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スーパーロボスレ大戦α ~終焉のセカイへ~

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 世界は常に変動しているだけではなく、重なりあった混沌の状態で存在しているとされる。
 とある世界では、もう一つの地球で人型探査機に乗り遺跡に潜る女性二人組が居た。
 とある世界では、もう一つの地球にある学園でロボット競技に励む眼鏡の女の子が居た。
 とある世界では“何か”のせいで文明が一度ゼロに戻されていて、そこで機械人形や仲間達と暮らす女の子が居た。
 とある世界では、元の世界からファンタジー染みた世界に送られて、その世界で特殊な戦闘装甲を使役し戦う一人の男が居た。
 とある世界では、未来で犯した罪の為に一人の男と戦い、全てを喪失してしまった少年が居た世界があった。
 とある世界では、別の世界に飛ばされて戦うことを選択した一人の少年が居た。
 とある世界では、政府の目的遂行の為に日常生活から拉致されて戦う少年が居た。
 とある世界では、セカイの安定の為に国や地域を消失させる機関に反旗を翻した少年と少女が居た。
 とある世界では、人類が月と地球に陣営を分かち戦争を行っており、一人の男が想い人を胸に戦っていた。
 そして、最後に。それらいくつもの世界を監視し、調査する集団も存在していた。
 彼ら彼女らをその戦場に呼び込んだのは、一つの偶然だった。
 イルミナス……という組織がある。彼らは世界を席巻し、新兵器の投入により世界を手中に収めたが、完全ではなかった。
 議論と研究の末、彼らが辿り着いたのはもはや正気とは思えぬ兵器の創造であった。
 即ち、過去そのものを徹底的に抹消し、イルミナスの征服が成功してそれが当たり前の未来だけを残す。
 その兵器は建造され、そして制御を失い暴走した。
 『空間消去型時空兵器(タイムゼロ)』と命名されたそれはまた別の次元の存在を呼び出し、各世界で『門』を築くと、圧倒的な力でまた別の空間へと繋ぎ、またそこに吸入してしまったのだ。
 時空は完全に歪んでしまった。
 歪みを正すべく、セカイは修正を求めて形を変えた。
 吸い込まれた彼らが辿り着いた先、そこに待っていたのは様々な世界から吸い寄せられた暴虐の者たちであった。




 男は、どこぞの世界から吸い込まれた建物の一室で腕を組み目を閉じたまま、無感情な声で語った。

 「もう転移はし飽きた」

 またとある世界から吸い込まれてきた一人の少女と一機はこう語った。

 「ねぇリヒター。帰ったら師匠になんて言われるかな?」
 <私のデータ予想では、奇声を上げて頬ずりされる可能性が一番高いと出ています>

 少女と一機、もう片方の少女と一機はこう語った。

 「私達、本当に異世界に来ちゃったんですね」
 <まどかの居るところならどこへでもついていくぞ>

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 蜘蛛を装甲化したような奇妙なそれが、廃墟となった街を闊歩していた。
 表面には皺が刻まれ、歩くたびに生じる熱をそこから排出しているらしく大気が揺らめいている。だが、それは生命ではなかった。とある次元、とある世界で作られた人を燃料とする半生物兵器なのだ。
 全高10m。餌となる人を探してそれは悠々と往く。
 その蜘蛛は前足を上げると、一歩を踏み出し―――次の瞬間、潰された。
 動揺し警戒する蜘蛛の群れの中でそれは悠々と足元の物体を踏み潰し殺すと、バイザーの中の碧の眼を上げ、半実体の翼をはためかせた。

 「この程度か、虫けらども」

 エメラルドグリーンの装甲と、まさに中世から迷い込んだような甲冑姿。
 ――上級刻印装甲シルヴァール。
 ――搭乗者、バーサーカー。霧坂涼夜。
 とある世界から吸い寄せられた、その世界のロボット兵器。高度な文明が作り上げたとも、精霊の力が結晶化したともされるそのロボットは、別の世界から飛ばされてまたもや飛ばされたせいで不機嫌極まりない霧坂涼夜が駆る兵器であった。
 シルヴァールは背中の翼を引き抜くや剣に形状を変え、斜め下に構えた。

 ≪ウィングスライサー≫

 たちまち閃光が走るや剣が形状を変え、ひび割れたかと思わせる音と共に“分化”した。
 蜘蛛数匹が飛びかかり、またいつ現れたのやら空から戦闘ヘリ並みの大きさの蜂が襲いかかった。

