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エピローグ 嘘

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積み上がった瓦礫の山が錯乱する町を、黒装束のフードに身を包んだ一人の男が闊歩する。フードの中で、男の両眼は、人工的な紅く鈍い光を放っている。
その視線が見据えるは前の一点。否、見据えるよりは凝視。男の顔は無表情だが、代弁する様に両眼の紅き光は輝きを増す。その目は無機質ながらはっきりとした何かが――――。
憤弩、という感情が浮かんでいる様だ。ふと、男は立ち止まり、フードを上げて視線を正面から上へと向けた。淡い月明かりに照らされ、男の姿が淡く浮かび上がる。

足元や背中には、乾ききった赤が、鮮やかに、そして禍々しく男の黒装束を彩どる。男の顔は端正ではあるが、その目のせいか人間味を全く感じない。
その目に映るのは、転倒して無残に横たわった鉄柱に座り、両足を組んでにこやかに男を眺める欲情を煽る刺激的なドレスを着た女。
女はにこやかなまま、男に対して神経を逆撫でするような甘い声で言った。

「あの弱い弱い鈴木君が、今や人類史上最悪の殺人鬼なんてね。人は変わるものだわ」

男は女の言葉に微動だにせず、静かに懐から一枚のカードを取り出し、女に向けた。そのカードの両面には、模様の様に血痕が付いている。
男の反応を待ちかねたように、女が指を鳴らす。と、女の背後から男と同じくフードを被った者達が4人、物音も立てずに左右に並んだ。
それぞれ薄汚れた赤、青、黄色、紫色のフードを羽織っており――――驚くべき事に、その中で覗く顔も男と同じだ。。
者達はフードの両袖から腕を出す。すると一斉に、者達の両手に滑る様に小刀が握られる。

刀の刃が月に照らされて妖しく光る。一切のモーションも無く、者達がその場から跳躍した。

「トランスインポート」

男が一切の感情を感じる事が出来ない、低い声でそう呟いた。瞬間、男の掌に黒々とした銃が収まる。角ばった、近未来的なデザインの銃だ。
黒々とした銃身には、カードと同じく血痕が散っており、男の姿と相まって邪悪さを醸し出している。男は躊躇する事無く、銃の引き金を引いた。

銃口が一瞬閃光を放ち、蒼き光線が電撃を纏いながら射出され、空中から襲いかかってきた者達の一人、赤フードの額を貫通した。

赤フードの動きが止まり、次の瞬間、額から全身に掛けて電撃が高速で這う。やがて耳を塞ぎたくなる様な機械音の悲鳴を上げて赤は青き光を発しながら爆発する。
周囲に、者達を成型する内臓機械や液体物質が飛び散る。機械的な部分が液体物質に塗れて酷くグロテスクに見える。

男は走りながら左手を地面に着いて、前方へと宙返りする。視界が逆さまである、が、男には何ら関係が無い。
引き金を連射する。腕、足、胸、頭。青は男の攻撃に反応する事も出来ず、糸の切れた操り人形の如く体を揺らしながら爆発した。

男が着地した隙を狙い、黄色が両腕の小刀を振り下ろしながら飛びかかる。しかし、黄色の攻撃に、男が動揺する様子は全く見られない。
銃をカードへと戻し、懐に入れながら後方へと体を反らして回避。その間際、黄色の手首に向けて勢いよく両足を跳ね上げる。小刀が宙へと回転しながら飛んだ。
黄色が顔を上に向けた瞬間、男が両足を黄色の肩に目掛けて叩き落とし、その勢いのまま首を4の字に固める。

上体を反りながら、落ちてきたナイフを掴み、横回転しながら、黄色の首を絞め上げる。黄色は両腕で男の攻撃を止めようとするが、びくともしない。
ギチギチと耳障りな駆動音を立てながら、黄色がその場に膝を付き、機能を停止する。残るは紫だけだ。

