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グラインドハウス 第9話

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匿名ユーザー

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 次の日は祝日で学校が休みだったので、マコトは早速行動を起こした。
 護身のため、ジャケットの内側に折り畳み式のナイフを忍ばせ、両親と顔を会
わせないように家を出る。
 昨晩、マコトは家に帰ってからいろいろと考えを巡らせていた。
 『タルタロスを潰してやるにはどうすればいいのか』
 そして考えて、考え抜いて出した結論が、『警察に頼る』といったものだった

 ……我ながら情けないと思う。昨日あんなタンカを切っておいて、結局は自分
では何もできないのだ。
 だが、現実的に考えれば当然だった。タナトスはタルタロスの頂点。そんなや
つを倒せるようになるまで、果たしてどれだけの時間を積み上げればいいのか?
 グラウンド・ゼロはもう普通のゲームセンターには無いし、タルタロスの練習
室では対人対戦はできないので練習にならない。
 タルタロスに参加して対人の経験を積むのは……やはり、嫌だ。
 そもそも、自分が『タナトスに挑む』と言った直後、あんなに嬉しそうな反応
を示したコラージュの期待に応えてやるのも癪だ。
 だから俺は、俺自身では『なにもしない』ことに決めた。
 タナトスとコラージュを失望させてやることが、マコトにできる唯一の反撃だ
った。
 だから警察に頼る。
 そのためには、通報するか、直接警察署に行かなければならないのだが、これ
らの行為がどれだけ危険な行為なのか理解できないほど、マコトは馬鹿でもなか
った。
 通報にするにしても、携帯電話は使えない。もし自分のケータイで110に電
話したなら即タルタロスにバレるだろう、そんな気がする。あのとき――携帯電
話を預けたとき――からそれは感じていた。単なる警告のためだけに携帯電話を
いじくるわけがない。何らかのトラップが仕掛けられていると考えて間違いはな
いだろう。
 例えば、「1」「1」「0」を押した直後に携帯電話がボン!指が全部無くな
る――奴らなら、やりかねない。
 直接警察署に向かうのも危険が伴う。入るところを見られたらそれだけで終わ
りだし、そもそも警察のがわにタルタロスの人間がいない保証もない。街のど真
中にあんな巨大な違法賭場が存在し続けているのだ。可能性はある。
 まぁそれを言ってしまえばなにも行動ができなくなってしまうので、無理やり
考えないようにするが……。
 そうして、マコトが出した結論は、公衆電話からの通報だった。
 警察への通報の電話というものは全て警察によって録音されている。
 だから仮に何か問題が起こっても何とかなりそうな気がするし、携帯電話から
の通報の場合と違って、即バレする危険性も、『比較的』低いだろう。深めにか
ぶったニット帽とだて眼鏡の変装もそのためだった。
 ……などという正直自分でも頭悪いと言わざるをえないような理屈で、マコト
は行動を起こしていたのだった。
 とりあえず、公衆電話を探そう。
 マコトは駅に向かった。
 休日の駅にはいつも以上に多くの人々が行き交っている。
 その間をすり抜けて、公衆電話に近づいた。
 さりげなく辺りをうかがって、自分に注目する人間が居ないことを確認して、
受話器をとった。
 ゆっくりと深呼吸をして、硬貨を数枚入れる。
 ダイヤルする。
 受話器を耳に。
 すぐに電話は繋がった。
「こちら警視庁緊急通報センターです。ご用件をどうぞ。」
 落ち着いた女性の声が聞こえてきた。
 受話器を握る手に力がこもる。
