“ふにゃふにゃPC,フリーダムPL”
(081022脱稿。部誌に掲載されてません)
はじめに。
昔、マヨキン型とテラガン型にTRPGを分けたつもりでしたが、まぁ、その時点では「りゅうたま」の分析を怠っていました。また、SW1stの実際の遊ばれ方からも遠く離れたことを書いていたような気もします。
つまりは、第3の道を分析します。まぁ引退後なので次の章からは適当にやることとしましょう。
というわけで、表題のとおり、「まじめに。」お送りいたしました。
そのイチ。ダイソンって何?
TRPGを戦略ゲームと捉え、最小のコストで最大限の利益を叩き出す遊び方と、「物語」と捉えて、キャラクターの立ち位置などの表現や、心情の葛藤などを重視する遊び方がある、とは既に言いました。
第三の道がある、ってのは、それ以外にも遊び方があるよ、ってことです。すでにネタフリは終わっているはずなので「りゅうたま」でも見ましょう。
「りゅうたま」は、別に性格を固定しません。そして、SW1stのごとく、感情そのものを特に設定することはありませんでした。たぶん。かといって、別にカツカツ戦うシステムではありません。戦闘オプションが少ないとは言いませんが、ルールブック曰く「鎧より登山靴の方が大事」だそうで、赤竜を選ばない限りはそんなに戦闘オリャ、って感じにもなりません。
で、じゃあ何をするんだ、と。それこそ、いわゆるアイデア卓。
いや、アイデア卓といっても色々あると思うのですが、ここでは、つまりこういうことです。
「PCにとある“改善すべき状況”をあたえ、それを乗り越えさせる。その際、手段はGM側では一切固定しない。」
なにをいってるのかわからないと思うので、具体的に言えば、
「君達はこの町から一刻も早く逃げなければならない。しかし門は閉ざされ、君達は城壁に囲まれたこの町に閉じ込められてしまった。
さぁ、どうする?」
ってやつです。で、GM側としては、特に「超有効な手段」とか、「正解」を用意しないで、やる。そういうことです。
繰り返しになりますが、それこそが、表題「第三って何?」に対する答え、なわけですね。
そのニ。そうじき、出来なくね?
これをみて、思った人もいるはずです。
「ただのシティシナリオじゃん?」
これに対する返答は三種類。
1つは、その人がやっているシティは大成功か、停滞による大失敗が多い場合。多分、俺が言わんとしていることを実行している人であるから、「はぁそうですね。」となります。いわゆる箱庭野郎。
1つは、まぁ前者と同じパターンではありますが、実は「超有効な手段」(ジョニーに聞き込めばOK、等)を用意していることを自覚してない人。
1つは、SW(1st)のサポート2なんかに載ってるようなシナリオを作る人。時系列を作って、OOと××を手に入れたらイベントA発生、シーフギルドに聞いたら云々などと綿密に情報の出所やイベント発生条件と経過などを決めてしまう人。GM・PLの初心者に優しいのは確かですが、上記で言いたいこととはちがいます。
この遊び方をするにはまず、こういった条件があります。
・「GM,何をすればいいの?」とPLは聞いてはいけません。
GMが出すのは、「目標」(宝を取ってこい、等)であって「手段」(『忍び込めばいいんだよ』)ではないのである。これは、どういう手段が取れるのかの具体例をあまり知らない初心者のPLにとって非常に優しくない。(まぁ、初卓でダンジョンに火をつける人もいるので個人差ではあるが。)
もしPLに言われてしまったら、TandTソロシナリオ「傭兵剣士」のとあるパラグラフを想像しながら、こういうこと。
「君は、その魔術師の名を大声で叫んでみてもいいし、秘密の入り口を探してもいい。あるいは、そこにある大きな鐘を鳴らしてもいい。あるいはもっと違う方法があれば、それを試すことも出来る。」
(「魔術師~鳴らしても」あたりは適当に変化させてください)
そして、GMに強引に「そうなの?」とか確認を取る奴にはこういってやるのだ。
「古の賢者、マーリンはいった。
『そうかもしれぬ、そうでないかもしれぬ』」
・GM権限で却下、を極力0に近づけなければいけません
正解を用意していない、のですから、逆に言えばどんな手段で解かれても文句を言ってはいけません。だから、ジョニーと和解して協力を取り付けようと、ジョニーを信頼せず単独で上手に立ち回ろうと、ジョニーを足止めしようと、文句を言うことはできません。同様に、脱出なら、強行突破されても、城壁を破壊されても、変装で抜け出ても文句はいえません。
「事の詳細というものは基本、裏でごっそり捨てられるもの」
このくらいでいいでしょうかね。
