ることはなくなった
「シベリア!!VIPーー!」
懐かしい気がする声が聞こえて、VIPとシベリアは二人で顔を見合わせる
まさか二人とも同時に幻聴を聞くわけが無い
「なによ、それ!私が死んだみたいじゃない」
「おっ!退院したのか!!!」
シベリアは良かった良かったと大声で叫びながら嬉しそうにラウンジを迎えた
ラウンジもありがとう、と頬を赤くしながらあははっと笑っている
「どうした?VIP」
VIPはラウンジの顔をいつに無く真剣な顔で見つめていたかと思うと人を馬鹿にした笑いじゃない
「うはwwwwおれきめぇwwww笑いがとまらねぇwwwww」
VIPは大声で笑いながら二人を置いて走り出し、少し距離が離れたところで振り返る
「元気ですかー!」
VIPの声が通学路に響く、近所のおじさんでも怒って出てきそうだが、もういつもの事だから誰も出てこない
むしろVIPの嬉しそうな声に怒るような人はこの近辺には住んでいない様だ
「元気に・・・元気になったわよ!!」
涼しい風が吹いて木々が揺れる
青空には大きな入道雲があって、それがゆっくりと流れていくのが見えた
虫の鳴き声が大きく聞こえて、不思議と気持ちが晴れる
「・・・おかえり」