「話したいことがあります。」
「どうぞ」
「違法賭場を見つけました。」
「……あなた様のお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「マコト・アマギです。」
「アマギさんですね。」
 一瞬の間。
「ではアマギさん、その賭場について詳しくお聞かせください。」
「はい。」
 マコトはなるべく感情的にならないよう、ひとつひとつ、断片的にだが説明し
ていく。
 その中には自分がタルタロスに加担して、相手プレイヤーを殺した(ようなもの
だ)ことも含まれていた。
 話を一通り聞き終えた女性は最後に言う。
「――では、さらに詳しくお話を聞かせていただきたいので、アマギさん、お近
くの警察署へ出頭願えますでしょうか?」
 マコトは言葉に詰まる。が、説明する。
「さっきも話しましたけど、俺は監視されてるかもしれないんです。もし警察署
に入っていくところを誰かに見られでもしたら……」
「……わかりました。ではこうしましょう。」
 女性は言う。
「今からお時間大丈夫ですか?」
「はい。」
「では、なるべく人通りの多い――そうですね、アマギさんは今どこに?それと
、どんな格好をしていらっしゃいますか?腕時計はどちらの手に?」
「CJRの駅で、場所はカントウ第1の『シブヤ』です。腕時計は左手首にして
います。格好は、ニット帽に、パーカーの、カーゴパンツです。それと眼鏡も。」
「そうですか、では……今からハチ公前に向かってください。」
「はい。」
「ハチ公前に着いたら、携帯電話を使って『電話しているフリ』をしてください
。そのときの手は『左手』で、『腕時計が見えるように』お願いします。」
「『腕時計が見える左手』で『通話する演技』ですね。」
「はい。そうしていただけたら、こちらから声をおかけします。」
「はい、わかりました。」
「では、お願いします。」
「はい。失礼します……」
 マコトは受話器を置いた。電話の上に積んでいた小銭を財布に戻し、胸を撫で
下ろす。
 これで、少し前に進めた。一番恐れていた『門前払い』もされず、キチンと話
を聞いてくれたのが嬉しかった。
 マコトは電話から離れ、人ごみに紛れて目的地へ向かう。
 駅を出た。ノドが渇いたので近くの自販機で飲み物を買う。
 ハチ公前は、休日の午前中ということもあって、人で溢れていた。
 主人の帰りを待ち続け、遂には息絶えたこの忠犬の像は実は三代目だ。初代の
像は第二次世界大戦の際に金属として国家に供出され、二代目はジャパンが地下
都市に移った時に、他の多くの人造物と共に大地震や巨大津波に耐えきれずに破
壊されてしまった。
 そこまで人々に愛されるのも辛いだろうに。マコトはハチ公の顔を見て、そう
感じた。
 近くの植え込みの、人と人の間のひとり分の隙間に入り込み、指示されたとお
りに携帯電話を開き、左手で耳に当てる。ついでに飲み物も飲む。
 果たして警察の人は自分を見つけられるのか不安になったが、それは余計な心
配だった。
 数分の内に、『彼女』はマコトの前に現れた。
「久しぶり。」
 突然そう声をかけられて、マコトは驚いた。
 見ると、ジャケットを着て、黒い長髪を側頭部でまとめた女性が目の前に立っ
ている。
 一瞬呆けてしまったが、彼女はそんなマコトを見て微笑した。
「やだ、忘れちゃった?マコト君。私よ、親戚の――」
 そこでようやくマコトは状況を把握し、適当に合わせて会話をする。
「じゃあ、行きましょう?」
 彼女はそう言ってマコトをハチ公前から連れだし、近くの喫茶店へと向かう。
 店に入り、席についてからも彼女はしばらく親戚のままでいたが、突然、表情
を変えた。
「……大丈夫ね。店内にこちらを窺っている人間は居ない。」
 一変したその雰囲気にマコトは戸惑う。親戚のときの柔らかく明るい女性はも
