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人はそれを愛と呼……ばないと思う


「ちょっと、あれ! アレ」
「馬鹿、聞こえる。あ、こっち見た」
 ひそひそと囁く声がする。苛立ちを込めて、不死原夏羽は目の前のローストチキンに思いきりフォークを突き刺した。本日のランチプレートの上で鶏肉がはねる。
「なにをしているんですか? 夏羽、食べ物で遊ばないでください」
 くるくるとシーフードのクリームソースパスタをフォークで絡め取りながら、向かいにすわった不死川陽狩はいやそうな顔をした。先ほどから投げかけられる視線と囁きに気づいていないわけがないのに、その様子は微塵も出さない。
「――――うざい」
「仕方がないですよ。有名税というものですね」
 平然と答えて陽狩は昼食を続行した。夏羽は乱暴に鳥を切り分ける。その間もちらちらと視線が飛んでくるのが分かる。好奇とも好意ともつかないなんともいえない視線の主のほとんどが女性の複数連れだ。それ以外もいるが、だいたいは一瞬だけ視線をなげかけたあと、すぐに存在を見なかったことにしている。そちらに関しては概ね、長い人生でなれた光景なので気にはならない。
「いつまでイライラしているんですか? そんなに気になるなら、店を出てから手をうてばいいでしょう? 昼食の席で殺気を放たないでください」
「…………半分はお前のせいだけどな」
 ぼそりと夏羽は呟いた。最後の一切れを口の中に放り込む。ほぼ同時に陽狩もパスタを完食した。そこでふとなにか思いついたように陽狩は身を乗り出した。
「……なんだよ?」
「そんな不機嫌な顔はやめてください。私が大好きなのはあなたのそういう顔ではありませんよ」
 嫌いな人間の目からみても整っていると分かる顔でとびきりの笑みを作って、店中に聞こえる声で陽狩は言った。夏羽は寒気を覚え、ずっとこっちをうかがっていた女子集団は黄色い悲鳴をあげて互いに手を取り合う。
「きゃあああああ、ラブラブ!!」
「やっぱ恋人なんだよ。リアルBLなんだよ!!」
「素敵っ!!」
 もはや周囲もはばからず、少女たちの妄想と願望混じりの声が飛びかう。青筋立てる夏羽とは裏腹に、陽狩は愉快でたまらないという顔で噴き出した。
「はっ、あはははは!! 楽しいですね、夏羽。おや、なにを怒っているんですか?」
「――――――そういうとこが不機嫌の原因なんだよ!!」
「お客様!? 銃は困ります!!」
 店員の制止を振り切って、夏羽は武器をフォルダーから引き抜いた。



 学園都市トランキライザー
 国家の崩壊および企業による世界統治が始まりはや半世紀。次世代の人材育成を目的として旧日本国東京都跡に作られたこの学園都市は、いまだ卒業生をひとりも有しないままでありながら世界最高峰の教育機関として今日もその名を轟かせている。
 魑魅魍魎弱肉強食唯我独尊。外から見れば得体のしれない恐るべき子供たちの巣窟であっても、蓋をあければそこにいるのは少しばかり権力や能力に恵まれた意外と普通の人間にすぎない。日常をかいまみれば、そこには普通の悲喜交々がある。



「………………で?」
 深くソファに身を沈めた少女は、面倒くさそうに血色の目を夏羽に向けた。向かいのソファに座った夏羽は顔をしかめる。無理やり上がり込んだにも関わらず、テーブルの上にはしっかりとティセットが用意されている。ただし、給仕はいない。
「篭森、知恵を貸せ」
「そのなにかに窮すると私のとこにくるのやめてくれない? 今日は忙しいから帰れっていってるのに」
 篭森珠月は大仰にため息をついた。
