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生徒指導が極めて困難な事例の研究


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※本論は、論者の主観による部分が大きく、「社会的弱者に対する偏見を徒に助長している」等の批判があります。多少穿った見方をした方が賢明かもしれません。









引用元


樋口 康彦
生徒指導が極めて困難な事例の研究(富山国際大学・紀要2006年3月号)
http://www.tuins.ac.jp/jm/library/kiyou/2005kokusai-PDF/higuchi3_.pdf

目的

担当した学生が、周囲の社会環境に対し不適応をきたしており完全に孤立してしまっているが、そのことをまるで自覚しておらず改善する様子を見せないとする。懸命に、現状に気づかせようとするがその学生の心は固く閉ざされており、意見が入り込む余地はない。そのような時、教師は、どのように指導していけばよいのであろうか。

そのことを考える前に、そもそも彼らは、知能に問題があるわけではないのになぜ社会的環境に適応できないのであろうか。それには大きく分けてふたつの理由が挙げられる。まずひとつ目として、対人関係をうまくこなすための技術である社会的スキルをそれまでの人生で十分に学んでこなかったことが考えられる。そしてふたつ目としては、人生のどこかの時期で不適切な対人反応を身につけてしまったことが考えられる。そこで、不適切な対人反応を消去し、社会的スキルを学ばせて、対人反応を変えていくように指導していかなければならないということになる。しかし、そのようなことが果たして可能なのであろうか。

一般に、社会的スキルは、性格や知能のように変わりにくいものではなく、裁縫の技術、パソコンの操作技術などと同様,訓練によって容易に改善することができると考えられている。そして実際に改善されることは日常よく見られる。例えば、接客関係の会社の社員研修会で愛想の悪い人を愛想のよい人に変えるといったことはその好例であろう。

人は幼年期・児童期においては「自分」が全てである。やがて成長するにつれて,「自分が全ての世界」に「社会」が入り込んでくる。予防接種を受けた人だけが感染を免れるように、自分の中に社会を取り込んだ人だけが社会不適応者にならずにすむ。心の中に社会を持ちこみ,その内なる声に従って行動することが大切である。人間関係は共通のルールを共有して初めて成立する。社会的スキルを高め、社会から受け入れられなくてはならない。

本論においては社会不適応者を、社会的スキルが低いため社会生活を営むのが著しく困難な人、または人と交わる能力が欠けていて自分の世界でしか生きていくことが困難である人、と定義し、その事例研究を行う。不適応な学生をこれまで何人か担当したが、特にこの事例を取り上げるのは、印象深い事例であったからであり、また典型的な「指導が困難な事例」であったからである。従って、その中に今後の参考になるいくつかのヒントがあると考えたのである。どんな学校にも一定の割合で社会不適応な学生は存在する。不適応な学生に対応することは教師の使命であり、その時の一助とするためにこの研究を行う。

方法


調査時期

1998年3月- 2000年5月。接触期間は2年強である。

場所

関西地方に所在する私立A 大学。

被験者

A 大学の文系学部に在籍する男子学生。本論ではプライバシー保護のためK と記す。この間K は大学3年~4年(20~22 歳)であった。本論の調査者(以後H とする)と出会った時の年齢は20 歳である。

調査方法

調査期間におけるK の言動を分析する。

結果と考察


Kの家族構成と生育歴

  • 近畿地方の某県で生まれる。K が生まれた直後に両親が離婚し、自営業を営む母親と二人の家庭で育つ。
  • 私立高校から私立大学へと進学する。学力は下位で得意科目は特にない。高校時代はノイローゼにより精神病院への通院歴がある。
  • 身長は175cmで、やや痩せている。
  • 知能は正常である。Cattel-CF テストにおいてはI Q =100 程度である。
  • クラブ活動はしておらず、好きなテレビ番組、好きな音楽などは特にない。
  • 友人はほとんどおらず、毎年年賀状は1 枚も出さない。また女性との交際歴はない。

(2 )以下にK の言動のうち主だったものと、H の感じたこと、および行った指導内容について記述する。

1998年3月(出会い)


