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超変紳! 仮面戦士ヴァイス

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ParaBellum

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 オレンジに彩られた夕暮れの街に、サイレンの音が響き渡る。
「またか……」
 “KEEP OUT”と書かれたテープの中、スーツを着た大柄な男性が頭を抱えていた。
 眼前には、徹底的に破壊し尽くされた家屋。
「これもザーデッドによる犯行っすかね、ルガーさん」
 新人の刑事、ライディースが尋ねる。
「むしろそれ以外に思い当たるフシがないね、今のところ」
 ザーデッド――――ここ最近、世間を騒がせている機械の化け物だ。その力はあまりに強大で、拳銃程度では歯が立たず、警察も手を焼いている。
 ルガーが溜息をついた直後、背後で喧騒が起きた。何事かと振り返ると、そこには、
「よう、刑事サン」
 赤い髪の男と、
「お仕事お疲れです」
 白い髪の少女がいた。
「ちょ、ちょっとあんた達! 困るよ、ここは関係者以外立ち入り禁止なんだから!」
 二人を追い返そうとしたライをルガーが制止した。
「まあお待ちなさい。そういえば、新入りの君には教えてなかったね。二人もある意味関係者なんだよ」
「そういうこった、新入りさん。俺はリヒト・エンフィールド、このチビはヴァイス・ヘーシェンだ」
「そういう事ですね、新入りさん。私はヴァイス・ヘーシェン、このロリコンはリヒト・エンフィールドです」
「は……え!?」
 二人が同時に話し出したせいで混乱するライに、ルガーが言う。
「こっちの赤い髪の彼がリヒト・エンフィールド、こっちの白い髪の女の子がヴァイス・ヘーシェンだよ」
「な、なるほど」
 ライは思う。
 ――――なんか噛み合わない人たちだなぁ。
「で、ルガー。今回もザーデッド絡みか」
「そうだね。そして」
「犯人は必ず現場に舞い戻る、ですね」
 ヘーシェンの側頭部から、ウサギの耳ようなものが、ぴょこっと飛び出した。
「な、なんだ!?」
「静かにしてください、気が散ります」
「は、はい、すんません」
 ドスの効いた声で怒鳴られて、ライが怖じける。
「でも、何なんすか、この耳みたいなのは。気になるじゃないっすか」
 ライの疑問に、ヘーシェンがあからさまに嫌そうに顔をしかめた。
「ザーデッドって、人間に化ける事ができるんですよ」
「は、はぁ……」
「でも、完全には化ける事はできないんです。見た目は完璧だとしても、心臓の音の代わりに、関節から異音がする……そう、今のあなたのように」
 鮮やかなハイキック。小柄な少女の蹴撃が、ライの身体を吹っ飛ばす。吹き飛ばされた身体が地面を滑り、砂埃が舞い上がる。
「この耳は、その音を聞くためにあるんです。わかりましたか? 犯人さん」
<キサマ、キサマァ……!>
 砂埃の中、立ち上がったシルエットは人のものではなかった。
「意外と近くにいたんだね」
「そうみてーだな。ルガー、周りにいる奴ら、とっとと下がらせろ」
 ルガーは静かに頷くと、野次馬と警官たちのところへ走っていった。それを確認してから、リヒトがライだったモノへと向き直る。
「さてさてお前さん、自分が何やったのかわかってるか?」
<アア、ワカッテルサ>
 口から不快感を煽る合成音。そこにはかつての面影を微塵も感じさせない、メタルボディの化け物が立っていた。
「なら、お仕置きが必要だな。いくぞ、ヘーシェン」
「ナルホド了解合点承知」
 少女の身体が一瞬輝くと消失し、純白のベルトがリヒトの腰に浮かび上がる。
「へん」
「しん!」
 二人の掛け声が重なると同時。リヒトの身体を順番にプロテクターが覆っていき、リヒトは白い仮面の戦士になった。
 大腿部は肥大化し、側頭部には二本の耳。
<ナ、何者ダ、貴様……!?>
<お前と同じだ、俺もこいつも一度死んでる。そして――――>


