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ヴィルティック・わっふる! Episode 01:Start!

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ParaBellum

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だれでも歓迎! 編集
 自宅に到着。鍵を開けると、既に玄関と言うか部屋が明るかった。
 珍しい……お父さんもお母さんも妹の彼方もまだ帰ってくる時間じゃないと思うんだけど。まぁ、そういう事もあるのかな?
「ただいまー」
 声を掛けたけど、反応無し。もしかしてシャワーでも浴びてるのかな。という事は、帰って来たのは、カナ?
 耳を澄ましたがTVの音は無し。お父さんなら帰ってきたらまずTVを付けるから、お父さんでも無し。そして最後の線。
 私がただいまーと言うとすぐにおかえりーと返してくれるお母さん。しかし声が何も返ってこなかったからお母さんでも無し。
 この伯方の塩よりしょっぱい推理からして導き出される答えは、カナ。それにしても最近は部活が忙しいからこんな時間には帰って来ないはずなんだけど、どうしたんだろう。
 外が暑かったし、汗掻いてるからシャワー浴びたかったんだけど……カナがシャワー使ってるなら仕方ないか。


 ♪ 中 略 ♪


 私は電話を切って、目の前でバスタオルに身を包んだ、変な女の子に視線を向ける。
 何故だか異常に鼓動が速くなるけど、胸を抑える事で無理やり鼓動を沈めながら、私はその女の姿を観察する。
 ……私より背が高い。顔立ちは美人。鼻が高くてすらっとしてて、切れ長の口にクリっとした目。
 髪の毛は銀色、会長と同じ。それと、その女の耳からぴょこんと生えている狐の耳。私の中でふわふわしていた疑念という気体が確信と言う名の固体をとる。目の前にいるこの子は……間違いない。
 だが、そんな事よりも気になる事がひとつ。そう、この子、バスタオルから分かるくらい胸が大きいのだ。私とは月とスッポンだ、ついでに女の子はスッポンポンだ。
「あなたは、一条 はr」
 色々疑問は尽きないが、そんな事よりも一番言わなきゃいけない事はひとつ。
「まず服を着なさい! 女の子でしょ、はしたない!」
「ご、ごめんなさい、お母さん!」
 女の子は顔を真っ赤にして脱衣所へ駆けて行った。それにしても……お母さん? まあ、学校の先生をお母さんと呼んでしまうようなものだろう。可哀相だから黙っておく事にした。
 それにしても、こういう場合どう動けばいいんだろう。
 鍵が閉まってる家に侵入するのは立派な犯罪だ、引っ捕らえて警察に突き出してもよかったような気がするけど、なんか悪い子じゃなさそうだし。
 そんなこんな考えていたら、女の子が戻ってきた。戻ってきたけど、そのピッチリした格好は、なんというか――――

「スリーアウト! チェーンジ!」
「えぇーっ!?」
 女の子が驚愕する。「ガビーン!」なんて写植が見えるような顔だ。
「その格好は服を着たとは言いません! やり直し!」
「ご、ごめんなさい!」
 またも女の子は脱衣所へと消えていった。まったく、最近の若い子は……恥という概念がなくなっちゃったのかしら。
 とりあえず、次こそはあの子がまともな格好をしてくると信じて、飲み物を用意する。薄めのカルピスでいいかな。
 氷がカランと音を立てる。窓を開けると、むわっと生暖かい風が入りこんできて、風鈴が歌いだす。その歌は、本格的な夏の到来を感じさせた。
 夏だ! 海だ! スイカ割りだ! 去年スイカをエルボー・ドロップで粉砕した事を思い出しながら、今年はみんなでどこに行こうか考える。
「あのー」
 山もいい、川もいい――――ああ、夏ってなんでこんなにいい季節なんだろう!
「あのー」
 移動は電車かバスか……いやいや、自転車という手もある。
「遥さーん」
 潮風を浴びながら海岸沿いでペダルを漕ぐ……なんて素敵なんだろう! もちろん夜は花火を――――
「は、る、か、さん!」
「あ、ごめん! カルピス用意しといたよ!?」
「え? あ、どうも。いただきます」
 ちうー、とストローでカルピスを一口飲む女の子。私も一口飲んでコップを置く。
「ふぅ……。で、ちょっと質問があるんだけど……」
 戻ってきた女の子の服装を見る。上から下まで、どう見てもウチの学校の制服だ。
「えーと、あんまりとやかく言いたくはないんだけど。その格好……趣味?」
「違います! ……って、そんな事してる場合じゃありません!」
 女の子が私を凝視すると、懐から何かを取りだした。黒色に黄色いラインが一本入ったカードだ。
「トランスインポート」
「トラップカード?」
 カードが趣味の人なのかな? でもどんな趣味を持つかは人の自由だし――――そんな事を考えながらカルピスを一口飲む。
 するとカードの絵柄から何かが浮き出てきて、彼女の掌の中で何やら物々しい物体へと変化した。

