創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki capter2 MAIN 転 後編

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 シミュレーション5。
 ■■■ての作業。
 作り上げた■■一つ一つを丁寧に組み上げる作業を始める。
 最初は、4基本形の完成を目指す。
 ―――――――■■■■、作成に成功。
 ――――――――統■■織、作成に成功。
 ―――――――――――■■■、作成に成功。
 ―――――――■経■織、作成に成功。
 4基本形の製作が完了する。


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咲は先ほどから驚き続けている潤也を見て満足したように腰に手をあてて笑みを浮かべた。

「ふっふー、驚いたでしょ、咲の『ダグザの大窯』はね、無を有にする、つまりはありとあらゆるものを作り出すことが出来るの、お母さんの器をもう一度作り上げる事だって出来るのだよ。
 咲の記憶を元に残留したお母さんの怨念も利用して、作り上げたんだ。いい出来でしょ?驚いたでしょ?」

自慢気に咲は潤也に問いかける。

「あれは本当に母さんなのか?」
「ちょっと違うかな、遺伝子的にはお母さんを完全に再現したけれど、中身は赤ん坊に近い。
今は眠っているけれど、あのお母さんにはお母さんがお母さんであるという人格を形成した経験というものが存在していない。
だから、私たちからしてみれば、限りなくお母さんに近い別物って言ったところ。」
「お前、死を超えるってのはまさか・・・。」
「流石、お兄ちゃん、勘が良い~、そう咲は死んだ人を生き返らせるシステムを作っている最中なの。
だから言ったでしょ、咲がやろうとしている事からすれば死なんてどうでもいいものなんだって。」
「世迷言も大概にしろよ!咲!!人間が人間を作り上げるなんて、そんな事許されると思っているのか?」
「ん~、それの何がダメなの?皆、死が怖いんだよね、だから、咲は人が生き返れるようにしようとしているだけ。
宗教とかだとよく死を美化してる事あるけれど、あれってつまりは死が怖いから死の恐怖を拭い去ろうという工夫だよね。
だからそんなもの必要ないような世界を作り上げられたらみんな幸せじゃない?それに咲はそれを絶対成功させる自信がある。」
「じゃあ、あれは何だ!!咲、お前はさっき言ったよな、あそこにいるあの母さんの紛い物は母さんである事である経験を積み重ねていないからまったくの別物だって、確かにお前の言う至宝の力は凄い・・・
 俺も信じられないものだとは思う、だが、それでは人を生き返らせる事なんてできる筈がない、出来るのは似通った人形を作って自分を慰める事だけだ!!」

そういう潤也に咲は宙に立ちながら頷く。

「そう、あのままじゃ、確かに人形。咲も結構時間をかけて何かできないかと思っていたけれど、大釜で出来るのは器を作る事だけだった。」
「なら、なんでそんな馬鹿な考えを持つ!」
「―――でも、もし、他の至宝を全部集めることが出来たらどうだと思う?」
「なにを・・・。」
「さっきも言ったけれどね、至宝は世界に四つあるの、『ブリューナク』、『クラウ・ソラス』、『ファールの聖石』、『ダグザの大釜』、これらはこの世にある絶対の一つを乗り越えることが出来る。
 そして、これらを全て手に入れたものは全能の力を手に入れることが出来るんだって・・・。」
「そんな馬鹿な話が―――」
「あ・る・の。ほら、現にダグザの大釜一つでもこれだけ凄いことが出来るでしょ?こんなものがあと世界に四つもあるとしたら、それは本当だって真実味を持つと感じない?」