 ここは学園の東区の実力者である篭森珠月の屋敷だ。夏羽たちがくつろぐ巨大なリビングの窓の向こうには、英国式とも独逸式ともつかない奇妙な庭園が広がっている。部屋のインテリアひとつとっても妙な気品があり、この家の主がそれなりの教育と財力と品格のある家の育ちであることをうかがわせる。
「だいたい、私が貴方に知恵を貸してどんないいことがあるっていうの? 私は貴方とお友達になってもいいとは思っているけれど、貴方は私をお友達だと思っていないじゃない。ねえ、緋月。私だって暇じゃないのにね」
 夏羽が『数少ない親しい知り合い』だと公言する本当に少数の人間のひとりである珠月は、膝の上に乗った頭に向かって話しかけた。夏羽は眉をよせる。
「すごく暇そうに見えるが。いちゃいちゃしてるんじゃねえよ」
「いちゃいちゃしてるように見えるなら、貴方は少し遠慮すべきだね、夏羽」
「その通りだ。夏羽」
 ソファに座った珠月の膝に頭を乗せて髪を撫でられていた戦原緋月は、珠月の言葉にこくりと頷いた。このふたりは主従関係にあるが、緋月はもっぱら同僚である遠と一緒にいるため、このような姿を夏羽は見たことがない。一見するといちゃつく恋人の図だが、雰囲気は飼い主の膝で甘える大型犬だ。緋月に限らず、篭森珠月という人間の取り巻きはばえたべたと珠月に触るわりには妙にストイックなところがあり、不思議といやらしさは感じない。もっとも感じていたならとっくの昔に斬りかかっているが。
「…………うぜえ」
「そう言わないの。緋月は遠が二週間の海外出張で心が弱ってるのよ。放っておいてあげて」
「どんだけメンタル弱いんだよ!? お前こそ放っておけよ! 甘やかすな!!」
 夏羽はテーブルを蹴った。かたかたとティセットがゆれ、マカロンタワーがなだれを起こす。珠月は頬を膨らませた。
「おいで、緋月」
 上体を起こした緋月を、珠月は腕の中に庇うように抱き込んだ。
「そりゃあ、甘やかして付け上がる奴なら放っておくけど、緋月は弱って死んじゃいそうなんだもの。甘やかすよ! 遠が二週間もそばにいないなんて緋月が可哀想じゃない」
「ひとりで生きていけるように躾ろ!」
「三年前に半分あきらめた。まあ、誰かのために生きて誰かのために死ぬのが緋月の幸せだというのなら、無理に止めはしないよ。代わりに私が生きている間はけっしてこの子は見捨てないよ」
「堂々と宣言するな!」
 緋月の頭を撫でながら珠月は不満げな顔をした。夏羽は頭を抱える。
「戦原! お前もこんな女が好きなのか!?」
「好き嫌いで言うならば、好きだ」
「恥ずかしげもなく断言しやがった!?」
「珠月様がもし姉か母親だったなら、心穏やかな一生だったかもしれないと思う」
「なんでこの人格破綻者に母性感じてるんだよ、お前はっ!?」
「この人は他人の痛みに敏感な人だ。根はとても優しい。なんだかんだでお前のことも面倒見てくれているじゃないか」
「利用してるんだ!?」
 まるで糠に釘を打っているような会話に、夏羽は頭痛を覚えた。訳のわからない人間関係はなれたと思っていたが、それは勘違いだったと思い知る。
「依存っていう点では、あんたたちのコンビといい勝負だと思うけど?」
「お前は俺をなにだと思ってるんだ。ああ、もうあの野郎!」
 夏羽は机を叩いた。カタカタと音を立てるポットを、緋月が手を伸ばして非難させる。
「……仲が悪いな。お前たちは」
「いっつも仲良しのキモイてめえらに言われたくねえよ。なんだ? 相棒がいなくて寂しいからご主人さまにすり寄るとか、手前は子犬か」
「子犬ほど未来には溢れてないな」
「…………俺はその返答にどう返せばいいんだ? って違う。そういう話じゃない。なんでお前たちはいつも話をそらすんだ!?」
「そらしてないよ。ねえ?」
「お前が勝手にそらされるんだ」
「ああああああああ! ムカつくこの主従!!」
