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第一回

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時のジグパルス   第一回


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○九州沖・昼間・現作戦海域
 上空を旋回する無人偵察機。
 機体には(DADA)の文字。
 投下されるソナーブイ。


 海中で息を潜める潜水艦。
 一定間隔で聞こえるソナー音。
 海中に揺らぐ巨人の影が二つ。


 魚雷発射菅の注水音。
 徐々に縮まるソナー音の間隔。
 続けて魚雷の連続発射。


 巨人たちの周りを通り過ぎる魚雷の群。
 巨人から発せられ始める青白い光。
 先の見えない暗い海中を突き進む魚雷。


 得体の知れない生き物たちの黒い群。
 魚雷が突入する。
 続く大爆発。



○長崎市内
 夏の昼下がり。
 立ち並ぶ中規模のビル。
 人はまばら。車もまばら。
 日傘を差した母子連れ。
 若いカップルの姿。
 道路の真ん中を路面電車が走っている。


 警笛音。
 終着駅で止まる路面電車。
 すぐそばにバスの停留所。
 ガラス窓の掲示板。
 (戦時国民管理局より一般向けガソリン販売
  臨時規制ついてのお知らせ)


 路面電車から降りる乗客。
 夏着を着た少女が降りてくる。
 疲れた表情。
 背中には旅行鞄を背負っている。
 きょろきょろと周りを見回す。
 近くに自動販売機を見つける。
 よたよたとした足取りで向う。



○九州沖・作戦海域
 立ち上がる水柱。
 鳴り響く爆音。
 飛来する軍用機から海中投下される爆弾。
 泡立つ水面。
 海面上に飛び出してくる黒い生物。
 小型、中型ヴォイド体の群。
 海面を覆い尽くし浮遊する。


 戦闘陣形の条約機構軍(日本国防衛軍)
 の艦隊群。
 特殊装備艦から一斉発射される、
 渦巻いた光線。
 ヴォイド体の群に浴びせられる。


 光線を浴びせられ飛散していくヴォイド体。
 艦隊に向かって、侵攻をはじめる。
 光線により開いた隙間を、
 再び埋め尽くしていく。


 艦隊群の前に海中から飛び出てくる。
 二つの人型の巨体。
 豪快に飛び上がる水しぶき。



○ジグ一型機・操縦席
 太陽光に照らされて、
 かっ!と目を見開く少女。
 操縦桿をぐっ、と握る。



○九州沖・作戦海域
 飛び出した勢いそのまま。
 一型機が短刀を投げる構え。
 両掌から溢れんばかりの赤い光。
 短刀をヴォイドの群に投げつける。


 短刀はヴォイド体の中に飛び込んでいく。
 逆V字型に群を飛散させる。
 特殊装備艦とは桁違いの攻撃力。
 一型機は短刀の後ろを追従していく。
 空中で短刀を掴む。
 中型のヴォイド体が一斉に襲ってくる。
 敵ともつれる一型機。
 溢れる赤い光。
 飛散するヴォイド体。
 敵を蹴散らしながら急上昇していく。



○ジグ二型機・操縦席内


 カウントをしている少年。
 連続攻撃のタイミングを伺っている。


ソウマ「6,5,4,3、2・・・」



○バス停留所
 自販機の前にいる少女。
 横に8個のサンプルが並んでいる。
 すべて赤い缶(USACOLAの表示)。
 右端以外は売り切れの表示。
 うなだれる少女。
 ボタンを押す。
 赤い缶がでてくる。
 缶を開けると中身が吹き出てくる。 


リノ「あーあ」



○九州沖・作戦海域


 二型機の胸部が開く。
 胸部の素体が露になる。
 宝石のようなものが無数に、
 埋め込まれている。
 宝石が飛び出して拡散しながら、
 ヴォイド体の群に突入。


 右の掌を前に掲げると赤い光を放つ。
 光は拡散した宝石に広がっていく。
 ヴォイド体の群から大爆発。


 二型機の高度がぐんと下がる。
 一型機が二型機の背面に降りてくる。
 二型機の機体を支える。



○赤松家の家・周辺
 日本家屋の二階建ての家。
 赤い屋根。
 目の前は海と砂浜。
 周りに広がる小規模な段々畑。
 裏手には小高い山。
 沖からはドーン、ドーンという、
 残響音が響いてくる。 
 段々畑には農作業中の老婆がいる。
 顔をあげて沖を見る。


キヨコ「騒のしいのぅ」


 庭の軒先にある日陰。
 大型犬(柴犬の雑種)涼んでいる。
 伏せながら舌をだして荒い呼吸を吐く。



○バス停留所
 夏の日差しの下、バスを待つ少女。
 缶ジュースを飲んでいる。
 バスが近づいてくる。
 少女は急いで缶ジュースを飲み干す。
 途中でむせる。
 空き缶を停留所にあるくず籠に捨てる。
 バスに乗り込む少女。



○九州沖・作戦区域・上空
 上空を迂回する無人偵察機。
 搭載された各種レーダー機器やカメラが、
 作動している。



○インスーラ・ダダ・戦闘指揮所
 【インスーラは基地がある島の名称、
  ダダはジグを運用している組織名】


 大型スクリーンに映し出される、
 作戦海域上空からの映像。
 最初はノイズまみれの状態から、
 綺麗に表示されていく。
 さまざまな戦闘情報が表示される。
 モニターのマップに光点が点灯している。


 半分床に埋まったブースが、
 三つ並んでいる。
 作業に追われる管制官。
 後方には二つの副官ブース。
 副官二人は立ったまま仕事している。
 女性の副官は外国語(ロシア語?)で、
 インカムを通し怒鳴り散らしている。 
 最後部のブース(チーフ席)は不在。


