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続かないぞ、コイツ!

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とある並行世界の第二地球。人類が宇宙に進出してさほど時間が経っていない、その戦場で――。
 軽い震動と共に機体がハンガーからカタパルトへと運ばれて行く。
 第二地球政府と、それに反旗を翻した反乱政府軍の戦いは熾烈を極めていた。
 地球各地の都市目がけての無差別攻撃を仕掛ける反乱政府軍。それを止めようとする第二地球政府。ただ攻撃を続ければよいだけの反乱政府軍と防御をせねばならない第二地球政府軍。
 第二地球政府軍の戦力は勝っていたが、防御対象が広すぎる故に反乱政府軍を排除しきれずにいた。
 そこで止むを得ず開発したのが、従来の円盤型戦闘機とは全く異なる運用思想から建造された『航宙機』であった。
 10mほどのそれは、遠距離戦から格闘戦までを自在にこなし、遺跡から発掘される高密度エネルギー結晶『ダフネ』から生じる莫大な電力を元に動き、従来の兵器を超える異次元の性能を有していた。
 宇宙と言わず大気圏内での運用にすら耐え、特殊装甲は通常兵器級の強度を持つ。
 通常スラスターと、大型スラスターからなるその巨人は、戦場の花形であり、同時に戦場の狗でもあった。
 空中空母から緊急発進すべく、第二地球政府軍の最新鋭機『クラドセラケ』が移動形態のままカタパルトに運ばれるや、電磁装置により時速数百キロという猛速度で射出された。
 続いて量産機『ハルキゲニア』が空母から射出され、編隊を組んで飛んでいく。
 第二地球政府軍の根拠地の一つである土地に侵攻が確認され、彼らはその迎撃の為に発進したのだ。
 蒼くプラズマ化した大気を推進するクラドセラケの操縦者、ジュリア=ブルーストリート中尉は、蒼き空を電子化された視界越しに睨むと、速度を増した。

 ≪HQより迎撃隊へ、聞け。敵は制空権の確保のために航空部隊を派遣してきている。宇宙からの侵攻を別動隊が阻止している間に敵を排除せよ≫
 ≪サイファー了解≫

 本部に投げやりな返答をすると無線を封鎖。レーダーを睨みつけるが、どうせステルスをかけて突っ込んできているわけで、専用の機器を積んでいれば目視戦闘のみが頼れるものになる。
 主機から供給される電力がレーダーに映らないステルス性を可能としている為、遠距離ミサイルなどどのみち役に立つものではない。
 無論、それはこちらも同じであるが、どうにもだるくて仕方がなかった。

 「元気が無いわねぇ、中尉殿?」
 「気持ちの悪い猫なで声を出すな、少尉殿。別に誰も聞いちゃいないんだから、ジュリアでいいって」
 「ああん、クラ姉感激しちゃう!」
 「………」

 相棒であり後部座席の補助官を務めるクラウディア=リィナ=イレールア少尉が体をくねくねさせるのにうんざりして頭を振ると、脚部の偏向ノズルを反対方向に捻り優雅に一回転した。
 不審な動きに味方機がカメラアイを向けてきたので、『大丈夫』を示すべく手ならぬ尾を振って応じる。
 この程度の機動では慣性緩和が働いて何も感じないが、こうでもしなくてはやってられなかった。できれば後部座席を射出したかった。
 嫌というより、この能天気を何とかしろと言いたかったが、これでも有能なのだから世界は分からない。

 ≪エルフよりサイファー、敵確認、交戦(エンゲージ)≫
 ≪サイファー、敵機確認。各自自由戦闘許可、交戦(エンゲージ)≫

 敵機を確認した味方機の合図を皮切りに、全機が俄かに推力炎を強めるや、突っ込んでいく。クラドセラケ後部で蒼き火炎が勢いを強めるや、一陣の風となり第二地球の空を矢じりとして突き進む。
 音速を超える機体は衝撃波を生み、海面に飛沫を上げさせる。
 レーダーにようやく映った敵影、ミサイル複数確認、各機散開、迎撃開始。
 クラドセラケは一機に高度をとると、ヴァイパー曳く速度で逆さ落としで敵機に狙いを付け、ミサイルを発射した。ランチャーから数発のミサイルが躍り出るや、ロケットモーターに点火し、フェイクの動きを含めた機動で一機に迫る。

 「ブレイク!」
 「ちっ」

 クラウディアの叫びに舌打ち、熱源誘導ミサイルの弾幕が真下から撃ち返されてきたのを見るや、機体を人型へと変形、背面部スラスター全開で宙返りで回避、Gに歯を食いしばりながらその白煙曳く群れを誘導し、躱す。
 機銃の射撃シーカーに相手機を重ね、トリガー。一機撃破。火を吹いて落ちる。
 スラスター全開、先程のミサイルを回避した相手に一機の背後から接近、機銃発射、撃破。粉みじん。
 スラスターペダルを踏み込み姿勢を強引に起こすや機銃を発射し、味方機を狙っていたミサイル数発を叩き落とし、機体を反転変形機動開始。
 カメラアイの残像が糸を曳く。
 クラドセラケを狙って敵機が追いすがったのも一瞬、変形で背後を取ると容赦なく撃ち滅ぼす。スラスター出力を絞り背中から真下に落ちる。再点火、変形、宙を蹴るように回転、敵の攻撃を回避、機銃発射、応戦。
 超高速機動をとる間、クラドセラケの内部の二人の口数は激減する。ジュリアは汗を拭う暇も無く、無線に叫び。

 ≪アイギス、追われているぞ!≫
 ≪頼めるかサイファー≫
 ≪了解!≫

 仲間が追われているのをみれば、ただちに援護せんとスラスターを全開にする。
 ミサイルシーカーを呼吸するように合わせて、トリガー。十数本ものミサイルが白煙を吐きながら宙に線を描いた。


 ≪続かないぞ、コイツ!≫

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