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Happy birthday 珠月様

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kisaku

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【Happy birthday 珠月様】

大変だ。
 迷った。夕方に知らないイーストヤードに来ようとしたのが悪いんですがっ。
ある人を探して走り回っているうちに牙裂紅の目の前には噴水があった。
後方を見ても家と街灯と道があるばかりで何処なのかもわからない…。途方にくれている彼女の目前に突然綺麗な髪をした男の人が現れた。一体どこから来たのだろうと辺りを見回してみたが、当然のことながら解らない。
はじめましての男性にここはどこかと聞くのも申し訳なかったが、ある人へのプレゼントの為だから…!と自分を説得し、遠慮がちに話しかけてみた。
「あの…すみませんが道を教えていただけませんか……?」
なにやらぶつぶつと言っていた彼への第一の感想は、『個性的な方だなぁ…』だった牙裂紅、口に出すと失礼だと思ったため言葉を呑込む。
そんな個性的な彼は、突然の出来事にも紳士的に答えてくれた。牙裂紅の持っていた地図を指して現在地はここで、真珠の月の姫はきっとここにいるんだ、と。
牙裂紅は真珠の月の姫が誰のことかよくわからず、つい要らない質問をしてしまった。
「真珠の月のお姫さまって、何方ですか?」
「篭森珠月のことですよ、彼女はきっとここにいるんだと思います。」
 そもそも美しい真珠の月の姫は――と次々に語られて、聞いた方が良いのかと思い牙裂紅は少し聞いていたが、プレゼントを渡すという大切なことが残っていたため(彼の話を聞いていると渡せないかもしれないと感じ)、謝って先を急ぐことにした。
「すみません、少し急ぎの用があるので……。
あ、場所教えてくださってありがとうございました。とっても助かりました。
それでは」
「…で、とっても・・・おや、そうですか。ではまた次の機会に」

****

まずはあの人の仰っていたところにいってみよう。
あの人は、篭森さんのご親族さんかな…、それともストーカーさん?あっだったら大変です、篭森さんに迷惑が掛かってしまいますよね…!?うぅん…あの人の仰った通りの所にいらっしゃったら、場所を移した方が良いと思うんですが・・・!

****

ここを右でしたよね、
「あ」
黒くてふわふわな服と、真っ赤な綺麗な瞳。
「篭森さん……?」
駆け寄ってプレゼントを渡そうとした牙裂紅は先ほどの個性的な彼を思い出して考え直す。
 あの人は篭森さんのご親族さんかストーカーさん…
もしもストーカーさんで、篭森さんに色々と渡していたら…?初対面の私が行き成りプレゼントを渡したりしたらかなり不審者に…。思い出せ私、空多川さんのときも不審がられたんですよ?ストーカーさんがついているんだったら、もっと不審に思うはずですよね。
 でも、お誕生日はお祝いしたいし・・・・・・。
「なにしてるの?」
グルグル考えているうちに本人が来てしまった。
あれやこれやとあわあわ動いている人間がいれば、不思議に思っても無理はない。
「ぁ、怪しいものではございません!」
「…はぁ・・・(?)」
勢いに任せて自己紹介をして、お誕生日をお祝いしに来たところまで話してからプレゼントを渡した。
「ありがとう」
「いえ、本当に大した物ではないんです…申し訳ありません
あ、それと篭森さん」
「はい?」
「あの…もしご親族でしたら大変失礼なことを言うようですが…」
「???」
今までの勢いは何処へやら牙裂紅はさっき会った個性的な彼のことをぽつぽつと話して、最後に謝る癖が出た。話を聞き終えるか聞き終えないかのところで篭森の表情は明らかに悪くなっていた。彼女はその表情のまま
「あーうん、大丈夫そんな奴は私の家にいない」
と返した。
「じゃああの人は…」
「ストーカーみたいな感じ。
うわーどうしよう、気持ち悪くなってきた…」
「だ、大丈夫ですか?!
その、その人にここに貴女がいらっしゃると聞いたので…
場所を移した方がよろしいかと思うのですが……」
「じゃ、そうする」
篭森の表情は相変わらずよくなかったが、移動すると聞いた牙裂紅はほっとした。
 あの人はストーカーさんでしたか、だったら食い止めたほうが良いのでしょうか?
「今日一日だけでもあの人に会えないと良い日になりそうですか?」
「そうだね、良い日になると思うよ」
「じゃあ、私 頑張って引き止めます」
「ぇ?」
篭森の表情は驚いたような感じだった。
牙裂紅はプレゼントよりもこっちのほうが喜んで頂けるのではないか?と思い、『精一杯頑張ります』と微笑んだ。
それに『ありがとう』と一言返して篭森は何処かへと移動した。

