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パラベラム! ―運び屋アルフの何ということもない一日― Prologue

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ParaBellum

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 赤茶けた大地を暗青色の悍馬―プフェーアトタイプの機械人形に牽かれた一台の貨物装甲車が疾走している。
 土埃で茶色っぽくなった車体には目立つ文体で、「御用があればどこまでも。運搬、護送のブラックキャット商会」というキャッチコピーと、黒猫をデフォルメしたと思しき、目元の凛々しい2.5頭身のマスコットが描かれている。
 運転席に座るのは、ごつい造りの車体に似合わない、伸び放題の焦げ茶色の長髪を襟首で括った細身の若者。
 「~~~♪~~♪」
 社名入り作業着の上下を着込み、色の濃いサングラスをかけた若者は、クルマの速度に似合わない、緩やかな曲調の鼻歌を歌っている。
 若者―アルフレッド=カギーサ・マノ、通称アルフは運び屋だ。
 運び屋とは、列車などの定期的な流通網が通っていない場所へ物品や人物を送る場合、定期便では間に合わない緊急な輸送が必要な場合等で利用される職業だ。
 野良オートマタと遭遇したり、時には圏外へも足を踏み入れたりする危険が伴うが、その分支払われる報酬も高い。
 最も、個人営業ではなく、雇われのアルフにとって収入は歩合制なので余り関係ない。
 上司に割り振られた仕事をこなして給料を貰う、他の様々な仕事と何ら変わりは無いというのがアルフの感想だ。
 「ラ・ラ・ララーラーン♪タータタタッタタンターン♪」
 サビに入ってノって来たのか、鼻歌ではなくなった。
 「タタターン・タン♪タータタタ……」
 歌詞は忘れているようだが、アルフが調子よく歌っているところに、
 <ご機嫌ですね、主様(ぬしさま)>
 鈴を鳴らすような少女の声がかけられた。


 ▼`・ω・´▼キリッ


 しかし、大人3人が楽に座れる広さの空間には、アルフ以外の人間は座っていない。
 助手席にあるのは中程に青い石が填め込まれた杖、柄頭に赤い石が填め込まれた反りのある極東風の長剣―太刀と、同じく柄頭に白い石が填め込まれた極東風の小剣―脇差。
 アルフはその3つの品に一度目を向け、
 「あぁ、ごめんごめん。ちょっと五月蠅かったね」
 と苦笑しながら“白い石の脇差”に向けて謝罪した。
 そして脇差からは、先程の少女の声が返ってくる
 <いえ、主様は御声がよろしいので五月蠅くはありません>
 「ハハッ、有り難う、葉月(はづき)。まぁ、機嫌が良くなるってもんだよ。予定より早めに荷物届けられた上に、あんなに丁寧に感謝されて、オマケに土産まで貰えたんだから」
 <確か、運ばれていたのは……>
 「あぁ、薬だよ。成長中の麦に出る病気を防ぐ薬。今年はあちこちでその病気が流行ってて、大規模な農園が競って確保した所為で品薄になってたらしいんだ」
 「それで依頼主、あの村の村長さんなんだけど、その薬を作ってる会社に直接出向いて話が付いたから、大至急村まで届けて欲しい、って依頼だったんだ」
 <成る程、農家にしてみれば命の恩人という訳ですね、主様は>
 「ハハハ、恩人って言うならそれはウチの商会だね」
 <それでも主様は感謝をされて良いと思います。実際に危険な場所を通って荷物を届けられたのですから>
 「それなら感謝されるべきは……」
 そこでアルフは言葉を句切り、車体を牽くプフェーアトタイプと太刀に一度ずつ視線を向け、
 「ブラウと朱天(しゅてん)だね。実際に働いたのは2人だし」
 笑顔でそう口にした。


