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幸せな結末 第二話

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sousakurobo

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1NEの背後にいる誰かに、私はしっかりと向きあう。向き合うと言うか視線を合わせるというか
外見はと言うと、先ほどの台詞から予想できる通り、好青年と言った感じだ。清潔感溢れる黒髪に、整った目立ち
それにすらりと伸びた手足。上に淡い黒色のラフなYシャツにジーンズを穿いている。恐らく…いや、推測しなくともアンドロイドだろう
私に対して声を掛けたまま、その青年型のアンドロイドは微動だにしない。ずっと目が合わしているだけで

目を合わせ互いに警戒(私は少なくとも警戒している)し続けて数分が経った。と、青年型がふと1NEのタンク部分、上部に手を触れた
1NEは青年型に対して特に反応を示さない。と言う事は1NEを作動させたのはこの青年型…なのか?
しかし今日は妙な日だ。数十年振りに小動物以外の存在に会ったと思ったら、廃棄されたはずのロボットに私と同じアンドロイドとは
…で、何が目的でこのお花畑に彼らはやって来たのだろうか。まさか「博士」が昔作り出したロボットが何十年の時を経て墓参りに来たのか
すると青年型はゆっくりと、私の反応を伺うように口を開けた

「君は……いや、言いなおすよ。君が彼の言っていたアンドロイドか」
彼? 「博士」の事なのだろうか。だとしたらやはり彼らは「博士」の知り合いか。直接か間接的な関係は知らないが
ここはまだ反応するべきじゃないな。私は頷きも返事もせず青年型の返答にじっと耳を傾けた
青年型は私の様子に小さく首を傾けると、話を続けた

「それにしてもよくここまで咲き誇った物だね。彼の遺産にしては美しい物だ」
首を動かさず視線だけを周りに移しながら、青年型がそう言った。嬉しいは嬉しいのだか素直に喜べない
青年型が自己紹介してくれないと私としては心を許せない。機械なのに心と言うのも可笑しな表現だが
そうだ、彼が自ら明かさないのなら私から聞けばいい話だ。それなら私自身の警戒心を解かねば

構えていたスコップをその場に置き、私は両手を腰に合わせた
そして見つめっぱなしだった視線を若干ずらす。疲れるのだ、妙に。さて…どう切り出そうか
「…嬉しいよ。貴方が褒めてくれてさぞ「博士」も嬉しいでしょうね。それでさっきから聞きたかったんだけど」
私がそう切り出した瞬間、若干青年型の表情が曇る。やはり普通の用事じゃないか。それはそれで…悪いな、やはり

「貴方とその1NEは、一体どちらから来たのかしら? いえ、先に聞きたい事は一つ。貴方のお名前は?」
私にしては思い切った決断だ。そして数十年ここで暮らしてきたが、ここまで喋ったのは初めてだ
製造されて数十年、会話機能は備わっているのに「博士」と会話する事が無かったからである。亡くなってしまったし
製造された日の自己管理とお花畑の管理の説明時の「はい」と「分かりました」以来だ。というかこれは会話ではないだろう

これまた場は沈黙する。私がいけないのだろうか。もう少し丁寧な聞き方の方が良かったのかもしれない
初めてまともに会話機能を使ったから許して欲しい。と言っても苦笑されるだろうけど。ふと、柔らかな風が私達の前に吹く
不思議な緊張感が場を制している…気がする。結構時間が経っている気がするから早く答えてもらいた

「…やはり消されているんですね。彼の名を」
…何だって? 思わず口が出そうになったのを、彼は無理やり制し話を進めた

「今の君は彼の事を「博士」と呼んでいるだろう? …と説明しても君自身理解できないか
 着いてきたまえ。真実を教えてあげよう。…この会話も何度目だろうな」
青年型がそう言い放ち、踵を返した。一緒に1NEもくるくると方向転換をして青年型へとトコトコ付いていく
実際には出ていないが、今の私の頭には黙々と煙が出ている。真実? 何度目? 本当にどういうことだろう?

って…ちょっと待ってくれ! そんな訳もわからない事ばかり告げられても困るし、こちらの事情も考えてくれ
数分考えた挙句…私は花畑を抜け、どこかに向かい、背中が小さくなっていく彼らを追いかける事にした

第二話 end

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