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Genio o Cretino

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【Genio o Cretino】

「1+1=2、1+2=3……999,999+999,999=1,999,998。覚えた?」
 丈之助は小さく頷き、初めから一言一句間違える事無く復唱する。
「よし。足し算はオッケーっと。次は引き算だね」
 沙鳥は再び延々と数式を口にする。
 原理などを説明しても記憶する事が出来ないのなら、徹底的に一から数式を叩き込めば良い。
 24時間であればどんな物でも完璧に記憶しておく事が出来るのだから。
 そう考えた沙鳥による指導は、試験の24時間前……否、念のためにと22時間前から延々と続いた。
 加算から除算までが終わると、ようやく試験に出るであろう数式を文字通り「1」から。
「うにー。ねむー。ねむむー。」
 全てを記憶し終わる頃には、すでに日が昇っていた。
 試験に行くのにちょうど良い時間だ。
「じゃあ、行って来る」
「うし。行って来い」
 眠さを微塵も感じさせない丈之助を、瞼を擦りながら敬礼で見送る。
 その様子を最初から最後まで見届けていた藤司朗は苦笑いを浮かべて小さく呟いた。
「相変わらず卑怯な受け方だなぁ……」
 多分、丈之助は誰よりも早く試験を受け終えるだろう。
 何せ、出て来るのがどんな問題であろうと、全ての答えが頭に入っているのだから。
「天才と称えるべきか、バカと蔑むべきか……」
 瞬時に爆睡した沙鳥の頭を撫ぜながら、藤司朗は呆れたようにため息を吐いた。
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