(K の言動)
H のゼミへの所属を願い出るため研究室を訪問したK と初めて会う。K は暗く、疲れた表情をしており、一見弱々しい印象を受けた。いきなり「先生はどこの大学を出ているんですか」と質問した。その後、初対面であるにもかかわらず、自分が今までの人生でどれだけひどい目にあってきたかについて熱弁し始めた。話の区切りでは「こんな話、していいものか… … 」と言うのをためらっている素振りをするが実際は言いたくて我慢できないことが見て取れた。全く友人がいないこと,虐められていたことなど,『言わなくてもいいこと,言うと自分が不利になるようなこと』を自分から進んで言ってしまう。そして、もっとレベルが高い他の大学への編入を希望しており、その勉強を続けていると語った。ちなみに2年生の時も編入試験を受験したが、失敗したとのことである。

(H の所感)
苦労のほとんどはK の非社会性(非社交性)が原因だと思われる。自分の問題点に気づかず、周囲の人が冷たいとしか考えていない。楽しい思い出が少ない上、自分が悪いとは全く考えていないため被害妄想的な人生観を持っている。また、さほど親しくない人に大事なことをいきなりしゃべってしまうという点で自己開示が著しく不適切である。社会不適応者は小中高や社会人時代は周囲から虐めの対象にされやすいが、大学はいわば虐めの空白地帯なので何とかやっていけているのだろうと思われる。

(H の行った指導)
この時点では特に何も行っていない。

1998年4月~11月


(K の言動)
H が場を和ませようとして、簡単に答えられてかつ話しが膨らみそうな話題を選び話しかけるが、何を聞いても黙りこくって考えこむか、支離滅裂(聞いていないことを答えるなど)なことを答えるか、話の腰を折るかで全くコミュニケーションが成立しない。会話はいつも以下のような感じである。「音楽は何が好きなのかな? 」「僕、音楽はあまり聴かないんで」「テレビは何が好き? 」「僕はあまりテレビとか観ないんで」質問に対し的確に答えないことは結局、付き合いの最後まで続いた。また、話が回りくどいという特徴が見られた。それからK は携帯電話を所有していないことがわかった。母親以外の人から電話がかかってくることはないから、持つ必要がないとのことである。また今までの人生で、友人と食事に行ったり飲み会などをしたことが一度もないと言い、H を驚かせた。結局他大学への編入には失敗し,大学院進学に進路変更する。H には,不合格だったとは言わないで,「受験先の大学が合否の結果を知らせてこない」と報告した。

(H の所感)
コミュニケーション能力が欠如しており、言葉のキャッチボールができない。話しかけてもまともに受け答えできないので、自然と誰からも話しかけられなくなり、孤独を余儀なくされていると思われる。

(H の行った指導)
話しかけてきた人にはきちんと返答しないと失礼だという意識を植え付ける。話しかけてくる人は必ずしも話がしたくて話しかけてくるわけではない、また知り合いとすれ違った時、天気の話をするのは天気の話をしたいからではない、全ては人間関係を円滑にするために行うのだということを教える。また、自分が他者に与える印象をうまく管理するように指導する。

1998年12月~1999年1月


(K の言動)
わからないことがあるので教えてほしいと言って、しきりにH の研究室へ訪ねて来る。しかし、質問はどれも本やインターネットで調べれば簡単にわかることばかりである。そして質問が終わると自分のお気に入りの話をH に聞かせる。「遊びたい気持ちを我慢してこんなに大学院受験のための勉強を頑張っている」「高校時代全然頑張らず,推薦入試でこんな大学に入学してしまったが,とにかく今度は悔いを残さないように頑張りたい」という話がお気に入りであり、いつもその話の繰り返しになる。また頻繁に自分の大学をレベルが低いとばかにする。それから、さほど大したことではないことに「自分は苦労した」「大変だった」と言う。例えば中学・高校時代、親に受験のことで口うるさく言われたことや、大学受験のため希望する大学に電話で問い合わせたこと,願書を買いに遠方の書店まで出かけたこと、模擬試験を受けたこと、などがK にとってはとてつもない苦労であるらしかった。また、距離が近づくとK はH の体にしきりと触ってくる(ボディタッチ)。