『ダグザの大釜』。
咲曰く、無から有を生み出す力を持つ至宝であり、その力を用いて、無いはずの空中に足場を作り上げ、母を模した人形を作成している。
確かに信じられぬ超常の力だ。
咲が言うようにこんなものが世界に四つも存在しているのならば、確かにそのような事が可能なのかもしれない。
「だが、それは本当にこの世界に四つも存在しているのか?大体、そんなものどうやって見つける。無駄な徒労に終わる可能性も多々あるじゃないか・・・。
 まさか、世界中をしらみつぶしに探そうっていうんじゃないだろうな?どこにあるのかわからないものをアテもなく探そうなんて馬鹿な妄想抱いてるのか?」
「そうだね、本当にこの世界に至宝が四つも存在しているのか?そんな疑問をこの至宝を持ったことがない人が抱くのは当たり前なのかもしれない。
 けどね、それは確かにあるんだよ、咲はそれをもっているからわかる。至宝にはね、他の至宝を感じ取る能力を持っているんだよ。
 だって、この大気中にも至宝の一部は存在しているんだしね。」
「・・・。」
「まー、その変の難しい話は長くなるから置いておいて、要約すれば、咲には他にもそれがあるって感じ取れるって事だね。」
「だが、たとえそれがあったとしてもだ、それをこの世界からどうやって探し出す、どんな形をしているかすらわからないのだろう?」
「そうだね、でも当たりを付けることは出来るんだ。」

 咲はそういって、メタトロニウスの方に向かって宙を歩き、メタトロニウスの巨大な手のひらに飛び乗った。
 その後、手のひらからまた宙を階段を歩くようにしてその肩にいるダグザの元まで上っていく。

「至宝はね、この世の生命が絶滅の危機に瀕した時に生命体を救い出すために私たちに与えられたものなの。
 この星の命が危機に晒された時、その命の危機に呼応して、その至宝のもとになる設計図の在処が浮き出るようになっている。」
「命の危機?」
「まー簡単に言えば動物の死ね、ただ、これは老衰とかそういう自然的なのは含まれない、なんらかの外的要因から危機に晒されている事に限定されている。」
「そんなのどうやって―――」
「お兄ちゃんならわかると思うな、お兄ちゃんのその黒い機体も怨念機なんでしょ?ならば、『アレ』を体験している筈。」

『アレ』、それが指すものはおそらくは一つ。
だが、それはつまり、あの機体にもやはりDSGCシステムが搭載されていたという事に他ならない。
潤也はその時、もはや目の背けようのない証拠を目の前に見せられたのだ。
咲はあのDSGCシステムによって見せられるあの地獄の経験を体験している。

「人が死んだ時に発する怨念か・・・。」
「その通り、至宝の設計図はね、周囲にある怨念の濃度の上下によって、世界に浮き出るようになっている。
 つまりは人がたくさん死ねば、その近くにある至宝の設計図がそれに呼応して浮き出るって寸法だね。」

潤也は体が震えるのを感じた、それが何を意味しているか、そして咲が何をしているのか、それに対する仮説出来てしまったからだ。
そしてそれは、信じる事の出来るようなものではなかった。
しかし、それを裏付けるようにしておかしい点は確かにいくつかあった・・・。
あの鋼獣たちが真実人間を滅ぼそうとするのならば、彼らが行なっている行為はあまりにも非効率的だ。
時には人口の密集した地域に、時には人が少ない地域に現れては鋼獣達は虐殺を繰り返している。
しかし、世界の重要機関などはまるで狙って来ない。
戦争を仕掛けて勝とうというのならば、その司令塔を叩くのが上策といえたが、彼らは人を殺す事にしかまるで興味がないように動いてくるのである。


「ま、まさか、鋼獣があちこちで虐殺行為を行っているのは・・・。」

 肩に上りついた咲はダグザの体を抱きかかえる。

「そう、至宝を探し出すため、その為に私達は地上で戦闘を行っている。」

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シミュレーション24
■系の制作。
成功。
■■系の制作。
成功。


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「咲・・・お前、一体自分が何を言っているのか、わかっているのか?」

そう信じられない目で見る潤也を咲は真剣な眼差しで見つめ返し、

「勿論だよ。咲は咲の理想を手に入れるため、たくさんの人を殺してみせる。ただ、それだけの話じゃない?」
「お前、人が死ぬっていう事がどういう事なのかわかっているのか?
 もうそれは二度と戻ってこない・・・そういう事なんだってお前は本当にわかっているのか?
 大体見も知らない人をどうやって蘇生するっていうんだ?」
「ふふ、お兄ちゃん、だから大丈夫なんだってばぁ、最後には咲が生き返らせるんだから・・・怨念機にはね人の魂の残滓をかき集める力があるの・・・。
 それを応用すれば全ての至宝を手に入れた後、このメタトロニウスと共に全ての人を蘇生してみせることだって可能なんだよ。」

