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【Felicitare】

 嫌な予感がして、彼女の姿を探す。
 案の定、いつもとは違う暗い表情。
 彼女らしくなくて何故だか不安になる。
 縋り付くようにして彼女の頬に手を添えると、彼女はいつもを装うようにして微笑んだ。

 何でもない。大丈夫。

 そんなはずないのに、周りを安心させるためだけに。
 重いなら下ろせばいい。
 幸いにも、僕は一般的な人たちよりも力持ちの部類に入るらしい。
 どれほど重い荷だろうと、彼女が望むのであればいくらでも代わろう。
 けれど、残念ながら彼女のように大切に扱う事は出来ない。
 それらに価値を見出す事が出来ないのだ。
 だから、彼女がどうしてそれほどまでに無理をして背負い続けるのかが理解出来ない。
 持てないのなら、捨ててしまえば良いのに。
 放り出してなかった事にしてしまえば良いのに。
 顔を覆っていた布を剥ぐ。
 ちゃんと言葉にするために。

「もう休んでも良いよ」

 僕は……僕達は何が敵に回ろうとも、絶対に守り抜いてみせるから。
 けれど、彼女は絶対に休もうとはしないんだ。
 そうすれば、傷付く者がいると分かっているから。
 彼女の先は輝かしいものであり、辛い事があってはならないのだ。
 そのためならばどんな事でもするつもりなのに、先を予想するしか能のない無力な僕では何の力にもなれない。
 それでも、何も出来ない僕に向かって、彼女は昔と変わらぬ無邪気な笑みを浮かべた。

「ありがとう、幸成」

 こうして彼女が認めてくれるから、僕は無意味にカードを捲り、価値のない言葉を紡ぐ。
 彼女が少しでも幸いへと近付くように。