 あれ? これトラップじゃないような気がする。というかこれ、なんだかハジキっぽいんだけど。やっぱり警察に突き出したほうがいいんじゃなかろうか。幸いトリガーに指は掛かってないし。
 ――――と、いうわけで。
「ふんっ」
「ああっ!?」
 予備動作ゼロで脚を上げて、ハジキっぽいそれを蹴り飛ばすと、ジャンプしてそれをキャッチした。
「やっぱり犯罪者かーっ!」
「えぇーっ!?」
 ガビーン二回目。だがこの一条 遥、悪党には容赦せん。数々の犯罪者逮捕に協力した実力、今ここでお見せしよう!
「ち、違います! 私は、未来を救うために――――」
「そうか電波かーっ!」
「えぇーっ!?」
 ガビーン三回目。それと同時に、私は彼女に組み付いて――――


 ♪  ♪  ♪


「突然お邪魔した上に、シャワーを無断で借りてしまい、誠に申し訳ありませんでした」
 深々と土下座する、銀髪の女の子。
「うん、謝るならよろしい」
 私も女の子の目の前に正座する。
 場所は変わって私の部屋だ、これなら友達だ、とごまかせる。
「未来を助けて欲しい云々はわかったから、他に色々と聞きたい事があるんだけど……まず、あなたは何者?」
「はい、ちょっと待ってくださいね……」
 女の子は、また一枚のカードを取り出して床に置く。
「まずは……何を構えてるんですか!?」
「机。自爆テロとかされたら困るもん」
 こんなガラスの机じゃ雀の涙だけど。
 すると女の子は少しむくれてから、カードに触れる。するとカードから、ぶわっと何かが飛び出してきた。私はついつい感嘆の声を上げてしまう。
「まず、私の名前はメルフィー・ストレインと言います。歳は17。あちらの世界では高校生をしていました。生憎、もうずっと休学状態ですけれど」
 へー、17なんだー。未来の子って発育いいんだなー。感心しつつも机を下ろす。
「それと学業を兼ねて、私の両親が創り出した巨大ロボット――――アストライル・ギアを使ったゲーム、ブレイブグレイブのプレイヤーを勤めていました」
「ブレ……グレ? それって――――」
 私の疑問にメルフィーが頷いて、カードに触れた。するとカードのホログラムが変化して、色々な形状のロボットが様々なフィールドで戦っている場景が立体的に写し出される。

「わぁ、映画館いらずだね」
「え?」
「ううん、なんでもない」
 続いて世界中のあらゆる場所で、ブレイブグレイブに熱狂している様が浮かび上がる。時に笑い、時に泣き、時に怒り――――ああ、なんというか、
「この熱狂、まさに人生の縮図……!」
「ブレイブグレイブのキャッチコピーのひとつですね。考案者は――――いえ、その話は後にしましょう」
 カルピスを一口。
「ブレイブグレイブは世界中で評価され、人々の間で熱狂的なブームになりました。しかしその裏で、ブレイブグレイブを維持していく為の費用とギアの整備費が枯渇していく事に、父は強い危機感を抱いていました」
 カルピスを二口。
「そんな日、父の元にイルミナスと名乗る集団が現れたんです」
 カルピス三口。喉が渇いてるなら全部飲んじゃえばいいのに。
「イルミナスは父に政府によって結成された特別組織を名乗り、父にギアを利用した軍事研究をしたいと持ち掛けました」
 ガラスのコップが空っぽになり、氷がこ気味いい音を立てる。
「父は自分の作ったゲームが軍事利用される事に懐疑心を持ちましたが、イルミナスが研究資金として差し出した金額に――――」
 それから様々な事がホログラムに表示されていくが、メルフィーは俯いたままだ。
「メルちゃんの言いたい事は大体わかったから、それ以上話さなくていいよ。だってメルちゃん、泣きそうな顔してる」
 よく見ると、メルフィーのぎゅっと握り絞めた拳に、涙がポツポツと水溜まりを作っていた。泣きそうんじゃない、この子、泣いてる。
「よしよし、大丈夫大丈夫。ようはそのイルミナスっていう悪の組織をぶっ潰せばいいんだよね?」
 メルフィーが、私の胸の中で頷いた。
「それなら手っ取り早いよ」
 泣きじゃくるメルフィーを抱き寄せる。

「私が、正義のヒロインになってあげる」


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