(H の所感)
同年代の友人ができない。触れ合いを実感できる人間関係とは無縁の学生生活を送っていると思われる。学校で、友人たちとの触れ合いを求めるのではなく、教師との触れ合いを主に求めるのは学校不適応学生の特徴である。また、つまらないことで大変だということから、これまで苦労らしい苦労をしたことがないのだろうと推測される。それから、心理的にも物理的にも他者と適切な距離を取ることができない。

(H の行った指導)
自分の所属している大学には愛着を持たなければならないこと、悪く言うのは自分も傷つけることになるのだということを指導した。クラブ活動や、大学祭の実行委員などを行い、友人を作る機会を設けてはどうかとアドバイスした。ボディタッチに関しては、不必要に触らないようにと言うと、K を拒絶しているように受け取られてしまい関係が悪くなると考え、敢えて何も指導しなかった。

1999年2月~6月


(K の言動)
H に対し礼を欠いた発言を連発する。例えば,「先生は男子学生より女子学生としゃべっている時の方が楽しそうですね」、「友だちが、先生の授業のことを下らないと言っていました。あんな授業受けても時間の無駄だと言っていました」といった具合である。またゼミを無断で欠席し,後日その理由を尋ねると「なんとなく行きたくなかった」などと答える。暴言の一方で,先生と飲みに行きたいとか,一緒に食事に行きたい,などと言う。また、表情コントロールが不適切である。例えば課題を出されると遠慮なしに嫌な表情を浮かべる。ある時、たまたま他の学生としゃべっているとK のことが話題に出た。ほとんどの者は一度も話したことがないにもかかわらず全員がK のことを知っており、また揃ってネガティブな印象を抱いていた。このことから外見で損をしてしまっていることがうかがえる。

(H の所感)
暴言に辟易した。しかしK には怒らせているという自覚はないと思われる。子どもと一緒で言っていいことと悪いことの区別ができないのだろう。このような言動のベースにあるのは自分の母親に甘えるような感覚で他人に甘える感覚である。「どんなことをしても他者は自分を見捨てることはなく,いつも自分の味方になって,助けてくれる」と考えているのではないだろうか。またK は相手の反応の読解力も低い。相手が内心嫌だと思いながら社交辞令として愛想よく対応をしてくれているだけなのに、自分といることを楽しんでくれていると勘違いしている。それから表情コントロールは成熟の指標である。それが適切にできないことから社会的成熟がかなり遅れていると思われる。

(H の行った指導)
若者らしいさわやかな服装を心がけるように指導する。Table1 に示される社会的スキルの習得を進める。この中で特にK にとって大切なことは外見を明るいイメージに整えることと、他者との距離の取り方を覚えることである。

Table1 主な社会的スキル
  • 適切な服装。身だしなみ。
  • 礼儀作法、挨拶、お礼、敬語、社交辞令。
  • 適切な会話の運び方。相手に関心を示す。相手を認め,褒める。相手に警戒心を起こさせないよう、気楽な雰囲気を作る。不快感を起こさせない。気まずい沈黙を作らない。
  • 適切な情報の取り方、伝え方。質問をする。
  • 印象の管理。責任感がある,誠実,優秀といったプラスの印象を貯金する。無責任,不誠実、精神的に不安定、無能などマイナスの印象を持たれないよう気をつける。
  • 適切な仕草をする。人の仕草の読み取り方(分析力)。← 非言語コミュニケーション
  • 話の聴き方。人の話をうまく聞く。相手の話を中断しない。理解していることを伝える。
  • 適切な自己表現(自分に不利なことは言わない。自慢をしない… … )。
  • 社交辞令の裏にある相手の本心を見抜く。
  • 仲間に入り方。
  • 適切な誘い方。適切な断わり方。
  • 適切な振るまい。自分をモニタリングする能力。無意識のうちに不適切な行動を取っていないか確かめる(悪気はなくても不適切な言動で不快感を与えていないか)。場の空気を読む。
  • 問題処理の仕方。うまく助けたり助けを求める。
  • 社会ルールについての知識を持ち、守る。
  • 自分の感情を認識し、コントロールする。行動、表情をコントロールする。
  • 求められている役割を知る(役割認知): 信用の貯金をする。
  • 自分を動機付ける。
  • 他者と適切な距離を取る。

