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<アンドロイドはバレンタインの夢を見るか>

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匿名ユーザー

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Lost Girl


台所に充満する、甘ったるい独特の匂い。街角で流れる、最近のラブソングを鼻歌で歌いながら、彼女は調理に興じている。
今日は2月14日、世間では俗に言う、バレンタインデーと呼ばれる日である。今日、多くの女性が男性にチョコレートを渡すであろう。
前もって説明しておくと、バレンタインデーとは菓子会社が売り上げを伸ばす為の陰謀……失礼。
女性が好意を抱く異性にお菓子の一種であるチョコレートを手渡す日である。

彼女ことティマは今、最も愛している男性にして夫である、マキ・シゲル以下マキへのチョコレートを手作りしている最中だ。
ティマとマキが出会った成れ初めを語るには膨大な時間が掛かる為、凄く単純に夫婦(ただし籍は入れていない)である事だけ、理解して頂きたい。
様々な障害を乗り越えた末に、ティマとマキの絆は非常に強固になった。言いかえれば、バカップルと比喩されても仕方がない位愛し合っている。

そんなこんなで、ティマはそんな愛するマキの為にお手製チョコレートを作っている真っ最中なのである。

しかし調理に興じていると、ティマはかつて自分がやらかした、ある出来事を思い出して顔が熱くなる。アンドロイドなので実際熱くはならないのだが。
かつて、自分がアンドロイドであるという大前提を忘れてしまい、無謀な事をしてしまった為、マキを心から心配させてしまったのだ。
あの頃の自分は精神的に子供というか、まだ何が良くて何が悪いのか、自分自身の行いに対する責任、とやらを理解していなかった。
今の自分は……完全に大人になった、と胸は誇れる訳でもないが、そこそこ成長したと言える。

思えば……あの事件が以降、自分でチョコレートを作ろうと考えるのは初めてだ。
レシピは前日にしっかりと頭に叩きこんだから、何か不備が起こるというのは無い筈。現時点で何のミスもトラブルも起きていない。
マキは今、仕事に使う道具を新調する為に出かけている。もうすぐ出来あがる為、帰ってきたらすぐに渡すつもりだ。

……と、そうだった。今日、チョコを作るのはティマだけではない。
まだ来ていないものの、ティマはこの後、ある人物のチョコレート作りを手伝うつもりなのだ。
その人物は女性で、マキの助手として働いており、ティマとは姉妹の様に仲が良い。まぁ言うなれば、家族の様に親しいと言っても良いだろう。

その時だった、玄関のインターホンを押す音が、台所まで響いてきた。

ティマは一旦調理を止め、両手を洗ってタオルで拭くと、早足で玄関へと向かった。
そしてドアの向こうに居る、インターホンを押した人物へと声を掛けた。

「開いてるよ、テンマちゃん」

「あ、ホントですか?」

ティマがそう言うと、ドアの前の人物はドアを開けて、玄関へと入ってきた。

中学生と間違えそうなほどの身長と、それに見合うロリータフェイス。それに、ひらひらとしたフリルのスカートといった服装が、その人物を余計に幼く見せる。
ティマの自宅を訪ねたその人物、もとい女性の名はテンマ。
マキの事を技師として深く尊敬しており、またその妻であるティマの事も年上の女性として尊敬しながらもフランクな間柄を築いている。
今日、テンマがティマの自宅をお邪魔したのは何を隠そう、チョコレートを作る為である。


数日前の事だ。仕事で出張してきた先からマキと共に帰ってきたテンマは、マキがシャワーを浴びている間、ティマに頼んできた。。

「ティマさん! その……お願いがあるんですけど、良いですか?」
「何? 私の出来る範囲なら何でも協力するけど」
「ええっとですね……。14日……一緒にチョコを作って欲しいんです」