咲は強い意志を持って語っている。
それには信念、信仰そういったモノが篭っているように潤也は感じた。
人を殺し、至宝を発現させ、それを収集し、最後に死んだ人の怨念をかき集めて蘇生する。
至宝とよばれる人知を超えた道具はそれを可能にするのだという・・・。
しかし、例え、咲の言葉を全てそのまま信じて、咲の行おうとしている事が本当に理屈の上で可能な事であったとしても、潤也にはそれが実現可能であるとは思えなかった。
止めなければならない。
これ以上、彼女が過ちを犯す前に――――

「咲、お前、それはシステムの怨念収集によって世界中の人間の怨念と死の追体験するという事なんだぞ、俺もこの機体を使ってきたからわかる・・・何度も地獄に落とされるような体験だ。
 それほどにあいつらは生を求めて、怒り狂っている。自分が自分であることを保てなくなる。そんなものを世界全てで行ったならば、お前の精神が持つ訳ながない。」

何よりも問題なのが、それだった。
鋼獣達は世界中で虐殺を行なっている。
つまり、もし至宝で人間を蘇生できることが可能だとしても、鋼獣が虐殺した世界中全ての人間の死を追体験する必要がある。
システムが動作している時に自分にのしかかる死んだ人間の記憶。
妬み。
絶望。
羨望。
憎悪。
後悔。
希望。
そんなものを何度も、何度も浴びせかけられて、つい先の戦いで潤也は自分を失いかけた。
いや、先の戦いだけじゃない、これまでの戦いの多くはアテルラナが設置したというシステムの緊急停止装置によって失った自我を強引に取り戻すことでなんとか黒峰潤也が黒峰潤也であることを保ってきたのだ。
それを世界規模でもし行うとするならば、間違いなく一瞬で黒峰咲個人の心は壊れる。
それは彼女達が殺した数だけではなく、おそらくはこれまでこの地球上で死んできた人全ての怨念をその身に受けるという事なのだ。
世界中の怨念全てからすれば、咲の心など砂粒一つにすら満たない。
当然、どんなに強固な精神を持とうと人がその身に受けられるようなものではなかった。
例え、至宝にそのような事が可能な力があったとしても、咲が人を生き返らせようと怨念を飲み込んだ時点で彼女は自我を喪失しそのような操作をすることが不可能になる。
そう、これは不可能な話なのだ。
咲がどれだけ自信を持っていようと、どれだけの強固な精神力があろうと不可能なのだ。
だから、もし、UH達にそのようなことを行わせているのが本当に咲だとするのならば止めなくてはならない。

「咲、無理だ。例え、お前の話が本当だったとしても・・・それは人の領分じゃ出来ない事だ。馬鹿な事はいますぐにやめろ。」

そう訴える潤也に咲は呆れたようにして、自分の白髪を指先でいじりながら言う。

「だから、大丈夫だって~。」

そうやって笑う咲を呼び止めるように潤也は口を開こうとする。
しかし、それを遮るようにして咲は言う。

「はい、この話はここでおしまい。それよりお兄ちゃんも怨念機に乗ってるなんて、ビックリだよー、そうだお兄ちゃんもさ、咲に協力してくれない?
 たくさん殺してるんだけど至宝見つからなくてさ。怨念機がもう一機仲間になってくれるのならば、大きな戦力だと思うんだよねー。」

そういって、咲は手のひらを潤也に向けた。
それに追随するように咲の背にいる白い巨大な怪物は潤也とリベジオンに向けてそのリベジオンの身の丈よりも長い大鎌の尾を向ける。
そうして咲は目を瞑り呟く。