うどこにもおらず、マコトの目の前に座るのは氷のような空気を纏った女性だっ
た。
「改めて、はじめまして、マコト・アマギさん。」
 女性は名刺ケースをとりだし、開いて、長い指で一枚抜き出す。
 差し出されたそれには『警視庁 刑事部 捜査第一課 巡査長』の肩書きと、名前
があった。
「巡査長さんですか……?」
 マコトが訊く。彼女は至って事務的な態度で答えた。
「ええ。『刑事』のほうが言いやすい?」
「第一課って」
「『殺人』とかの重大犯罪を扱う部署。」
 彼女はどこかはき捨てるようにそう言った。
「じゃあ、今日はお願いします。」
 マコトは頭を下げる。そして、彼女の名前を呼んだ。
「――アヤカ・コンドウさん。」
 彼女の鋭い目付きがマコトを射抜いた。


 その女性の第一印象は、『剃刀のような人』だった。
 黒い長髪を頭の側面で邪魔にならないようにまとめ、しかし自らの外見に合う
ようにしっかりスタイルを作っているところに、彼女の隙の無さがうかがえる。
 その体にはしなやかな筋肉がバランスよくついているのがマコトのような素人
にもはっきり判ったが、全体のシルエットはあくまで細身を保っている。きっと
毎日鍛えているのだろう。
 鋭い目付きは相対する者に一切の嘘を許さない凄みを持っていて、マコトは少
し居心地が悪く感じた。
 アヤカ・コンドウと名乗った刑事はテーブルの上に情報端末をおき、そのタッ
チパネルを指でいじりながら注文したコーヒーを待っている。
 マコトもコーヒーを待ちながら、頭の中で話すべきことをまとめていた。
 しばらくして、店員がコーヒーをふたつ、2人の前に置く。アヤカは軽く息を
ついて、マコトをまっすぐに見た。
「準備はできた?」
 彼女の問いかけに、マコトはうなずく。
「はい、何でも話せます。」
「じゃあまず第1に――」
 アヤカは端末の画面をマコトに差し出す。
「――君の言う『タルタロス』。私たちは、その存在を知っていました。」
 マコトはそこまで驚きはしなかった。
 タルタロスの規模、通報から直接の対話までの流れなどからすでに予想はつい
ていた。
 アヤカが差し出した画面には、何かの書類らしきものが映し出されている。
 引き寄せて見ると、そこには【極秘】の文字がある。
「これは?」
「警察の捜査資料よ。ざっと目を通してくれれば、私たちのタルタロスに対する
スタンスが解るでしょう。」
「俺が見ても?」
「最近寝不足で」
 唐突に彼女は眉間を指で押さえる。そしてゆっくりと腕を組み、頭を垂らした

 その様子を見てマコトは察して、端末を抱えこんで画面を指でいじる。
 今度は、驚愕した。
 記録によると、『タルタロス』が活動を始めたのは江戸時代中期――もちろん
当時はそんな名前では無かったが――何百年も前からだったのだ。
 そしてその頃から確認されている2人の人物――タナトスと、コラージュ。
 やはり時代と共に名前は変わっているが、資料に記されたその特徴は、明らか
にあの2人のものだった。
 しかし彼ら2人が率いるタルタロスを未だ警察が潰せていないのは、タルタロ
スが『潰すほどの価値も無い』組織だったからだ。
 よくよく資料を読み込むと、タルタロスが存在していたのは何百年も前からだ
が、今の規模になったのは、ここ数年での急激な成長によるものだということが
判る。
「――だから、私たちも動き出したのよ。」
 不意の声に顔を上げる。やはりアヤカは腕を組み、頭を垂らしていた。なんだ
、『寝言』か。
「具体的な策はあるんですか?」
 無言で返された。
 また視線を端末に落とす。
 しばらく読んで、これ以上得るものが無いと感じて、マコトは端末をアヤカの
方へ押し戻した。と同時にアヤカは『目覚め』、端末を抱える。
「現在警察では、捜査方針を検討中よ。」
「検討中?」
