創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

その1

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sousakurobo

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だれでも歓迎! 編集
多元世紀元年、世界は崩壊した。
多元世紀一年。幾多の異なる次元の世界が交わり合って一年が経ち、世界の混迷は極限にまで達していた。

歪んだ闇の世界を破滅から救う為戦い続ける者達がいる。
本当に世界を救えるのか、最後は誰にも分からない。
未来は誰にも見えず、ただ目の前だけを見つめて突き進む。
限界知らずの戦いで、未来を阻む敵をブチのめし切り開く。





Si Vis Pacem, Para Bellum――汝、平和を欲さば、戦への備えをせよ




かつて百万人は住んでいたであろう都市は、廃墟となったビルが墓標のように林立するゴーストタウンになっていた。日々数え切れない程の車が行き交っていた道路は荒れ果てていた。縦横無尽に亀裂が走り、クレーターが幾つもあり、底の見えない穴が点在している。
在りし日の活気を全く感じない都市の荒れ果てた道路に、四体の鉄の巨人が静かに立っていた。
強固な装甲に包まれた無骨なデザインの巨人の名は「対鋼獣用人型兵器」……通称ヴァドル。地球上に蔓延る鋼獣という異形の怪物に対抗する為に開発された、戦闘用ロボットである。
骨組みとなる強化金属フレームを人工筋肉と擬似神経で覆い、ソコにパイロットの神経をダイレクトに接続する事で、あたかも自分の肉体を操るように機体を操縦出来る。
ダイレクトに神経を接続する仕様の為に以前は操縦時の負担や接続を切った後の疲労感など問題もあったが、別の世界の兵器に使用されている思考制御+コンピュータ補助操縦技術を一部導入した事で大幅に改善された。
モーターやエンジンを積まない最新の動力システムを搭載している為に、ヴァドルは全体的にシャープなシルエットをしている。
ヴァドルは全長10メートル程で、やや足が短く、逆に手が少し長い。流線型の装甲タイルが人口筋肉を覆っており、甲冑を纏っているというよりは直接体に鉄板を打ち付けたような容姿をしている。
加えて、僅かな手足のバランスを覗けば殆ど人間に近い造型をしている事や、駆動が静かで滑らかな事から、ヴァドルからはロボットという機械っぽさがあまり感じられない。
隊長機を意味する「00」とプリントされたヴァドルは、砲身だけで4メートルはあるシールド付きの大型ライフルを手に、腰には鉈に近い形状のブレードを装着していた。
四機は何処から攻めてきても対応可能な菱形の陣形で敵を待ち構えていた。隊長である瀬名龍也を先頭に、右後方に一号機を駆る副隊長のディーネ、左後方に二号機のリート、三機の後方、隊長機の真後ろにエルツの三号機という配置。
荒野から都市へ野獣型の鋼獣の大群が迫ってくる。龍也達の世界における人類最大の天敵。人類の生存を脅かす幾多の脅威が存在するこの多元世界において人類最大の天敵とまでは呼べないかもしれないが、今でも脅威に変わりはなかった。
ヴァドルの胸部前面に位置する、衝撃を吸収するゲル状の液体に満たされたコクピット内で、無数のコードが繋がったパイロットスーツとヘルメットを身に着けた男――瀬名龍也は告げた。
「各機へ。作戦を開始する」
『一号機了解』
『フン……。二号機、了解』
『さ、三号機了解です』

それぞれの返事と共に各機との通信が切れ、一斉に攻撃を開始。隊長機と一号機のライフル、二号機と三号機のマシンガンが火を吹く。放たれた砲弾は二足歩行あるいは四足歩行、個体によって姿形が大きく異なる野獣型を次から次へ屠っていく。
四機の巧みな連携攻撃に接近すら出来ず野獣型は一方的に殺戮されていく。優勢でありながらも油断など全くしない。鋼獣の恐ろしさは彼らが最も骨身に染みて理解している。足元に響く微少かつ異常な聞き慣れた音。
「散開!」
龍也の叫びに三号機のみが少し遅れてその場から飛び跳ねる。ヴァドルの足元が盛り上がったかと思うと、地面から巨大な黒い柱が四つ立ち上り宙に舞った。 全長20メートルを越える黒色のソレは、体の大半が口で出来た奇妙な生物だった。
巨大で禍々しい顎を持つ、太く短い胴の、バランスの悪い魚のような容姿をした怪物、土竜型の鋼獣。他の三機は回避と同時に至近距離で攻撃を浴びせられたが、動作が遅れた三号機は持っていたマシンガンを食われてしまった。
魚の様に水中から飛び出した土竜型の一体、三号機を襲った個体は、空中で身を捻り、三号機のヴァドル目掛けて急降下した。
他の三機が攻撃しようとするが間に合わない。三号機の回避も既に遅い。
彼ら四人に手立ては無く、どうする事も出来なかった。だが、戦っているのは彼ら四人だけではない。土竜型が巨大な口を開き、ヴァドルに喰らい付く。その寸前。土竜型の側面に強烈な一撃が撃ち込まれた。
バターに熱したナイフを沈み込ませるように土竜型の体を容易く貫いた砲弾は体の中心で爆発。絶大な振動波と特殊熱によって、三号機を襲おうとした土竜型は塵すら残さず分解蒸発した。
四機の顔が同時に同じ方向を向く。時速150kmで凸凹の荒れた道路を整地された地面のように滑走する、ヴァドルより遥かに小さい人型兵器。
全高4m、基本重量2トン。海上都市姫路守備隊重歩兵小隊隊長、清水静の駆る清水静専用超重装甲強化服改。
土竜型を葬った左肩の50mm折り畳み式狙撃砲を元に戻し、右手に持った主兵装である25mm重機関砲をエルツの三号機に放り投げながら、無駄の無い流水の如き動作で背中の鞘から300cm超振動極熱刀を抜刀する。

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