ティマは軽く驚いた。いや、結構驚いたかもしれない。

テンマがチョコレートを送る様な相手がいるという事に。普段一緒に居るが、テンマの口から異性についての話を聞いた事が無かったからなのだが。
テンマにもそういう人がいるんだ……と、失礼だと思いながらティマはそう思った。というか、考えてみればそういう浮いた話の一つや二つあってもおかしくない。
外見はともかく、テンマは20代真っ盛りだ。そういう人がいても不思議でもなんでもない、とティマはなんだか保護者的な観点から納得する。
にしても一体誰に送るのか、というか恐らく一人だろうけど、何人に作るのか気になったが、聞くのも野暮な気がするので止めておいた。当日までの楽しみという事で。


そして14日である。

「お邪魔しまーす!」

マキが出かけているという事で、今家には女2人しかいない。別に秘密にする事でも無いが、何となくこういう事をする時には、女だけの方が良い。
テンマの片手には、今日作るチョコレートの為であろう、材料が入っているであろうビニール袋が握られている。
……何だかやけにビニール袋が大きいというか、中身がいっぱい入っていそうだ。作るのは一人分じゃないか……? とティマの頭に疑問符がちょっぴり浮かぶ。

「調理器具は自由に使って貰って構わないから。あ、でも大切に扱ってね」
「はい! ありがとうございます! ティマさんの道具ですからそりゃ勿論、丁寧に扱いますよー」

ビニール袋を置いて、テンマは袋の中からエプロンを取り出して着用した。おぉ、気合いたっぷりだとティマはテンマの姿を見、自分も気合を入れる。
ティマのチョコレート作りはもう殆ど終わっている為、これからはテンマの手伝いを行う。まぁ、あくまでサポートでテンマ自身が作りたければそれを尊重するが。
さて、テンマが袋から材料を取り出し始めた。一体どんな材料が出てくるのか、ティマは楽しみに……。

1枚、2枚、3枚、4枚と袋から次々と素材である、板チョコレートが出てくる。それに続く様に、トッピングの袋も沢山出てくる。
テンマはボウルを取り出すと、豪快に板チョコを入れていく。どうやら溶かすようだ。
て、手間が掛かる作業だからとティマは少し動揺しながらも早速手伝ってあげる。

「……貸して、テンマちゃん。私が溶かしてあげる」
「あ、すみません。宜しくお願いします1」

そう言ってお辞儀する様に、テンマがティマに板チョコがたっぷり入ったボウルを受け渡した。
……ボウルの中に入っている数十枚も入っている板チョコを見、ティマはどうしても聞いて置きたい事がある。
テンマはメモを熱心に読みこんでいる。この前、ティマが渡したチョコレートの作り方が書いてあるメモだ。

「あのさ、テンマちゃん。……一つ聞いていいかな?」
「何ですか?」
「テンマちゃんさ……どれくらいの人にチョコ送るの? 一人?」

ティマの疑問に何故かテンマがビクッと肩を強張らせ、まるで嘘がばれた様な反応を見せる。
ティマはその反応に凄く引っ掛かる何かを感じるが、今の所その引っ掛かっている何かを表に出す気はない。ただ、どれだけのチョコを作るのかが気になるだけだ。
それに応じて電気代やガス代が掛かるし、何より時間が掛かる。そういう微々たる部分も調整しないと、全体的なスケジュールが崩れてしまう。

テンマの返答を待っているが、テンマはなんだか気まずそうな感じでティマから目を背けている。

「えっと……」

テンマはティマが特に何を言う訳でも無しに、目を逸らしている。

初対面の頃から色々あった為、ティマはテンマが持つ癖について熟知している。テンマは親しい人に嘘をつくのは凄く苦手だ。
付こうとするとこういう風に、先に体の方が反応してしまう。ティマはそのテンマの癖から見抜いている。これは嘘を吐くつもりだな、と。
テンマは分かりやす過ぎる程ティマから目を逸らしながら、恐る恐る、答える。

「に……2、3人……ですよ……」

ティマは無言で詰め寄る。テンマは目を泳がして下手くそな口笛を吹いて、誤魔化そうとする。
しかしティマは止めない。詰め寄ってじぃーっとテンマを凝視して、テンマから本当の事を聞きだそうと粘る。
下手くそな口笛が奏でる摩訶不思議なメロディーが台所を支配する。が、根負けしたのか、テンマの口からすぴ―すピーと口笛が途絶えた。