 ▼`・ω・´▼キリッ


 そのアルフの言葉に対して、
 <この程度、働いた内には入りません。軽い荷を運び、野良共を蹴り飛ばしただけですから>
 杖からは謙遜する涼やかな青年の声が、
 <……儂は働いてはおらんぞ、主(あるじ)。雑魚を脅すために2回呼ばれただけじゃぁ。指の一本も使ってはおらん>
 太刀からは、言外に暴れられなかった不満を表す低く太い声が発せられる。
 杖から発された声の主は、今現在貨物装甲車を牽いているプフェーアトタイプ-ブラウ・プフェーアトで、太刀からの声はアルフのもう一体の仲間-朱天の物だ。
 「それだけでも充分働いてくれてるよ二人とも。じゃあ、あの感謝は皆の物、ってことで」
 <フフフ、その仰りよう。主様らしいです>
 「ん?何かおかしかったかな?……まぁいいや。そろそろいい時間だし、何処かで食事がてら休憩でも……」
 そうアルフが口にすると同時に、杖から
 <アルフ殿、3時の方向に微弱なマナの反応が3、やや強い反応が1。どうやらまた野良の様です。私が向かいますか?>
 とブラウが声をかけてきた。
 それを聞いて朱天-正確には召喚媒体である太刀が、
 <……儂が出よう。4体程度、3分もかからん>
 と低く呟き、ガチャリと一度鍔を鳴らす。
 若者はそんな仲間の様子に頭を掻きながら
 「あー……ごめんね朱天」
 謝罪の言葉を口にする。
 アルフが契約を結んでいる3体の機械人形の内、朱天は経済的な物も含めた諸々の事情により滅多に表に出せない存在であるが、朱天本人は暴れることが何よりも好きという性格をしている。
 朱天の意志を尊重したいがそれが出来ないという現状を、アルフはいつも申し訳なく思っているのだ。
 <……ふん、分かっておったわ>
 そして朱天もアルフの意志を慮って己の根元的欲求とも言うべきその衝動を抑えているのである。
 朱天の返事に眉尻を下げた笑みを浮かべたアルフは
 「えーと、それじゃあ、このままの速度でどこか使えそうな高台がある場所まで誘導しよう。それからはいつも通り、ブラウが先行して、葉月が援護ってことで。頼むよ二人とも」
 意識を切り替えて2体の機械人形に指示を出し、
 <承知した。アルフ殿>
 <主様のご命令のままに>
 <………………ふん>
 3体の機械人形がそれぞれの反応を示した。


 ▼`・ω・´▼キリッ


 停止の命令を受けたブラウが徐々に速度を落としていき、貨物装甲車は小高い丘が近くに見える街道の脇に停止する。
 アルフが脇差をベルトに差し、杖と太刀を手にして運転席から下りるのと同時に、車体から伸びる牽引用の棒状のパーツとブラウを繋いでいた連結部分が独りでに―実際は違うが―外れていく。
 太刀もベルトに差して落ち着けたアルフは左手の杖で地面を突くと、
 <いくよ、ブラウ>
 軽く目を伏せ、地脈を通してマナをブラウへと送った。
 数秒もしない内にブラウが
 <万全です。アルフ殿>
 とコンデンサが満タンになったことを告げてくる。
 「うん。それじゃ次は葉月だ」
 <いつでも宜しいですよ、主様>
 「頼もしいね。では……」
 アルフは脇差の柄に右手をかけ一気に抜き放つと、指の動きだけで逆手に持ち替え、片膝立ちになりながら脇差の切っ先を地面に突き立てる。
 そして「その言葉」を口にした。
 「……パラベラム!」
 地脈を通じて召喚されたのは、そこかしこに茶色い塗装が入った白いボディーに、テールスタビライザー一基を備えた機械人形。
 機体の形式はヴァルパインタイプと同系列で一回り小さいルナールタイプ。
 葉月・ルナールは跪き、主に一礼すると一言。
 <では主様、参りましょうか>
 葉月の呼びかけにアルフは、
 「よし、行こうか。ブラウも宜しく」
 脇差を納めつつ、ブラウに声をかける。
 <了解しました。アルフ殿>
 ブラウも契約者からの呼びかけに恭しく一礼する。
 移動の為、葉月が差し出した手にアルフが足をかけた所で、
 <……主。車の護衛はいらんのか?>
 未練がましく太刀から、遠回しに配置変更を求める発言が為されたが、
 「車は葉月がカバー出来るから大丈夫。だから悪いけど今回も我慢してね」
 <……分かったわい>
 眉尻を下げた笑顔で宥めるアルフの様子に、渋々と口を閉じる朱天。
 <フフフッ、流石、朱天様は主様にお優しい>
 <……煩いぞ子狐。早う行かんか>
 それを見ていた葉月がからかいの言葉をかけ、朱天は憮然とした声音で葉月を促した。


