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ROST GORL ハロウィンSS

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匿名ユーザー

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ハロ……ウィン?

あの事件から数年が経ち、ティマと一緒に暮らし始めてから暫くの月日が流れた。今、私達はアメリカのNYの街角でひっそりと暮らしている。
私と生きていく時間の中で、ティマはどの場所で、どの世界であろうと、生活に順応する程に人間的に成長を遂げている。
感情もとても豊かになり、今のティマはアンドロイドという最大の特徴を抜かせば、もう一人の人間、いや、女性といっても過言ではない。

唯一つだけ寂しい事がある。彼女特有の天然ボケが、成長するに従って殆ど無くなったのだ。
その分人間臭くなり、私は今迄以上に、彼女と親密なコミュニュケーションをを取れるようになったが。
私が教えた甲斐もあり、家事も一人でこなせる様にもなった。私が外で仕事をしている最中、ティマは洗濯物をして料理を作って待っていてくれている。
昔の空っぽな生活が嘘のように、今の私の生活は生に満ち溢れている。とは言え、ティマの維持費がキツイので、安いアパート住まいだが……。

「今日は良い写真撮れたの?」
テーブルの上で、日本の出版社に投稿する写真を選別していると、ティマが珈琲を置いて私の手元を覗いた。

「残念だけど今回も駄目だろうな。私自身は気に入っているのだがね」
もう何年も投稿しているが、箸にも棒にも賞に引っかかった試しがない。修理士の傍ら、私はプロのカメラマンになるべく励んでいる。
が、残念ながら一向にカメラマンとしての芽が出てくる兆しが無い。

流石に何年も挑戦しているが、その度に無碍になっていると実に凹む。
その度にティマは私を励ましてくれる。私にとってそのティマの励みこそが、夢を追いかけられる理由だ。ティマのお陰でどうにか折れずにやっていけてる。
しかし好きなだけで上達する訳ではないのだな……当り前とはいえ、これほど残酷な事実が他にあるだろうか。いや、無い。
ティマの維持費を確保するのと、私自身が質素な生活を送っている為、住居先は安いものの、修理士として依頼は常に来るため、生活には困っていないのが唯一の救いだ。

「大丈夫。マキなら必ず入賞するよ。私、信じてるから」
優しい笑みでそう、私を叱咤するティマの優しさは正直、辛いっちゃ辛い。
若い頃からの夢を今一度成就させようとしても、やはり現実の壁はそう易しくは無いのだな。
とは言え諦める気は無い。私は何れ、カメラマンとして生計が立てられるレベルになる様になるのだ。ティマとなら実現できると信じ……正直ちょっと自信は無いけど。

「あ、そうだそうだ。ねぇねぇ、マキ」
ティマが両手を叩いて、何か思い出したように明るい声で、私に聞いた。

「ん?」
「今日って何の日だっけ……何か行事があったよね」
「えっと……あぁ、確かハロウィンだな。どんな日かは分かるか?」

ティマの疑問で私は壁に掛けられたカレンダーを見る。そういやすっかり忘れてたな、そんな日があるって。
今日はハロウィンという行事がある日だ。日本じゃぶっちゃけ浸透度が低い為印象が薄いが、町では仮装した子供達が、近所に出向いてお菓子を貰いに行く日……であった筈。
それとお菓子をくれないと悪戯をするぞと催促するんだったな。まぁ適当にお菓子でも用意しておけばいいか。……何か本当にハロウィンって何の日か分からん。

「うん、大体の概要は。それでお菓子をくれないと悪戯するよ―って言ってくるんだよね」
「あぁ。それがどうかしたか?」

「ねぇ、マキ。もし悪戯するよって言ってきたら、こっちも悪戯していいのかな?」
ティマはそう言って悪戯っぽく笑った。こういう表情もする様になったんだな……と思うと何だか涙が出てくる。
とはいえ、何かティマはハロウィンをどこか勘違いしている気がする。ま……いっか。取りあえずティマのやりたいようにやらせてみよう。
私は二つ返事で頷き、ティマに玄関で待っている様言った。適当に家にあるお菓子を持って来なくてはな。

「別にしちゃいけないって決まりは無いだろうが、あんまり変な事はしちゃダメだぞ」
「大丈夫だよ、マキ。ちょっぴり子供達を驚かせたいの。任せて」

そう言ってティマはウインクした。金髪を翻らして歩くティマは、ホントに良い女になったと思う。
少し時間を掛けてお菓子を集める。チョコにクッキーに……うん、これくらいあれば良いだろう。と思った矢先、ウチのチャイムが鳴った。

「お菓子を貰いに来たぞ―!」
元気な子供達の声が聞こえてきて苦笑する。次にお菓子をくれないと悪戯する……だな。

「お菓子が無いなら悪戯す……」
ほれ来た、さて、ティマはどんな……ん? 何故か子供達の声が止まった。
次に聞こえてきたのはカタカタと歯が震えている音だ。どういう事だ……? 私は妙な胸騒ぎを感じながら、玄関に向かった。

玄関に着いた私の目に飛び込んできた光景は、驚くべきというか何とも言えない光景だった。
子供達を迎え入れたティマが、自らの首を取り外して持ちあげているのだ。それも頭上高く。

「どう? 私の悪戯」
ティマが楽しそうにそう聞いた途端、子供達は泣きわめきながら彼方へと走り去っていった。
そりゃあそうだ。幾らアンドロイドが普及しているとはいえ、いきなり目の前で首が分離したら大人だって驚く。しかしティマ……。

「行っちゃった……ちょっと驚かせすぎたかな」
「驚かせすぎだ。いきなり生首とか大人でビビる。ティマ……」
「ごめんなさい……一回、人を驚かしてみたかったの。こういう行事だから、良いかなって……」

しょんぼりとティマは項垂れた。こういう所は変わってないんだよなぁ。すぐに反省する所は。
けど天然ボケが無くなったと言うのは訂正しておく。何だかんだでまだまだボケてるな、この子は。
私は落ち込むティマの腕を引いて抱き寄せる。そして顔を上げさせて、優しく囁く。

「明日、公園にでも行って子供達に謝りに行こう。お菓子を持ってさ」
「うん……」
「お仕置きに今夜はずっと悪戯してやる。覚悟したまえ」

自分で言ってて馬鹿みたいな台詞だが、ティマはうんと嬉しそうに微笑んで、頷いた。

……アレ? ハロウィンってどんな行事だっけ?

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