創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

第5話 シャッフル

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sousakurobo

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生徒達が妙に騒がしい事に、氷室は妙な胸騒ぎを感じていた。どこか不吉な予感がするのだ。言葉に言いしれない、ぼんやりとした物が。
何か騒動があったなら、野次馬が何処かで沸く。しかしその野次馬はいなく、何故だか皆して宙を見上げているのだ。
さっきから鈴木とメルフィーも、そして木原の姿も見えない。気付けば氷室は学校を出て校庭へと来ていた。

「何……あれ……」
氷室に目に映るのは、校門を破壊しながら巨大な何か――――デストラウが学校に悠然と歩いてくる光景だった。
甲虫を思わせるような頭に巨大な両肩。その両方に反するような細身の体型に禍々しさと威圧感を思わせる黒色――――全ての要素が不気味でかつ、異端。
デストラウの目は真紅の様に光り輝いており、絶え間無く左右に動いている。と、目の動きと同時に、歩くのをピタリと止める。その目の先には……。

氷室は何故皆の動きが止まっているのかが分かった。デストラウに気圧され、あるいはデストラウの醸しだつ非現実さに呆然としているのだ。
自分自身、デストラウの存在について信じられない。何かのアニメやゲームでもない限り、こんな非現実な事が――――だが、氷室は分かっている。
これが、非現実ではなく、現実である事に。そして直感的に悟る。デストラウが――――学校を狙っている事に。氷室は学校へと、いや、学校に居る生徒へと叫ぶ。

「皆、逃げて!」

瞬間、眩い光が学校を包み――――。

『ヴィルティック・シャッフル』

第5話
シャッフル

「各部チェック了解、可動部及び関節部に異常無し」
『シャッフルシステム良好、TIコンバータ起動。動力部への接続開始』
「制御システム展開。頭部、腕部、脚部、共に正常」
『全システムオールグリ―ン。ヴィルティック起動までカウントダウン。10……9……8……』

「ヴィルティック、起動」

んっ……あれ、俺は……。てかどこだ……ここ。変に息苦しいというか、ガチガチに固まらされてるというか。
って、何だよこれ!? 気付けば俺はやけに仰々しい椅子……いや、シートって言った方がいいのかな。シートに座っていて、二本のベルトで固定されていた。
しかもシートベルトよりも凄く太いベルトに。遊園地とかのアトラクションとかで座る椅子があるだろ? 何かあ―いう感じだ。ただ座ってるだけでも緊張するというか。
体を動かしてみる。結構動かせるけど、あくまで椅子の上だけだ。ベルトが上から下に伸びていて、俺自身の力で外す事は出来なそう。それにしてもこの圧迫感は何とかなんないかな……。

そうそう……確か俺、学校に来たオルトロックとかいう奴を倒したいってメルフィーに言ったんだ。そしたらメルフィーに拳銃を渡されて……。
あぁ、そうだ! メルフィー、メルフィーは何処に居るんだ!

「目を覚ましたみたいですね、隆昭」
メルフィーの声が聞こえ、俺はその方向に顔を向けた。前から聞こえたけど真っ暗だ……と、俺の目の高さに青く光る線が走った。
その線は四角形を作るとA4サイズくらいのモニター……いや、ブラウザ? 良いや、ブラウザになった。ブラウザには、狐耳になったメルフィーが映った。

「メルフィー、これは……」
「対アストライル・ギア用汎用型戦闘機体――――ヴィルティックです」

これが……今俺が座っているここが、ヴィルティックのコックピットなのか。乗り心地……悪いな。まぁそんな事はどうでも良い。
それよりも目の前が真っ暗なんだがどういう事なんだ? それにコックピットと言うけど、計器や操縦桿はおろか外の様子を見る為のモニターさえ見えない。
まさかあの時……間違えて天国に来たんじゃないんだろうな……。俺は異常に不安になり、メルフィーに聞いた。

「メ、メルフィー、あのさ、これってその、夢、とかじゃないよな? その、何だ、何かまっ暗闇で何も見えないというか」
「目の前に掌を置いて下さい」

俺はメルフィーの言う通り、恐る恐る目の前に掌を置いてみる。何にも見えないけど、確かに触感がある。冷たいな……。
冷たいというか、金属を触っている様な感覚だ。掌を左右に動かす。つるつるしている。球体……なのかな。軽く叩いてみると、聞いた事のない変な音が響いた。
しばらく球体を触ってみるけど何も起こらない。まさかホントに俺、天国に来ちゃったんじゃ……。情けないものの、怖くなって俺はメルフィーに声を掛けた。