 「貴様らにはこれで十分過ぎる」

 シルヴァールがステップを踏み込むや、剣が蛇腹状になり至近距離で炸裂した。
 突風が吹き荒び空間を弄ぶそれが竜巻の如く螺旋を描き蜘蛛を粉みじんに砕き、蜂を鞭のようにしなることで叩き落とす。
 蜂の数匹が尻を向けると装甲を容易く穿つ威力の針を次々に射出。しかも弾丸のように連射されるそれは機関砲にも相当する威力を持っている。

 「これならば武器すら必要無い」

 シルヴァールの翼が跳ねる。機体がふわりと舞い上がり、狙いがそれた針が地面に突き刺さり薬液をブチ撒けた。
 次々襲来する蜂と、蜘蛛。更には蟻のような敵が現れると、シルヴァールを数で蹂躙せんと迫る。
 シルヴァールの翼が翻り、地上数m地点から疾風のように駆けた。

 「……堕ちろ」

 エメラルドグリーンの剛腕に風が集束、拳を振りかぶり蜂に叩きつけるや爆発し羽肢体関係無く爆殺。翼の燐光が空間に帯を曳く。たちまち数体の蜂が空中で汚い花火を咲かせた。
 そこに襲いかかるのは、地面を突き破り襲来する蛇たち。まるで弾道ミサイルのような形状のそれらが砂や岩を押しのけて飛び出すや、口を開けてシルヴァールに迫る。

 『トランスインポート・ヴィルティックライフル』

 その電子音がどこからともなく誰に聞かれること無く鳴る。
 次の瞬間、電流伴いしビーム弾が蛇の胴体に穴を穿つや撃ち落とし、シルヴァールに到達させない。更に弾は吐きだされ、全て空中で絶命させていく。
 オゾンの臭い漂う先には、鋭利な外見であり、戦闘機を思わせる細見の美しき巨人がビルの屋上に佇んでいた。
 シルヴァールに乗った霧坂涼夜はついと視線を上げると、機体をその方向に向けた。そして見ても居ないのに背後からの蜂の体当たりを回避した。

 ≪別に引っ込んでいても良かったのだが?≫
 ≪……いえ、俺も戦います≫

 その鋭利な装甲姿、ヴィルティックの搭乗者鈴木隆昭はライフルを構え、シルヴァールの背後から襲いかかって来ていた蜂に狙いを定めた。

 ≪後ろです!≫
 ≪分かっているなら、やれ≫

 ライフルからビームが迸るや蜂を焼き殺し、空に数条の電流を曳いた。
 更に、通信。

 ≪私達が……きゃ!?≫

 同じく機体に乗ったメルフィーが口を開こうとしたが、突如地面が震動し口を閉ざした。
 二機が見遣った先に、まるで小山のように巨大な体躯を持つ二足歩行の怪獣が出現したのだ。この空間において安全な地帯は限られており、空、海、その全てがごっちゃ混ぜの混沌状態。
 もしも空を見るならば、まるでジグソーパズルのように区切りがあるのが見えることだろう。
 シルヴァールを先頭に、ヴィルティックが身構えた。

 ≪無理にやれとは言わん。嫌なら降りてもいい≫
 ≪やります。俺は、切り拓く為にヴィルティックに乗ったんです≫
 ≪ならついてこい。援護も出来ないなら……隅で震えていればいい≫
 ≪はい!≫

 怪獣が空に向かって咆哮すると、ビル群に向かって口から火炎を吐いた。
 二機はその火炎を回避すると突っ込んでいった。

 「シャッフル!」

 メルフィーの声が攻撃の合図となった。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 とある世界から落ちてきた二人。罪を背負った少女と、運命と宿業と戦うことを決めた少年は語った。

 「俺にはやることがある。まだ、止まれないんです」
 「私も―――まだ立ち止まれない理由があります」

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――



 また違う場所。
 彼ら彼女らが落とされた『箱庭』の一角。
 広大な砂漠があるというのに、何故か海が周囲を取り巻くその場所。
 人のようで人ではない、蟲のようで蟲ではない、機械のようで機械では無い、ヘドロのようでヘドロではない、黒一色に染まった人型人形の群れに、一人の少女が対峙していた。
 三つ編みお下げに幼い顔立ち。手には杖。服の上からローブのような衣服を纏い、その裾は風に揺られている。
 人型との距離が数十mを切った時、三つ編み少女一条遥は目を凛と見開き杖で地面をついた。