ワク「EMPの妨害3%まで低下。
  偵察機からの映像回復します。」


ミツキ「カテゴリーワン、カテゴリーツー、
   残存勢力4%まで減少。
   条約機構軍RDFに対し再攻撃のオーダーを行います」


松「ジグはガスの交換後、第二作戦海域までさげろ。
 あー、そうだ、三型機の機動許可は?」


時子「ラボより限定条件付で提示されています。どうします?
  まだ機体整備中ですが」


松「ちょとまて、こちらでチーフに確認をとる。三型機は整備が終わり次第、スタンバイに廻せ」


 敵反応を知らせるモニターの表示。 


ワク「オプテリクス【無人偵察機名称】
  オメガよりヴォイド体の探知信号。
  映像出します」


 大型スクリーンに映し出される、
 海中を漂う無数の黒い影。
 副官ブースの女性がインカムを外す。


ノーラ「どうなってるの、中国側の情報と違うじゃない?」



○港町
 あまり活気のない港の光景。
 すぐそばの国道を走行するバス。
 停留所の前で止まる。
 バスから老人がおりてくる。



○バス車内
 最後部海際の席に座る少女。
 客は少女一人だけになる。
 うつらうつら、としている少女。
 膝には折りたたまれた地図。 
 バスが動き出す。
 地図が膝から滑り落ちる。
 メモ用紙の紙切れが隙間からでてくる。
 (赤松寺)と書かれている。



○九州沖・作戦海域
 海上で停泊している大型のフロート。
 大きなイカダである。(DADA)と
 大きく記載されている。
 甲板にOCの固定器具。
 5本固定されている。1本は空いている。
 【OC・特殊高濃度酸素が入っているカートリッジの名称】


 下半身を海中に沈めている二型機。
 フロートを浮き板がわりに使っている。


 一型機、浮遊しながら足だけ、
 海面につけている。
 OCを固定器具から1本はずす。
 機体背面の酸素供給モジュールに、
 横向きに差し込む。
 押し出されるように使用済みの、
 カートリッジが海面に落ちる。
 投下されたカートリッジからは、
 黄色いウキが噴出。海面に浮く。
 一型機、下半身を海中に沈める。


 ジグ二型機・操縦席。
 サイドモニターに機体データーが、
 表示されている。
 少年が口に酸素マスクをつけている。
 マスク越しにつぶやいている。
 目がきょろきょろと動いている。


ソウマ「FからC、Dマイナス、
   AからD・・・
   再生成率が前より落ちてる、
   どこか悪いのか?」


 ジグ一型機・操縦席。
 操縦席に座っている少女。
 周りはデーター画面で埋め尽くされている。
 手元には空中キーボードが表示。
 キーボードを操作している。
 CICと第二波攻撃についての、
 ブリーフィング中。


ワク『現在、偵察機を総動員して、索敵を
  おこなっている。中国側がいいかげんな
  情報を送ってきたみたいだ。
  それと、条約機構軍が作戦行動半径を狭めるそうだ』


カンナ「了解。決定次第こちらに
   戦術データーをリンク87で
   リンクさせて。
   三型機はこちらに送れそう?」


時子『三型機はキューブの動作不良で再調整中だそうです。
  ムツネさんも下で待機中よ』


カンナ「カテゴリー・フォーが含まれていた場合に・・・」


 少女の手の動きが止まる。
 ゴゴゴゴ、という風を切るような音が、
 鳴り響いてくる。
 ディスプレイが全て消える。
 手元のキーボードも消える。
 音はだんだんと速度を増す。
 しばし間が空く。


 少女は着用しているパイロットスーツの
 通信装置を作動させる。


カンナ「ソウマ、聞こえる?」


 相手からの返事はない。


カンナ「なにかが起きている?」



 一型機・喉元から操縦席の、
 外部ユニット部分が出てくる。
 本体ユニット(キューブ状)のハッチが開き、
 パイロットが姿を見せる。


 すべてが完全なる静音。
 聞こえてくるのはゴゴゴという音だけ。
 波の動きが止まっている。風もない。
 空気そのものが止まっているかのよう。
 少女の長い髪の毛も微動だしない。
 周りを見回す少女。


 正面を見た瞬間。
 目の前に円筒形の黒い物体。
 ゴゴゴという音を発しながらゆっくりと、
 回転している。
 手を伸ばしても、届かないような距離。
 大きさは一メートルほどで小ぶり。


カンナ「オウロ・・・フィル?」


 つぶやくように口にした少女。
 目の前の物体に見入る。


 遮るようにパイロットスーツから無線の声。


ソウマ『カンナさん!』


 二型機操縦席。
 マスクを首元にかけている少年の姿。
 ディスプレイには外の映像。
 一型機と操縦席でたたずむ少女の姿。
 風で髪が揺れている。
 黒い物体の姿はどこにもない。


時子『どうしたのカンナさん?
  機体の異常?』


カンナ「なんでもない・・・」


 しばしの間。
 無表情で答える少女。
 操縦席に姿を消す。
 機体内部に収容されていく操縦席ユニット。


 一型機・操縦席内が正常に作動を始める。



カンナ「一型機はインスーラに帰島する」


 一型機、タンクを乱暴に一つ掴む。
 機体が急上昇して飛び去っていく。


○海沿いの国道
 山の裾野に作られた道路。
 横は岸壁、下は海に面している。
 バスが走行中。
 対向車が一台通り過ぎる。
 交通量は少ない。
 バスを並走するように追いかける、
 海面の巨大な影。
 長細い蛇のような形状。
 四つの腕がぬっと海面にでてくる。


 バスの中で寝ている少女の寝顔。



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             第一回 終了

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