「何もしていないということ。」
 彼女は呆れたような、どこか自嘲するような、息をつく。
「組織が大きいと、煩わしいものが多くなるのよ……。」
 そんなものだろうか、マコトは思った。
「そこで、君に訊きたいのだけれど。」
 アヤカは指を組み、マコトをまっすぐに見据えた。
 射抜かれて、マコトは萎縮する。背筋が凍りつくような瞳だった。
「君の覚悟はどの程度?」
 マコトは息をのむ。
 黙っていると、アヤカは続けた。
「『警察に通報して、それで終わり』にするつもりだった?だとしたら甘すぎる
。彼らは法律の枠外で生きている人間なのよ?仮に私たちが法にのっとって君を
保護したとて、彼らにそれは通用しない。『彼らは私たちとは別の倫理観で生き
ている』から。」
 目の前の女性が、あの忌々しいツギハギ男と同じセリフを吐いたのを、マコト
は恐ろしく思う。
「電話機の『0』を押した瞬間、君は大きな悪を敵に回したの。そして同時に、
自らの今後の人生から『平穏』を無くした。その自覚はあるの?」
 マコトは口を開けない。
「おとなしくタルタロスの下について、背徳的な快楽と血にまみれた札束に魂を
売っていればよかったのに、君は無謀にも反旗を翻した。『平穏』を代償に、私
たちに依頼した。……君は、理解してる?」
 アヤカは一息おき、さらに続ける。
「もしこの反逆が失敗したら、彼らは何年かかろうが君を追うわ。君の体を使い
、君の想像も及ばない方法で、君の出した損失を補わせようとする。君はそこま
で考えは及んでいた?」
「考えてた。」
 ついにマコトが言った。
 アヤカを見つめかえすその視線に迷いは無い。
「考えてたさ。」
「そう?だったら――」
 アヤカはわずかに片側の口端をつり上げ、目を細める。
「――『相応の覚悟がある』と考えていいわね。」
 アヤカのその挑発的な言にマコトの胸がヂリヂリと焦げる。
 静かに、頷いた。
 それを見て彼女は、今度ははっきりと微笑み、端末をいじった。
「プレッシャーには強いタイプ?……まぁいいわ。」
「俺にできることなら、なんでも協力しますよ。」
「頼りにしてる。」
 空虚なセリフ。
 アヤカは端末から指を離し、マコトを見た。その瞳には白々しいあたたかみが
戻っている。
 マコトの頭に「もしかしたらこの人はコラージュと同類なんじゃないか」とい
う考えがよぎる。が、無理やり思考の外に押しやる。
「……じゃあ、とりあえず、詳しい段取りが決まったらまた連絡するわ。携帯電
話の番号を教えておくわね。」
 そうして彼女はメモ用紙に連絡の番号を書いてマコトに寄越す。
「君も同じように」
 指示をうけて、そうした。
「この番号は携帯に登録したりしないこと。万が一にでもタルタロスがわに私と
君との繋がりを知られるわけにはいかないから、覚えなさい。」
「はい。」
「覚えたらメモは焼却し、灰はトイレに流すこと。いいわね。」
「はい。」
「それじゃあ、そろそろ」
「待ってください。」
 席をたちかけたアヤカは横目でこちらを見た。
 マコトはまだ一口も飲んでいないコーヒーの表面から立ち上る湯気を眺めてい
る。
「俺はこれから、どうすれば?」
「ああ、そういえば言ってなかったわね。」
 アヤカは再びマコトに向き合う。
「君は普段通りに生活してればいいわよ。学校に行って、友達と騒いで、タルタ
ロスで荒稼ぎしててもいい。」
「は……!?」
 彼女が何を言っているのか受け止めきれずに狼狽するマコトに、アヤカは見下
すような視線を送る。
「いい?君と私たちの繋がりは知られてはいけないのよ?なら、君の普段の生活
に微塵も変化があってはいけないのは当然でしょう?」
「それはわかってるけど」
「さっきも言ったけど」
 アヤカは一度目をつぶり、それからまたマコトを見据える。