 夏羽の手が触れる寸前で、珠月はケーキ皿を下げた。そして、元に戻す。それからしぶしぶ珠月はソファに座りなおした。その肩に寄りかかるように緋月も座る。
「分かった。わかった。で、何の話だっけ?」
「珠月様、不死コンビのBL疑惑を陽狩が面白がっているという話です」
 ああ、と珠月は頷いた。
「災難だよね」
「篭森、とりあえず諸悪の根源として弓納持を殺す方法を教えろ」
「うん。それは私も知りたいな」
 非のうちどころもない笑顔で珠月は答えた。
 弓納持有華は校内最大の総合流通小売業ブラックシープ商会の広報部を任された女性である。しかし脳内は基本的に人としてアレな感じで、特に男同士の恋愛物語をこよなく愛している。ひとことでいうと、腐女子だ。
そんな彼女のせいで、夏羽は宿敵である陽狩と恋人同士であると勝手に宣伝され、街中で妙な視線を向けられることが増えた。さらに腹が立つのは、それを陽狩が面白がって煽るような言動をくりかえしていることだ。
「だいたい、弓納持を殺してもみんなの心の中の弓納持は消えないと思うんだ」
「なんだよ、心の中の弓納持って?」
「心の闇的な……」
「駄目じゃねえか」
「駄目なんだよ」
 あっさりと答えて珠月はカップに手を伸ばした。珠月の手がカップに届くより前に緋月が立ちあがってお茶の用意を始める。
「広まった噂は取り除けないよ。上書きなら可能だけど、夏羽の場合上書きするネタがないしね。それに夏羽が否定しても陽狩が煽るもの。あの人、面白いと思えば何でもするよね」
 緋月がさし出したカップを受け取って、珠月はソファにもたれかかった。
「っていうかさ、私が夏羽に好意的なほど陽狩には嫌われるんだけど。あの人、私の名前ですら呼んでくれないのよ?」
「心配ない。陽狩はだいたいの人間が嫌いだ。表に出さないだけで。珠月様の場合、さらに俺の庇護者であるという点と夏羽に入れ知恵をするのが気に食わないんだろう」
 緋月が答えた。かいがいしくケーキを切り分ける。珠月は礼もいわずにそれを受け取った。
「それもどうかと思うんだけどねぇ」
 珠月は小さく笑って首を横に振った。
「んー、陽狩本人の悪ふざけを控えさせる策ならあるけど、冷静に考えると手を打ってあげることに関する私のメリットってないよね」
「お前は利益で動くのか? 嫌なやつだな」
「あら。困っているお友達を助けるのは無償の友情だけど、助けられたほうもその友情のあかしとして困っている友達を助けるものじゃないの」
 飄々とした顔で珠月はうそぶいた。夏羽は小さく笑う。
「なるほど。お前にも困り事があるとは意外だな。だが、お前の手に負えないことは俺の手にもおえないんじゃないか?」
「あら、どうして?」
 珠月は意味ありげに微笑んだ。夏羽は大仰に肩をすくめてみせる。
「俺がお前にあきらかに勝っているのはせいぜい殺人技能くらいだろう?」
「十分よ。ちょっと困ってることがあるんだ。それを助けてくれるなら、代わりに――そうだね。陽狩の悪ノリだけなら今二割か一割程度にまで抑えてあげてもいい」
 夏羽は少し考えた。流れからすると、誰かを殺す対価の一部または全部として陽狩への対策を行ってもいいと持ちかけられていることになる。しかし、適当な契約を結ぶと予想を覆す行動に出るのが篭森珠月という人物だ。
 夏羽は慎重に口を開いた。
「ちょっと割に合わなくないか?」
「報酬は規定通り払うつもりだけど、ちょっと特殊ケースでさぁ。私との繋がりが百万が一にも疑われたくない。そいつとはどんな縁も持ちたくないの。だから通り魔的にずばっとやってくれないかなと」
「で、本当に陽狩の悪ふざけはなくなるんだろうな?」
「少なくとも八割減は保障するよ。それには緋月にも手伝ってもらわないとだけど」
 再び膝で甘えていた緋月の頭を撫でて、珠月は小さく首を傾げた。