 「パラベラム!」

 ――汝、平和欲さば、戦いへの備えをせよ。
 遥の全身が俄かに燐光を帯びるやたちまち空間へと流出し、海に出来た潮流が如く渦を巻く。砂煙が晴れた時、そこには一体の鉄の巨人が居た。
 暗闇を煮詰めて塗料にしたような漆黒の姿、中世の騎士のようでありながら近代的機能美すら備えた機体。頭部の鶏冠のようなパーツが威嚇的な角度を持っており、カメラアイが光る。
 機械人形(オートマタ)『リヒター・ペネトレイター』。
 貫通騎士の名を持つ彼は地面に降り立つと、足元の遥に目を向けた。

 <いかがしますか、マイマスター?>
 「攻撃あるのみ!」
 <イエス、マイマスター。武装は素手でよろしいですか?>
 「でも危険になったら何でもってことで!」
 <ラジャー>

 黒騎士と少女が短く話しているのを黒の人型達は何を考えているのか動かずにいたが、数秒後、堰を切ったように突撃を開始した。
 彼我戦力差は少なく見積もっても20対1。物量に寄る蹂躙はどの世界時代においても基本中の基本であるが、一人と一機は恐怖を感じてすらいなかった。
 黒騎士がブースト全開で地を駆けた。
 それを、数で勝る人型が押しつぶそうとする。
 数と質の一騎打ち。漆黒の風が、人型の群れへと己が拳を握りしめ、肉迫せん。

 <私達を忘れて貰っては困る>

 黒騎士と少女の背後の『扉』から、禍々しいまでの重装備を施した機体と、髪の毛をポニーテールに結った起伏の豊かな少女が現れた。
 ポニーテールの少女の手には、とても手持ちで扱えるとは思えない大口径の機関砲があった。辛うじてそれは杖の体裁を保っていたが、放熱用の穴などがそれを真っ向から否定していた。
 重武装の機械人形―――元の世界では玉藻前、すなわち九尾の妖怪、ヴァルパインと恐れられた彼女と、それを使役するはまどか・ブラウニングという、元の世界でのお嬢様。

 「思いっきり―――いきます!!」
 <Yes,My master!!!>

 まどかは高らかと宣言すると、今まさに格闘を繰り広げんとする黒騎士、リヒターの前方の敵に向けて迷うことなく引き金を落とした。
 玉藻・ヴァルパイン、最大火力を発揮。9つのテールスタビライザー全てに多種多様な火器が握られるや、人型の群れに全てを指向した。
 グレネードランチャー、パルスライフル、ガトリング、散弾砲……etcetc。
 人型達はそれらをうけてひとたまりも無く蒸発し、あるものは銃弾の唸りに半身を吹き飛ばされ、またあるものは大口径砲の一撃で粉みじんにけし飛ぶ。

 「ちょ、まどかちゃ……わぶっ!?」
 <……っ、危ない>

 たまらないのは、既に戦闘態勢に入っていたリヒターと遥だった。とっさに身をかわした刹那、弾丸やらプラズマの群れやらが殺到し彼女らの攻撃が蹂躙したのだ。これは味方のとはいえ寒気がする。
 だが、これでへこたれるような一機と一人なわけもなく、すぐさま立ち上がると、片っ端から飲み込まれていく気味の悪い人型に対し戦闘姿勢をとった。
 遥は腰に手をあて、胸を張ると、指をびしっと敵に向けた。

 「じゃあ仕切り直して………リヒター、お願い!」
 <イエス、マイマスター>

 黒騎士、突貫す。

 そんな戦場の片隅、彼女らが戦っている場所の端。
 広大な砂漠の端、海。といっても普通の海とはわけが違うその場所。
 言うならば中世ヨーロッパでの地球観のような、大地の端が永遠なる暗闇へと落ち込んで海が滝のように流れ落ちていく、そんな場所。
 といっても正確には落ちていくのではなく、どんどんと暗闇になって進行が阻まれるという特殊な環境。
 それは、遥とまどか、リヒターと玉藻が戦いを繰り広げていく中で、遠くから致命的な一撃を与えんとそれが海辺から顔を覗かせると、二本の棒状を持つ特殊な砲を船体からせり出し、狙いをつけた。
 まるで潜水艦のようでもあったが、あちこちから気味の悪い触手が生えたそれは生理的嫌悪感を催させる不気味さをもっていた。
 二本の棒状の間に電流が奔り出す。
 電磁力で弾丸を射出する兵器、電磁投射砲だった。
 さしもの彼女らも直撃を食らえば致命傷は免れない。もしも侵攻を阻止できなければ後退を強要されるし、元の世界へ帰還する手立ての一つを失うことになりかねない。
 砲身は俄かに興奮して電流の手を震わし、

