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ストーム――――信念のない男――――

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 「義…………罪と対立する物」

 ほの暗い事務所の一室の中、山上幸太郎《さんじょうこうたろう》は、一人ごちた。
 窓の外に目を向けると、街には朝日がのぼっており、その時刻を表している。
 ふ、と持っていた本を置き、彼は室内を見渡した。

 「もう四月か……」

 と、また一人呟いた。
 それは幸太郎が実家から、家出同然で飛び出した時より半年がたつことを意味していた。

――――半年前

 「だから、一年で良いって、言ってんだろうがぁっ!」
 「なりませぬ!坊っちゃんはお勤めがございますし、山上家の次期当主たる身。それがどうして、自由にさせろ等とゆう要求を呑むことが出来ましょう?!」

 道場の中、二つの叫び声が木霊した。 一人は若い男の声。もう一つは老婆の声だ。

 「お勤めなら、何年もやってやってんだろうが!それにあいつもそろそろ元服するし、俺の有給にはちょうど良いだろ!」
 「なりませぬと言えば、なりませぬ!」

 この後、揉めに揉め、一年と言う条件つきで彼の叔父の探偵事務所に居候させて貰うことが決定した。そして、幸太郎は二人のお供をつれ、山上家の館を後にするわけであった。

――――現在

 山上家

――――現在

 山上家は特殊な家柄と言える。どう特殊なのかは後に説明するとして、特殊な家系なのである。
 コンコン、と幸太郎の部屋の扉がノックされた。

 「幸太郎、起きてる?」
 「赤矢か。起きてるぜ」

 ノックされて扉へと振り返る幸太郎。

 「おじさんも起きて来たよ。朝食とろ」

 若い女性の声がそう告げた。
 幸太郎はわかった、と返事をし、鏡を見て髪型を直す。
 そして扉を開けた。
 リビングには三人の人物が待っていた。
 若い男と若い女――――麻白勇次《ましろゆうじ》と赤矢素子《せきやもとこ》。そして幸太郎の叔父の山上慶太郎《さんじょうけいたろう》。
 「おはよう、幸太郎」
 「おはようございます、おじさん。おはよう、麻白、赤矢」
 「おはよう」
 「おはよう、幸太郎。今日のご飯はスクランブルエッグと食パンにサラダだよ」


 麻白は笑顔で本日のメニューを告げる。
 美味しそうだな、と思いながら、幸太郎は席についた。

 「今日の依頼だが……」

 慶太郎が口を開く。三人は耳を傾けた。

――――三十五分後。

 「依頼は亀探し。十一日前にいなくなって、名前はマミちゃん。大人しい性格で、水を好むか」

 水辺で幸太郎は呟いた。
 依頼そのものは単純で、なんと言う物でもないが、中々に疲れると言えた。
その後、幸太郎は亀探しに没頭した。

――――同時刻

 薄暗い、そこは洞窟だった。
 そこには四つの人影があった。
 ――――人。否、それは異形だった。

 「こうして四人集まるのも久しぶりね」

 そのうちの一つが口を開く。

 「アイツを抜きにすれば、本当に久しぶりだわお姉さま」

 もう一人が、相槌をうつ。

 「にしても何だな。最近の人類は調子が良いな」

 男の異形がそういい放つ。



 「ならば、一つ、プレゼントをあげましょう」

 風神衆と呼ばれる彼らの最後の一人がそう言いながら、右手を掲げた。

――――五分後

 「はぁはぁ……見つかんねぇー」

 そう荒く息をつきながら、幸太郎は動きを休めた。

 「はい、水」

 赤矢がペットボトルの水をさし出す。

 「ありがとよ」

 そう言いながら、水を口に含んだ。

 「ん……」

 水を飲みながら、下に目線をやると、小さな女の子がいた。

 「お兄ちゃんとお姉ちゃん、何してるの?」
 「お兄ちゃん達はな、探偵なんだ。今、亀を探してる」
 「ふーん」
 「なぁ、ここら辺で亀見なかったか?」
 「亀?亀ならあっちに……」

 ――――瞬間。
 幸太郎の背中に悪寒が走った。

 「この感じは……」

 朱雀も口を開く。

 「あれは……」

 女の子の見つめる先には、亀と紫の炎の様なものがあった。

 ピリリリッ、と幸太郎の携帯がなった。

 「もしもし」
 「幸太郎?この感じ……」
 「ああ。禍魂《まがたま》だ」
 「山上家にはどうする?」
 「こっちでなんとかするって言っとけ」

 電話を切る幸太郎。

 「お嬢ちゃん。逃げるんだ」

 女の子に向き直り、諭す幸太郎。

 「逃げる?わかったわ。帰る」

 去っていく女の子。
 紫の炎は亀を取り込み、上昇。そして巨大な亀の様な怪物を生み出した。

 「赤矢、いや朱雀」

 幸太郎はポケットから札を取り出した。

 「準備いいわよ」
 「――――現身」

 赤矢――――朱雀の体から炎が溢れだし、赤き鳥の姿に変化。羽ばたきながら、幸太郎の持つ札へと進んでいく。
幸太郎は札を投げ、朱雀は札を吸収。天高く羽ばたき、輝きと共に真っ赤な機神が降臨した。
 にらみ会う、怪物と機神。
 怪物が雄叫びと共に仕掛けた。


 機神の右手が光る。

 ――――神炎。

 機神の右手より、炎が照射された。
 モロに炎を浴び、動きを止める怪物。

 「今だ!」

 機神の右足が光り輝く。

 ――――天破閃葬脚

 機神は怪物にストレートキックを浴びせた。
 爆発する怪物。
 後には亀が残った。

――――数日後

 「依頼の亀、確かに引き渡しました」

 事務所に慶太郎の低い声が響き渡る。

 「ありがとうございます」

 妙齢の女性はひとしきり頭を下げた。
 女性が帰ったのを確認し、コーヒーを口に含む幸太郎。

 「依頼は完了か」

 幸太郎は一人ごちた。



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