「ほ……」

観念したのか、テンマがティマの目をちらちら見ながら、正直に答える。

「ホントは……20人、位に、作る予定です」
「2……20人!?」

その人数に、思わずティマが大声で聞き返した。テンマは本当に申し訳無さそうに、ティマから目を伏せている。
まさか20人分もチョコレートを作らねばならないとは……。あまりにも予想外の人数にティマは一瞬電子回路がスパークするかと思った。
ホントに驚いて目が丸くなるとはこの事だと、ティマは全く関係無いがほのぼのと思った。

にしてもテンマちゃん……。いや、ホントテンマちゃん……。
何で前もって言わないのよと、ティマは小言を言いたくなるが制止する。前もって聞かなかった私も悪いんだし。
にしても20人……20人かぁ……ホントに気合い入れないと終わんないわ。とティマは頭の中でため息を吐く。
そうだ、ならもっと聞いてみたい、というか突っ込んでみたい所がある。

「それでテンマちゃん。あの……もっと突っ込んでいい?」

「……はい、どうぞ」

「テンマちゃん、それで誰にチョコ……配るの? 良かったら教えてくれる?」

ティマの質問に、テンマは何故か頬をちょっと染めながら、もじもじと言いにくそうにティマを見上げる。
一体どんな相手なのか、そして20人も……。多分同じ年の男の子だろうけど。
ホント、20人にチョコを配るってどういう事なんだろう。ティマは久々に知的好奇心を刺激される。凄く下世話だけど。

「皆……女の子です」



「……えっ?」




一瞬電子回路がスパークしたのか、重大なエラーでも起きたのかと、ティマは思った。
20人の女の子にチョコを配る? ど、どういう、どういうこ、どういうことなの? WHY?
ティマはどうすればいいのか分からない。もしかしたら今、テンマに関する凄い秘密を聞いてしまった気がする。

「あ、あの!」

呆然として口があんぐりと開けっ放しだったティマが、テンマの声にハッと我に帰り口を閉める。
いけない、もしかしたらテンマちゃんは何か大きな悩みを抱えているかもしれない……。
なら年上の、ううん、大人の女性として、テンマちゃんの事を考えてあげなきゃいけない。ティマはそう、強く心に誓った。

「あの~……ティマさん」
「テンマちゃん!」

そう思い、ティマはテンマの両手を強く握った。握って凄く真面目に、シリアスに、テンマに言った。

「もし何か悩みがあるなら私に隠さず話して。私に何が出来るが分からないけど」
「ティマさん、その」
「私が出来る事は微々たる事かもしれない。だけど……」
「だからその……」
「それでその、テンマちゃん……」

「もしかしてテンマちゃんってその、えっと、あの……レ、レ……レ……駄目、やっぱり言えない……」

「だから違いますってば!」

堪えかねた様にテンマがティマの手を振り払って、そう叫んだ。
テンマの発言にティマは反省する。どうやらティマはテンマにそっちの気があると勘違いしてしまっていた様だ。凄く恥ずかしい。
テンマが自分の行動をすぐに詫びた。謝りたいのは私だと、ティマは思った

「ごめんなさい、ティマさん」
「ううん、私もなんか凄い勘違いしちゃってた。ごめん」
「で……私がチョコレートをあげたい人達なんですけど、この人達なんです」

そう言いながら、テンマはスカートに付いたポケットを探り、何かを取り出してティマに見せる。
テンマが取り出したそれは、パスケースの中に入っている写真であった。
そこにはどこかの学校の校門前だろうか、そこで愉しそうな笑顔を浮かべている、制服を着た女の子達が映っていた。その真ん中に、テンマがいる。
ティマが顔を上げると、テンマがぼそぼそと説明する。

「最近の流行りで、友チョコっていうのがあるんですよ。女の子同士で、仲の良い友達にチョコをあげるって奴なんですけど。
 それで、高校のクラスメイトの子達と集まろうって事で夜……」