 ▼`・ω・´▼キリッ


 葉月に支えられてアルフが運ばれたのは丘の上。
 <距離から換算して、あと数分でブラウ様に追っ手の方々が接触します>
 視界を遮る物は無く、先程アルフが召喚した多機能センサー内蔵型ゴーグルを装備した葉月には、丘の真下から少し離れた平地で待機しているブラウの姿が見えている。
 「葉月、問題はありそうかな?」
 地面に下ろされ、周囲の地形を観察していたアルフは、同じように周囲を確認している葉月に声をかけた。
 <……そうですね。特に問題はありません。風も殆どありませんし>
 膝立ちになっていた葉月は、ゴーグルをカメラアイの上に押し上げ、立ち上がりながら答えを返す。
 「分かった。じゃあ、いつも通り頼むよ。……パラベラム」
 キーワードと同時に葉月の周囲にマナの光が踊り、彼女がその本来の姿を取り戻した。
 機体の重要な部位に流線型を描く装甲が、左右の下腿部にそれぞれスラスターが2基ずつ、背部に可動式スラスター2基が追加され、テールスタビライザーが合計5基にその数を増やす。
 武装は左腰部前面に、大型の回転弾倉式拳銃が一丁。
 そしてアルフは
 「解放符号(リリースコード)、『其は魔弾、其は神速にして必殺』」
 <『万里を飛翔し、月すらも穿つ』>
 コードの詠唱と共に、アルフの眼前に、極東の文字で埋め尽くされた一枚の空間投影型スクリーンを浮かび上がった。
 そしてアルフはそのスクリーンの中央、大きく五芒星形が描かれた部分目掛け、

 「特殊武装第一段階限定解除(エグザーム【ExArm】ファーストリミテッドリリース)」

 そう口にしながら握った右の拳を突き出し、星形ごとスクリーンを叩き割る。
 葉月は間髪入れずに使用を許可された自分の固有兵装を召喚。
 <―久しぶりですねぇ、この重みも>
 少しも重そうな様子を見せずに、そんなことを口にしながら、実体化した『それ』を右脇に抱えるようにして保持する。
 地面に長い影を落とす『それ』は、全長が葉月の体高を越える一丁の長砲だった。

 ―対機械人形用加速投射砲 【月穿(げっせん)】―
 『機械人形のマナによる防壁と装甲を突破できる威力を持った武器』を『使役する機械人形に運用させる』という思想を、実戦レベルにまで昇華させた、ある集団によって開発された兵器である。
 懸架・衝撃緩和用のフレームで葉月の背部に繋がっているそれは、火薬で弾丸を射出する本体部分と、使用する機械人形からのマナで弾丸を加速させる砲身部分で構成されている。
 大型機械人形の装甲を破壊するだけの威力を得るために、加速用の砲身部分が全体の3分の2を占めており、更に弾丸自体にもマナを纏わせて威力を高める工夫が施されている。
 その為にマナの消費が激しく、連射は出来ず、常に神子のサポートが必要という欠点が生じてしまっている。
 しかしこれはあくまでも、「大型機械人形の装甲を破壊するのに充分な威力」を出す為に必要であって、それ以外の用途に使用する場合は、マナの消費量はさほど大きくはない。

