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【Sarcasmo(嫌味)】

「昔読んだ絵本の話なんだけどね」
 藤司朗の手によって目隠しをされた状態でも、いつも通り無邪気な笑みを浮かべたまま沙鳥は話し続ける。
「悪い妖精にお金だったか金糸だったかを頼んだ人がいた訳さ」
 政宗が投擲した長椅子と並行するように丈之助が駆け出し、進入してきた男たちを短剣で切り付ける。
「その時にね、悪い妖精は『代わりに何れ生まれてくるお前の子供を貰う』って言ったんだったかな? とにかく、女の人の子供を貰う事になったのさ」
 鈴臣は分かり易く舌打ちをしてから渋々腰を上げ、丈之助が仕損じた男の腕を捻り上げて横たわらせ、首の後ろに乗せた足へと緩やかに力を込める。
「そうしてその人たちは幸いを手に入れて、しばらく後に女の人は赤ちゃんを産む」
 幸成は衣擦れや足音すらも立てずに男たちの眼前に立ち、彼らが何らかの反応をするよりも早く顔面を握り潰し、喉笛を引き千切る。
「悪い妖精は約束通り赤ちゃんを奪いに来る。赤ちゃんを守るためには妖精の名前を知る必要がある」
 政宗は傍らに立て掛けてあった大剣を軽々と振り回し、周囲の男たちを薙ぎ倒す。
「そこで女の人は妖精の後をつけて、名前を聞き出して、赤ちゃんの身を守りきる……かなり前に読んだきりだから曖昧だけど、そんなような話だった気がするの」
 沙鳥の元に辿り付く事が出来た男へ藤司朗は艶やかに微笑みかける。男は自分の首へ縄を巻きつけ、限界以上の力で引く。自らの呼吸が止まった後も。
「でもね、それっておかしいと思うの」
 丈之助は爆薬を感覚のみで筒に込めて投げ付け、男たちだけを適確に吹き飛ばす。
「妖精さんは約束を守って幸せにしてくれたのに、女の人は約束を破って赤ん坊を守ったんだよ。それっておかしくない?」
 藤司朗が沙鳥を自らの胸元に引き寄せたと同時に、その背を飛び散る血肉が汚す。
「やっぱりね、それがどんなモノであったとしても、約束した以上は守らないとダメだと思うの。代価は貰っちゃってるんだし。もし守れなかったとしても、守るために努力はしないとでしょ?」
 辺りはようやく静寂を取り戻した。
「……ねぇ、ちゃんと聞いてる?」
 血の海の中で唯一、不自然なほどの白さを保つ沙鳥は、目を覆われたまま不満気に頬を膨らます。
「勿論。沙鳥の声だけは絶対に聞き漏らさないよ……どんな状況であろうとね」
 耳元で甘く囁かれ、沙鳥は満足げに頷く。
「そう。なら、良かった」