ちなみに、此処でいう「GM権限の却下」に当たらないものとして、『時間・場所的な制約による却下』『抽象的すぎるものへの却下』『完全にありえない、と判断されるものの却下』とか。まぁつまり説得力の無いもの、というか。
ここらへんの判断基準は、経験から持ってくるのが妥当です。
・GMは主導権をPLに委託しなくてはいけません。
注意すべきはPLであってPCではないところです。つまり、「強制イベントで最後は全て同じ終わり方」「ある条件を満たさないとシナリオが進行しない」などはやってはいけません。このあたり、コンピュータRPGに慣れると凄い勢いであるのですが、今回は敢えてそれとは距離をとります。
・状況説明をその場で出来るようにしなければなりません
別に限った話でもないですが、PLに状況説明をする必要があります。PLが状況について何か聞いた時に、答えられるようにしてください。何か知ってる建物をイメージするといいです。「麻布の図書館みたいな感じ」とかならそのまま言ってもOKです。
あと、完全無欠な家とか、窓がなくドアが一箇所とかいう想像力を削る建物ではなく、実際に存在する生活感あふれる多少穴だらけな感じの建物がいいと思います。
・GMは超柔軟に対応しなくてはなりません
状況を作り出し、「さぁどうする?」と投げかけてみれば、それにPLが自由に答える。そしてそれを却下しないとなれば、つまりは「そうしたらどうなるか」というのが重要になるわけです。実は、ここは異常に複雑と言うか、むしろ別コラムになるのでここでは放置。
逆に言えば、例えばダンジョンに入らなくても宝物が手に入ればよかったりするのでPLは考えガイがあります。伝説の透視+転移なんてまさにそれ。
これらのことを踏まえれば、これがどういう遊び方が分かるはずです。いわば『箱庭』。というよりは、『遊園地』です。もしくは『ぶらり旅行』。いやいや、『散歩』だ。…まぁ、そんなのなんだっていいですね。
要は、『自由度』のみに立脚した遊び方、です。キャラクターの性格にそった典型な動きにも、ゲームの定石にのっとった典型的な動きにも、GMのシナリオに沿った動きにも縛られず、『PLが動きたいように』(←ここ超重要)動けるようなシナリオを指すわけです。
…げろげろ。げーこげーこ。
で、表題『正直、出来なくね?』に繋がるわけです。
そのサン。30万Gの圧力で、シナリオと卓を分離。
シナリオを細かく作らないのです。ここらへん、ちょいとりゅうたまリプレイシリーズが参考になるかな、と思います。結構違うけど、あれ、卓の最初に町設定をみんなで作るシステムのため、冷静に考えると事前シナリオが非常に作りづらいという仕様。その分町の設定が出来るため、力さえあればPCの自由行動に対する反応が簡単に出せます。
「ああ、この町の名物は『ツバメグライダー』?頑固な職人を重要NPCにしようかな。」みたいに。
あと、たまに勘違いする人がいるんですが、特定の行動以外を取った時「しかし何も起こらなかった」と返してそのターンを終えるのは実質的に却下しているようなモンですのでここでは考えません。
つまり、ネタを逐一拾っていこうと。PCも逐一拾っていこうと。その後の展開はその後で考えようと。要は、アドリブ卓です。
シナリオの難易度も、卓の進行具合も、GMのさじ加減のみが決めます。ここのところ、微妙な人望と独裁者ばりの気概、そしてある程度のゲームバランスをも考えて、卓経験を総動員して全力でPCを拾います。
(例外として、PCが無謀に突っ込んだ時には、「まぁ、危ないかな。それでもいい?」と確認をとって、了承されたら成功確率50パーかそれ以下ぐらいの判定をさせて、それで死なせていいです。)
ここでいくつか我流テクニックを教えます。これは俺の経験や気分、勘、その場のノリから出たものなので何時でも何処でも誰とでも使えるわけではありませんが、まぁ別にそんなのどうでもいいですよね。
・システム
レトロなものをお勧めします。いや、雰囲気が、の話。クトゥルフとかSW1stとか。基本的に行動制限があるゲーム全般でお勧めしません。またテラガン系、まよキン系も全てやめたほうがいいです。これらはフリーダムに動くと非常にシステムが機能しなかったり使わないルールが出来てルール運用に歪みが発生したりします。
NOVAは…どうなんだろ。キャラ作で極端キャラを作ると「可能なこと」が確定するので、あまり向いていないともいえますが、逆に自由に動けるからこそ光るキャラクターもいたりして。
・情報収集について。
長年の経験から、此処では「絶対,情報収集専用の場面を作らない」をお勧めしておきます。