超変紳! 仮面戦士ヴァイス
Episode 01:あなたは、二度死ぬ


 ザーデッド……THE DEAD。一度死亡した者の肉体を改造する事によって生み出される機械人間の事だ。
 改造された人間は、生前の未練を晴らすためだけに行動する、いわば亡霊となる。
 退治する方法は二つ。未練を晴らすか、コアを破壊するか。後者が可能なのは、今のところ同じザーデッドだけだ。
 だが、ザーデッド同士が戦う事はほとんどない。改造時に強い仲間意識を植え付けられるからだ。
<……何故ダ、仲間貴様ハ僕ニ攻撃デキル!? 仲間ダロウ!?>
<仲間なんかじゃありませんよ。私たちは二人で一人の出来損ないですから>
 跳躍。驚愕しているライ・ザーデッドの顔面に向けて跳び蹴りを叩き込む。
<グェア!?>
<だから、こういう事もできる!>
 倒れた化け物が地面にキスする。
<ヂ……グショオ……!>
<あぁん? あんかけチャーハン? あぁん? 最近だらしねぇな? あぁん? 最近だらしねぇ! エロいか? あぁん? 卑猥かぁ?>
<チクショウ……!>
 意味不明な言葉で罵倒のような何かを繰り返す白いマスクのヒーロー(?)を睨みつける。
<僕ハ……僕ハ目立タナキャイケナインダ! 目立チタインダ!>
<なるほど、あなたの未練はそれですか>
<アア、ソウダヨ! ソレデ悪イカ!>
 悔しさに地面を叩くと、そこには巨大なクレーターができた。
<ちくしょう! 人気キャラに僕の気持ちがわかるかよ! ひとりだけ一票しか入らなかったんだぞ! ちくしょー!>
<いきなり素に戻るなよお前>
 激昂したライ・ザーデッドが目茶苦茶に両手を振り回した。まったく読めない動きに、仮面の戦士も翻弄される。
<あべし!>
 そして、ついに直撃。もんどりうってその場に倒れる。
<死ね! 人気キャラは皆死んでしまえ!>
 倒れた戦士にストンピング、ストンピング、ストンピング、ストンピング、ストンピング、ストンピング、ストンピング――――
<痛ててててててて! おい、やめ……よさないか!>
<よさないか、マスター。既に彼は錯乱しています。こうなったら彼の未練を晴らしてやるしかなさそうですね>
 ライ・ザーデッドの足を掴んで、捻る。
<あいつの未練を晴らす方法っつーと?>
<人気投票で一位にする事ですかね>
<何それ無理>
<誰が無理だちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!>
 突進。リヒトはそれをひらりと避けるが、背後にあった倉庫がぐしゃぐしゃに潰れる。
<おい、誰かこいつ止めろ!>
<火に油を注いだのはどこのどいつですか>
<黙れ! そして人気キャラは死ね!>
<お前それしか言えんのか!?>
 バックステップで距離を離し、構え。
<くそっ、こうなったら……ヘーシェン、アレを使うぞ!>
<ええ、よくってよ>
 脚部に光が収束していき――――跳躍。空中で一回転すると、
<必殺!>
<ヴァイス>
<パニッシャァァァァァァァァァァァッ!!>
<ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!>
 エネルギーを纏った蹴撃が、ライ・ザーデッドの右肩に命中。メタルボディがきりもみ状態で吹っ飛んだ。
<ぼ、僕は目立ちたかった、だけなのに……!ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!>
 ライ・ザーデッドの身体に亀裂が走り、爆発した。
 後には塵ひとつとして残らない。
<……化け物に変身した時点で、お前は既に目立っていたんだよ>
 変身解除。プロテクターが光となって消え、傍らにヘーシェンが降り立つ。
 しばらくして、ルガーが駆け寄ってきた。
「終わったかい、リヒト」
「終わったよ」
<後味の悪い事件でしたね……>
「ああ、そうだな……」
 気付けば街は既に、暗闇に包まれていた。


 ♪  ♪  ♪


 そして、その暗闇の中でうごめく異形たちがいた。
「どうやらまたザーデッドがひとりやられたようだな」
 九本の尾を持つもの。
「しかし、奴らは我々ザーデッドの中でも一番の小物!」
 もふもふした小動物。
「リヒト・エンフィールドにヴァイス・ヘーシェン……出来損ないの裏切り者には鉄槌を下さなければいけませんね」
 長い黒髪をポニーテールに結ったもの。
「ならばその役目、この私にお任せください」
 そして、黒い騎士。
 仮面の戦士の戦いはまだ、始まったばかりだ。
「それでは、二人の始末は希望通りあなたに任せましょう。リヒター・ザーデッド」


 多分続かない!


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