次第にティマはテンマが何故チョコを作りたいのか、そしてあんなに大量の板チョコを持ってきたのかが理解できてきた。
様はバレンタインを兼ねた同窓会の為に、チョコを作りたいという訳だ。成る程、20人分はそういう訳だったのか。
……しかしテンマがチョコを作りたい理由は分かったが、ティマの中で引っ掛かっている事が無くなった訳ではない。
何故最初問い詰めた時、テンマは嘘を吐いたのか。素直に友チョコを一緒に作りたいと言ってくれればよかったのに。

「ねぇテンマちゃん。教えてくれたのは嬉しいんだけどもう一つ、良い?」

「何です?」

「最初聞いた時、テンマちゃん嘘付いたよね。2,3人に作るって。何で? 最初から友チョコを作りたいって言ってくれれば……」

ティマがそう聞くと、何だかテンマの様子が少し変わった、様に感じる。
先程までの、ティマに詰め寄られてモジモジしていた感じが収まり、雰囲気がいつものテンマに戻る。
否、いつものテンマのある種突き抜けた天真爛漫さが感じられず、妙に……何といえば良いのだろう。
艶めかしい……雰囲気を感じる。姿形は幼いのに、やけに大人び、すぎている、そんな雰囲気を今のテンマから感じる。

「実は……2、3人に作るって言ったの、あながち嘘でも無いんです」

テンマのその発言に、ティマが首を傾げた。

「……どういう意味?」

ティマの質問に、テンマはティマの前に立つとじっと見上げた。その目は、潤んでいる様に見える。
しかし悲しさを表す為の潤みではなくこう……例えが不躾だが、男の人を誘い込む様な意図的な潤みだ。
テンマはティマ見上げ、否、上目遣いで見つめがら、言う。

「その2,3人は実は本命……なんです」
「本命?」

20人だけでも驚きだったが、本命がその中で2,3人もいるのかと、ティマは驚嘆する。
本命というのは1人では無いのかと。2人も3人も……ってちょっと待って。
チョコをあげるのは女の子だけって事で……で、その中で2,3人? ティマの思考回路は最早ショート間近である。
にしてもテンマの覗いてはいけない、ある種のインモラルな一面を凄く垣間見てしまった。恐らく、マキでさえ知らないであろう一面に。

「それでですね……」

ティマを見つめながら、テンマが再び話し始める。

「その中でも大本命な人がいるんですよ」

直感で、ティマはそれ以上テンマにこの話をさせてはいけないと思った。
良く分からないけど、これ以上テンマのペースに飲まれてはいけない、とティマの中の何かが警告する。

時間もないしチョコ作ろうよ! とティマが言いかけた瞬間。

「その人は――――――――目の前に、います」



殆ど、一瞬だった。




テンマがティマの唇を奪うまで。気付かぬうちに、テンマはティマの唇を、奪ってしまった。
本当にあっという間だった。テンマは強引にティマに密着し、首元に両腕を回すと、そのままティマを押し倒しながらキスをした。
驚きのあまりに、ティマはそのまんま押し倒されてしまった。テンマが起き上がって、唇を指でなぞりながら言った。

「ティマさんのキス……今まで食べたどんなチョコよりも、甘かったです」

なに? なに、どうなってる、の?
わたし、わたしの、わたしの、わたたたたたたしの、え?
あわわわわわあqwせdrftgyふじこ。

ティマの思考回路はとうとうショートした。

テンマはがら空きになっているティマの両手に自らの両手を絡ませて、ティマが身動きが出来ないようにする。
そして再び、ティマの唇に自らの唇を重ねる。おまけに舌まで入れてくる始末。ティマは必死に抵抗しようとするが、更に身動きが取れなくなる。
数分か、数十分か、もしかしたら永遠にも感じるほど、ティマはテンマとのキスが長く感じられた。

ようやく、テンマの唇が離れた。最早、ティマはまともに状況を認識出来ない。

「初めて会った時から一目惚れしてました。やっとこの日が来たから私……自分に正直になったんです。ティマさんが、大好きだって事に」

テンマの声はハッキリと聞こえているが、姿がぼやけて見える。ただ、怖い。自分が今どんな状況に陥っているのか、全く理解できていない。
初めてだった。今までキスを許した相手はマキ、ただ一人だった。キスの相手はマキ、だけだったのに。マキにしか、許さなかったのに。
まるで、今まで自分が必死に守ってきた大切な何かが穢され、壊されてしまった様で、ティマはもう、冷静になれない。