「メ、メルフィー!」
「アルフレッド」

『申し訳無い。少しばかり心が落ち着いた方がいいと思ってな』

どこからか、渋くて含蓄ありそうなオジサンの声が聞こえた。だけどメルフィーさえ見えないのに……。
すると目の前で、上下左右に渡って青色の光が走った。その光は一つや二つじゃなくて10本や20本と増えながら走りながら集まり、やがて大きな丸……?
いや、円を成型した。その円はぐるぐると回りだすとスピードを増して――――目の前が急に明るくなった。俺はその眩しさから両腕で目を覆った。

……何秒くらいだろう。両腕を離して、目の前を見据える。思わず、息を飲んだ。
俺の街がパノラマみたいに広がっている。俺が住んでるマンションよりもずっとずっと高い高さで。流石に飛行機とまではいかないが。
しかしこんな光景を俺は一人で見てるのか……凄く贅沢な気がする。ってか待てよ……。

「……飛んでるのか、これ」
「はい。ウイングのカードを使用しました。戦闘不能、または戦闘終了時まで持続します」

ちょ、ちょっと待て! 飛んでるって何だよ! こんな良く分からない中で空を飛んでるとか訳分かんねーよ!
気付けば俺の脚がガタガタ震えていて、椅子を揺らしながら俺はどこかに逃げたい衝動にかられた。

「や、やばいって、これ! メルフィー、下ろして、下ろしてくれぇ!」
「落ちついて下さい。アルフレッド、隆昭に説明を」

『了解だ。取りあえず落ち着いて、私の話を聞いてくれ。鈴木隆昭君』

またあの渋いおじさんの声が聞こえ、俺は震えていた足をどうにか落ち着かせて、荒いでいた息を少しづつ抑える。
冷静に再び前を見据えると、次第に高度が降りている事に気付く。色々聞きたい事はあるが、取りあえず……。

「……俺に声を掛けてきたあんたは、誰なんだ?」

『紹介が遅れてすまない。私はこのヴィルティック、及びシャッフルシステムの制御と補佐を担当している』

すると目の前に、さっきの青色の光が走ると何か文字を作った。し……システム?

『Combat assistance system、略してCasのアルフレッドだ。これから君に戦い方を教える。と言っても身構える必要は無い。私とメルフィーの言う事をしっかり聞いてくれ』

アルフレッド……? よく分からないが、このヴィルティックを動かしているコンピュータみたいなもんだと解釈しておく。
聞きたい事が山ほどあるけど、オルトロックが何をしているかが気になる。何を聞く……。そうだ、聞きたい事は一つだ。

「アルフレッド、メルフィーは何処に?」

俺の疑問にさっき出てきたブラウザが再び出てきて、メルフィーが映った。

「メルフィー!」
「十分な説明もせずにこの様な事態に巻き込んでしまい、申し訳ありません」

そう言って俺に頭を下げるメルフィーは何時ものメルフィーだ。と言っても昨日今日会ったばっかりだけど。

「で、メルフィーは今どこに?」
「私は後方でヴィルティックの火器、及び武器の使用を担当します。隆昭はヴィルティックを動かす事だけに、専念して下さい」

動かす……っておい! 俺そんな事やった事無いし出来ねえよ! 今さっき座ったばっかだぞ!