1999年7月~11月


(K の言動)
卒論調査用のアンケート用紙を,「H の許可を得ている」と嘘をつき,事務部のコピー機を使って勝手に印刷する。またH には、授業時間を利用してアンケートを取らせてくれと執拗に迫る。すぐに補講期間になると,テストの時に、テスト用紙と一緒に自分の作ったアンケートを配布してデータを取らせてくれと言う。やがて夏休みになると、昼夜を問わずH の携帯電話に頻繁に電話をしてくるようになった。そして挨拶なしでいきなり用件から話を始める。朝起きると,携帯電話の着信履歴(20 件まで記録可能)が全てK の電話番号で埋め尽くされていたこともある。ちなみにその時かけてきた時間帯は夜中から明け方にかけてである。また,これまで誰からももらったことがないほど長文の電子メールを送ってくる。H が一通も返事を出していないにもかかわらず、一方的かつ矢継ぎ早に一日に最高56 通もの電子メールを送ってきたこともある。内容は主にその時々に感じたK の思考の断片である。また、割と親しくしているある教員の自宅に深夜2 時に電話をしたらしい。大学院の入試に失敗する。しかしH には,「受験先の大学院が合否の結果を知らせてこない」と報告する。この後公務員になることへ進路変更する。

(H の所感)
通常、電話の時間・回数は相手との距離に合わせて調節するものだがそれがまるでできていない。対等か非対等か、非公式か公式かなどの次元に従って、人との関係を一瞬で判断し、言葉遣い、態度などを適切に決めることが大切である。この他者との距離の取り方を社会的スキルのない人は読み違えるのだろう。

(H の行った指導)
前の期間と同様に、社会的スキルの習得に努めさせる。

1999年12月~2000年1月


(K の言動)
K がH の自宅前で待ち伏せするようになる。ちなみに自宅の住所は年賀状を書くから教えてほしいというので教えたものでる。決まって、物陰に潜んでいて、そこから不意に現れる。そしてH の目をじっと見詰めて,「自分がわからなくなった」などと言って急に泣き出す。大学院を再度受験するが不合格となる。しかし、H には「受験先の大学院が合否結果を知らせてきてくれない」と報告する。

(H の所感)
K にはストーカー的要素がある。男同士で恋愛感情が絡んでなくても、待ち伏せされたりしつこく付きまとわれると、かなり不快であった。この時期、K の執拗な付きまとい行為にややノイローゼぎみになった。自宅に近づくだけでまた待ち伏せされているのではないかと不安が増し、鼓動が高くなり苦しくなることも度々であった。

(H の行った指導)
自宅ではなく、必要なことは学校で言うように、また他者のプライバシーに配慮するようにと指導する。しかし実際のところは指導するというより、K を避けるので精一杯である。

2000年2月


(K の言動)
卒業論文を提出する。文法に間違いが多く、日本語として意味の通っている文章の方が少なかった。また,日本語に存在しない奇妙な言葉を頻繁に使用していた。それは漢字を任意に2 ~4 語つなぎ合わせてオリジナルの日本語を作っているのだった。論旨は支離滅裂で読み手のことをまるで考えておらず、全てが独り善がりで意味不明であった。この時期,公務員試験の模擬試験を受験したがH が結果を尋ねると,「模擬試験の業者が結果を知らせてこない」と報告した。

