確率に生き、確実に死す

確率に生き、確実に死す
 
この授業では特に名指してTRPGを教えるわけでは無い。むしろ、TRPGの基礎とは言わないが少なくともその一端を担っている「確率」について、ゆっくり考えてみることにしたい。諸君のやる気があれば、より、この「確率」という考え方を深く理解し、D&Dなどの%ダイスの計算のしやすさをありがたく思うだろう。
 それでは、諸君には頑張ってもらいたい。


計算の単純化のため、「仮想システム」を使わせてもらう。
ガロット

基本命中率(Hit)…
50
基本回避率(Avoid)…00
基本打撃値(Beat)…10
基本防御値(Defence)…00
生命点(Life)…30

 
判定…目標値に対し、D100で下方ロール
命中目標値…自分Hit-敵のAvoid
与ダメージ…自分Beat-敵Defence
 
1.
例えば、ガロットが、自分と全く同じ能力の人間と戦うとしよう。その時、ガロットは3通りの戦闘方法があるとする。
1.よく狙う…「Hit+20%」
2.大振り…「Beat+5」
3.逃げ腰…「Avoid+20%」
4.慎重…「Defence+5」
5.機敏…「1回振りなおし可能」
6.暴走…「Hit-20%・二回攻撃」
 
なお、面倒なので1・2・5・6では相手は攻撃しない、3・4では自分は攻撃しないとする。
 
 『命中重視は堅実?』
 取り合えずだ。まず、相手に三回攻撃が当たったら勝ちだ。というわけで、三回殴ったときに勝てる確率を考える。
 
表を作った。数値は上2桁の概数である。まぁ正確な値は面倒なので「フーン」ぐらいに思ってくれても構わないが、この表に基づいて考えていく。
 
元の命中率  一回当たる   二回当たる  三回当たる   2回以上 
 10%     24%    2.7%   0.1%   2.8%  
 20%     38%     10%   0.8%    11%  
 30%     44%     19%   2.7%    22%  
 40%     43%     29%   6.4%              35%  
 50%   37.5%   37.5%  12.5%    50%  
 60%     29%     43%    22%    65%  
 70%     19%     44%    34%    78%  
 80%     10%     38%    51%    89% 
 90%    2.7%     24%    73%    97%  
 
とまぁ、なっているわけだ。
例えば、3回攻撃するとして、命中が50のままでは倒せる確率は12.5%だが、70なら34%である。
 もっと言えば、倒す、或いは後一撃まで追い詰められる状況になる確率は、50%から70%に上がっている。基本的に、70と言うのは二連続で成功する確率がほぼ五分五分(0.7×0.70.49)であり、万全とはいえないまでも戦略上の足場となれる数字である。つまり、より安定した戦いが出来る。
 
 ここで、「良く狙う」と「大振り」を比較してみよう。

 

良く狙う   大振り
命中         70%   50%
威力         10点   15点
 
必要命中回数     3回    2回
「敵HP÷(敵防御点-自分打撃点)」
 
三回(以下)の攻撃
で勝てる確率    34%   50%

 
お気づきだろうか。実は、命中率ではなく威力が高いほうが、堅実なこともあるのだ。
 
但し、この威力の上昇が+4であった場合、必要命中回数が下がらないために、「良く狙う」の方が効率的である。これが、一般的な決闘の場合の考え方だ。
 
つまり本当に重要なのは、いかに「一度に出来る攻撃回数が多いか/当てなきゃいけない回数が少ないか」である。これは、『フルボッコの定理』とよばれ、理論上ファイターは何人いても心強い、と言うことになるのだ。
 
 ここで軽く考察していくと、「良く狙う」で三回、「大振り」で二回で倒せる敵の場合なら、常に「大振り」をするのが一番効率が良いことになる。もし「良く狙う」の命中修正が+30%であり、かつデフォルトの命中率が40を下回っている場合、逆に「良く狙う」がベターとなる。この時、こちらの命中率が悪ければ悪いほどその恩恵は大きい。
また、シナリオの条件などで、「2ターン以内に倒せば賞金GET」等という条件があれば、「良く狙う」では確実に不可能だが「大振り」ではそのチャンスがある。
 