「『ダグザの大釜』にアクセス。コードリジェネレイト。」

その言葉と共に大釜の刃が展開し、尾から光が放たれてる。
その光はリベジオンを包み込んだ。

「咲、何をしてる!!」

光りに視界を奪われ、叫ぶ潤也。

「いや、何って・・・ほら、お兄ちゃんの怨念機壊れてるから直してあげようと思って・・・。」

そう言われ眩んでいた目から光の残像を取り払うように頭を振った後、潤也は周囲を見渡す。
そして潤也はそこにあるはずの無いものを見つけた、リベジオンの腕だ。
先ほど轟虎と戦いにおいて失われた筈の腕。
それが、そこに存在する。
潤也は慌てて操縦席に戻りリベジオンの現状を確認する。
四肢を失い、警報を告げ続けていたディスプレイからその警報が消えていた。
そしてその全機能が轟虎と戦う前から追っていた損傷も修復されている。
つまり、リベジオンは戦いに赴く前の状態に完全に修復されたのだ。
あの一瞬の閃光の間に・・・。
目の前で起こる・・・まるで空想を現実に行うかのような出来事に潤也は足を震えさせた。

「くすっ、さっきからモニターしてたのと、このメタトロニウスにもその機体の情報があったから簡単に再現できたんだけれどね。
 これは咲からのお兄ちゃんへの再会のお祝いだって思ってもらえばいいよ。」

咲はそう言って、明るく笑う。
その笑顔は、潤也の父と母を殺し、現在地上で行われている大量虐殺の主導者の顔とはとても思えなかった。
潤也がよく知るお人好しで、優しくて、それでいて時折乱暴で不器用な妹。
それが目の前にいる。
しかし、彼女は虐殺を続けている。
人の蘇生と不死化などという訳の分からない事を至宝という訳のわからない道具を使って成す為に・・・。
まるで酷い夢を見ているようだ。
そう目眩を感じている潤也の横で、咲は思いついたと手を叩いた。
「そうだ、お兄ちゃん。せっかくお兄ちゃんも怨念機持ってるんだし、咲の手伝いしてくれない?」
「手伝い?」
「そうそう、至宝探しのお手伝い。お兄ちゃんも一緒になってたくさん人を殺して至宝を見つけ出すの・・・。」

いつもと変わらない調子で咲はそう言う。

「――そんな事出来るわけがないだろう!!」
「いやだ、そんな怒らなくても大丈夫だよ、咲がどうせ全部生き返らせるんだし」
「そういう問題じゃない!お前は一体、自分がどういう事を言っているかまるで理解しているのかまるでわかっていない!!」
「なんで?どうせ生き返るなら、死んだって一緒だよ。」
「―――――っ。」

潤也は閉口し、己の言葉の無意味さを理解した。
会話がなりたっていない。
咲は信じているのだ。己の行う事が正しいと・・・そして、それを成すための力が自分にはあるのだと・・・。
そんなものをもはや確信に近い形で持ってしまっている。
そして咲は潤也が知るそれと変わらない口で父と母を殺し、世界中の人々を虐殺するように指示を出し、あまつさえ自分をそれに誘おうとしている。
潤也は目の前にいる少女が自分の知る妹の皮を被った自分の知らない全く別の化物なのではないかと思えてしかたなかった。

「はぁー、お兄ちゃんが手伝ってくれれば、早くお父さんとお母さんも生き返らせる事が出来るのに・・・。」

咲は残念そうにため息混じりにそう言う。

「本当に・・・お前が父さんと母さんを殺したのか?」
「うん、そうだよ、こんな風に―――。」

そう言って、咲はメタトロニウスにその鋼の掌の上にいた母の形をしたものを握りつぶした。
飛び散る血と肉片、その血の一部が潤也の頬に付着する。

「あっ・・・。」

その光景に潤也は思わず言葉を失う。
潤也の瞳に映るのはメタトロニウスの腕の隙間から血まみれになってはみ出している人の腕。
あれは母ではない。
そもそも生物であるかどうかも怪しい。
そうわかっていても、母と同じ形がしたものを無残な残骸に成り果てたのを見るのに平常心を保てるわけが無かった。
見ているだけで気が狂いそうな感覚に陥る。
あれがもし本当に母で、それをしたのが咲であるというのならば・・・。
それはもう本当に――――――

「ん、どうしたの・・・お兄ちゃん、呆気に取られちゃって?これ偽物だよ?」

ショックを受けている潤也見て少し驚いたようにして咲は言う。
偽物とはいえ母と同じ姿をしたものを殺した事に特別な感傷すら持っていないと感じさせるその物言いに潤也は言いようもない感傷を持つ。
狂っている。
黒峰咲は狂っている。
その事に悲しみと怒りとで爆発しそうになった自分を抑えながら潤也は言う。