「『通報してそれで終わり、なんて甘すぎる』。君にはタルタロスの底まで付き
合ってもらうわ。」


 乾いた風がビルの間を吹き抜ける。
 辺りに人影は無い。この時間帯、大通りから外れたこんな道を歩く人間はそう
そう居ない。
 顔にかかった髪を指先ではらいながら、アヤカ・コンドウは携帯電話を取り出
した。
 足を止めずに素早くダイヤルをし、耳に当てる。
 すぐに相手は出た。
「お疲れ様、今ちょっといい?」
「あ、コンドウ『管理官』ですか?お疲れ様です。」
「2時間ほど前にあった通報の件だけど」
「えぇと、それでわざわざ出ていらっしゃるんでしたっけ。」
「ええ」
「『違法賭場』の件でしたね。どうでした?」
「結論から言えば」
 ひと呼吸。
「無駄足だったわ。わざわざ私が行く必要もなかった。」
「イタズラだったんですか?」
「そう。『イタズラだった』。」
「珍しいですね。コンドウさんの勘が外れるなんて……」
 ほんの少しの含み笑い。
「私はそんなデキた人間じゃないわ。」
「またまた」
「そういうわけで、今から戻るわ。仕事押し付けてごめんなさいね。」
「いえ」
「今度何かおごるわ。」
「じゃあ、ラーメンがいいです。」
「遠慮するそぶりくらいは見せなさい。」
 2人は笑い、その後適当な挨拶を交わして電話を切る。
 アヤカはそれをしまい、人通りの多いストリートに出た。
 軽く、息を吐く。
「……嘘は嫌いなんだけどな……」
 彼女の呟きは雑踏にかきけされた。



「クソッ!」
 部屋に戻ったマコトは思い切り壁を殴りつけた。大きな音がして、少しだけ揺
れる。
 だが当然倒すまでには至らない。その当たり前のことがさらにマコトを苛立た
せ、また拳を振り上げそうになったが、そうして物にあたる自分が惨めに感じら
れて、やめた。
 マコトは帽子と眼鏡、上着を脱ぎ捨て、自分のベッドの上に身を投げ出す。
 ……悔しかった。なぜだか無性に悔しかった。
 あの、警察の女性――アヤカ・コンドウ――はマコトの甘ったれた部分を容赦
無く突いてきた。
 彼女の言ったとおりだった。警察に通報すれば、あとは彼らが全てなんとかし
てくれると思っていなかったか。
 俺は最初から、戦おうとなんてしてなかった。
 考えてみればそうだ。警察は軍隊じゃないんだ。彼らにはタナトスたちを逮捕
することはできても、殺害することはできない。刑務所にぶちこんで、それで終
わり。彼らはいつか解放されて、再び動き出すだろう。
 コラージュとタナトス、あの2人が生きている限り、俺に安息は無いんだ。
 ……そうだ、そもそも、今さら何を警察に頼っているんだ。『真っ当な手段』
に訴えているんだ。
『俺はすでに人をひとり殺してるんだぞ?』毒を喰らうなら皿までいくべきなん
だろう。
 でも、きっと世間の奴らは言う。『これ以上罪を重ねてはいけない』。
 馬鹿野郎どもが。
 人の命は尊いんだ。どんな人にもそれぞれの人生があって、その価値は『オリ
ジナル』、かけがえのないものだ。
 そのかけがえのないものを全く正当ではない手段で奪ったなら、その罪は計り
知れない。計り知れないのなら、ひとり殺すもふたり殺すも一緒じゃないか。『
足し算引き算で罪は計れない』?知るか。道徳的な答えなんてもうたくさんだ!
 マコトはベッドから立ち上がる。窓辺に寄って、外を見た。
 街はだんだんと暗くなってきていた。太陽が消灯されはじめたのだ。追い払っ
ていた闇が戻ってきているのだ。
 マコトは何故か可笑しくなって、少しだけ笑う。
 ……タルタロスへ参加しよう。
 強くなって、タナトスを倒して、ユウスケの仇を討とう。
 そのために他の人間が犠牲になろうが、知ったことじゃない。
 そしてマコトは携帯電話を取り出した。

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