 
『ガードが固い?』
「逃げ腰」と「慎重」については、相手の側から考える。余談だが、確率計算などでも、よく余事象から考えることもあるように、考えやすい考え方で考えるのが良い。例えば『一回以上6が出る確率』といったら、一度も6が出ない確率を求めてから、それを1(もしくは100%)から引けばいいのだ。
 
 相手のHitが50。ここで、「逃げ腰」を選択すると、相手の命中率は30%になる。30%で3連続で当たる確率は上の表より2.7%。通常状態が12.5%だったのに比べ、飛躍的に下がっているといえよう。
 ここで、「慎重」を考える。慎重の場合、最悪の状況では、12.5%で残りHPが15である。そう、2.7%の確率で既に死んでいる「逃げ腰」と違い、三回で死ぬ確率はゼロなのだ!
 
 これでは比較にならないので、頑張って6回の時点を考える。
「逃げ腰」 死亡:25.5% 
「慎重」  死亡:19%
 
 堅実に生き残るにはやはり「慎重」がよさそうだ。
 なにより敵の「必要命中回数」が増加しているのが要因である。
 
 考察を入れる。
 例えば、「大振り」を使用された場合。三回の時点で「逃げ腰」の死亡は22%、「慎重」は12.5%である。ここでもし「逃げ腰」が回避+30%だった場合、「逃げ腰」のほうが若干生存率が高くなる。また、相手の打撃値を20~とすると、敵の必要命中回数が減り、「逃げ腰」の方が生存率が圧倒的に高くなる。最近のシステムではこのシステムにおける打撃値20~に相当する敵の攻撃は珍しくない。
 
 つまり、相手の「必要命中回数」が低ければ低いほど、「逃げ腰」は有利・安定となる。
ただし、安定するのは回避重視にして+20~30%の幅がもらえている時に限る。
 
 
『振りなおし?』
 振りなおしの計算方法は簡単だ。
 差分値などと言う概念をぶっ飛ばせば、振りなおしと言うのはそもそも失敗した時にやるものだと考えれば、要は二回やって共に外れる確率を求め、それを全体から差し引けばよい。
 例えば元々が50%なら、1-(0.5×0.5)=0.75=75%。つまり、振りなおし可能なだけで成功率は75%にもなるのである。75%は十分、信頼に足る数字である。また、30%であれば1-(0.7×0.7)=0.5151%で、50%を超えてしまうのだ。
 但し、元々が高い場合は、効果の程は低い。そもそも、8090と、4050ではずいぶん違うものだ。ここらへんの感覚を養いたいなら、『ファイアーエムブレム』シリーズなどのタクティクス(もしくはそれっぽい)をやるとわかる。
 目安として、75=安泰、~70=まあ大丈夫、~60=ちょっと不安、~50=当てに出来ない、50未満=賭け。これは個人差があるので、まぁ参考程度で。
 
 一応出してみると、3回で倒せる確率は42%。
 
 
『連続攻撃?』
計算が面倒だ…。とりあえず結果をば。
 
敵を三回(事実上6回)で倒せる確率 『25.5%』
比較対象:「通常時」…『12.5%』
     「大振り」…『50%』
    「良く狙う」…『34%』
      「身軽」…『42%』
ここで不思議に思った方もいるだろう。当たり前だ。何故ならわざと、この攻撃方法だけ明らかなデメリットをつけたからだ。ここでデメリット、つまり命中値への修正を無視して計算してみる。すると『63%』となり、最大確率となる。
ちなみに何故つけたかといえば、多くのRPGにおいてそういう扱いを受けているからである。
 
 必要命中回数が3回の場合、三回中三回当てる必要があり、2回の場合は三回中2回でよい。そして、暴走の場合は6回中3回でよいのだ。デメリット無しでは、今回唯一の期待値越えなのである。
 
 考察は特に要らない気もするが、命中もしくはダメージが下がった場合、他のオプションよりも期待できるダメージの下がり幅が大きく、格上の相手には通用しにくい。TRPGにおいては格下なんてほとんどでないため、思ったより活躍しにくい行動である。
 また、『OO回復活できる』系の、総ダメージ量とボスのHPの関連の薄いゲームでは非常に意義があるし、シナリオに時間制限がある場合でも「大振り」と同じように短期勝利の可能性が残る。
 
 
つづきはまたいつか
最終更新:2009年05月06日 23:05
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