「咲、お前、父さんと母さんを生き返らせる為にも・・・って、今、言ったよな。」
「うん。」

当たり前の事だと咲は頷く。
それに対して潤也は叫んだ。

「だったら――――殺す必要なんて無かったんだ!はじめから生き返らせようなんて考えてるのならば、そもそも殺す意味なんて無い。だいたい・・・なんでお前は父さんと母さんを殺した!!」

ここに根本的な矛盾がある。
生き返らせようとするのならば、そもそもとして殺す必要がない。
そもそも咲は両親を慕っていたのだ・・・潤也の視点から見ても仲の良い親子だったと思う。
だからこそ、潤也には何故、咲がそのような凶行に移っているのか理解出来なかった。
「だから・・・理由があるって言ったでしょ・・・。」
「それは、何だ?」
「世界を死から救うため。世界を死という暗黒から抜けださせる為。」
「それじゃ、理由になっていない!大体、父さんと母さんが死んだ所で得られる力なんてたかがしれてる・・・それをなんで殺す必要があった!」
「これが理由なんだけどなぁー。ふふ、そうだね、ちょっとお兄ちゃんの知らない話をしようか・・・。」
「知らない話?」

そう問う潤也。
咲はメタトロニウスの装甲を愛でるようにして撫でる。

「このメタトロニウスはね、お父さんとお母さんが作ったんだよ。」

誇りのようにして咲はいう。

「なんだと・・・。」

それは潤也も知らない事実だった。
潤也の父と母は著名な機械工学の研究者である。
5年前から機関を巻き込む大プロジェクトの責任者である父と母
しかし、その研究の内容は極秘扱いとされており、実の息子である潤也も知らなかった。

「あの旅行はね、本当はこの子の起動実験の為の旅行だったんだ。お兄ちゃんは知らないと思うけどね。」

咲は愛しそうにメタトロニウスの装甲を撫でる。

「咲には適性があったらしくて、この子の適格者として選ばれたの・・・そしてあの日、初めてのこの機体を動かした時、咲は知ったんだ。」
「知った?」
「お兄ちゃんも知ってると思うけど怨念にはね、願いが込められてるんだよ。生きたい、生きていたい、誰かに死んでほしくない。誰かに生きていて欲しい。そんな願い。」

潤也もそれを知っている。
リベジオンに搭載されているDSGCシステムは不幸な末路を迎えた怨念をエネルギーに変換するシステムだ。
そのシステムは、その強大な力と引換にその死者の死の体験を搭乗者に追体験させる。
その際に死者がいつも願うのは自分をそんな末路に追いやったものへの怒りと、生きたいという願い。
先の轟虎との戦いでもそれを実感したばかりであった。

「だから咲はね、思ったんだ。誰ももう死で悲しまなくて良い世界を作る。こんな無念な思いを誰もしなくていいような世界を作りたいって・・・。」
「それの何処に生みの親を殺す理由がある!」
「ふふ、結論を焦っちゃだめだよ。至宝にはね、ありとあらゆる不条理を消し去るだけの力がある。それによって人は、いや、この世界に生ける全ての者は新しいステージに立てる。
 その可能性も咲は知った。けれど、それには強靭な精神力と目的意識が必要なの・・・DSGCシステムに流されない、消し去られない強い心・・・それがね。」

咲が何を言わんとしているのか潤也は漠然と理解し愕然とする。

「お、お前は・・・まさかそんな理由の為に父さんと母さんを殺したっていうのか?」

潤也は声を震わせて言う。
メタトロニウスの手のひらにある母親の模倣を見た後、笑って、

「うん、そうだよ。咲はお父さんもお母さんも今でも大好きだし、お兄ちゃんも大好き。だから、この世界の誰よりも生き返らせたい。
 そう思う心が私を強くする。那由他の怨嗟の果てで私は私であり続ける強さを持てる。」
「そんな・・・そんな理由で・・・。」