「珠月様のためならば。命じてください」
「だって」
「お前ら……本当にそれでいいのか」
「いいの、いいの。でも、緋月の心が落ち着いたらね。今、出張三日目で一番心が乾いている時期だから」
「マジでウザいな」
 夏羽は生理的に身をひいた。珠月は平然としている。
「緋月は育ちが複雑で地味にメンタル弱いから」
「別に手前も強くねえけどな。例えばクロムウ」「やつの事を口にしたら沈める」
 本当にやりかねない気配を感じて夏羽は口を閉ざした。どこに沈められるか予想もつかない。この家の池くらいならいいが、最悪地下水路とかに沈められかねない。こいつならやる。
「……悪い。誰でも苦手なもののひとつふたつあるよな」
「気遣いがムカつく」
「俺にどうしろと……?」
「八つ当たりだよ、このやろう」
「ガキか手前は」
 ひとしきり悪口の応酬をしたところで、珠月はゆっくりと紅茶をすすった。
「さて、なんの話だったかな?」
「あああああああ!! 話が進まねえ!」
 夏羽は頭を抱えて絶叫した。緋月はうるさそうに耳を塞ぐ。
「珠月様、友情のあかしとして夏羽は珠月様の困りごとを討伐し、珠月様は夏羽の憂いの種を除く約束だ」
「ああ、そうだったね。それでいいのかな? 夏羽」
 討伐という言い方が少し引っかかったが、夏羽は頷いた。篭森珠月は予想の斜め下をいく人間ではあるが、絶対にできないようなことを約束する人間ではない。
「分かった。誰を殺せばいい?」
「今、ちょっと命狙われててね。でも諸事情でこちらが真っ向から相手をするのに躊躇いがあるのよ。だから、あくまでも事故的なものとして私とまったく関係ないところで鬼籍に入ってほしいんだよ。分かる?」
 珠月はことんと首を傾げた。
 珍しい話ではない。学園の有名人ともなれば、内外に敵がいる状態が当たり前だ。世界最高峰の教育機関と呼ばれるこの学園でも頭一つ抜き出るということは、次世代の覇権争いに参入する可能性が極めて高い実力者という証明でもあるからだ。
 夏羽は考えこんだ。著名な両親を持ち人材への投資を大きな収入源の一つとしている珠月は、どうしても人間関係によるしがらみが多い。故に殺人免許をもっていたとしても堂々と戦うことができず、外部にこっそり暗殺を依頼してくることは珍しくない。おそらく私兵の中には緋月のように戦闘能力が高い人間も沢山いるのだろうが、万一それが露見した場合に私兵では誤魔化せない。だから、外部の人間を雇うのだ。
「あー……その言い方だと、戦闘能力自体は」「たいして強くないよ。私でも十分に対処はできる。だけど、どうも戦いたくない相手でさ」
 珠月は肩をすくめた。
「資料は後で人を経由して送るよ。その人は、『美しき暗殺者地獄蝶紅薔薇』って名乗っているんだけど」「ちょっと待てこの野郎。手前、俺をなにと戦わせる気だ!?」
 地雷原の予感しかしない言葉に、夏羽は思わず珠月の胸元をつかんだ。瞬時に殺気立つ緋月と違い、珠月はきょとんとしている。
「だから『美しき暗殺者地獄蝶紅薔薇』だって」
「だから、それはいったい何なんだよ!?」
「んー……宝塚っぽい二人組」
「しかも二人かよ! 『美しき暗殺者』の『地獄蝶』と『紅薔薇』で区切るのか!?」
 多分、と珠月は頷いた。
「で、蝶々と薔薇の仮面をかぶってる」
「てめえ、どんな試練を俺に与えてくれるんだ!?」
 だって、と珠月は頬を膨らませた。可愛らしい仕草も珠月の中身をしっていると不吉の暗示にしか思えない。
「関わりたくないでしょ? どんな縁も持ちたくないでしょ?」
「そういう悪縁を俺に押しつけてくるんじゃねえ!! なんでお前の周囲はそうも変態偏差値が高いんだ!?」
「それ解明できたらお金あげるよ」
「できるかああああああああ!!!!!」
