ソロシナリオ記

(2008年夏コンベンション)

 

      ()露氏也(ロシナリ)(オ)

                 石油王子

 

いやいやァ、全く以て最近は真奇怪な風潮が俗世に広がって参りました。この頃はまた益々物騒な世の中に成りなさって…。御上も大変なことでしょうね。ン…そうですねェ…お客さん、今巷で噂の“ソロ・アドヴェンチャー”というものについてご存じかな?おやァ、ご存じない…?ではまた少ぅしばかり世間話に付き合って頂けますかな…?

 

 

 

壱.ソロシナリオというものは…

ソロ・アドヴェンチャーというものが御座います…これがまた大層な代物で御座いまして。

 

今世間で密かに話題になっている“TRPG”についてはご存じですね?その“TRPG”は、基本的には三人から六人ほどの遊び人(プレイヤー)と、一人の遊戯(ゲーム)(マスター)から構成されるのが世の常識という奴ですな。しかし、突然現れたその“ソロ・アドヴェンチャー”という奴は、その常識を覆しちまったんでさぁ。渡来語で“ソロ”と言ったらば“単独”みたいな意味があるんですと。その言葉通り、一人の遊戯主に対して遊び人も一人という体制で“TRPG”のシナリオを遊ぶという突飛な物なのですよ。別名“ソロシナリオとも呼ばれるそうです…。変わったことを考える人もいたものですよねェ。

 

それで、ソロ・アドヴェンチャーはどんなものがあるかというとですねェ、…おや、向うの方でご注文みたいです…。話の途中ですが、しばしお待ちを…。

 

 

 

弐.ソロシナリオの種類

 いえ、折角話の途中でしたのに、すいませんでしたねェ…。そうそう、ソロ・アドヴェンチャーの話でしたよね。

 

まあ、そんな物が或るとはいえ、やっぱり王道は遊び人4人前後であって、ソロ・アドヴェンチャー自体はそこまで多くないんでさァ。まァ、個人単位でやってる分には知りませんが、公式の物になってくると私は二つくらいしか存じませんねぇ。“傭兵剣士”というやつと、“カザンの闘技場”とかいう奴でさぁ。ま、実際に見たことがあるのは“傭兵剣士”だけですけどねィ…。どちらも“T&T”という決まり事(ルール)を使っているんですけども、この“T&T”という代物、全く大層な物でございます。迷宮探索を主な舞台とした決まり事なんですが、引っかかってしまったが最後、そのまま命を落としてしまうというカラクリ仕掛、俗にいう“ですとらっぷ”という奴が至る所に仕掛けられているというものでございます。ただでさえ困難な物に、仲間もなしに単身で挑めということなんでしょう。全く以て無茶な話でございますねェ。私の知る限りでは、“傭兵剣士”のソロシナリオに挑んで一度目で攻略した人間は零人でありやす。

 

…おや、あちらの方がお会計だというので、またしばしお待ち頂けますか。すみませんねェ。

 

 

 

参.ソロシナリオの利点

 お待たせしてすいませんねェ、いや、少ぅしばかり銭勘定に手間取ってしまったものですから。さて、そもそも何故ソロ・アドヴェンチャーなんてものをやるんでしょうねぇ…。

 

やはり今のご時世、他人とコミュニケーションを取るなんてことが難しくなっていく一方ですから、ご友人に「“TRPG”をやりませんか」とお誘いを掛けて見ても、なにせ勝手が分かりませんからねェ…。人数もそこまで集まる訳ではない場合も御座いますからねェ…。その点、ソロ・アドヴェンチャーなら、手軽に気軽に、一人で遊べるものですから、やりやすいですよネ。分身(キャラ)作成(作)も一人分しかありませんから時間も短くて済みますし、その上すぐに死んでしまいますから、時間の無い場合でも簡単に遊ぶことが出来ますね。また、大人数で集まる場所の確保が難しい場合、なんてェのも一人しかいないわけですから、“一家(ファミリー)御食事処(レストラン)”などでもやりやすいです。決まり事が“T&T”ですので初心者にも簡単な為、“TRPG”に慣れるのにも向いているかもしれませんですねェ…。