 『おっとっと……危ない危ない』
 『お姉さん達の目から逃れられると思うなんて、甘いわよん?』

 魚雷ランチャーを手に構えた人型ロボットに阻止された。
 大型の魚雷二発がどてっ腹を食い破り、莫大な衝撃がそれの体勢をぐらりと崩させた。次の瞬間電磁投射砲が放たれて空に綺麗な線条を描き出した。
 遅れて水面に水柱が上がった。
 この世界は何かが狂っている。
 それは物質、物理法則、そういったものだけの狂いではなく、空間の繋がりも狂っている。
 水中用作業ロボット、潜水機。名前をクラドセラケといった。
 クラドセラケは、搭乗者であり設計者であるジュリア=ブルーストリートの発案で、鮫型から人型へと変形し、水中機とは思えぬ圧倒的な機動力を有することに成功した機体である。
 水中専用機がこの戦場に乗りこめたのも、一重に空間の繋がりが変であるということは言うまでも無かろう。
 真横から魚雷二発を喰らってしまい、鉄くずを水中にいくつも落としながらも、潜水艦型は身をよじって、触手をうねらせ、船体にいくつも空けられた魚雷発射口を開いた。
 総数十。
 元が作業用機であるクラドセラケが食らえば一撃で海の藻屑となること受け合いの火力。
 クラドセラケに乗ったジュリアとクラウディアの二人の顔色が多少青くなったが、動揺はしない。

 『ちっ。出力最大』
 『りょーかい!』

 ジュリアが舌打ちを一つ。クラドセラケを移動形態に変形。脚部だけではなく背面部スラスターも併用して、回避に移った。
 魚雷十発が白泡を引きつつ迫る。
 鮫のカメラアイがぎらりと光る。

 『躱せーッ!』

 絶叫しながらも、熱音波煙幕弾二発を投射。
 海中に熱と音波と視界を遮る煙幕が花開いた。魚雷群、目標を見失い水中を出鱈目な歪曲軌道をとった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 元の世界で潜水を行い物資を引きあげる仕事をしていた二人の女性はこう語った。

 「世界の危機? 私はそっちより帰れなくなる危機の方が怖いね」
 「ふぅふぅーん? オルカ君に逢えなくなるものね」
 「バッ……!? 違う! おい逃げるなよ笑うなよ!」
 「やーん♪」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 時速300kmというF1カー並みの速度で兎のような機動兵器が駆けていた。
 後方1km地点を、五本の長き突起を持った白亜の機体が飛翔していた。

 ≪前方に敵性を確認……廃墟エリアを占拠しつつあります。これより排除行動を開始します≫
 ≪既に、やっている≫

 先頭機、発砲。
 兎のような機動兵器――『RS-02MB スカンクエイプ改』の搭乗者『ソマ・ツクヨミ』中尉は、言われる前に行動を起こしていた。
 スカンクエイプ改が120mm対艦砲を連続で発砲する。反動を殺すべく、特徴的な頭部から生えた二本のリアクション・コントロール・ブレードが広がる。
 空をふわりふわり不気味な静かさで飛び、空間を占拠しつつあった球状の敵に砲弾が次々めり込み破壊して地上へ叩き落とす。
 重力下で推進機関や浮遊機関らしきものも見当たらないというのに飛び続けられる兵器というものをツクヨミはお目にかかった事は無いが、破壊できるなら破壊するまでであった。
 二機が廃墟の入り口に辿り着く頃には、空にあった球体は全て地上に叩き落とされて黒煙を上げるだけの歪なオブジェと化していた。
 そして二機は、時速300kmを維持したまま廃墟エリアに侵入した。
 すると、廃墟のあちこちに隠れて侵攻の機会を窺っていた兵器群が興奮した様子で体を揺らし、ふらりと立ちあがった。小型の球状兵器も多数宙に浮かびあがって照準を二機に向ける。
 物量的には敗北しているのは間違いなかったが、二機の操縦者に一切の動揺は無かった。
 敵兵器達が一斉に身構えるや、真上に向かって無数のミサイルを発射した。レーダー表示にいくつもの点が浮かび上がる。