というのも、ダレます。
3人にしか話を聞けない、って言われてもシーフギルドと酒場の親父以外に充ても無いでしょうし。
むしろ追い詰められた状況かなんかで唐突に「情報収集判定お願いします」っていって成功したら「君は事前情報でこの分かれ道の結末を知っている!」、というレベルでいいと。
というのも、自由に動ける状態に置いて、情報収集は大体惰性や「やんないと話がすすまないんでしょどうせ」的な感覚で選ばれることが多い気がする、というのが実感だからです。
本当の情報収集は、尾行・変装・忍び足・工作・潜伏。でも、これって技能判定で成功してもらわないとすすまない。そんなのは嫌です。
・「スカ」について
スカ、ってありますよね。でも、あんまり良くないです。例えば、右手と左手をグーにして前に出されて、「どーっちだ?」と聞かれて、右!といったらゴミを投げつけられた、という感じ。いくら「オマエの目の前で握ったんだぜ」といわれようが、見てないものは見てない。そう思うPL,なかなか俺と意見が合います。
つまり、何があるのか決まってないとか、特に何が出るか考えてない時、ランダムイベントを起こしましょう。とりあえず、変な爺さん(正体はその後考える)を筆頭に謎のNPCを出す、とか。NPCも男性・女性・見かけ・特異なところ(変な杖持ってる・目が赤い、など)、口調。そして、立場。立場に関してはとりあえず中立に設定しておいて、後から変えたりしましょう。NPCは行動原理、というか当面の指針(とりあえず追い返したい、とりあえず町に行きたいなど)に沿って動くようにしているほうがいいでしょう。決まらなかったら、とりあえず立ち去っていくのもいいでしょう。
肝心なのは、この遊びかたに限れば「GMがほうっておけば停滞は停滞のまま」というところです。
・ゲームバランス
この遊び方の一番のネックです。正直、「システムに行動を縛られたくない」という発想の遊び方なので、極論を言えばシステムなしでもある程度判断基準を決めておけば普通にできます。
いわゆるごっこ遊びに近くなるという指摘もあるでしょうが、逆に言えばTRPGがボードゲームじゃない分、ゲームより「ごっこ遊び」に近い、と開き直ることだってできます。
つまりは、完全なGMの感覚だよりってことです。ただ、厳しすぎると結局自由ではなくなってくるので、ヤハリゆるくはなります。
グダグダ回避のためここで終わります。重要なのは常に卓中はPCを拾うことと、思いつきでもいいからランダムイベントを起こし、その場で整合性のアル展開を考えること。これは結構頭を使うので最近の俺は楽しいです。また、PCがどう動くかも興味深く観察してます。
シナリオをチャント作ると、PCを拾う整合性が難しくなるため、お勧めしません。表題の「シナリオと卓を分離」はこれを指します。まぁ、どう動くかは事前に考えとくこともありますけど。
そのヨン。ダイソン。自由度の変わらない、ただ1つの物語。
「もし、ここをこうやってみたら、どうなるんだろう」
上の発言は、例えばある小説を読んで、ふと考えたことだとします。それを試せるのが、TRPGなのでしょう。だからこそ、変化の多様性が歌われていたに違いありません。
しかし、ストーリーを重視する方向にすすんだ結果、神から逃れることは難しくなりました。
あるいは、リアリティを重視する方向にすすんだ結果、物理法則から逃れることは難しくなりました。「ああ、なるほど。こういう状況じゃぁこの行動は最善策だな。」そういうやつです。まぁそれはそれでシュミレーションゲームとしては一級品です。
でも、うん、ちょっとぐらいやってみたいよね?
拘束されずに勝手気ままに動いているんだけど、それによって周りが変化していく物語。日常では無い、ちょっとした、通り過ぎた分岐点への立ち返り。新しい自分の発見。
物語ってのは、後から振り返ってまとめるもんです。
誰しも、物語としてまとめるように生きてる訳じゃ無いんです。
だからこそ、表題、「第三(の道)、自由度の変わらない、1つだけの物語」。
同じ『ゴブリンの城』シナリオ素材(MAP、城内施設、導入)でも、卓の時の道具の違いや、PLの性格、そしてランダムイベントによって「げんなりの場合」と「石油の場合」で大幅に違う流れになるわけです。
ま、そういうことです。
最後に。
本原稿は掃除機とは何の関係もありません。
本当にありがとうございました。
エンドフェイズ
サイクロン!
これで「最後に。」も拾いました。
「サイクロン」とは当然、サイクロン掃除機を指します。つまり最後にサイクロン掃除機に吸われた、と解釈してください。
最終更新:2008年10月22日 23:46