(H の所感)
彼が書いた卒論には、内面の混乱ぶりが現れており、彼の生き方そのものを象徴していた。(H の行った指導)K を避けるのに精一杯である。

2000年3月~5月


(K の言動)
最後に見たのは大学の卒業式直後でK は図書館の中で険しい顔で公務員試験の勉強をしていた。H はその孤独な姿を見て胸が締め付けられる思いがした。H はK に声をかけず、その場から立ち去った。大学を卒業し、公務員試験受験のための専門学校に入学した後も、K はH に対し頻繁に電話をしてきた。最後の言葉は「友だちができないんです。もう学校を辞めたい」という社会不適応者を象徴するものであった。

(H の所感)
大学院や公務員を執拗に目指すのは偶然ではないと思われる。自分には、仕事が厳しい民間企業で働くのは無理だと薄々気づいているのではないだろうか。それから、母親の対応には疑問が多い。卒業時22 歳であったが、母親は25 歳くらいまで公務員試験の勉強を続けていいと言っているとのことであった。ずいぶんと甘く、また認識が低いと言わざるを得ない。K の実績・実力から言って、あと3年間勉強に専念しようとも合格はかなり難しいということを理解していないのであろうか。また、受験専門の予備校的な学校では友人など作る必要はないのではないだろうか。

(H の行った指導)
K のこれからの人生は公務員試験に合格できるかどうかにかかっているから、頑張るようにと励ました。関わりを終えて、何とも虚しい思いが残った。結論として、指導の効果はほとんど全くなかったと言える。

社会不適応者の特徴


社会不適応者は姿形こそ異なるもののまるで同じ人かと思うくらい共通の特徴を示す。それを以下に示す。一般にカテゴリー化、差の強調は差別に繋がる。しかし教育とは「気づかせる」ことであろう。気付けばその瞬間から改善が始まる。彼らは主に精神障害者の特徴ではなく、子どもの特徴を示している。つまり、わがままで独り善がりなのである。彼らが社会的に未熟であることに気づけば不適応者から脱却できるかもしれない。反面教師として役立てるために敢えて大学生によく見られる典型例を記す。

アルバイト、クラブなどをすぐに辞める。

また、円満退職ではなく遺恨を残す辞め方をする。アルバイトはしていないことが多い。従って、いつも自宅にいる。

(解説)
やめることでとりあえずは人間関係の葛藤から開放されるが、本人に問題がある以上どこに行っても同じ問題が起きる。人間関係をリセットするために引っ越しを繰り返したり、携帯電話の番号やメールアドレスを頻繁に変えることもある。暇を持て余しているのにアルバイトをしていないことが多い。人と接していい思いをしたことが少ないため,一種の条件反射で対人接触をなるべく避けようとするからである。

自分はこんなに誠実にしているのに、虐められる。

「自分はこんなに誠実にしているのに、虐められる。回りは冷たく、意地悪な人ばかりだ」と主張する。自分がなぜ嫌われるのかについての反省はなく、一日中、身の回りの全てを対象に悪口・愚痴に明け暮れる。つまり被害者意識が極めて強い。

(解説)
自分が世間に合わそうとするのではなく、世間が自分に合わせてくれることを期待している。淋しさから人と仲良くなりたいがその思いはどこか歪んでいるうえに、人と付き合う正しい方法を知らないためいつも拒絶され,うまくいかない。そこで心の中に,怒りを溜めこんでいく。「また駄目だった。また受け入れてもらえなかった」という絶望感から他者に対して攻撃的になることがある。つまり今まで溜めた怒りはいつでも,新たに出会った人めがけて噴き出す準備がなされている。見方を変えると,親が悪い,学校が悪い,先生が悪い、そして虐められてかわいそうな自分、という図式に当てはめることで心のバランスを取っているのである。それから他者ではなく自分に対して攻撃的になることもある。

感謝しない。

一方的に自分が何かをしてもらうのが当たり前だと考えている。

(解説)
彼らにとって、対人関係は親子関係の延長である。常に自分が得をする側に回り、しかもそのことを悪いと思わないし、誰かの世話になっても感謝することはない。

反省しない。自分が悪いのに抗議したりする。

(解説)
親の甘やかし,放任されて躾られていないこと,経験不足などが原因で,正しい考え方が身についていない。つまり、非常識で甘えている。社会(特に身近な他者)を母親(= 自分を甘やかしどんな時でも受け容れてくれる存在)と混同している。自分のわがまま・甘えを受け容れてくれない人や集団に対しては攻撃的になる。常に自分は施され、甘える側にいなければならないからである。