 

…あれは郵便屋さんですね。ちょっと郵便が届いたようなので、しばし失礼します。

 

 

四.ソロシナリオの難しさ

 はい、失礼。戻って参りました。今度はソロ・アドヴェンチャーの難しさについてお話しましょうかィ。

 

そもそも、“T&T”で一人で迷宮に挑むなんてェのは、それ自体が無茶なことなんでさァ。何がって、“T&T”なんて、小隊(パーティー)を組んで行っても下手すりゃあ半分くらいはぽっくり死んじまうものなんでさァ。それをたった一人で突っ込むなんて、自殺行為にしか思えませんよ。まぁ、さすがに無理だと思われるので、“傭兵剣士”では迷宮に入ってすぐに“岩悪魔”と呼ばれる怪物が仲間になりますがねえ。それでも、二人でも十分にきついので、厳しいことに変わりはありませんがね…。“T&T”っていうものはそもそも数の多い側が勝るようになってる決まり事なんでさァ。一対一ではお強いお侍さんだって、大勢のゴロツキに囲まれちゃあどうしようもないってことでさァ。社会の法則って奴ですかねェ…。ウヘヘ…。おっと失礼。別に皮肉ってる訳じゃないんでさァ、気にしねェで下さいよォ?あとは、そうですねェ…そうそう、“T&T”と言う決まり事はですねェ、能力値を決める時、(ダイス)を三つ振る決まりなんですが、その際に三つの目が同じ数字だった時は、“ぞろ目”と言いまして、さらに振り足していく事が出来る、つまり“ぞろ目”が出れば出るだけ、それこそ驚異的に分身(キャラクター)が強くなっていくんでさァ。賽を三つって“ぞろ目”が出る確率は大凡三分位なんでィ。一人でっても、机上の空論と違ってなかなか“ぞろ目”ってェのは出ないもんなんでさァ。でもねェ、複数人で降ると、偶に“ぞろ目”を出す方がいらっしゃるもんで。要するにですねェ、一人でやるより、複数人で遊ぶほうが強い分身(キャラクター)が生まれる可能性がかなり高くなるのでさァ。小隊(パーティー)内に一人でも“ぞろ目”を振った方が居れば、かなり楽になるはずなんでさァ。だから、その確率の低いソロアドェンチャーは難易度いんですよ。すいませんねェ、説明下手で。勘弁して下せぇ。

 

おや、倅が呼んでますァ、ちょっとばかしお待ち下せぇ…。

 

 

 

伍.ソロシナリオの使い処(?)

 …いや、まったく。うちの倅ときたら、もう十と六つにもなるのにまだろくに仕事も覚えないんでさァ。お恥ずかしい限りで…。

 

さて、次に、ソロ・アドヴェンチャーなんて変ったものを一体いつ使うのかというお話をさせて頂きやす。先程も一例を挙げましたが、やはり“一家(ファミリー)御食事処(レストラン)での一時に楽しんだり、初心者にも簡単に遊んで頂いたり出来ますから、そういった使い方が出来るんでさァ。

あとは…そうですねェ、私も実際に見た事が或る訳ではないのですが、この間中東の方からやってきた商人から聞いた話に依るとですねェ、なんでも何処かに“麻布学園”という寺小屋が或るらしいのですよ。其処で毎年“ぶんか祭”というお祭り事が行われるそうでして。そして、その“ぶんか祭”というお祭り事では、寺小屋の生徒さん方が日頃行っている何かの成果をお客人方に発表する場が設けられているそうで御座います…。そこでですね、毎年“TRPG”についての展覧は行われていたそうなのですが、今年は「“T&T”の“傭兵剣士”を使った展覧を出張所として出してみてはどうか」ということを考えた生徒さんがいらっしゃいまして。その生徒さん、驚いたことに本当にそんな展覧を始めてしまいまして、初めてのお客さん相手にソロ・アドヴェンチャーで体験をするという企画を実行に移したのでございます。これが、当日展示員一人というとんでもない状況の物で御座いましたから、あまり効果のないものかと思われておりましたが、予想の割には結果は上々という次第だったそうで御座います。突拍子もない事をする生徒さんもいたもんでさぁ…。