 ≪増援が来るまで残り二分です≫
 ≪了解した≫

 ツクヨミは短く返答すると、背面部のポリ窒素スラスターの出力を最大域に上げた。スカンクエイプは一陣の疾風となりて瓦礫の街の中へと突進した。ミサイルの半数が追尾する。
 謎の浮遊力場で浮かびつつスラスターで推進してスカンクエイプの後ろを飛んでいた機動兵器はビルの谷間に逃げ込まず、その場で静止するや独楽のように回転しつつ機首を天に向けた。
 噴炎。
 次の瞬間、地面を構成するコンクリートが崩落した。棘条を持った機体の推力が一点に集中したせいで地面が耐えきれなくなったのだ。
 それは矢を射ったように天へと駆け抜けていき、ミサイルのこれまた半数が緩く螺旋を描く様に追尾していく。

 『格闘戦形態へ移行、迎撃開始』

 搭乗者の呟きに合わせ、機体が変形する。
 棘条パーツが可動。後方二本が脚となり、前方一本も脚となる。中段二本が真横へ向き、腕となった瞬間に胴体が立ち上がり、格納されていた頭部がせり出す。
 急速度での変形で速度が減速し、機体各部がヴァイパーを曳いた。
 各部のスラスターが火炎を噴出、三本脚の奇妙な機動兵器をミサイルの群れに対し真正面を向く様にする。
 ロックオンシーカーが踊り狂う。
 迎撃武装選択。座標計算完了。軌道予想完了。全確認、迎撃開始。
 両腕と頭部から七色のレーザーが迸る。落ちながら、しかして踊るように右腕を突き出しミサイルを回避。頭部のレーザーがミサイルを蒸発させる。
 スラスター全開。ミサイルの弾幕の中を危なげに突破。
 刺々しい機体が地面に真っ逆さまに突っ込んでいく。数を減らしたミサイル群が天でとんぼ返りして、同じく地面へ落ち行く機体へ突っ込まんと白煙を吹きますます加速する。
 機体からレーザーが照射、ミサイルを悉く破壊する。空中でミサイルが次々爆発し、破片を機体に振り落とした。
 レーダーに感あり。
 新たなるミサイルと、敵増援の姿。
 スカンクエイプはレーダーと目視と経験という名前の三次元図を頼りにビル群を駆け抜け、ミサイルを遮蔽物にぶつけさせて全てを回避していた。街のあちこちで火柱が上がった。
 ツクヨミの命令通り、ミサイルの第二射目を準備中だった敵兵器に向けてスカンクエイプ改が跳躍する。ビルの壁面へ足をめり込ませ、スラスターで強引に飛びあがる。Gで息が詰まった。

 「………ぐっ」

 敵人型兵器の頭上から、兎が襲いかかった。
 35mm口径弾が手持ちのハルバードから雨あられと降り注ぎ地面に沈めて黙らせる。続いて、RCBを巧く使い転がるように着地するや、やっとこちらに気がついて向きを変えようとしている一機に向けてミサイルを発射。撃破。

 「……1」

 さっと機体をビルの影へと滑り込ませようとした刹那、敵の姿を視認した。
 近接格闘を重視したと思われる、曲線のみの人型兵器が真正面から突っ込んでくる。
 ツクヨミは慌てず騒がず、敵のブレード一閃をバックステップで躱すと、超震動ハルバードの機能をフルに活用して膾斬りにしてやった。とどめに頭を足で踏みにじり粉砕する。

 「2、……3………ッ」

 本能が危険を叫んだ。
 前のめりに倒れて砲弾をかろうじて躱す。RCBで姿勢制御。ばねで弾かれたような勢いで起立、振り返り際に120mmをお見舞いして撃破。残弾が零に。
 改めてビルの陰に身を隠すと、機体に異常が発生していないかどうか機器を一瞬で確認した。なにも問題は無かった。
 空では、ミサイルをレーザーで次々撃墜しつつ、天から砲弾を降らせては撃破数を稼ぐ機体があった。
 あの機体には、世界の検閲官とやらが乗っている。名前はメリファンといったか。
 オカルト染みたことはまったく信じないツクヨミであったが、まんま魔法を使った機動兵器があったり、おとぎ話に出てくる龍のような敵もその目で見た以上、否定できないのも事実だった。
 ふとツクヨミは、戦闘中だと言うのにその空に月を求めている自分があるのに気がつき、しかし苦笑の一つ漏らさなかった。
 月どころか地球すらないというのに。