潤也は絶望感に苛まれる。
潤也にとっては最悪の記憶であり、この戦いの起点である第六区画消失事件。
あの日、咲はメタトロニウスのDSGCシステムの怨嗟のフィードバックによって、その怨嗟と同化した事を悟る。
狂ってしまったのだ、幾千幾万の怨嗟に侵食されて、その在り方を変えてしまった。
少なくとも潤也にはそうとしか思えなかった。

潤也は絶望感に苛まれる。
潤也にとっては最悪の記憶であり、この戦いの起点である第六区画消失事件。
あの日、咲はメタトロニウスのDSGCシステムの怨嗟のフィードバックによって、その怨嗟と同化した事を悟る。
狂ってしまったのだ、幾千幾万の怨嗟に侵食されて、その在り方を変えてしまった。
少なくとも潤也にはそうとしか思えなかった。

「だから、お兄ちゃん、一緒に来てくれない?お兄ちゃんにも手伝って欲しいんだ。」

そういって咲は手を差し伸べるようにして潤也に向ける。
咲は言う。
至宝によって人を生き返らせ、不死の世界を作ると・・・。
それによって父と母も蘇生させるのだと・・・。
それによって潤也は理解した。
既にその為に彼女の愛する父と母を殺した咲にはそれ以外の道が残されていないのだという事を・・・。
例え、その目的にたどり着くまでの手段がどれほどの凶行なのだとしても、それにたどり着くまで進み続けるしかない、そんな所まで来てしまっているのだと・・・。
けれど・・・わかっていても潤也はそれを言うことを止める事が出来ない。

「何故だ・・・なんで・・・父さんと母さんを殺した・・・。別に世界なんてどうでもいいじゃないか・・・一人の人間が世界を救うだとかそういう大それた事なんて考える必要なんてない。そんなことお前が背負う必要なんてない。」

こんな言葉はもう遅いのだとわかっている。

「だから――――」

咲は先と同じ言葉を繰り返そうとする。
それを遮るように潤也が叫ぶ。

「そんな答えが聞きたいんじゃない!!!!」

咲は呆れたように両手を上げて首を振る。
そして少しため息混じりに、

「はぁ、仕方ないお兄ちゃんはまだその域に達していないんだね。それじゃあ、理解できなくても仕方ないか・・・まぁ、いいよ、咲はいつでも待ってるから理解出来たら一緒に来てね。行くよ、ダグザ。」

咲は潤也に背を向けて、ダグザと共にメタロニウスの背部にある搭乗口へと移ろうとする

「待て、咲!話はまだ終わってない!!」

そう呼び止める声も聞かず咲はメタトロニウスの中に入り込んだ。
メタトロニウスの瞳が光り、それと共に巨大な六枚の翼が展開する。

「じゃあ、お兄ちゃんバイバイ~、また何処かで~。」

そうスピーカー越しに言って、リベジオンの4倍以上ある巨体は飛翔する。
その際に起こる暴風をリベジオンのコックピットに入る事で堪えながら、遠く離れていく咲を潤也はただ見送った。
そうして少したった後、潤也は咲の言葉を思い返し・・・コックピットの壁を叩く。
家族を失ったと思っていたあの日に立てた復讐の誓い。
UHと呼ばれる地下世界の住人達への憎悪。
それが全て間違いだと知った。
家族を殺し、あの惨劇を起こしたのは黒峰咲である。
世界各地で行われている虐殺行為は咲の指示でUHが行なっているものである。
咲の目的は至宝と呼ばれる謎の道具を用いての世界中の人間の蘇生と不死化。
それを手に入れる為に彼女はこれまでの凶行を行なってきており、そしてこれからも続けていく。

「――――はは、悪い冗談だ。」

潤也は力のない声でそう言った。
性質が悪いにも程がある。
俺は今まで一体何のために戦ってきたのだろう?
こんな機体に乗って死を何度も体験させられるような目にあって・・・。
潤也にはこれまで行なってきた事が全て無価値になったように思えた。

「じゃあ、俺はどうすればいい・・・。」

そう思った。
咲のやる事は間違っている。
そう漠然とは思うものの、それを否定出来るだけの理由を潤也は持っていなかった。
何故ならば、潤也自身もDSGCシステムによって死者の念に何度もその心を晒して来たのだから・・・。
だが、しかし、だからこそ・・・思う。
やはりたった一人の人間が世界全ての怨念をその身に受ける事など出来はしないと実感を持って思う。
どれほど精神を鍛えようと、どれほど強い自我があろうとそれは無理なのだ。
けれど、咲は自分がそれを超える事が出来ると信じてただ、ひたすらに人を殺し続けている。
ならば、黒峰潤也・・・お前はどうするべきか?