 

そういえば私にそのお話を聞かせてくれた商人さん、その学生さんと私が似ているような気がすると仰って居た様な気がしますねェ…。まァ、気のせいじゃないですかとお答えして措きましたがねェ…ウフフフフフフフフ…。いえいえ、なんでも御座いません、こっちの話で御座います。

 

 おや、向こうの方で揉め事の用でさァ。少々お待ち下さいねェ…。………ちょっと困りますよお客さァん、店の中で面倒事を起こされちゃあ…。喧嘩ならどうぞお外に出てやって下さいな。

 

 

 

六.ソロシナリオに必要なもの(物質的に)

 どうも、すいませんねェ…。店の中で喧嘩なんかされちゃあたまったもんじゃありませんやィ。最近は迷惑なお客さんが増えたもんでさァ。…いえいえ、もちろんあなたは違いますよォ。私の話にわざわざ付き合ってくれて感謝してまさァ。さて、それではソロ・アドヴェンチャーを遊ぶために何が必要か…物理的な意味の方で…お話ししましょう…。

 

 そう、まずは紙と鉛筆、六面体の(ダイス)ですねェ…。これがなくっちゃあお話になりませんからねェ…。出来れば(ダイス)は一人三つは持っておいた方がいいと思いますし、紙は分身(キャラ)記録(クター)用紙(シート)の形をとっておいた方が好ましいですよゥ。それから、公式のものを遊ぶのでしたら、そのシナリオの載っている本が必要になるでしょう…。もしもその遊戯(ゲーム)(マスター)が散々そのシナリオを遊んで、完全に暗記し切っているならば話は別でしょうがねェ…。あとは…机や台のような物が在った方がいいでしょうねェ…。“テェブルトォク”RPGですからねェ…。今私が上げた一式があるのなら、簡単に遊ぶ事が出来るはずですよォ…。ウフフ…。

 

 長話疲れたでしょう。もうしばらく辛抱して下せぇ…。そうだ、お茶菓子でもお持ちしましょう。いえいえ、お題は頂きませんよ?私からの気持ですからねェ…。少々お待ちを…。

 

 

 

七.ソロシナリオに必要なもの(非物質的に)

 はい、それでは一服致しましょうか。………それでは一息着いたところでお話の続きを。今度は非物質的にソロ・アドヴェンチャーに必要なものですよォ…。

 

 まずは、ソロ・アドヴェンチャーをやろうという気持ちですかねェ。これがないとお話になりません。次に、何事にもチャレンジする勇気。今の二つは必要でしょうね。あと、シナリオ達成を目指すために必要なものは、先ほどの項目に更に「適切な判断を下す判断力」「罠を見抜く観察力」「いざという時の第六感」「判定に成功する為の(ダイ)(ス)(目)の良さ」が必要とされるでしょうねェ…。へへへ…。

 

 

 

 

 

 長話に付き合って頂いて、有難う御座いましたァ。そろそろ私もお暇したいと思いますァ…。…え?何処へ行くのかって?そうですねェ…。いや、なんというかもう一度、挑んでみようと思いましてねェ…。単独はきついですけども…今度こそ突破して見せますよォ!!貴方もどうです?ソロ・アドヴェンチャー…魅力を感じませんか?やろうと思えば貴方にだって何時でも出来るんですよ…。それでは私はそろそろ行ってきますねェ…。あ、お客さん、お題は結構ですよォ?お話を聞いて下さったお礼でさァ…。

 

(姿がフェードアウトして行きながら)ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ……………………。

 

誰か:「ソロ・アドヴェンチャー、か…。面白ェじゃねえか!」

 

 

          終

最終更新:2008年07月15日 10:18
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