 「なぁ、君は―――」

 ≪遅れて悪い!≫

 通信が入った。
 廃墟に突っ込んできた一機の機体。それは戦闘機を徹底的に装甲化して手足を生やし、大型の推進装置を無理矢理括りつけたような形状をしていた。人型機動兵器に顕著な『強引に飛ばす』のを体現したようであった。
 Advanced-Armored Combat Vehicle――次世代装甲戦闘車両。通称AACV。彼が乗るのは高機動型だ。
 ツクヨミらの機体と比較してやや小ぶりなものの、独自の構造から成される鋭角な機動と狭い旋回半径は障害物という地の利を存分に生かすことができる。
 搭乗者のシンヤ・クロミネはさっそく壊れた道路へと機体を歩ませると、スラスターを吹かして機体と体の負荷を考慮し徐々に徐々に加速して、ついには600kmまで達した。
 ツクヨミとメリファンが掃討しきれなかった小型兵器達が我先にとAACVに殺到する。
 背面の大型可変スラスターが噴射炎の向きを変える。推力偏向ノズルと合わせ、ノズル本体がある程度位置を変えられるように出来ている為、信じられないほどの自由度を持つのである。
 更に、腰に備え付けのスラスターも併用して、大通りの障害物を前に後ろにかわしながら射撃を開始した。
 敵増援がエリアに侵入する。

 ≪更に敵の増援を確認しました……現在の三倍です≫
 ≪問題無い。三倍落とせば覆せる≫
 ≪問題あるだろ! 特にアンタが!≫


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 コロニーがあった世界からやってきた少年はこう語った。

 「正直、元の世界より希望があるんだわ。問題は帰った時、幽霊屋敷の連中に連れ戻されたりしないかってことなんだけどさ……こいつに乗ってたら目立つよな」

 月の軍隊に所属していたという男はこう語った。

 「厄介な事に巻き込まれたとは思っている。……これでいいか?」

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 巨大な建築物がそこにあった。
 ただ立っているというわけではなく、空間一つを埋め尽くすほどに大きくて、他の空間との境目までが全て建物という有様であった。
 セカイが狂っているのはここでも同じことで、建物の外側に向かって重力が働くという、もし一つ間違えば命を落とすようなセカイになっていた。
 ここもいくつものセカイの欠片の一つに過ぎない。いわばパズルのたった一ピースでしかないのだ。
 建物の外を見ることができたのならば誰もが驚愕することだろう、空も地もなくジグソーパズルのようにひび割れた空間が広がっているのだから。

 「しつこい!」

 六本の脚の先端にあるローラーの向きを巧く揃え、並行移動しつつの射撃。人間大のロボット達がバットやら小銃やらを構えて次々襲いかかってくるのを、機関砲射撃で薙ぎ払う。
 が、それでも撃ち零しが次々とその機体に寄ってたかって数の暴力を振るおうとしてくる。
 搭乗者のアルメリアは機体をぐるんぐるん回転してロボット達を弾き飛ばすと、両手、肩、腰の計六丁の機関砲全てを違う方向に向けて全方位射撃で空間を制圧していく。

 「えーいっ!」

 六本の脚で重装甲、高火力を有した『外殻機』プロトファスマ。
 競技用機である外殻機でも、本当の戦闘になればルールなど考慮する必要は無く、今は機体主機の出力も限界まで高められている。
 ロボットの一体が物陰で対戦車ロケットを構えたが、アルメリアは気がつけなかった。

 ≪させるかよ!!≫
 ≪させないです!!≫

 通信に青年と少女の声が入り込む。
 瞬間、天井から跳躍した一機の人型ロボットが対戦車ロケットを構えたロボットもろとも踏み潰し、降り立った。別に重力を制御したわけではない。天井にいけばそこが大地となるような空間だから、天井から降りることができたのだ。
 全高はプロトファスマと大差なし。白銀と鉄色の装甲。青とも緑ともつかぬ毛のようなものが頭部から生え、赤いカメラアイが周囲を厳格に睨む。両手には装甲と同じ色の剣が二振りあった。
 それは“罪深き始祖”の二つ名を持つ少女の力が顕現した姿。
 元の世界では、リーゼンゲシュレヒト・シュタムファータァと呼ばれていた。
 セカイの意志に反発した彼女と彼が、セカイの変動に巻き込まれるとはなんたる皮肉か。神とやらが存在するのなら喉をくつくつ鳴らしていることだろう。
 文字通り降って湧いた新手の敵に、人型ロボット達は武器を構えてみたり、じりじりと距離をとってみたりする。
 プロトファスマとシュタムファータァは背中と背中を合わせるように立ち、それぞれの武器を油断なく構え、いかなる方向からの攻撃にも対処できるように緊張を張り巡らせた。
 二本脚と六本脚。刃と銃。所属するセカイも違う。それどころかロボットの部類に入るかすら分からない機体と、元々競技用に造られた機体の、奇妙であるが信頼のおける共闘体勢が今ここに。