男は小刀を持った両腕を下げたまま、目の前で小刀を構える紫を見据える。意を決したのか、紫が地面を蹴り、両腕を交差させながら、男へと突進する。
距離はまだ遠く、充分避けられる。しかし男に反応は無い。紫が交差させた腕を上げて、男へと振り下ろそうと体を乗り出した。
小刀の刃が男の胸目掛けて振り下ろされ――――た筈、だった。

男は紫の目下まで潜り込み、紫の顎元目掛けて小刀を突き刺した。
予期せぬ攻撃に対応できず、紫が後ずさりする。男は駆けだして、紫の頭を掴み宙返りし、背後に立つと、頭から股間目掛けて小刀をぶっ刺して振り下ろす。
噴出する赤い液体物質が、黒装束と男の顔に飛び散る。まるで、人間の血の様に。

者達を始末し終え、男は再び、女の元に視線を向ける。女は軽く拍手しながら、甘ったるい声で男に話しかけた。

「この数年で偉く強くなったわ。ま、これも全て私の計画通りだけど。それでどうだった? 1億人をその手で殺した感想は」

男は答えない。女は構わず、鉄柱から立ち上がり、男の方へと下りてくる。

「貴方がとっても頑張ってくれたお陰で、私の思う通りに事が進んだわ。アストライル・ギアを使った人類の査定。
 そしてブレイブグレイブと言う名の間引き。イルミナスは人類の支配ではなく、選ばれた人類による集団―――――」

「……黙れ」

「貴方はそのイルミナスの計画の為に、ヴィルティックに乗って人類を必要な者とそうでない者に間引いてくれた。
 少々殺し過ぎな気がするけど……ま、この犠牲は必要な犠牲よね。貴方が悩む事無いわ」

「黙れ!」

今までの無表情から一転、はっきりとした怒気を露にして、男が女に叫んだ。再びカードを銃へと形を変えて、女に向ける。

「メルフィーを……メルフィーを何処に隠した?」

「さぁ? まだ実験には使ってるから……あ、もしかしたら」

女はにこやかな笑顔から、口元の端々をにやけると笑っていた目を変貌させて、男を徹底的に蔑む冷ややかな目で言葉を続けた。

「死んでるかもね」

男が天に向けて銃を向ける。男の背後に、白色の巨大な影が浮き出て、やがてその姿を現す。
かつてヴィルティックと呼ばれたそのアストライル・ギアに、かつての面影は無い。左腕が消失しており、右腕は今にも崩れ落ちそうなほど老朽化している。
精悍さを見せたヘッドパーツは半分破壊されており痛々しい程に内部構造を見せている。機体色である白は殆ど剥げ落ち、寒々しい灰色と化している。
右手に乗った男を、ヴィルティックがコックピットへと転送した。

「あらあら……可哀相に。今のヴィルティック……いえ、貴方を見たら、鈴木博士はさぞ悲しむでしょうね」

男は無言で球体に手を乗せる。完全に機能を失い、半分しか見えないモニターに、あの機体が映る。

「それじゃあここで果てて貰うわ。人類最大の殺人鬼――――鈴木隆昭」

「――――貴様だけは俺の手でぶっ殺す。マチコ、スネイル」




やぁ、ようこそオルトロックハウスへ。
このエピローグはアメリカンジョークなんだ。驚いた君はメルフィーのスク水でも想像しながら落ち着いて欲しい。

うん、「フィッシング」なんだ。済まないな。
仏の顔もというが、私は神などいないと思っている。まぁ、君達に謝って許してもらおうとも思わないし、寧ろ清々しい気分だ。

でも、このエピローグを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「オ☆ド☆ロ☆キ」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう新鮮な気持ちを忘れないで欲しい。
そう思ってこのエピローグを作ったんだ。と私ではなく作者が。

それじゃあ、文句を聞こうか(笑)


あ、あと本物のエピローグはこれ以上にキツ……いや、何でもない。

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