 葉月はゴーグルを再び装着すると、砲身上部のグリップを左手で握り、右手に銃把を収め、左脚を前に右脚を後に軽く開いて射撃姿勢を取った。
 改めて右手で切替機を操作し、特殊加工を施していない通常弾を選択、装填桿を引き初弾を薬室に送り込む。
 <主様、準備が整いました>
 「よしっ」
 葉月の報告を受けたアルフは、ブラウに言葉を送る。
 「……ブラウ、用意は良いかい?」
 ≪無論です。危うく待ちくたびれて寝てしまう所でしたよ≫
 「ハハッ。……じゃあ、頼むよ」
 そういってアルフは葉月の隣に立ち、裸眼では豆粒程の大きさにしか見えないブラウに視線を向けた。


 ▼`・ω・´▼キリッ


 前方から来る複数の機影とマナの反応を感知し、ブラウは改めて気を引き締めた。
 ―己の契約者が背後にいる。
 <ならば、守りきるのが友である私の役目>
 放熱索の役目を持つ鬣(たてがみ)と尾を乾いた風に靡かせ、右前足で軽く地面を掻く。
 間もなく、黙視できる距離まで敵が近づいてきた。
 仲間と合流したのか、フリューゲルタイプが2機とカーネタイプが5機。
 そしてカーネタイプの中の一機は他の機体より一回り程大きい。
 おそらくあれがこの集団のボスだろう。
 <止まれ>
 その、静かだが力のこもった呼びかけに、近づいてきた集団がその足を止める。
 <私たちに何の用だ?>
 <……>
 ブラウの呼びかけに、相手は答えない。
 しかし悍馬の外見を持つ機械人形は辛抱強く言葉を重ねる。
 <マナの補給を望んでいるのなら、私を破壊するよりも効率のいい方法を提供できるが?>
 しかし、頭目格のカーネタイプからの返答は、
 <何処ニ隠レテイルカハ分カランガ、神子ガイルノダロウ?ナラバ貴様等ヲ破壊シテカラ、神子ヲ殺ス>
 著しく非友好的な物だった。
 今までの経験から、返答は決して変わらない事を理解していたブラウは首を一度振り、
 <……交渉は決裂か。ならば、今から私は貴様等の敵だ>
 全身にうっすらとマナの輝きを纏い、
 <我が名はブラウ・プフェーアト。破壊される事を恐れぬならば……>
 右前足で地面を一度強く蹴り付け、
 <……掛かって来るが良い>
 目の前の群れを見据えた。


 ▼`・ω・´▼キリッ


 ブラウと野良の遣り取りの様子を、ゴーグルで確認していた葉月は、ブラウが障壁を纏った様子を確認すると、
 <マナを受け取って帰って下されば、争う必要もないでしょうに……>
 溜め息でも吐きそうな様子で、感想を述べた。
 アルフは小さく苦笑しながら、葉月を宥める。
 「まぁ、あのヒト達の気持ちも分かるよ。……彼等にしてみれば、神子との契約は“下僕に成り下がる”ってことなんだろうから。神子っていう存在自体が我慢できないんだよ」
 <主様……>
 アルフの発言に、ゴーグル越しに視線を向ける葉月。
 その視線に、流石に言い方が不味かったかと気付いたアルフは、
 「まぁ、だからって殺されてあげる訳にもいかないし。さぁ、葉月。ブラウの支援頼むよ」
 情けない表情で、ごまかしの言葉を口にした。


 ▼`・ω・´▼キリッ


 先手を打ったのは野良の集団だった。
 <行ケ!オ前タチ!>
 リーダー格のカーネタイプ―ボス(仮)は号令を下した。
 先ずは牽制として二体のフリューゲルタイプが、ブラウへ急降下での接近を行いつつ、機銃を掃射。
 僅かな時間差を以て標的の真上で交差するような機動をとり、銃口から弾丸をばらまいていく。
 それから少しの間をおいて、カーネタイプが二体ずつ左右に展開し、挟み込むようにして、馬の形状を持つ機械人形へと襲いかかる。
 上空からの射撃で獲物の動きを封じて、複数体で一斉に(時には時間差を付けて)攻撃を行う。
 一撃を与えたら即座に離脱し、反撃の隙を与えず、徐々に獲物を疲弊させていく。
 中型はおろか、防御力の高い大型に分類される機械人形相手でも、この方法で狩ってきた。
 マナが頭に回っていない野良にしては悪くない連携であるが、今回に限っては致命的な敗因が一つ存在していることに気付かなかったのが、この野良達の不幸だった。
 それは、相手がただの機械人形ではなく、ブラウ・プフェーアトと、葉月・ルナールということだった。