ユーモアがない。

自信がなく消極的で、マイナス思考である。

場にそぐわない服装をしたり,態度を取ったり

場にそぐわない服装をしたり,態度を取ったり,字を書く(自分のことを判断されるような大事な書類も汚い字でぞんざいに書いたりする)。子どもっぽくて非常識な言動が多い。

友人がいない。

いたとしても自分と同じような社会不適応者と傷を舐め合っているだけである。ただし彼(彼女)がどんな人かわからない最初のうちだけは,みんなの輪の中に入っていることがある。他者から相手にされないので、人付き合いに興味がない振りをしたり、群れている人たちをちゃらちゃらしているとバカにしたりする。また、もてないのがわかっているので、異性に興味がない振りをしたりしている。あるいは一日中、異性の話ばかりしているが、全くもてない。
(解説)
友だちがいない原因は友だちがいないことである。スポーツやテーブルゲーム(将棋など)でも練習相手がいて実践を積むからこそテクニックを吸収して上達する。しかし、練習相手がいないために彼らの人づきあいの技術はいつまでたっても下手なままである。従って友人ができにくい。人付き合いが苦手なことに気付いていなかったり(自分が周囲とうまくやれないのは周囲の人が悪いからであり、自分に原因があるとは決して考えない)、気付いていても直す気がないことが多い。

自分の能力をはるかに超えているような難しいこと(試験)に挑戦する

自分の能力をはるかに超えているような難しいこと(試験)に挑戦する、と言い出す。今までの人生が楽しくなかった分、生まれ変わり願望が強く、そのきっかけになるのが何かの試験であり、それに合格すれば全てが劇的に変わると思っている。人とのふれあいで幸せを引き出せない分、出世したい、自分のことを馬鹿にした他人を見返したい、変身したい、という気持ちが人一倍強い。また、自分自身が問題を抱えていたり自立できていないにもかかわらず、人の役に立ちたいという強い気持ちを持っていることがある。公務員、人を助けるボランティアの要素が高い仕事(カウンセラー、ソーシャルワーカー、教師)、外国語を使う仕事、外国でする仕事に対し強い興味を示すことがある。また、将来の目標、就きたい職業が頻繁に変わることが多い。

(解説)
難しいことに挑戦したがるのは、他人が見えていない人は自分のことも見えていないからである。空想と現実をごちゃ混ぜにし、自分の理想を現実に押し付けようとしている。また、社会不適応者は語学力はさほどではないにもかかわらず、日本でうまくやれていない自分をリセットし、やり直す場として外国に夢を馳せていることがある。

自分は他人に平気で無神経なことをする

自分は他人に平気で無神経なことをするにもかかわらず、自分が同じことをされると非常に怒る。

(解説)
自分のことは棚に挙げる。

おしゃれに無頓着であることが多い。

(解説)
そもそも自分が他者からどう思われているか、どう見られているかにあまり関心がない。社会との協調性が薄れており、回りの目を気にしない。

自立していない。

(解説)
金を遣うのは簡単だが稼ぐのは大変である。特に社会からお金を得るのは社会不適応者にとって並大抵のことではない。金を稼ぐには人の役に立たなければならない。彼らは自分が抱えている些細な問題に精一杯で,他人に奉仕するどころではない。また、自分で人生を切り開くような逞しさはない。社会不適応者が自立するためには数多くの殻を打ち破らなければならない。

しきりと自分のことを話したがる。

また大量の手紙や電子メールを送ってくる。内容はふと思い浮かんだ思考の断片、身辺雑記、自問自答、などで他人に見せる必要のないものが多い。

体が弱い。

「今日はお腹が痛くて… … 」,「今日は頭が痛くて… … 」,「今日は寝不足で… … 」などと毎日のように体調不良を訴える。

(解説)
気合が入っていないことへの自己弁護であるし、みんなから気にかけてもらいたいという無意識の現れでもある。また,自己管理能力が欠如(不規則な生活,明朝早起きしなければならないことがわかっていても夜更かしする)していて自分で体調の管理ができない場合もある。