そうだ……私、マキとだけキス……してたんだ。私、守ってきてたんだ……。

「こんなに綺麗なのに……全然奢った所も高飛車な所も無くて、純粋で、凄く可愛い人だなって。だから私……」

「いやだ……」

「私……マキさんに嫉妬してたんです。ティマさんを独占できるあの人の事が凄く、羨ましくて」

「お願い、もう……やめて……」

「だけど、もうティマさんは私の物です。もうずっと、私だけの物です」


重大なエラーを引き起こしている為だろう、もう何も考えられない。

ふっと、大好きなあの人の事が浮かび、ティマは声にならない声で、言う。

「マキ……助けて、マキ」

「マキさんなら――――――――私のチョコレートを食べてましたよ。すっごく、美味しそうに」

「……嘘」

「あまりの美味しさに昇天しちゃってるんじゃないでしょうか。あっちの意味で」


こわ、れる。

もう、だめ。

わたし、もう。


「それじゃあ、ティマさん」

「……」

「ずっと――――愛してます」


ティマの目から、涙が一筋、伝う。



『スリープモード解除』

ガバっと、凄いオーバーリアクションで、ティマはソファーから勢い余るほど元気に起き上がった。

そしてすぐさま、自分の頬を強く握って引っ張ってみる。痛みは無いが、感触はある為夢ではない。こちらが現実だ。
何だか凄く酷い何かを見た気がする。新手のコンピューターウイルスにでも感染したのか、それとも重大なバグでも起きているか。
一度マキに点検してもらおうと、ティマは強く思った。強く強く思った

そういえば……壁に掛けられているカレンダーを見る。2月14日だ。
そうだ、今日はテンマちゃんとチョコレートを作る日じゃないか。この前約束しただろうに何で忘れてるんだ、私は。
自分に軽く嫌気が差しながらも、ティマはソファーから立ち上がり、玄関に向かう。
既に台所に材料は揃えてある、テンマちゃんが来るまでの時間、エネルギーを節約する為にスリープモードに入っていたのだ。

玄関に来ると丁度チャイムが鳴った。
ドアを開けると、時間通りにテンマがそこに立って、丁寧におじぎした。

「お邪魔します! ティマさん」
「いらっしゃい。で……」

ティマは下に視線を移し、ぎょっとする。
テンマの手には、ぎっしりと材料が入っているビニール袋。いや、そんな、そんな馬鹿な。

「あのさ、テンマちゃん。確認したいんだけど……今日何人分のチョコレート作るんだっけ」

ティマがそう聞くと、テンマは不思議そうに聞き返す。

「何人って、この前言ったじゃないですか―。20人分の友チョコですよ。
 ちょっと私一人で作るのが大変ですって相談したら、ティマさん協力してくれるって言ってくれたじゃないですか―」

協力する……協力するって言ったっけ私?
まぁ、テンマちゃんは嘘は付けないから、きっと承諾してたんだろう。と、ティマは思う。
まぁ良いや。一先ず20人分は二人がかりでも相当骨が折れるだろうから気合いを入れないと。マキ用のチョコはそれが終わってからでいいや。

「じゃあ上がって。早速始めようよ」
「はい! 宜しくお願いします! あ、そういえばマキさんはどこかに出かけてるんですか?」
「うん、パーツとか探しにちょっとね」

「あ、そうだテンマちゃん。一つ聞いていい?」

「何ですか?」

「その……変な質問なんだけど、その20人の中に……本命っている?」

ティマの質問に、テンマは不思議そうな顔をして、首を傾けながら答える。

「……友チョコは友チョコなんで、本命はいないです」

「あ、ああ、そうだよねー、ごめんね、変な事聞いて」

「あ、でも」


                             アンドロイドは
                             バレンタインの 
                              夢を見るか



「本命のチョコをあげたい人は、2,3人……」

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