 ▼`・ω・´▼キリッ


 2体のフリューゲルタイプ―フリューゲルAとBは、機銃を撃ちながら翼を畳み、急降下による強襲を行い、そして再接近した時点で翼を広げ、急上昇による離脱。
 <ヒャッハーッ!モウ一丁ー!>
 ブラウから十分な距離を取った二機のフリューゲルA、Bは、再び銃撃を行うために反転を行う。
 僅かに速度を落とし、旋回を行おうとしたその瞬間、

 金属質な破砕音と衝撃がフリューゲルタイプAの機体を震わせる。

 <ナ……!?>
 胴体の中央、丁度コンデンサが存在する部分に開いた破砕孔を確認したのを最後に、機能停止に陥ったフリューゲルAは空気抵抗を受けながら、作成に失敗した紙飛行機のように墜落していく。
 <ド、何処カラ撃ッテヤガル!?>
 コンビの相方を失ったフリューゲルBが攻撃が来たであろう方角にカメラアイを向ける。
 <……アノ距離カラ、コンデンサだけを狙った狙撃ダト!?>
 最大望遠にして漸くその機体―豆粒ほどの白いルナールタイプを確認したフリューゲルBだったが、次の瞬間その機体を衝撃と破砕音が襲う。
 <……カ、ハッ>
 一撃目から間髪入れずに放たれていた第二射によって、相方と同じように胴体への狙撃を受け、フリューゲルタイプBは為すすべもなく落下していく。
 <……もう少し制動をかける拍子を工夫なさらないと、いい的ですよ?>
 装填桿を操作し、次弾の装填を行いながら静かに呟く葉月。
 <それに……>
 静かに言葉を続けながら砲身で周囲を薙ぎ払うように、一挙動で180度右回転。
 背後から襲いかかろうとしていた、カーネタイプより一回り小さな犬型―フントタイプ3体に向き直り、
 <……忍び寄る時は、もう少し穏形に気を遣う物です>
 月穿の引き金を引く。
 一体が腹部のコンデンサを貫かれ、機能停止。
 葉月は地面に頽れるフントAを確認しつつ、神速の手捌きで次弾装填。
 地を蹴り、アルフに飛びかかるフントBに近距離での砲撃。
 二体目も同じく、コンデンサを貫かれ機能停止。
 二体を連続で撃破した葉月に対して、三体目のフントCは仲間が後方に吹き飛ばされるのにも構わず、鈎爪をアルフの背中に突き立てようとする。


 ▼`・ω・´▼キリッ


 白いルナールタイプの長砲が、こちらの動きを追うが、
 ―アノ長砲ハ手動装填ダ!間ニ合ワン!
 装填、照準、発射の3動作よりも、既に爪を突き込むだけの1動作の方が確実に早い。
 <貰ッタ!>
 鈎爪の先端が神子の作業服の生地に触れる、
 <えいっ>
 その寸前に、殴られたような衝撃とともに、真横に吹き飛ばされた。
 ―馬鹿ナ!? 一体……。
 吹き飛ばされる視界の中、フントCが自分のカメラアイを、原因であろうルナールタイプに向けると、こちらに向けて伸ばされた右手に、硝煙を立ち上らせる一丁の、規格外とも言える巨大な回転弾倉式拳銃が握られていた。
 ―アノ一瞬デ武器ヲ切リ替エテ早撃チ(クイックドロウ)ダト!? シカモ、拳銃弾ノ一撃デ俺ヲ吹キ飛バシタ!?
 ルナールタイプはそのまま、手にしていた回転弾倉式拳銃を真上に投げ上げると、長砲の砲口を素早くこちらに向け、弾丸を装填。
 ―クソッ!! コンナ所デ……!
 罵倒する思考を最後まで続けることは出来ず、腹部への衝撃と共に、フントCはその機能を停止した。


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