 ≪危ないところを助けて頂き、ありがとうございました。正直生きた心地がしなかったです≫

 そうアルメリアは言うと、カチカチとなり始める歯を軽く噛み締め、汗ばむ手を服に擦り付けると操縦桿を握りなおした。
 練習はしてきた、テレビ越しに観賞もした、競技もした、でも自分の命が狙われるような状況下で戦ったことなんてなかった。だからこそ緊張は凄まじく、やもすれば過呼吸で倒れてしまいそうだった。
 眼鏡を手の裏で押し上げつつ、頼れる仲間と共に現在の位置を入れ替え、機関砲を敵に向けて威嚇を続ける。

 ≪うん、俺もぶっちゃけるといろんな意味で緊張しっぱなしだったりしてな。でも、揺籃島どころかセカイそのものが消えますっていうんじゃ、やるしかねーだろ≫
 ≪ヤスっちさんカッコイイー≫
 ≪ちょっと待て、なんで棒読みなんだシュタムファータァ≫
 ≪自分の顔に聞いてみればいいんじゃないですか、ヤスっちさん?≫
 ≪は?≫
 ≪………なんでもないです、さぁまだ戦いは終わってませんよ!≫
 ≪……おう!≫

 シュタムファータァの内部に乗るは、安田俊明。平均的日本人。彼は選択したからこそここにいる。

 ≪数……20、30、40………多いですね。一人少なくとも20は撃破しないといけないですけど、シュタムファータァさんと安田さんは大丈夫ですか?≫
 ≪当たり前です、私達をなんだと思ってやがるーですよ!≫
 ≪なぜ俺の出番とったし≫

 などと話している間、次から次へと別の扉から敵が侵入してきて、二機の包囲網を厚くしていく。人間大だったのが、二機の大きさと大差ないものまでが混じりだす。
 二機のカメラアイが俄かに煌めいた。

 ≪Go!≫

 そして二機は何の合図も無しに、己の前方に向かって駆け出した。
 ローラーダッシュ。火花を散らし、5mもある外殻機が人型の群れに弾幕を叩きつけながら突っ込み次々に駆逐していく。
 敵の群れの中に六脚をしならせて飛びこみ、勢いを体当たりに乗せ数体を粉砕。足の下で辛うじて動く奴に機関砲をお見舞い、鉛弾をあえて避けず受け止め、逆に撃ち返し沈める。
 ルールという枷が消えたプロトファスマは、まさしく動けて撃てる小要塞であった。

 「一機、二機三機四機五機………っ、大きいの! 全力でいきます!」

 機体によじ登ろうとした人型の腹に機関砲を押し当て吹き飛ばし、すぐさま機動。火花を残しつつ次々敵を撃ち滅ぼして、全高九mはあろうかという敵の足元に滑り込み、六脚全てを使って急制動、全銃を上方へ向ける。

 「足元じゃなくてお腹がお留守ですよ!」

 トリガー。
 アルメリアの全力を、プロトファスマが応じた。
 六丁の銃が一斉に一点に向けて発砲炎と白煙を吐き出し群れと呼ぶのもおこがましい濃密濃厚なる圧縮射撃をお見舞いする。装甲なぞ一秒と持たずけし飛び、内蔵部品を貫き、背中に射撃を通さん。
 機体一回転、デカブツの足元をくぐり抜け、おまけに人型数体を轢き壊して、更に追加の射撃で敵の群れの中に干拓地を造りそこで足を止める。
 継続射撃の後に制限解除全力射撃を行った余波で銃身が過熱して淡く空気を揺らめかす放熱をしているのが見える。
 しめたとばかりに敵が殺到したが、接近することは叶わずそれどころか上半身と下半身が泣き別れた。
 二振りの刀が一閃、二閃、回し蹴りが炸裂し自分と同等の大きさのロボットを壁に叩きつけて沈黙。

 「シュタムファータァ! デカブツを優先して潰せ!」
 「了解しましたヤスっちさん!!」

 デカブツとけったいな名前で呼ばれたのは文字通りに10mを越す四脚の重ロボット。背中に砲を背負い、小型のロボットを幾つも積んでいる。
 その砲が、シュタムファータァの方に向いた。発砲。

 「ああっ!」

 咄嗟に刀を盾にしたが砲弾により手からもぎ取られ、しかしその切っ先は運の悪いことに中型サイズのロボットに見事に突き刺さり、そこをプロトファスマの射撃で追い打ちされる。
 片方の刀しか武器の無い彼女―――……だが、それがどうしたというのだろうか。
 何一つ迷い無く、次射をひらりとかわすと、爆炎を背景に敵ロボットを踏み潰しつつ駆けていき、跳んだ。
 シュタムファータァ、空中で日本刀を両手に持ち替えて全身の捻りも加えまるで大剣を叩き降ろすかのように――!