『だから私が今から君に戦い方、つまり操作方法を教えると言っただろう。心の準備はもう良いかい?』

そんな事言われたって……。何処をどう動かせば良いかホントに何も分かんないって! それに戦闘機はおろか自動車を運転した事も無いぞ!
取りあえず掌を目の前に置いてはいるけど、これだけで……ん、そういや今俺が手を置いているこれって何だ? 俺は視線を下に向けた。
両手を半分埋まっている球体に置いている事に気付く。その球体には……やっぱ青色の光が、手を乗せている俺の5本指からまっすぐと前に伸びている。

『その球体は君の思考、反応に応じ、ヴィルティックに行動を促す、言わば操縦桿だ。君はその球体に手を乗せ、ヴィルティックを自分の思う通りに動かせば良い』
「つまり……俺は念じればいいんだな。こいつを動かしたいって」
『飲み込みが早くて助かる。準備は良いかな?』

俺は球体を強く握った。目指すは――――オルトロックだ。俺がオルトロックがいるであろう学校の居場所を念じる。
するとモニターが右側へと動き出して、ある一か所に向けてズームインした。俺はその箇所に目を向ける。……嘘、だろ?
何だよ……何だよ、これ! こんな事……こんな事……畜生! 俺は身を乗り出して、アルフレッドに向かって叫んだ。

「行くぞアルフレッド!」
『了解した』


――――意識が朦朧とする。いつの間にか、その場に倒れていたようだ。氷室はジンジンと痺れる頭を押さえながら立ち上がる。
ぼやけている視界が次第に鮮明になっていく。グっと目を閉じ、ゆっくりと開けながら、何が起きたのか氷室は確かめる。そこに広がっているのは――――悪夢、だった。
校舎に穴が開けられていた。それも異常に巨大な穴が。そして穴から一人、二人と――――もはや人の形をしていない生徒達が力無く落ちてくる。
最早校舎は元の形をしておらず、穴の周囲の壁には、地上から見上げている氷室の目からもはっきりと分かるくらい血が飛び散っていた。

「いや……いやぁぁぁぁぁぁ!」
女子生徒の一人が、この惨状に叫び声をあげた。次第に校庭で活動していた生徒達がざわめきだす。やがてそのざわめきは、阿鼻叫喚へと変わった。
混乱に陥った生徒達が、学校から離れようと校門に向かって走り出す。だが氷室はそれがいかに危険な事なのかが分かっている。生徒達に叫ぶ。

「駄目! 校門側に向かっちゃ、駄……」

聞きたくない音が、氷室の耳をつんざく。肉が落ちる――――いや、潰れる様な、そんな生理的不快感を催す音が、校庭に響く。
けたたましい叫びと、それを押しつぶす様な衝撃音。激しく舞う砂ぼこりの中で、あまりにも残酷な行為が行われている。命を直接踏み躙る、そんな行為が。
氷室は自分の体が動かない事を感じた。その場にしゃがみこみ、耳を防ぐ。どうして……どうして、こんな事に?
私達が……何をしたというの? 誰か――――誰か、助けて。このどうしようもない悪夢から――――。

「退屈だな……。潰しがいが無い」
コックピットの中で足を伸ばしながら、オルトロックはあくび交じりにそう呟いた。そこには罪悪感など微塵も見えない。
氷室の考え通り、オルトロックは自動操作で、デストラウに目に付いた生徒を直接潰すように命令した。あの旅客船の時と同じように。
デストラウは機械的に、通りすがる生徒を掌で押し潰す。マニュピレーターは生徒達の血でべったりと真紅に塗れている。

「それにしても遅いな……。一体後何人殺せば出てくるのかな? ヴィルティックは」
髪の毛を指に絡ませ、目下で死んでいく生徒達を見下げてオルトロックは嘲笑を浮かべた。その時だ。
オルトロックは一転、鋭い目つきになると操縦桿を握り、デストラウを振り向かせた。そして頭部を守るように両腕を合わせた。。


オルト……ロック! 俺は目下に見える黒い何か――――多分、いや、間違いなくオルトロックが乗っているであろうロボットに、ヴィルティックを飛ばす。
しっかし何だあれ……。上手く言えないけど、凄く禍々しい。何か如何にも異形って感じがする。人っぽいけど人じゃないというか……。
って冷静に観察してる場合じゃない! 早くオルトロックを止めないと……。俺はアルフレッドに周辺の被害を聞く。

「アルフレッド、何が起こってるか教えてくれ!」
『……辛いぞ。それでも見るか?』
「頼む!」

次の瞬間、幾つものブラウザが出てきた。俺はそのブラウザに映った光景に、自分の思考が停止しかける。
学生服や運動服を着た……同級生や下級生が、酷い姿で校庭に横たわっていた。多分皆……死んでる。何で……何でこんな事が……。
何でこんな事が出来るんだよ! こんな残酷な事……何の呵責も起こさないのかよ! 