「―――――そんなの決まっている。」

そう決まっている。
――――――止めるしか、無い。
これ以上、咲が凶行を犯す前に止めるしか・・・。
けれど、それがお前に出来るのだろうか?
あれは、ただ、色んな人を救いたいだけなのだ。
死に触れすぎて、死を憎む余り、死の踏破を願っただけなのだ。
それを願い、ただ、ひたすらに走り続けている。
その為に、父と母すら手にかけてしまった。
だからこそ、もう咲はどのような説得も聞かないだろう。
咲が殺戮を止めるという事、それは父と母の死、そして己が殺してきた人々が本当に死ぬという事なのだから・・・。
既に、咲はもう後戻りの出来ない道にいる。
ゆえに黒峰咲を止めるという事は黒峰咲を殺すという事に他ならない。
再び自問する。
お前にそれが出来るのか?と・・・。

「――――出来る訳がない・・・。」

自虐的に言う。
黒峰潤也は黒峰咲を一人の家族として愛している。
潤也の誕生日プレゼントとして花の冠を作ってくれた咲。
祭りの射的で目当ての景品を当てられなくて涙を目に浮かべていた咲。
生まれ母親に抱えられながら産声をあげていた咲。
そのどれもが鮮明に脳裏に焼き付いている。
そんな人間を殺せる訳が無かった。
失意に暮れる。
今、知った事を忘れて全て投げ出してしまいたくなる。
けれど、そうしている間にも咲の指示の下世界中で鋼獣達が人を殺していく。
叶いもしない願いを叶える為に・・・。
咲を止めなければならないという思いと自分にはそれが出来ないという確信で潤也はがんじがらめだった。
もしかすると、咲が言っている事は全部何かの間違いかもしれない。
そうだ、咲が自分が両親を殺したとなんらかの原因で勘違いしているという可能性もある。
そうであるならば、咲を止める事を出来るかもしれない。
まだ、戻れるのだと言えるかもしれない・・・。
そう信じる事だけが、黒峰潤也に残された最後の心の拠り所であった。
リベジオンのコックピットで電子音が鳴る。
リベジオンに通信が入った事を知らせるコール音だ。
潤也はリベジオンの操縦席に座り、その通信回線を開く。
スピーカーの向こうから聞き慣れた声が聞こえてくる。
「ハロー、親愛なる兄弟、そろそろ君は僕が恋しくなってるんじゃないかと思ってね?僕はそう凄く思ってるんだけど、どう?これからちょっと会わないかい?」

その耳障りな声は深く潤也を不快にさせる。
潤也は無言で通信を切ろうとスイッチに手を伸ばす。
そこで、男は慌てたように

「おっとと、通信を切らないでくれよ、兄弟、せっかく面白い事を教えてあげようとしてるのにさ・・・。」

そう意味深にアテルラナは言った。
潤也はそれに聞き返す。

「面白いことだと?」
「そう、面白いことさ、題して『黒峰咲の真実とその仕掛け人』っていうのはどうだい?興味をそそるだろう?僕は凄いそそるね。」



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シュミレーション108

全ての器官が完成。
それを繋ぎ合わせ、人を構成する。
構成中。
――構成中。
―――――構成中。
構成完了。
作り上げた人が目を覚ます。

【結果】
失敗。

【問題点】
素体となった人間の体の再構築には成功―――人格までの模倣は不可であった。
人格を形成するにたる魂の生成とそれを形作る記憶の作成が必須と思われる。
これはダグザの大釜の力のみでは成せぬ所業であり、他の至宝の力も必要と想定。

よって未だ、人の蘇生は成功せず。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―結に続く―