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【Devoto】

「こんにちはー」
 食料品や一般的な生活雑貨から、一般的でない食料品や生活雑貨まで……あらゆるものを何でも取り揃えた購買部・万具堂。
 珍しく客足が少ないせいか、店員はカウンターで読書に勤しむ青年一人だけだった。
「いらっしゃい、夜の女王。今日も相変わらず、空を舞う粉雪のように愛らしく、冷ややかだね」
 珠月は無言のまま傘で殴り掛かり、藤司朗は笑顔のまま受け止める。
「ごめんね。今のは真面目に言っているクロムウェルに対して失礼だった」
「ジェイルに詫びるよりまず私に詫びろ」
「それは、無理。わざとだし」
 台詞と状況が違えば姫君を誘う王子如き微笑で、相手の神経を逆撫でする。
「本当にいい性格してるよね」
「ありがとう。篭森さんに誉めてもらえるなんて光栄だな」
「……あっそ」
 藤司朗は押さえたままだった傘を放し、他の客たちを安心させるよう涼しげな笑みを向ける。
「沙鳥ならお散歩。マサ姉は夕飯の買出し。他は配達とかお仕事とか。今いるのは俺と引き篭もり二人だけ」
「そっか、さっちゃんたちいないのか……せっかくブルーローズのケーキ買って来たのにな」
「多分誰もすぐには戻らないだろうし、絶対に持て成さないけど、奥で待ってる? スズに延々嫌味を言われ続けて、ユキが眉間に皺を寄せてる姿が見れるかもよ?」
「確実にそうなるから遠慮しておく」
 きっぱりとお断りして、店内をブラ付く。
「本当に女王騎士団はさっちゃん以外に懐かないよね。政宗は別として。知り合ってから結構経ってると思うんだけど?」
「本当にねぇ」
 他人事のように藤司朗はわざとらしいため息を吐く。
「マサ姉の人懐っこさの方が俺らにとっては異常なんだ。いっそ、傷付いてボロボロになって、人間不信になっちゃえば良いのにとさえ思うよ」
 始終消える事なく、本心を隠し続ける笑顔。
 ある意味で完璧なポーカーフェース。
 嫌われたがりの、Dolcezza(愛しい人)

 ――本当に可愛くない。

 珠月はもう一度、傘で撲る。今度は本気で。
 けれど、またしてもその腕が阻む。
「……おかしいな。フェイントかけたつもりだったのに、どうしてこっちだって分かったの?」
「何となくこっちかなって? あえて言うなら、白犬特有の勘?」
 要領を得ない解答を訝しがる珠月に、微苦笑を向けて続ける。
「君が俺を殺す事は不可能だから、リラックスした状態で読めるのかも?」
「失礼な」
「だって、沙鳥の護衛が一人でも減ったら困るでしょう? これでも少しは信じてるし懐いてるんだよ」
 これだけは本当だと、真剣な、決して合う事のない視線が告げる。
「……本当にいい性格してるよね」
「ありがとう。篭森さんに誉めてもらえるなんて光栄だな」