『さっき教えた事、出来るな?』
「あぁ、分かってる!」


俺はアルフレッドに返事をして、さっきメルフィーとアルフレッドに教えられた事を思い出す。

オルトロックの所へと向かう間際、アルフレッドとメルフィーが俺に話しかけてきた。

「シャッフルシステム?」
『そうだ。このアストライル・ギアに搭載された特殊なシステムにして、オルトロックに勝つための重要な切り札。それがシャッフルシステムだ』

するとモニターに大きなブラウザが出てきた。ブラウザには白色に蒼いラインが入った偉くカッコいいオブジェ……いや、ロボットが映っている。

『このロボットはヴィルティックだ。この状態では戦闘能力が皆無でかつ機体能力も低い』

「そこで、ヴィルティックを強化する為に、その強化を図る必要があります。その為にはまずこう言います。シャッフル」

メルフィーがそう言うと、ヴィルティックの周りにカードが出てきた。そのカードは輪になってグルグルと回りだす。
よく見ると、カードの縁がそれぞれ赤、青、黄色になっている事に気付く。これは……?

『この回っているカードにそれぞれ特性がある。赤は武器、青は機体性能の強化、黄色は敵機に対する特殊効果の発動だ』

回っているカードが一つに纏まり、赤い縁のカードが上へと消えていく。するとロボットの手に、大きなライフルが握られている。
次にその後ろの、青の縁のカードが消えると、ロボットの腕部や脚部に鎧みたいなのが合体する。
そして最後に黄色の縁のカードが消えると同時に、真っ黒いシルエットがヴィルティックに向き合う。

『見てたまえ』

そのシルエットがヴィルティックに拳を振り上げようとした途端、黒いシルエットの動きが止まった。いや、止まったというより動きを封じられてるみたいだ。

『これはバインドといって、敵のアストライル・ギアの動きを一時的に封じるカードだ。生憎、ヴィルティックには搭載されてないがね』

『分かったかな? 君にはシャッフルシステムを使って、その都度に応じた戦い方をしてほしい。いや、戦うのはメルフィーが行うから、君はカードを選んでくれ』
「シャッフルする前に、私とアルフレッドが指示を出します。隆昭はヴィルティックの操作と、シャッフルシステムをお願いします」

「分かった。上手く出来るか分からないけど……やってみる!」


『有効距離に入った。3……2……1……』

「シャッフル!」
俺がそう叫ぶと、モニターから輪になったカードがクルクルと回りながら浮き出てきて、次第に実体化した。慣れ切ったせいかあんま驚かない。
この中でどれを選べばいいんだろう……。一先ず奴を攻撃する為に、赤いカードを選ぶべきか。

「隆昭、遠距離攻撃を仕掛けます。銃が描かれたカードを取って、モニターに投げて下さい」
メルフィーの言葉に頷き、俺は回転するカードの中から、赤い縁で銃のシルエットが抱えたカードを取って、モニターに向けて……。

「メルフィー、これって普通に投げていいのかな?」
「そのまま投げて下さい」

俺は言われたとおり、カードを渾身の力でモニターにぶん投げる。デストラウがヴィルティックに気付いたのか、両腕を合わせている。
頼む、メルフィー。あいつに何としてでも一撃を与えたい。……あいつに殺された、皆の無念を晴らす為にも。

『トランスインポート・ヴィルティックライフル』

ヴィルティックの胸部、隆昭がいる第一コックピットの後方、うなじ部分の第二コックピットで、メルフィーのヘッドギアからデストラウに向かってヴィルティックライフルの標準を定める。
彼女の瞳の奥では二つのロックオンサイト――――赤と青の円が、デストラウに重なる。ヴィルティックライフルの弾数は15発。無駄撃ちは出来ない。
デストラウの能力値の高さは、あちら側の世界に居た時に嫌と言うほど味わっている。決着を着けるなら、早めに着けなければならない、さもないと――――。

――――上手くなったな、メルフィー。

その時、メルフィーの頭にかつての記憶が去来する。メルフィーはグッと目を閉じ、キッと目を開いてデストラウに標準を合わせる。
僅かにズレていた円が、再びデストラウに重なり――――オレンジ色へと変化する。メルフィーはその瞬間を見計らい、操縦桿のトリガーを引いた。