「よーっし!」
ありがとうって言ってくださったのに、ぶち壊しには出来ませんよね!
頑張って一日引き止めますよぉ!

****

「おや、またお会いしましたね」
「こんばんは、」
さっきのストーカさん、と言いかけてあわてて首を振る。いくらストーカーでも、失礼な態度をとって気分を慨してはいけないと思ったのだ。
「?…で、真珠の月の姫には会えましたか?」
「ぁ、、、えぇっと…その…今日はいらっしゃらないようですよ?ぃ、忙しいんですよきっと。」
「いつもは居るのですがねぇ…。あぁ、じゃあ家に行ってみy「あっ!そうだ!!」
個性的な彼の言葉を申し訳なく思いながらもはっきりと打ち消す声の大きさで、話題を少ーしだけずらす。
「さっきのお話、途中で終わらせてしまったじゃありませんか、あのお話の続きが聞きたいです私。」
「さっき…?あぁ、真珠の月の姫がいかに麗しいかという話でしたか」
「そうです、そうです!」
「何処から話しましょうか?」
牙裂紅としては、出来るだけ長くとどめておきたかったので、はじめから話して欲しいと頼んだ。個性的な彼は我が子を愛でる親のように延々と話し続けた。
 家族が出来るならどんな方でも嬉しいと思っていたけど…こういう方はちょっと…遠慮したいです………。

それから暗くなるまで話は続き、彼は満足気にもう晩いから続きはまた今度、と付け足して、帰って(?)いった。 まだあるなんて凄いなぁと感じつつ、これで一日引き止められたのだと嬉しく思い、自分も帰る道を探す牙裂紅。

そんな彼女が、『個性的な彼』のことを、“篭森珠月の有名なストーカーであるジェイル・クロムウェル”だと知るのはこの日から約二週間後のことである。


****お姫様のプレゼント****

牙裂紅が個性的な彼と話している頃、序列24位の【イノセントカルバリア(純白髑髏)】、篭森珠月は彼女から貰った小さな木箱を除いていた。
 中には透き通るような赫色をした小さなピアスが入っているようだ。そして
その下にも何か仕切りがあるようで、それを外すとカランコエを模した和菓子が出てきた。
花言葉は柔軟性とか思い出とかおおらかな心とかだったかな、となにげなく思ってから口に含む。
味自体はきみしぐれのようだったが中のあんは白餡らしくサラリとした舌触りがあった。
「なんであの子、私の誕生日知ってたんだろう…」
今日は和茶にしようかな、と考えながら窓の外を眺める篭森はそれはそれはきれいだったと聞いている。




◆◇◆◇◆
 素敵な小説をたくさん書いていらっしゃる篭森さんへお祝いです。
(長くなってしまってすみませんでした…)
 珠月さんも、ジェイルさんも良くキャラクターがつかめていないのですが、こんな感じで良いのでしょうか…?
 誕生日のお祝いなのに、あんまり祝っていないように思えてきましたすみません…。
改めまして お誕生日おめでとうございます!良い一日を過ごせますように…。
 ※目を使ったあとは目を休めるか、目薬をさしてくださいね
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