 『私と、』
 『俺に!』

 言葉が重なる。言葉が不自然な響きを帯びる。
 一陣の風、否、それは真白な電流であった。
 白銀色の粒子が剣を覆う。

 『断てぬものなし!』
 『断てぬものなし!』

 白銀の雷電一閃。
 小型ロボットを勢いで踏み潰しながら着地し、立て膝をついて日本刀を一振りすると立ち上がり、おもむろに近場の一体を切り捨てる。
 次の瞬間、デカブツに切れ目が走り、真ん中からぱかりと別れると大爆発した。破片があちこちに飛び散った。



 とある世界で外殻機というロボットに乗って競技に励んでいた少女は語った。

 「世界の危機……なんて信じられないです。けど、私は戦います」

 とあるセカイで、セカイの意志と戦うことを決めた少女と少年がいた。

 「つーか選択肢もクソも無いしな」
 「ヤスっちさん、それを言っちゃあおしまいですよ」

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 最後に、とある世界から派遣されてきた検閲官の任務をおびた少女は語った。

 「力を持ち過ぎたものがこれを起こしたというのなら、私は行動を起こすまでです」

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―――――――セカイはひび割れ、やがて砕け散ろうとしている。
      歪んだパズルは元に戻されなければならない。

 「つまり私達は追い詰められつつある―――……ということでいいんですか?」
 「そういうことになります。物理法則に関係なしに、世界は傷口を塞ぐために既に動いている」
 「じゃあどうすればいいんだよ!」
 「探すしかありません。応援が期待できない今、現状の戦力……私達の手でなんとかするしか術がありません」


―――――――幾つもの出会い。

 「不思議なもんだよな、まだ生まれてすらない友人の娘の成長した姿を見てるんだから」
 「あら、並行世界がどうのってあの子言ってたわよ」

 「ろ……ボットが喋ってるとかどんだけ……」
 <そんなに珍しいのか? ああ、世界が違うのか>
 <喋らないのも存在します。ところでドンダケとは茸の一種ですか? データにありません>

 「あれ、ポニーテールじゃないんですね」
 「私、その恥ずかしいんですけど、本気になった時しか結わないんですよ」

 「帰ったらブッ殺されそうだー……マジな意味で。あのババァならやりかねないだろうな……あー鬱だ」
 「……恐ろしい世界に住んでいたんだな」

 「魔法が本当にあったんですね! いいなぁ……」
 「俺から見たらどうってこともないがな。科学と同じだ」

 「なんかメルちゃんと隆昭はどっかであった気がします」
 「俺もそんな感じが………メルフィーもか?」
 「確かにデジャヴーを感じます。なんでかな」

 「……目が怖いなアンタ」
 「自前だ」
 「少し喋れよ頼むから」
 「性格だ」
 「頼む目を閉じてくれ」
 「前が見えない」

 「ねーヤスっちさんヤスっちさん! じゃーん!!」
 「ぶーッ!? アホかお前!」
 「………んふふふふふ計画通り!」




―――――――幾つもの別れ。

 「止めろ………止めろオオオオオ!!」
 「ごめんなさい……私にはそうすべき責務がある」



―――――――狂わせた者ら。

 「我らイルミナスに、栄光の時代を。そしてお前たちに死を」
 「…………お前は……!」


―――――――これは、語られぬ戦いの記録。
―――――――これは、謳われぬ英雄達の記録。


 「ごめん、もう帰れない」
 「いや、まだ帰れる。ヒーローが来たからには、ハッピーエンドで幕引きと相場が決まっている」


―――――――今こそ語ろう、彼ら彼女らの記録を。
―――――――今こそ紐解こう、英雄の記録を。

 スーパーロボスレ大戦α ~終焉のセカイへ~
 ジャンル:シミュレーションRPG

 2999年四月発売予定。







 敵勢力の撃破を確認しました システム通常モードに移行します。


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