「正確だな……流石私の教え子だ!」

メルフィーによって放たれたヴィルティックライフルの銃口から、電撃を纏う黄色のビームが高速でデストラウの両腕を直撃する。
激しい轟音が響き、一見デストラウの両腕にダメージが与えられたかと思った、が、違う。デストラウの両腕に、ダメージなど無い。
寧ろデストラウは放たれたビームを、両腕で受け止めていた。受け止められたそれは球体となり高速回転しながら、デストラウの両腕で留まっている。

「さぁ、その進化を見せてくれ、ヴィルティック」

オルトロックはそう言いながらシャッフルシステムを発動し、一枚のカードを引き、モニターに投げる。

『トランスインポート・カウンター』

そして留まっていた球体は、ヴィルティックに向かって放たれた。拡散しながら。

な……何だよこれ! 何で撃った筈のビームが、こっちに向かってくるんだ! しかも何本も!
まさかオルトロックの奴はあのビームを吸収して撃ち返して来たってのか!? ど、どうすればいいんだ!?

『落ちつくんだ。ちゃんとビームの軌道を見ろ。避けられない事は無い』
「そ、そんな事言われたって、あんな数のビーム、避けられないよ!」
「隆昭!」

メルフィーがキョドる俺に対し、大声を上げた。ブラウザに映る表情は何時にも増して真剣な表情だ。

「しっかりと目を見張って避けて下さい! 避けきれなかった分は私がフォローします、だから!」
「わ、分かったよ!」

俺はアルフレッドのアドバイス通り、向かってくるビームの束の軌道を読む。意外とイケ……いや、イケる!
数は多いが一直線に飛んでくるだけだ! 曲がって来たりするなら厄介だが、左右上下にヴィルティックを動かせば、安易に回避できる。
ビームはヴィルティックのスレスレを掠っていき、その度に心臓が止まりそうになる。しかし感覚が慣れればどうにか避けられるみたいだ。
最後のビームを避け、再びオルトロックの元に向かう為にヴィルティックを地上へと傾ける。

「隆昭! 後ろです!」

え……?

瞬間、鈍い痛みが俺の腹を抉った。気が遠くなるが、ベルトに体を引きつけられて我に返る。ヴィルティックが一回転して視界が逆さまになった。
そんな、何時の間に背後に……。俺達を見下げるように、オルトロックが腕を組んでいる。畜生……畜生!

「メルフィー! 早く撃つんだ!」


「おっと、私はそこまで甘くないぞ」
オルトロックはさぞ楽しそうなサディスティックな笑みを浮かべると、再びシャッフルシステムを発動した。そして一枚を取り出し、モニターへと叩き投げる
次の瞬間、ヴィルティックの手からヴィルティックライフルが煙の様に消え――――デストラウの手元に渡った。目標は無論、ヴィルティックだ。

「さぁて、どうなるかなー?」

おい、アルフレッド! 何で……何であいつがライフル持ってんだよ! あれはヴィルティック専用の銃じゃないのかよ!

『くっ……奪取を使われるとはな……』
「ごめんなさい、私が油断していたばかりに……」

いや、俺もまさか奴が接近戦を仕掛けてくるなんて思わなかったんだ。あいつが後ろから蹴って来たのに、全く対応できなかった……。
とはいえこのままじゃ、あいつに蜂の巣にされちまう。あれだけ強力なビームが撃たれたら……。俺は二人に聞いた。

「どんなカードを選べばいい!? 避けられる気がしない!」

『確かにこの距離では避けるのは間に合わないな。ならば……』


「分かった! 一か八か……シャッフル!」




                                             予 告

             デストラウによって攻撃手段を奪われながら、機転を利かす窮地を脱する隆昭。だが オルトロックの攻撃は留まる事を知らない。
             次第に擦り減らされていく装甲と精神。その折、アルフレッドは隆昭に戦況を覆す為の切り札を教える。果たしてその切り札とは。
              そして本性を露わにしたオルトロックが、遂にその毒牙でヴィルティックを――――隆昭を喰らう。

                                     次回、『ヴィルティック・シャッフル』

                                            ヴァイタル

                                   その「カード」を引く時、「未来」は訪れる

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