自分に優しくしてくれる誰かにとことん頼ろうと

自分に優しくしてくれる誰かにとことん頼ろうとし、結果として拒絶されてしまうことが多い。

(解説)
大したことではないのに、すぐ「裏切られた」と言う。カウンセラーとトラブルを起こしたりする。実際は裏切られたのではなく例えばカウンセラーの都合や私生活に配慮せず、しつこくつきまといすぎたために拒絶されただけである。

ずうずうしいことを平気で頼む。

または当然の要請も遠慮してしない。

(解説)
人との距離感がないので、距離に応じた要請ができない。これくらいのことは頼んでいいだろう、このくらいの要望はきいてもらえるだろうといった、他者との距離の正しい測定ができない。

対人評価が極端から極端に動く。

理想化して「あの人は最高、すばらしい」と言っていながら翌週には「最低の人、もう顔も見たくない」などと言う。それゆえに対人関係も不安定である。

見る人に苦しそうで淋しそうな印象を与える。

疲れ果てた暗い表情をしている。もしくは、子どものように幼い外見の場合がある。

(解説)
毎日が充実し、楽しい生活を送っていないと、活き活きした表情・外見にならない。

流行を知らず、話題のスポットにも行ったことがない。

(解説)
誘われないからほとんどどこにも行ったことがない。学校と家を往復しているだけである。麻雀などはできない。麻雀を覚えるには少なくともそれに誘われる程度の人望が必要である。

ごく常識的なことも、丁寧に説明されなければ理解できない。

(解説)
これくらいのことはいちいち言わなくても理解しているだろうと高をくくっていると驚かされることになる。

終わりに


社会不適応者を受け持った教師は最初「淋しそうでかわいそうだ」と言い,「教育の力で変えてあげたい」などと言うが、接し始めて半年もすると「指導が困難である」,「全く効果がない」としか言わなくなる。老人介護と同じで生半可な覚悟では社会不適応者と接することはできない。人はみな、社会不適応者として生まれてくる。勇気を持って他者と触れ合って、経験を積み重ねて、はじめて社会適応者になれる。人との交流だけが持って生まれたいびつさを矯正してくれる。心が社会に向けて開かれおり、そして自分の非を謙虚に認め改善して行く姿勢があれば、失敗を繰り返しながらもだんだん良くなって行くであろう。しかし閉じられていて、全てを他人のせいにしている限り良くはならないと思われる。人間関係の葛藤は時間と労力の無駄である。社会不適応者は自分のエネルギー・時間を戦う必要のないものと戦うことで使い果たしてしまい、疲労困憊してしまっている。自分が原因で問題を起こし、疎外され、傷つき、苦しんでいる。一方、社会的スキルの高い人たちは社会を味方につけて、周りに溶け込んで、社会を楽しんでいる。

日本のような自由で豊かな社会に生まれていながら青春・人生を楽しめないのは実に惜しいことである。それゆえに、教師は生徒指導の一環としてまずは現状に気づかせ、少しでも社会的スキルを高めるよう指導していくことが望ましいであろう。

参考文献


菊池武剋(編著) 2000 生徒理解の心理学 福村出版
坂本清治 1999 生徒指導論 学事出版
高橋 超・石井眞治・熊谷信順(編著) 2002 生徒指導・進路指導 ミネルヴァ書房
坂本昇一 1990 生徒指導の機能と方法 文教書院
木原孝博 1996 現代生徒指導の理論 明治図書
小林利宣・倉田侃司(編著) 1992 生徒指導 ミネルヴァ書房
河原迫龍磨・仙波克也(編) 1999 生徒指導の基礎と展開 コレール社
教師養成研究会(編著) 2000 生徒指導の理論と方法(改訂版) 学芸図書

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