 夏羽は絶叫した。ついでにもう一度テーブルを蹴飛ばす。すばやく緋月がテーブルを押さえて転倒を防いだ。
「……夏羽、そんなに叫んで喉に負担来ない?」
「…………手前がそれを言うか?」
 ころころと可愛らしく珠月は笑った。可愛い笑みがとてもムカつく。
「………………そろそろ死ねばいいのに」
「そう簡単には死ねないよ。私は私の血に責任があるし、私が流してきた血の責任もある。そう簡単にくたばってやるわけにはいかないね」
 けろりとした顔でうそぶくと、珠月はカップに残った紅茶を飲みほした。
「で、夏羽は一度した約束を破ったりしないよね?」
「…………騙された」
 がっくりと夏羽はうなだれた。珠月はにこにこと笑う。とてもいい笑顔だった。
「殺害方法は指定しないけど、脳への損傷および頭部切断はよろしく。絶対になにがっても助からないように」
「お前……本当に心底嫌なんだな」
 笑顔のままえぐいことを言う珠月に、夏羽はため息をついた。
「変態はもう足りている。ひとりでも多すぎるんだ。これ以上、奇妙な縁を作らなくていいよ。本当」
 珠月は目を閉じた。一瞬だけ苦悩するように顔が歪む。
「……ねえ? なんで私の周囲って変なひと多いんだろ?」
「類が友を呼んだんだろうな」
「それだと私のお友達である貴方はなにになるのかな?」


**


「おっかないな。バラバラ通り魔事件だって」
「えー、うちの学校だと割とよくあるじゃん。スラム街なら」
「それもそっか」
 携帯電話で新聞を読む生徒や課題を抱えて走り回る生徒が行きかう学園中央区画。授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと、途端に道端は人でいっぱいになる。その中でもごく一部、まるで切り取られたかのように人がいない場所というのがいくつかある。大概、その中心には台風の目のように学園の有名人がいるのが常だ。
「…………」
 二人の殺人鬼が向かい合っている。ぴりぴりとした殺気が空気を凍らせる。巻き込まれまいと通行人は視線を落して早足に歩き去る。その中でひとりだけ、流れに逆らって台風の目に足を踏み入れた人影があった。二人の殺人鬼は同時に振り返る。
「なんだ、駄犬ですか」
「戦原」
 殺意混じりの視線をうけても緋月はいつも通りの無表情を崩さない。ただ、しげしげと二人を見やっただけだった。あからさまに陽狩は不機嫌になる。
「何か御用ですか? ここには大好きなカルバニアも大事なスカイブルーもいませんよ?」
「別に用はない。が、あまり通行人を驚かせるな」
 どうでもよさそうな淡々とした口調で緋月は答えた。
「仲がいいのは結構だが、あまりひとに迷惑をかけるな。陽狩」
「なんで私限定なんですか。だいたい、仲がよかろうと悪かろうと貴方には関係ないでしょう?」
「ああ、確かに関係ない」
 あっさりと緋月は答えた。だが、続ける。
「ところで日本には昔から衆道という男同士の交わりの文化があるが、それはもともと男同士でありながら一体化できるほど相手のことを思っているという、うるわしき友への究極の友情と信頼の表現だったというのが近年の有力説になっているらしいが、お前たちもそんな感じなのか?」
 沈黙が落ちた。
 うっかり会話を聞いてしまった通行人含め、すべての空気が凍った。そんな中、陽狩は一歩後ろに下がった。
「…………うわぁ、気持ち悪い。こっちこないでください夏羽」
「まるですべて俺のせいみたいな言い方するんじゃねえええええええ!!!!」
「やだー、キモーイ」
「棒読みで呟きながら遠ざかっていくんじゃねえ!! って、緋月! 爆弾だけ落して帰るな!!」
 それからしばらく、不死コンビは二人での行動をしなくなった。


おわり